PandoraPartyProject

SS詳細

IFルート 夢幻泡影のアレクサンデル

登場人物一覧

ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

「はぁ? 今度の夜会に出ない?」
「ちょうどその日に依頼が被って……」
「だめだこいつ」
 久方ぶりに暇な時間がかち合ったので親友のお茶会に来てみれば飛んできたのはいきなりのダメだしだった。
 そうは言うが貴族と特異運命座標イレギュラーズという二足の草鞋を履いているのだから仕方がないと言いたいブレンダだったが目の前の親友相手に舌戦で勝てるわけがないので口をつぐんだ。
 片や歴史だけはある貴族の家系で頭を使うよりも身体を使う方が得意な金髪の女。
 片や家は新しいが勢いのある貴族の家系で身体を使うよりも頭を使う方が得意な銀髪の女。

 正反対の様で似ている2人は幼馴染で紛れもない親友であった。

「ま、いいわ。それじゃわたくしがシルトにエスコートを頼むとしましょう」
「ぐっ……こ、今回は許してやる」
 似ているこの2人は初恋の相手も同じ人。共にもう一人の幼馴染に心を奪われ、紆余曲折を経てその隣の席を得たのはブレンダの方だった。というよりも一人にしてしまったら危なっかしくて見ていられないというのが幼馴染2人から見たブレンダの印象。これで特異運命座標では頼れる女傑として名が知れているらしい。
「貴女が自分を蔑ろにするのは昔からだけどほどほどになさい?」
「む、わかってはいるさ。だがそれはそれとして困っている人は放っておけないだろう」
 根っからのお人好し。昔は少し危ういところもあったが基本的にブレンダという人物は誰かのために気軽に動いてしまうのだ。それでいて頭も悪くないから自分と周りの立場をうまく使う。自身がひねくれている自覚のある女からしてみれば一緒にいて気が楽になる一人でもある。
 そんな幼馴染だからこそ初恋の人を譲ったのだが。
「そう言って度々わたくしに後始末を頼むことがなければ手放しで褒められるのだけれど」
 それはそれとして意中の相手を盗られたのは悔しいのでこうして弄って楽しませてもらっている。これくらいのお茶目は許してほしい。
 昔からブレンダという女は過程はどうであれ最良に近い結果を掴み取るのが上手い。それは今の2人の関係からもわかること。
「そこは適材適所というやつだ。私が頭を使うよりもクリスが頭を使った方がずっといい。私の知る限り一番頭がいいのはクリスだからな。信頼しているのさ」
 こういうことを幼馴染たちは恥ずかしがらずにサラっという。どうせなら2人で言い合っていて欲しいのだがブレンダはシルト相手だとだめだめなので望み薄。そこはまぁクリスも同じ穴の狢なのだが……。
「そういうことにしておいてさしあげます」
 家の外に敵を作りがちなクリスにとってこうして気安く軽口を叩けるこの時間はとても有意義なものだった。ここで元気をもらえばまた仕事を頑張れる。
「あ、そうそう。貴女たち式はいつにするんですの? わたくしの予定もあるので早めに教えてくれると助かるのですが」
 そしてこのタイミングでクリスから投げつけられる超ド級の爆弾。運悪くお茶を口に含んだところだったブレンダは噴出さないようにするので精一杯だった。しかし紙一重で乙女の尊厳は守られた。
「だから特異運命座標の活動が落ち着いたらと何度も言っているだろう!」
「貴女のリアクションが毎回面白いのが悪いのです。おほほほほほ」
 この前は子どもはいつ? その前は指輪のデザインは? 等々結婚ネタでブレンダを弄るのがここ最近クリスのマイブーム。一度シルトにもやってみたがサラっと返されただけでなく、反撃を受けたので二度とやらないと心に誓った。
「もちろんクリスにも出てもらうのだから決まったらちゃんと連絡はする」
「ええ、待っておりますわ」


「さて、そろそろいい時間だな」
「ご一緒にディナーでも、と言いたいところですが馬に蹴られたくはないのでお開きとしましょう」
「……わかってて言ってるだろ」
「はて、なんのことやら」
 楽しい時間もこれで終わり。ここからはまたそれぞれの時間が始まる。
「ブレンダ、身体には気をつけなさい」
「ああ、クリスもな。また来るよ」

 親友へと別れを告げブレンダは次の待ち合わせへと歩を進める。

  • IFルート 夢幻泡影のアレクサンデル完了
  • NM名灰色幽霊
  • 種別SS
  • 納品日2022年04月01日
  • ・ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017
    ※ おまけSS『tips 夢幻泡影のアレクサンデル』付き

おまけSS『tips 夢幻泡影のアレクサンデル』

 もしも彼女がこの世界で生まれていたのなら疎外感からの孤独を感じることはなく、共に成長する友を得て健やかに育つだろう。

 これはありはしない日々、夢のような物語。

PAGETOPPAGEBOTTOM