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SS詳細

『ガイアードの疑問手』ポロニアス

登場人物一覧

散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
散々・未散の関係者
→ イラスト

名前:『ガイアードの疑問手』ポロニアス
種族:傲慢の魔種
一人称:鼠鳥(ねずみとり)
二人称:お前、君、其方、汝(放埓に使い分け)
年齢:不明(外見年齢は10代半ば~後半)
口調:~だ、~だね
特徴:斑紅化粧の灰色羽、紅梅も枯れる絹糸の髪、星絶えし銀河の王冠は死の海を呑み、蝶枝爛漫の緑衣棚引く

『悪意のスフマート』
 其の魔種が何時、どの様に発生したのかは解らない。出自は謎に包まれている。
 種族が魔種である事は間違いないが、元の種族は不明である。飛行種だったのかもしれないし、精霊種だった可能性もある。

 ある一点の時間から其の存在は混沌の歴史に刻まれていた。
 ――『ガイアードの疑問手』ポロニアスは哲学を持っている。非常に気紛れであり、芸術を愛し、遊戯を好み、傲慢に死を望む。
「鼠鳥に狂え。其れは美しい」
 傲慢な狂気は迷わない。強き芯を持っている者は美しく、人の心に狂気を呼ぶ。
 鼠鳥は謳う。

 天と地のあいだに虚無がある。
 大地に人を閉じ込める其れは傲慢なる世界のルール。
 人よ、手を翳せ。そらを見よ。
 天に飛翔する我を想え。
 地上が遠くなる目に箱庭の世界が映るだろう。
 聲持つ者は想いを吐け。
 其は魂の響きである。偽る事無く己を晒し、響かせよ。
 腕が動く者は心臓を掲げよ。脈打つ血潮が黒く変じて冷える儚さは芸術である。
 筆執る者は描くがよい。天の視座に巧拙は無い。余白なく塗り潰し重ねた厚みこそ永遠なれ。

「人は人を感ずる。肉体の枷は精神を向上させる。ならば友よ、鼠鳥に狂い、世の関節が外れる季節に喝采せん」
 ポロニアスは箱庭の戦場を遊戯盤と見做し、自陣をガイアードと呼ぶ。其の理由は解らない。ポロニアスも、語るつもりはないようだ。
 ――邂逅は偶然の現象によく似ている。
 ――ポロニアスは哲学を持っている。非常に傲慢であり、他者の理解を欲さない。

散々・未散との関係:
 雨の日、空と大地のあわいで2人はすれ違った。
 未散が感じたのは、湿った土の匂いとムスクミモザの香り。鼠鳥は未散に微笑んで、綺麗だねと言って傘を差し出した。
 紫陽花が咲く模様の清楚な傘だった。
 遠くでは、黒い炎が燃えていた。火災に人々がどよめいて、慌ただしく駆け回る中、2人は分かれた。
 短い邂逅だった。
 未散は名も知らぬその人の事を覚えていてもよいし、忘れていてもよい。
 ポロニアスが未散の事をその後覚えているかどうかは、不明である。

  • 『ガイアードの疑問手』ポロニアス完了
  • GM名透明空気
  • 種別設定委託
  • 納品日2022年03月15日
  • ・散々・未散(p3p008200
    散々・未散の関係者
    ※ おまけSS『紫陽花露命、黒風白雨楽師となりて傲慢狂気を導かん』付き

おまけSS『紫陽花露命、黒風白雨楽師となりて傲慢狂気を導かん』

 雨粒のように去る。
 其れは流れて留まらない。柔らかく形を変えて、放埓に消えて染みていく。
 音のない砂絵は手のひらに優しい。
 その在り様にふれれば愛しさを覚えれど、畢竟一瞬の感傷でしかない。

 狂気は優しさである。
 正気の世界は辛かろう、痛かろう。――寂しかろう。

 人の子は露命等しく、珈琲色に朝を待つ闇の底は白い。
 腐った苹果のように脈打つ血が流れたならば、黒風白雨楽師となりて狂気を謳わん。

「雨、止まないかな」
 呟く画生が髪を拭い、アトリエに戻ってぎくりとした。見知らぬ人物が其処にいたのだ。
「あ――」
 自分の絵をじっと見ている。
 視ている。
 その眼差しは、靜かだった。
「こんにちは。えと、はじめまして。貴方は――貴女は?」
 彼は、その人が男性なのか女性なのかわからなかった。けれど、美しい人だと思った。

 その瞳が彼を振り返ると、どきりと心臓が鼓動を打った。
 感性が優れた人に違いない。そんな気配が感じられた。不思議な事に、胸が、全身が、そう思ったのだ。
「素敵な絵だね」
 その人の聲が絵を褒めた。
 素敵だと言ってくれた。
「あ、あ、ありがと――ありがとう、ございます」
「1+1は?」
 ふと、脈絡のない問いが投げられた。

「え? 2。じゃ、ないかな?」
 その人は、ふわっと微笑した。とても愛らしく、とても温かく、けれどなんだか遠い世界の人みたいで、切なくなった。
「そう。2だね」
 楽しそうに笑ってくれたから、彼は嬉しくなった。ああ、この人と親しくなりたい。
「なぜ、そんなわかり切ったことをきくんです」
 そっと問いかける。じゃれるみたいに。遊ぶように。
 胸に楚々とした仕草で手が置かれて、ドキドキした。好い香りがする――この見慣れた空間がいつもの数倍、特別で素敵な場所に思えた。ぽたり、ほたり、雨音さえも彼の喜びを祝うよう。

「どうしてかな」
 その人はふ、と息を吐いた。何かに落胆したようで、けれどそれも仕方ないよねと優しく諦念を抱きしめて、傲慢に突き放すような瞳が――生まれて初めて視る絶景みたいで、飛び上がりそうなほど気持ちよかった。

 ――The time is out of joint愛しく狂え.

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