PandoraPartyProject

SS詳細

『満たすこと』で、満たされるひと

登場人物一覧

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
チック・シュテルの関係者
→ イラスト

名前:サラ・ブラン

種族:カオスシード

性別:女性

年齢:24

一人称:私

二人称:~さん/(年下相手)~くん、~ちゃん/(夫のみ)呼び捨て

口調:~ね、~よ、~なの、~かしら?

特徴:編み込まれた髪、薄紫の瞳、大らか、温厚、お人好し

設定:
 チックが良く通うパン屋『アルメリア』を夫と共に経営する女性。未だ子供は居ない。
 人当たりはよく、寛容な性格。偶に天然じみた言動を零すこともあるが、それも含めた彼女ら夫婦の魅力に惹かれる者は多い。
 また、彼女はパン作りのほかに焼き菓子も作っており、時折店に並べられるクッキーは子供、大人を問わぬ人気を博している。

『アルメリア』は幻想を拠点とするパン屋ではあるが、夫妻の方針によって年に数度、遠方の恵まれない人々などを主に出張販売……と言う名の配給活動なども行っている。
 それもあって、彼女と夫であるリック・ブランの名を知る者は(本人たちの自覚こそないが)この無辜なる混沌に於いて少なくない。嘘か真か、とある貴族は二人を自らの「お抱え」にしようとしたという話もある。
 尤もそれを受けていたとしても、サラ達はそれを辞退したことだろう。彼女と夫が望むのは、「誰か一人の笑顔」ではなく「大勢の笑顔」であるのだから。

 幼少期を貧しい孤児院で暮らしてきたサラにとって、「誰かのお腹と心を満たす」のは一つの命題でもあった。
 先述の配給活動を行うのもその一環であり、さらに彼女は近所の子供たちを主とした安価なお菓子の作り方も教授している。
 元々はチックからの頼みを受けて始めたこの『お菓子教室』は、今や幻想の人々にとって一つのトレンドとしても扱われている。
 ――「自分が誰かを満たすこと」だけでなく、「相手自身が満たされる術を教えること」。
 それに気づかせてくれたチックに対するサラの感謝は一入で、今でも時々彼の買い物にちょっとしたおまけを付けてくれている。

 昨今、彼女たち夫婦は、行き倒れていた一人の男性を保護した。
 後に自らをカノンと名乗る記憶喪失の青年を二人は温かく迎え入れ、以後住み込みで働いてもらうこととなる。
 ……年齢的には自らと大差ないながら、些細な常識におぼろげで、時折何かに縋ろうと心細そうにしている青年は、サラにとって幼子のように映っていて。
 いつか、それを現実にするために。サラと夫は、彼を養子に迎えようかと日々相談を重ねている。
 

おまけSS

 サラの料理の腕前は本来、「然るべき環境」と「十全な素材」が在った場合、王室の宮廷料理人をも凌駕するレベルである。
 これはギフト等にすら因らず、「料理を食べる相手が望んでいる情報(この場合は五感を指す)」を的確に把握する天性の勘と、同時にそれを正確に届けられる並外れた腕前を備えているためだ。
 が。前者は兎も角、後者が現在に至るまで発揮されたことは一度も無く(強いて言うならば上述のクッキーがそれにあたるが)、それゆえにその隠れた力量を知る者もまた存在しない。
 それもまた当然と言えば当然。「街角のパン屋さんのキッチン」で「出来る限りコストを抑えた食材」を主として扱う彼女には、その料理の手腕を完全に発揮することは難しいためだ。
 ……尤も。本人すら無自覚なその才能が発揮されないことは、今の生活に充実している彼女にとっては寧ろ幸せなことなのかもしれない。

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