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幸せの一欠片
幸せの一欠片
登場人物一覧
「もう、姉さんったら。また、髪の毛ボサボサじゃない!」
「あー……」
寝起きの頭に響くレイチェルの声に、ヨハンナは眉を寄せて口を小さく開けた。
朝が弱いヨハンナは本当に起床時間ギリギリになってから起きてくる。
それを見かねた妹のレイチェルは、いつものように朝ご飯のパンを囓る姉の長い髪をブラシで解かすのだ。
医者になると実家を出てからというもの、日に日に見窄らしくなっていくヨハンナをレイチェルは放って置けなかった。
こうして週に何度も部屋を訪れては甲斐甲斐しく世話を焼く日々。
「姉さん、もう一緒に住んだ方が良いんじゃない? 私、姉さんの事が心配過ぎるわ」
「それも有りかもなぁ」
もそもそとパンを咀嚼するヨハンナへと食い気味にレイチェルが顔を覗き込む。
「そうよ、そうしましょ! あ、姉さんもう時間じゃないの?」
「あ、やべぇ」
ミルクでパンを流し込んだヨハンナは、妹にハンカチを口元へ押しつけられ眉を下げた。
「お、おい。流石に口ぐらい拭ける」
「そう言って姉さん、この前ジャム付けて出て行ったの知ってるんだから」
ぐいぐいと口を擦るレイチェルは「よし!」と満足そうに笑みを零す。
「じゃあ、行って来る」
「はい。いってらっしゃい。気をつけてねヨハンナ」
「ありがとうレイチェル」
家を出た途端、しっかりと歩いて行くヨハンナの背をレイチェルは見えなくなるまでずっと見守っていた。