雪降って

登場人物一覧

　聖夜に降っていた雨は雪に変わって。
　軒下から出て来た遮那とルル家はお互いの顔を見つめ笑い合う。
　されど、メイクが落ちた少女の顔は誰かが見れば振り返ってしまうような形相になっていた。
　遮那はどうしたものかと迷ったあと、正直に言葉を伝える。
「ルル家……そのだな。顔がやはり凄い感じになっておる」
「本当ですか！　やっぱり……うぅ……」
　先程使った布はもう汚れてしまっている。これをまた使えば落ちたメイクが広がる一方だ。

「そうだ。ルル家よ、空の散歩に行かぬか。雨も止んだし雪の中を飛んでみるのも一興よ」
　そういうと遮那はルル家を持ち上げ肩に乗せた。――肩車だ。
「なんで肩車なんですか？　こういう時ってお姫様抱っことかじゃないんですか！？」
「いや、だって其方顔が見られるの嫌かと思って」
「それは、そうなんですけど！」
　気遣いの方向性が斜め上で乙女心が複雑でどうしようもないとルル家は遮那の頭の上で頬を膨らませる。
「では今度晴れた日に空の散歩でも行くか」
「そうですね。楽しみです」
　まだやつれた顔を曝け出すのは恥ずかしいけれど。
　何処かへ出かけるのは楽しみだとルル家は笑みを零した。

「――あの、遮那くん、雪がビシバシ当たるんですけど。これ」
「まあ、そうだの。もう少しで屋敷だ。我慢するのだ」