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コスモスの花束を君に
登場人物一覧
夏の日差しが照りつけるその日。
俺――カーティス・アーモンドはチック・シュテルに引き取られた。
チックは俺と見た目が変わらないような子供だったけれど、俺達を引き取りたいと申し出てくれた。
俺達というのは、俺ともう一人。コルト・シェーラも会わせてだ。
アドラステイアで洗脳されていた俺達はチック達イレギュラーズに助け出された。
ここへ来て二ヶ月ほどは、新しい生活に慣れるのに精一杯で嫌な態度を取ったと思う。
それなのに、チックは嫌な顔せずに俺達を抱きしめてくれた。
同じ子供に見えるのに、きっとチックの方が大人で。
俺達よりも何倍も苦労してるからこそ、優しくしてくれるのだと悟った。
そこからは、反省してチックの言う事を聞くようになったし。コルトとも仲良くなった。
「ねぇ、カーティス。この先にコスモス畑があるみたいなんだ。一緒に行ってみない?」
「コスモス? どうしてまた」
二段ベッドの下を覗き込めば、コルトが普段出ささない耳をぴこりと生やしている。
俺はそれが気になって一段目に降りて、コルトの隣に潜り込んだ。
ぴくぴくと動くコルトの耳が気になってそっと触ってみる。
「わ!? 何?」
「いや、耳出してるの珍しいなって思っただけ」
「カーティスなら怒らないかなって」
「……怒らないよ。大丈夫。それでコスモス畑に何しにいくんだい?」
恥ずかしそうに頬を染めるコルトが「あのね」と内緒話するように近づいて来るのを顔を寄せて待った。
「チック君に、コスモスの花束あげたら喜ぶかなって」
「あ……もうすぐチックの誕生日か」
「そう! ね、喜ぶよね」
きっとチックなら喜んでくれるに違いないと、二人は手を握り額を付けてくすくすと笑い合った。
――後日、チックの満面の笑みが見られたのは言うまでも無いだろう。