PandoraPartyProject

SS詳細

Lost File No.1

登場人物一覧

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

●Case1『ピエタース中央図書院』
 中庭のブランコ、芝生の上で笑う子供たち、ガラス張りの温室。
 緑豊かな公園といった景観のなかに、白く大きな建物が見える。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」
 階段で小さな子供たちと戯れていた老齢のシスターがおっとりと顔をあげる。
 ワンダース孤児院……今はピエタース中央図書院と名を変えた場所は、太陽に満ち溢れていた。
 その光景を見て、イーハトーヴはにっこりと笑う。話には聞いていたが実際に目にするのは初めての場所だ。
「失礼、シスター。中を見ても構わないだろうか」
 ノルデが自然と進み出た。
「はいはい、今日は開館日ですからね。構いませんよ。中でも子供たちが遊んでいると思うのだけれど気にしないでね」
 そこでシスターはちょっと困ったように三人を見上げた。
「お兄さんたち、子供は大丈夫かしら」
「大丈夫だよ!」と元気よくイーハトーヴは答えた。
「ぼ、僕も大丈夫だと思う……」とネネムは付け加えると、チラリとノルデを見た。
「大丈夫だ。お気遣いに感謝を、シスター」
「いいえ。ゆっくり楽しんでいって下さいね。ふふ、見目の良い方々がいらっしゃると寿命が延びるわねぇ」
「みめ……」
「よい……」
 揃ってノルデを凝視したイーハトーヴとネネムに、ノルデは長い長い溜息をついた。
「お前らも含めてだ」
「えっ」
「そうなの?」
「二人とも礼言っとけ、礼」
「「ありがとう、シスター!!」」
「あらまぁ」
 シスターはやっぱり、おっとりと笑っていた。

 中に入って真っ先に歓声をあげたのはイーハトーヴだった。
 爽やかな木の匂いのする空間。明るいキャラメル色の本棚に、大きな天窓。
 桜色のカーペットの上にはカラフルな積み木が転がっている。
 おもちゃ箱みたいな、子供の図書館。
 それがピエタース中央図書院の第一印象であった。
「此処は貴族のタウンハウスを移築したと聞いている」
「タウンハウス?」
「えっと、マンションやアパートみたいな集合団地のことだよ。貴族の屋敷だから豪華さが桁違いだね」
「チビどもが暮らすなら部屋数はあった方が良いだろうからな。寄付した奴が誰だか知らないが」
 ノルデが案内をし、ネネムが用語を補足する。イーハトーヴとオフィーリアはふむふむと二人の解説を聞きながら、玄関ホールにかけられた寄贈者の名を見た。
 ――邸宅寄贈 ラ・メール・ロワ。
「ん?」
 これって確かローバーお姉さんのペンネームだったよねとイーハトーヴは足を止める。
「どうした」
「んふふ、なんでもないよー」
「鼻歌混じりで何でも無いってことはないだろう」
「此処、もしかしたら俺の知ってる人の家かもしれなくてさ」
「へぇ、そうなんだ」
「うん、綺麗なアサリのおねーさんだよ」
「……え?」
「ああ、ありえる。というか、十中八九そうだろうな」
 ネネムとノルデは正反対のリアクションをとり、その違いを楽しむようにイーハトーヴは後ろ手に組んだ。
「今日、会えたら良いなぁ」
「言っておくが、蒐集家に自分から会いたいとか言いだす奇特な奴はお前くらいだからな。イーハトーヴ」
 ――ねぇ、ノルデ。
「なんだ? オフィーリア」
 ――原画コーナーをとっくに通り過ぎてしまったのだけど?
「……」
 ノルデは綺麗にUターンした。
「原画コーナーに何があるの?」
「着けば分かる」
「ねえ、イーハトーヴ。オフィーリア。何があるの?」
「ふふ、ちょっと照れくさいから俺も内緒」
 ――ネネムのリアクションが楽しみだから私も内緒にするわ。
「えぇ~?」
 不服そうにネネムは頬を膨らませる。彼の悲鳴が聞こえるまで、あと三十秒。


「いんちょーせんせー」
「はいはい、何かしら?」
 小さな子供たちの声にむかって、シスターはおっとりと振り返る。
「さっき、帰った背の高いおにーちゃんたちがね、これ、いんちょーせんせーにって」
「あらあら」
 紙封筒を受け取ったシスターは中身を取り出して更に驚いた。
「それ、なーに?」
「これは『ひかりのまち』よ。でも、ほら」
「ぴえたーす、ちゅうおうとしょいんだぁ!!」 
「みんなのおうちだね」
「じゃあ、あのお兄ちゃんたちの誰かが、イーハトーヴせんせーだったの?」
 そうみたいねぇとシスターはうさぎのぬいぐるみを抱えた青年のことを思い出す。
「本当に寿命が延びちゃったみたい」

  • Lost File No.1完了
  • NM名駒米
  • 種別SS
  • 納品日2022年02月13日
  • ・イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934
    ※ おまけSS『Lost File No.2』付き

おまけSS『Lost File No.2』

ノルデ・アーケイディアンについて

出身:《蒼の車輪》コバルトレクト中央街
精神年齢:21
属性:狡知、兄貴肌、純粋、紳士
隠し属性:哲学、自己犠牲、太陽と黒い棘
守護神:三女神ネヴァン(強制)
イメージ国:シチリア/ギリシア/スコットランド
イメージ動物:白狼
好きな物:チェス、質の高い衣服、美食、葉巻(禁煙中)
苦手な物:ネネムの泣き言、イーハトーヴの頼み、怒ったオフィーリア、甘い物


ノルデは『家族』を大切にしている。
一度懐に入れた相手にはとことん尽くすタイプ。
ただし『家族』と認めた者以外には容赦がない。
イーハトーヴとは違い慈悲や躊躇いが無いため、暴力に訴えることがある。
ネネムとは違って恐怖心を御すため、自ら傷つくことを恐れないことがある。
ただし現在の肉体はイーハトーヴの物のため、無茶をすることは少なくなった。


ノルデは『子供や女性』に敬意を払う。
それが精神的なものであろうが変わらない。

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