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『かくも色褪せた我が退屈な世界』

『かくも色褪せた我が退屈な世界』 "画伯"オフラハティ作

登場人物一覧

セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
セレマ オード クロウリーの関係者
→ イラスト

『かくも色褪せた我が退屈な世界』

"画伯"オフラハティの描く完成することのない“完成された絵画”のタイトルである。
描かれているのは、何の変哲もない街並みだ。
しかし、この“どこにでもありそうな”街並みは、この世界のどこにも存在しない。
そして、その絵画を構成する絵具もこの世界のものではない。

絵画を彩る画材の正体は“魂”である。
堕落者の魂から作った黒い絵具『負の色彩』に滲む玉虫色の色彩により描かれている。
もっとも、その事実を知る者は少ない。また、絵画それ自体を目にしたことがある者も限られている。多くの場合、絵画を目にした者はその魅力に取り憑かれ、いずれはオフラハティの“絵具”へと成り果ててしまうからだ。
そうなってしまえば、この絵のことを世に語り継ぐ者など現れようがないことは道理。
だが、実際にはこの絵の存在は世に広まっている。
つまり、絵画のことを知り、絵画を目にし、さらには正気を保ったまま帰還した者がいるということである。そして、その者曰く、絵の中にはもう1つの世界があり、それは酷く悍ましく、美しいものであったという。

絵の中の世界に昼夜は存在しない。
強いて言えば、オフラハティが空を黒に塗りつぶせば夜になるし、雨を描けば雨が降る。
絵の中の世界は陰鬱だ。雑多な色が混ざり合ったような霧が立ち込め、建物の壁も道路も空も、出鱈目な色合いに塗りつぶされている。
曰く、絵画の中に生命体は存在しない。それは、絵に取り込まれた本人であっても“生命体”ではなくなるということだ。絵に描かれた存在となるのだから、それも当然。この世界とは隔絶された“絵画の世界”に踏み込めば“絵画の住人”となるに決まっている。

かつて、セレマ オード クロウリーはオフラハティに招かれ絵の世界を彷徨い歩いた。
どこまでいっても同じ景色が続く、ひどく退屈な世界であったと彼は言う。そのことをオフラハティに告げれば、彼はくっくと含んだ笑いを零しセレマへ絵筆を差し向けた。
するり、と虚空を絵筆でなぞられた瞬間、セレマは自身の発言を後悔したと言う。
精神を削られたような感覚の後、酷い喪失感と嘔吐感、そして魂が悲鳴をあげるような苦痛を味わった。
そうしてオフラハティは、極彩色の筆で虚空に絵を描く。
それは、醜悪な怪物と化したセレマの姿そのものだった。
絵の世界には何もいない。しかしオフラハティが描きさえすれば、どのようなものでも存在し得るのである。

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