PandoraPartyProject

SS詳細

メーテル・リンク。或いは、鳥籠に見る夢…。

登場人物一覧

ジゼル・ベグラーベン(p3p010507)
特異運命座標
ジゼル・ベグラーベンの関係者
→ イラスト

名前:メーテル・リンク
種族:飛行種
性別:女性
年齢:年齢不明(当人が覚えていないため)
※外見年齢は10代前半
一人称:わたし
二人称:あなた
口調:~ね、~よ、なのね、なのよね?
特徴:青い髪に碧い翼、華奢な身体と育ちの良さを感じさせる立ち居振る舞いが特徴的な少女。実年齢は定かでは無いが、外見年齢は10代前半のまま固定されている。甘党。
設定:
彼女の生家は裕福だった。
彼女の両親は1人娘であるメーテルを愛し、甘やかして育てた。その結果として、彼女は我儘で甘えたがり、そして親離れの出来ない寂しがり屋に育ってしまった。
けれど、いずれ子は親の手元を離れるものだ。

一夜にして彼女の人生は大きく変わる。
旅行に出かけた先で、彼女は魔種の襲撃にあった。
両親は死に、彼女は奴隷に落とされた。
彼女を買ったのは、幻想の辺境に住む老いた貴族だった。貴族の屋敷には、メーテルと同年代の少女たちが大勢暮らしていた。
皆、人形のように容姿端麗な成人前の少女たちだ。薄く化粧を施され、綺麗な服を着せられて、首輪を付けられて過ごす毎日。衣食住の不自由は無かったが、飼い主の許可が無ければ言葉を発することも、笑うことも許されない日々。
そんな毎日に耐え切れず、2年も経たないうちに彼女は逃げ出した。
しかし、そんな彼女の行動を飼い主が許すはずは無い。躾と称して、彼女には追手が差し向けられた。。
逃走の果て、飢えと疲労で限界に達した彼女は追手に捕まって、屋敷に連れ戻されることになる。
ジゼル・ベグラーベン(p3p010507)と逢ったのはその時だ。
「助けて」と絞り出した一言に、ジゼルは「私の傍にいて、愛してくれる?」と問うた。訳も分からないままに、メーテルは頷き、是と返す。ジゼルは背筋が震えるほどに綺麗な笑みを浮かべ、そして追手の胸を剣で貫いた。

ジゼルから与えられる無償の愛にほだされて、いつしかメーテル自身もジゼルを愛するようになっていた。ジゼルと共に過ごすうちに、自分の成長が止まっていることに気が付いたが、もはやそんなことはどうでもいい。
ジゼルと一緒にいられれば、それで十分に幸せなのだ。
ただ1つ、気がかりなことがあるとすれば自分が死んだ後のことだけ。ジゼルが言った「勿論後を追うわ。愛する貴方の居ない世界に価値は無いもの」という言葉だけが、喉に刺さった魚の小骨のように、ずっと胸の奥に刺さって抜けない。

  • メーテル・リンク。或いは、鳥籠に見る夢…。完了
  • GM名病み月
  • 種別設定委託
  • 納品日2022年03月13日
  • ・ジゼル・ベグラーベン(p3p010507
    ジゼル・ベグラーベンの関係者
    ※ おまけSS『幸せの青い鳥。或いは、愛は鳥籠のように…。』付き

おまけSS『幸せの青い鳥。或いは、愛は鳥籠のように…。』

 柔らかな風が頬を撫でる。
 夜の明ける頃、小鳥の鳴き声に導かれメーテル・リンクは目を覚ます。
 窓の外には青い鳥。
 甘えるようにメーテルの方へ視線を向けて、黄色い嘴で窓ガラスを突く。
 愛らしさに頬が緩み……メーテルの口元は引き攣った。許可が無ければ笑うことさえ許されなかった過去の枷は、今も彼女の行動を縛る。
「いいのよ。笑って? 愛らしい笑顔を見せてちょうだい」
 音も無く、背後に身を寄せた誰かの腕が首と腹に回される。メーテルよりも随分と背の高いその女性の名はジゼル・ベグラーベン(p3p010507)。メーテルの恩人であり、最愛の人である。
 目覚めてすぐにジゼルの声が聞けたことに嬉しさを感じる。
 回された腕に指を這わせ、その白い指先にそっと薄い唇を寄せた。
 毎日のように繰り返されるルーチンワーク。おはようの挨拶より先に、ほんの少しだけ恋人同士の戯れに耽る。
 顔を寄せるようにして、無言のままに2人は窓の外へと視線を向けていた。
 東の空が白い。
 もうじき、夜が明けて朝になる。
 雲ひとつない青い空は、メーテルの髪と翼の色によく似ていた。
「朝早くなら、人の通りも少ないわ。もし嫌で無いのなら少し散歩に出かけてみない?」
 そんなジゼルの問いかけに、メーテルは僅かに思案する。
 貴族の遣わせた追手に追い回される日々。行く先々でメーテルを助けてくれた人たちが大勢死んだ。メーテルの心を折るために、貴族の追手が片っ端から殺してまわったのである。その度に追手は「お前のせいで人が死んだぞ」とメーテルをなじった。
 そんな過去の苦い思い出が脳裏に蘇る。
 親切だった彼らの最後の瞬間は、鮮明な記憶として未だ脳裏から離れない。
 ジゼルと共に暮らすようになって暫くが経つが、未だに1人で外出することは出来ないでいる。怖いのだ。いつかの追手が再び自分の目の前に現れるのではないか、と。
 もちろん、そのようなことは無い。
 かつての飼い主だった貴族は、既に命を落としたと聞いた。
 あの時、一緒に囚われていた少女たちは無事だろうか? なんて、時々そんな心配をすることもある。彼女たちは、笑えるようになっただろうか。
「怖いのね。心の傷は、そう簡単に癒えないものね。いいのよ、ゆっくり、貴女のペースで傷を癒していけばいい」
 それまでずっと、私が付いていてあげる。
 そう言ってジゼルは微笑んだ。
 それだけで、心の奥の澱んだ記憶が少し薄くなった気がした。
 メーテルが1人で外に出たのは、それから暫く後のことだ。
 朝、目が覚めて、窓の外に青い小鳥が止まっていたから。
 ジゼルの優しい声を聞けたから。
 ジゼルが甘い紅茶を淹れてくれたから。
 そして、空が青かったから。
 広い空の下、メーテルは自由だ。
 心だけは、ジゼルという名の愛の檻に囚われているけれど、それが何より幸福だ。
 だから自分は1人で立てるし、外にも出られる。
 自分が1人でないことをメーテルは知っているのだから。

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