SS詳細
『遂げた者』。それが、他者にどう映ろうとも
登場人物一覧
名前:
『摩加瀬・響(まかぜ・ひびき)』。友人を虐めから庇い、自身もまたその対象とされて以降、苗字を呼ばれたことは殆ど無い。
それでも彼女が「社会の一員」である苗字を自ら捨てずにいたのは――その友人と共に、何れ健全な社会に戻ることを願っていた為。
一人称:
「私」。誰に対しても変わらないこの呼び方は、自他の距離を測る最初の目安として。
二人称:
「アンタ」。これも理由は同上。これを嫌がる相手にも、彼女は呼び方を変えたりはしない。
口調:
「ね、よ、なのね、なのよね?」と言った、若干蓮っ葉な口調の中に女性らしさを感じさせる口調。
話す相手次第ではフランクな人間とも、乱暴な人間ともとれる。彼女はこの口調を気に入っていた。
特徴:
相手に対して取る態度を変えない。気に入った相手とはすぐに打ち解けるし、そうでない相手とは敵対する。
傍から聞くとただ「我が道を往く」系統と思われがちだが、正確には異なる。彼女のセカイには敵か、味方かしか存在しないのだ。
それ故、彼女はその後半生を多くの同級生たちに蔑まれる結果となったが――これは偶然その理由が理不尽であっただけで、例えどのような過程を踏んでも、彼女はこうした生涯を送る可能性は在り得たのだ。
……尤も、それと同じくらい「たくさんの人に慕われる未来」も在り得たわけだが、今更それを語る必要も無いだろう。
設定:
年齢十代の女性。人間種。希望ヶ浜高校中等部の生徒であったが、死亡する一か月前ほどから不登校であった。
嘗ては多く居た友人たちを振り切り、たった一人の少女を理不尽の象徴から庇ったがために、その最期までを暗澹たるものとしてしまうこととなる。
が、彼女はそれに対して後悔など微塵もなかった。
他者を見る視点こそ両極端な彼女であるが、その思想の根幹は紛れもなく善性であった。一緒に笑ってくれる人が好きで、泣いている人を助けたいと思い、また泣かせるような人間には……酷い嫌悪感を覚える、ただの一般的な目線。
それに対して自分が出来ることには全力を尽くすし、それを苦とも思わない。その志半ばで自身が倒れたとしても、彼女はきっと「やりたいこと(やるべきこと、じゃなく)はやったよ」と笑って言っただろう。
――――――嗚呼、だから、つまり。
彼女はその生ある内に、自らの思いを叫びきった。
だからこそ、彼女に良かれ悪しかれ想いを抱く必要は、きっと、もう存在しないのだ。
おまけSS
……いつか。
『渡り鳥』が夜見た夢に、彼女は一度だけ、姿を現したことがある。
姿の見えない誰かと手を繋ぎながら、彼女はこう独白した。
「……私は、『自分がやりたいこと』をやって、沢山の人間に蔑まれた」
同級生たちには疎まれ、友人たちは自分を嘲笑う側に移り。
たった一人の親友を除けば、自分は悲惨な孤独に見舞われたのだろう、と。
「けど、私はそれを悔いてはいない。私が選んだ道だもの」
彼女は笑い、そうして夢から覚める最後に、『渡り鳥』へ問うたのだ。
「私は生きている間に、私たちの思いをアンタたちに吐き出しきった。
アンタは、それにただ打ちひしがれて終わり? それとも――――――」
それとも。
お前はその想いを受け止め、或いは振り切り、前へ進むだけの『強さ』を掴めるのか、と。