PandoraPartyProject

SS詳細

洞見せし

登場人物一覧

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
チック・シュテルの関係者
→ イラスト

名前:エヴァルト・フリッツ
種族:スカイウェザー
性別:男性
外見年齢:30代後半
一人称:俺
二人称:呼び捨て、お前/(敵相手)貴様
口調:~だ、~だな、~だろう?
特徴:呂色の髪、銀色の瞳、厳格、正義感が強い、仲間思い
武器:紅玉が嵌め込まれた"剣"を、魔術の媒介としていた
設定:
 エヴァルトは飛行種のみで構成された『渡り鳥』――そして『ある事件』後に三つに別れた派閥のひとつ《否定派》の指導者でオオワシの男性である。現在の《否定派》はフィン・シルヴェスタが指導者に就いており、彼自身は鬼籍に入っている。
 事件前は、彼の友人であり一族の長でもあったルイス゠フェドーの補佐役を務めており、自他共に厳しい性格だが身内や仲間には甘く気配り上手であった彼は、仲間からの信頼も厚かった。魔術の腕は勿論の事ながら、剣技の実力にも長けており、よく慕われていた。
 事件後に《否定派》を作ったのも、理不尽に死に追いやられた仲間達の無念を思ってのことだった。
 正しき道では無いと知りながら、仲間達のために――。

 エヴァルトに番は居ない。自身に必要ないと感じていた為、実子も遺していない。
 しかし彼はある時から、両親を失ったツグミの少女・シュティーナの世話役を担っていた。そのため、彼女がそう思ってくれているのなら、彼の家族と呼べる存在は唯一彼女と言っても良いだろう。
 シュティーナには沢山の事を教えた。親の居ない彼女が一人ででも生きていけるようにと生きてゆく術を伝授し、その過程で見出した弓使いの才能も伸ばせるようにと助言を重ねた。自分のような男は師にはなれても親にはなれないだろうと思い、只管に模範となるべく行動で示してきた――つもりだ。
 所有するギフト名は『天際の大鷲』。滑空を得意とする翼は、羽撃かずとも滞空時間が他の飛行種よりも僅かに長い。そのギフトは羽根ひとつひとつに宿っており、彼の身から離れた後も効果は持続する。

 派閥が分かたれた時はシュティーナにも誘いを掛けたが、彼女は断り、エヴァルトも彼女の意を尊重し、それを受け入れた。
「例え歩む道が違おうとも……お前の行くべき未来が良きものであるよう、願っている」
 小さなツグミが大空へ羽撃くのを見守っていくつもりであった。
 ――しかしエヴァルトは、その道分かれからそう長く経たない内に、何者かの謀略によって殺されてしまう。
 以降、彼の愛剣は見つかっていない。

おまけSS『遺羽』

 はらはら、はら。
 抜け落ちたソレが、宙を舞う。
 はら、はら、と落ちてくるそれが通常のソレ等よりもゆっくりと落ちてくるのは、男が有しているギフトのせいだ。
 まるで雪のようだと、見ている者がいれば思ったかも知れない。――色が白かったなら。
 黒い色のソレは、地に伏した男の羽根だった。
 羽根を散らし、重たい音を立てて地に倒れた男の指先が微かに震えているが、それもきっとすぐに動かなくなるだろう。誰が見ても、男が助からないと解る有様だった。だくだくと流れ続ける命は地面を黒く濡らし、無慈悲にも熱を奪っていく。
「――――」
 血に塗れた唇は、僅かに開いていた。けれどやはり、それも動かない。
 呼びたい名前があったのかもしれない。命を繋ぐために空気を迎え入れたかったのかも知れない。けれどどちらも叶わないのは、その器官が最後に果たした役目がせり上がってきた血を吐くことだったからだ。
 開かれた瞳。視界は赤に染まっている。しかしそれも、男には何の意味もない。その色さえ既に認識できていないのだ。
 色も形も失われた世界で、男の脳は最期にひとつだけ像を結んだ。
 ぎこちなくも笑みを浮かべる、養い子の姿だ。

 ああ、シュティーナ。
 どうか。どうかお前だけは   ――……。

 はらはら、はら。
 雪のように黒い羽根が降り注ぎ、何もかも覆い隠す。
 男の人生、男の夢、歩みたかった道――全て、全て。
 銀色の瞳からは光が失われ――そうして全てが、黒に染まった。

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