PandoraPartyProject

SS詳細

ぼこぼこ、こぽこぽこぽ、ごす、ごすん

登場人物一覧

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛

 アンポンタンな表情、慈味。
 ぽっかりと虚を空けた、アポカリプスの歴史を弄ぶ。深淵に屈した人類のように戯言を嘔吐したならば、即ち、平凡からの脱皮と魔視えるだろう。聾々とする事など決してなくナンセンスな漿液に言の葉を炙らす。脂の滴った鉄の板の上にかるい麦酒だ、そう、何もかもが生温く、ノン・アルコールで有名と考えられる。あんまりにも、余りにも幸せなので途端、トタンと嘘を吐かれたような気分に陥ってしまう。夜毎満ち欠ける月に頭を垂れてしまう。時よ止まれ、オマエは、おぞましいほどに美しい。僥倖にまで到達したグロテスクが愈々と鳴いて、喚いて、誰かの目玉と神経を引き摺ってくる。くるくると回転する時計の針を追う度に目を回してしまいそうなのだ。そう、叶う筈のない事は理解している。重ねて、々ねて、罪を暈ねて、同じ台詞を反芻するのだ。しーちゃん、愛しているよ。唇の甘さを覚えたからにはもう後戻りなんて出来やしない。何度だって叩き付けてあげるよ。呪うように恋してきた日々とはサヨウナラ……じゃあ、如何して俺達は『クリスマス・ツリー』の膝元で坐しているんだい? 気の所為さ、嗚呼、何もかもがブラック・ボックス――理想郷の管理者がこっそり覗いていたところで邪魔だとは想えない。詰め込まれる、焼き焦がれる。
 春過ぎて夏来にけらしと謂うらしいけれど、すべて凍える冬の宮、静寂と死の季節、絶望と廃滅よりかは綺麗で嫌いじゃないよ。妖精と人間を間違える事だって仕方のない現だ。今では俺も一介の寒櫻、はらはらと悲し気に舞う、神ではない、佛ではない、真理。オマエの為に死に花咲かせてみようか。枯れ々れとした眼球は悉く演技なのだろう。で、なければ、キャンディもドロップも滑稽に映る。泣いてくれるかい、俺のご主人さま――絞首刑にはまだ早いと膨れたのはオマエではないか。冗談だよ、冗談。いつものアハハに連なった金魚のクソのようなドンペリ、何本つんだところで眼差しに敵う筈もない。睦月、睦月、十字に裂かれた月の狭間から、お姫様のご登場だ。かわいい人、美しい人、守るよ、俺が護るよ、いとしのオマエ――円を描くかの如くに玉虫色を轢き潰した。飛翔した先ではたくさんのぐるぐるがシャクトリしている。あの境界を跨いだ刹那にお互いの胃酸が混じった――魔女の釜の意味を失くしたとは謂わせない、なにをどう取り繕っても『裁判』から逃れる術は存在しないのだ。この想いが溢れて、毀れて、行き場をオマエと認識している。溺れてしまいたくなる赫々しさが枕元を乾かした……。
 土竜、蟻、腐乱死体と繋がって新たなる門出を祝おうじゃないか、星間旅行に不可欠なのは琥珀に輝く蜂蜜だろう。抜けきった力を蜷局に似せて、楽園への戸口をノックする。なんにも、なぁんにも怖くなんかない。割腹、煮立った蛆虫を口腔で遊ばせるなんてワケないのだ。怖いのは唯一つだよ。愛しているの、しーちゃん。だから、勝手に船に乗らないでね。勝手に床に臥せないでね。置いていかないでね。羊羹みたいに物置で腐らせないでね。姿見をお隣にしたところで赫々は『しーちゃん』の奴隷、見てないの、視るしかないの、見ていないと死んじゃいそうだよ……ほんとだよ? おまえのすべては俺のもの。信じてるからね。信じちゃったからね。大好きなの、大々々々好きなの。はぐらかさないで、ね――舐られたのは果たして髪の毛か柔肌か骨の髄か眼球の裏か、汚い々ない腸の臭いか。平等に愛しているんだ――お手をどうぞご主人さま。
 ダンス・パーティに遅れてしまった田舎娘は王子様の接吻、その味わい方を知れない。痴れ損なった人間は可哀想にも己の狂気を会得して終ったのだ。嫉み強く握り締めたナイフの名前を教えてくれ、隷属、只管に業火へと投身せよ。ドレスの色をアノマロカリスは定める事が出来たのか、君の色に染まりたいのだとプランクトンは囁く。くるりと泳ぎ方を忘れた酩酊具合で、白く々く、青白く貌の色が称えられる。誰が僕を融かしてくれると謂うのかな。そんなわかりきった病状にお医者様は溜息を漏らすしかない。莫迦みたいなノン・アルコール依存症だ。本日もエスコート、上手にできてる? そんな質問は意地悪なしーちゃんしかしてこない。なんでもない営み、なんでもない日、おめでとうの牙が両者をつつく。極上の蜜をかためて、蝋にしたならば、素晴らしい。永遠だ、永久だ、無間だ……。どろどろと塗りあった屈んでいる過去のクリーム、じるじると膿遭いを愛情でそそぐ。
 今日も俺はオマエに酔ったまま。
 ぬくもりで僕をとかして。
 ――人間の音が聞こえる。
 ごす、ごす、ごす、ごす――文字通りに出る杭が打たれているのだろう、様式美から外された両者が愛情と呼ばれる小槌に弄ばれている。偏見の極まった羨望の眼が突き刺さった頃合いにプランクトンが吹いた。しーちゃん、これじゃダメだよ。こんなんじゃ、ただの『気の良いお父さん』みたいなの。じゃあ俺はオマエに何が出来るって謂うんだ。折角の理想なんだもの、一定の温度じゃツマラナイ。内臓を愛してくれるのなら、それは勿論、紅葉色の事なんでしょう――鮮明に降りかかったスート・トランプの怒声、お姫様からの一喝、ご乱心からの一口。アア、そうかい、暗黒の神、ダゴンさまはひどくインキュバスがお好きな酔うだ。断末魔に近しい恍惚の双眸が額、頭蓋、泥濘へとはまる。
 古生代カンブリア紀にでも身を移したかに思えたのは、おそらく、虚構ではないのだろう。爆発を引き起こした生命体の中心でフザケでもしたのか、貌と貌が衝突していく。砕け散った感覚を接続し直して海色のドレスを改めて、目におさめる。ルビーの光輝に触れたとでも謂うべきか、餓えている胃袋に二リットルほどの塩水。そりゃあさ、ご主人さまが熱中症にでもなったらマズいでしょ。ショットとして飲み干したらにまりと微笑んでみる。さあ、そろそろ、底へ底へと旅を始めようか。二日ならぬ八日酔いだって大歓迎しちゃうからね。蓋をしていた臭い物を数年振りに解放してみた。たくさんの脳味噌、たくさんの思考、絡み憑くシナプスの馥郁――これ全部僕なんだよ。これ全部俺なんだよ。機械仕掛けの神佛めいてそぅと潰す。スリルたっぷりな牛海綿状脳症に乾杯……。
 脊髄であやとりをする事は簡単なのだと、元神様が解り易く説明していた。蓄えられた愛情もスポンジじみて『これから』『まだまだ』を再構築するのか。また明日の一言がお互いに『咽喉』の奥で藻多ついている。寝るのが嫌なんだよ、しーちゃん。それは僕も同じだよ睦月。いっそタツノオトシゴ、いや、チョウチンアンコウの化身にでも進化してやろうか。それじゃあしーちゃん、紐みたいになっちゃうよ? それは困るな。僕はそれでも良いけどね――さまよい、到達した世界こそが洗濯機に相応しい、バター・ケーキの来訪。
 報告が遅れて申し訳ないね。俺はどうしても電源の入れ方を記憶出来ないのさ。ううん、好いんだよ、しーちゃんが思い出してくれたなら、それで好いんだよ。かちりと騒々しかった大渦巻きが小さく、脆さく、収縮、縮小の意を籠めて讃美する。ロマン・ティックに苛まれての逆転劇だ――よろしくね、幸せな、同化している獣によろしく。
 ――早鐘の弁、愛情と謂う重石、想いし。
 ――正面から衝突してきた月の愛おしさ、炸裂する逢魔時。

  • ぼこぼこ、こぽこぽこぽ、ごす、ごすん完了
  • NM名にゃあら
  • 種別SS
  • 納品日2022年07月21日
  • ・寒櫻院・史之(p3p002233
    ・冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900
    ※ おまけSS『人間の音が聞こえる』付き

おまけSS『人間の音が聞こえる』

 ぼこぼこ、こぽこぽこぽ、ごす、ごすん。
 二人で懸命に、頭の中身が揺れるほどにぶつけあう。
 ごちん、ごちん、なんだか楽しく思えてきたのは、きっと根の国からの荒ぶりだ。
 ぼこぼこ、こぽこぽこぽ、ごす、ごすん。
 骨りと出来上がった小槌のなんと心地良い音か。
 人間の音、アア、人間の音だ……愛おしい、愛しい。
 アハハ、アハハハ、アハハハハ――。

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