SS詳細
捕食と被食のガールズナイト
登場人物一覧
●Welcome to the Luxuly Hour.
ネオ・フロンティア海洋王国、首都リッツパークから船に乗り三十分。
スラトゥス島は都会というには小さく、田舎と云うには些か不便が無さすぎる島だ。
古代の名残りとされる神殿遺跡を擁してはいるものの、調査され開拓されつくした遺跡は安全で、簡単に浪漫を味わえる観光地と化している。
そもそも目と鼻の先にリッツパークという大都市があるというのに、船に乗ってまでスラトゥス島に訪れる理由は何か。
それはスラトゥス島がセレブ向けのリゾート地である事に関係する。
地下に陥没した遺跡を見下ろす立地に建設されたヴィラ・スラトゥスは、質の高いサービスと料理、そして景観が人気のヴィラである。
自然の熱帯林をそのまま生かした開放的な施設にはリラクゼーションサロン、温泉、劇場、レストラン、バーといった施設から、ちょっとしたブランドショップまで軒を連ねている。シャイネンナハトの名残なのか、それとも冬の風物詩であるのか。蛍に似た小さなライトが熱帯の植物のあちこちに巻き付いていた。
そこはかとなく視線を巡らせれば、景色に溶け込むように配置された警備員の姿。客層が客層だけに万全の態勢が敷かれているのであろう。
とは言え。
「マルベートさん、チョコレート専門店があるよ!! お花のチョコレート!!」
外見的な特徴だけを見れば大人、といった印象を受ける少女が無邪気に飛び跳ねた。特徴的な虎の四肢とさらさらと長い髪が天井から射しこんだ太陽の光を反射して金色に輝く。三つ編みのハーフアップを結んだ赤のリボンがひらりと舞った。
「この花は本物のようだね。砂糖に漬けてあるのかな? 保存食として興味深い」
硝子扉に金字の筆記で刻まれた店の名は、老舗で有名なチョコレート専門店だ。
丸く愛らしい箱の色合いはチョコレートブラウンの落ち着いた店内から少し浮いているが、グラオクローネが近いからだろう。襟元を赤いリボンタイで飾った知的な雰囲気の少女はショーウィンドウを覗きこむ。耳元の黒髪を自然と耳にかけなおす仕草は上品で、老舗に相応しい貫禄を備えていた。
「スパイスをこれだけ入れてるってことは、薬としての効果も期待してるんだね」
オレンジの髪をポニーテールにし、赤いリボンを巻いた少女は一生懸命チョコレートの下に書かれた原材料を読んでいる。蟻ほどの大きさの文字を追いかける視線は医師か薬師のようであったが、顔を上げると年頃の少女らしく頬を染めっておっとりと笑った。
警備員いくら強かろうが、束になろうが。このショッピングバッグを両手に抱えた三人の少女たちの腕一本分の戦力にも満たない。
「入ってみようか。セリカの気になるチョコレートも買えばいい」
カランと音を立ててドアを開け、黒髪の少女は紳士的にエスコートする。
「今日もマルベートさんが恰好良い」
「今日もお姉さまがかっこよくて幸せだなぁ」
オレンジと金はへにゃりと緩んだ笑顔を見せた。
「二人とも、どうしたのかな」
「えへへ」
「今いくね」
三人とも同じアクセサリーを身に着けて買い物を楽しむ姿は、周囲からは仲良し姉妹や友達として映ることだろう。
実際、それに近い。ソア、マルベート・トゥールーズ、セリカ=O=ブランフォールの三人は共にシュペルの塔を登った仲であり、それ以降も交友を深めている。
今回の海洋への慰安旅行はマルベートが企画したものだった。
ちょっとした旅行と聞いていたセリカはあまりの豪華さに目を丸くしたり顔を青くしたりと忙しなかったが、純粋に楽しむソアの姿を見て今は吹っ切れたようだ。
こっちが可愛い、あっちは綺麗とチョコレートを選んではしゃぐ二人の背中を見ながらマルベートは頷く。
今日も二人が、可愛い。
「すまないけど、君。今買ったチョコレートと一緒に、私達の荷物をヴィラに運んでおいてくれないかな」
「少々お待ち下さい……マルベート様ですね。かしこまりました、お荷物をお預かりします」
「今から夕食を食べに行くんだ。この近くに着替えができる場所はあるかな」
「すぐに手配いたします。お食事後のエステマッサージが女性のお客様にご好評頂いておりますが、如何なさいますか」
「あぁ、それはいらないよ」
マルベートは優等生の顔を少しだけ脱いだ。
「自分たちで出来るから」
「……かしこまりました」
賢く良いサービスマンの特徴は黙さず語らず聞かないこと。
その点でこのチョコレート店の店員はギリギリ及第点と言えた。その目に好奇が過らなければもっと良かったのだが。
お料理は美味しいし、お喋りは楽しい。
けれどもドレスコードのある店に、セリカは馴染みが薄い。
綺麗なドレスも好むが、旅をする以上は動きやすい軽装に重きを置いてしまうし、服を選ぶ時はどうしたって機能性を重要視してしまう。
マルベートはシックなタキシードに身を包んでいる。シャイネンナハトの時も素敵だったなとセリカはそっと頬を押さえた。
ソアはエレガントな夕焼け色のドレスを着こなしている。豊満な肉体は他の客の視線を釘付けにしているが当の本人は出てくる料理にころころと表情を変えている。
白いレース地のドレスはお気に入りだが、汚してしまわないだろうか。
セリカはドキドキしながら食事をすすめる。
一人で旅をしている時とは違って危険の無い場所での食事だが、ここもある意味緊張せざるを得ない雰囲気なのだ。
ちらりと二人を見る。
マルベートもソアも肉が好き、ということで肉料理の評価で選んだ店である。
今までの料理からソアもマルベートもメインディッシュへの期待が高まっているようだ。二人とも可愛いとセリカは笑った。
「何か嬉しい事でもあったかい?」
「うん、あったよ」
「なになに?」
「マルベートさんもソアさんも、お肉が楽しみって顔をしているのが嬉しいんだ」
「ボク、そんなに顔に出てた?」
「うん。嬉しそうだった」
そんな会話もお酒に酔ったようにふわふわと楽しい。
「お待たせしました」
セリカは背筋を伸ばして運ばれてきた料理を見下ろす。
二つの皿は赤い肉汁の滴りおちるピンク色の断面。もう一つの皿はやや薄い桜色だが鮮やかな焼き色が美しい。
今回マルベートとソアはレアステーキを所望し、セリカはちょっと悩んでミディアムレアを選択していた。
三人は無言でナイフとフォークを手に取り……。
「いま、お肉、溶けた?」
「お肉、溶けたね?」
フォークとナイフを持ったまま恐る恐るといった顔でセリカが尋ね、何が起こったのか分からないといった顔でソアが頷いた。
「お肉って、溶けるんだ?」
「前にマルベートさんに連れていってもらったお店でも、とろけたよ。ねぇ、マルベートさん」
「肉の種類によっては脂が体温でも溶けるからね」
「そうなんだ!?」
二人は戦慄した。
美味しい!!と喜ぶ気持ちが殆どだったが、ここまで肉が美味しくなる秘訣は何なのだろうと思考が宇宙に飛んでいく。
シンプルに塩と胡椒で味付けして鉄板で焼いただけの肉。
しかしソアとセリカにとっては未知との遭遇であった。
三人の口に入るまで肉の方も数々の歴史を経ていたが、今は美味しく頂かれ済みである。
「わたし、携帯食の干し肉を作ったり食べたりしてたからお肉についてよく知っていると思ってたけど……本当はお肉のこと何にも知らなかったのかもしれない」
「ボク、セリカさんの作る干し肉すきだよ。良かったらまた食べたいな」
「本当? 今度持ってくよ」
偏屈者の塔を攻略した際、オヤツにと渡された干し肉の味と硬さを思い出しながらソアは元気よく頷いた。
「ちょうど良い噛みごたえだったし」
マルベートは赤ワインの入ったグラスを傾けた。
本当は可愛い子たちを丸ごとぎゅっと抱きしめたい気持ちで溢れていたが食事中なので理性で押さえつける。しかし口はムズムズと満面の笑みをとろうとしていた。
アルコールを流し込んで優雅さを維持する。
美味しい肉に美味しいワイン。そして美味しそうな子たち。
――最高の休日だ。
メインとなる施設から少し歩くと、赤いハイビスカスの花に囲まれた南国風のヴィラが見えてくる。
一家族が過ごすにはやや広すぎるほどの家には、ダイニング、キッチン、二つのバスルーム、寝室が三つ。そして何より、テラスから見下ろせる遺跡の景色とプールの裏手側から行けるプライベートビーチがある。
「ただいま」
「すごーい!!」
南国に近い気候とは言え、陽が沈めば夜が肌寒さを引き連れて来る。大理石の彫刻が刻まれた乳白色の暖炉には赤々とした火が入り、部屋をほどよく温めていた。
天蓋付きの広いベッドにはモカラやミモザの花がちりばめられ、テラス近くのソファテーブルにはアフタヌーンティー に似たテーブルセッティングが施されている。
ぽったりした銀のティーポットにチューリップに似た形なグラス、そしてボトルクーラーで冷やされたシャンパンとワイン。ガラスドームの中には先程買ったスミレやバラのショコラが宝石のように並べられていた。
テラスから見える遺跡には松明が灯されていた。暗闇の中、遺跡はぼんやりとした炎に眠りを邪魔されている。それをツマミに食べる深夜のデザートは贅を極めた背徳の宴。
「大人の女子会だ!!」
ソアとセリカは顔を見合わせ、嬉しそうに手を繋いで部屋を探検している。
マルベートはひっそりと笑い、一番シンプルなチョコレートを摘んだ。
寒い冬にしか生産されないビロードのような口どけのショコラだと店主は言っていたが、商売にがめつい海洋のことだ。今の時期に発売される商品は、グラオ・クローネのための試金石なのだろう。
そんな弱肉強食の世界の産物をマルベートは愉悦をこめて消費する。
飾り気の無いソルティショコラを一口齧る。舌に触れるや否や、柔らかな甘さとカカオの油分が体温で溶けた。これだけ熱に弱ければ冬にしか味わえないという触れ込みもあながち間違いでは無いようだ。後に残った塩味を月色のシャンパンで洗い流す。こうなると歯ごたえのあるものが食べたくなってくる。
丹念に飾り付けられたショコラの匂いを順番に、念入りに確認していたソアは意を決したように一つを手に取った。スミレの花が散った夜明け色のショコラ。
「どう?」
セリカはおずおずと、然し期待に満ちた眼差しでソアを見つめている。
「んー?」
味を確かめているのか。目を瞑ったソアは暫くの間モゴモゴと口を動かしていたが、やがてゆっくりと飲みこんだ。
その顔は険しい。腕を組み、美食の大家が如き真剣な面持ちだ。
「すごく甘い。花の味がするよ。それからお酒と香辛料の味と」
「うんうん」
興奮と期待を半々に織り交ぜたセリカは何度も頷き、ソアの言葉の続きを待った。
「それから、それからね。……色んな味がいっぱいありすぎて、よく分かんなくなっちゃった……」
しょも、とオレンジ色の耳が垂れる。
「よしよし、口直しだよ」
そんなソアの感想をマルベートは眦をゆるめて聞いていた。しんなりとした毛並みを整えるように頭を撫で、齧りかけのトリュフを差し出すと、ソアははむりとそれを唇で受け取る。
「ボク、普通のチョコレートの方が好きかも」
「綺麗だったけど、美味しいとは限らないんだね」
「もしかしたら好みの問題かもしれないよ。セリカさんは好きかな? ね、どれが食べたい?」
「えっと、わたしは、このバラの花と赤い実がついてるやつにしようかな」
「わかった! はい、あーん」
「あーん……わっ、すっぱい!?」
「すっぱいの?」
「うん。ソアさん、あーん」
「あーん。あっ、本当だ。すっぱい」
「でしょー?」
●Glooming Hour.
風呂上がりの肌に纏った石鹸の香りが、花匂を一層甘く艶かしいものへと変えていく。湯上がりの火照った肌を薄絹のような温もりが包みこんでいた。
乾いた薪が火の粉を纏って花火のように弾ける。
その音にセリカは目を開けたものの、すぐさま動く気にはなれなかった。
とろとろと弱火で煮込まれるような穏やかな時間に身を委ね、心地の良いまどろみのなかで手触りのよい羽毛布団をかき寄せる。
――雲のなかにいるみたい。
今日は幸せだったなぁと夢うつつに噛みしめる。
「ふっ、う……お姉さまぁ」
そんな時おぼろげに、ソアの甘くむずがるような声が聞こえた気がして。
柔らかな寝台に頬を埋めていたセリカはコロリと寝返りをうった。
バターミルク色の寝台の上で絡まりあう夜と太陽が見える。あぁ、綺麗だなぁと目を細め――。
「……ひぇっ!?」
惰性のまま視界に収めていた二つの影が、友であるとセリカが認識するまでに数秒の間があった。
重なりあったスプーンのように、密着するマルベートとソア。
ワンピースに似た白いネグリジェの布が押し上げられ、美しい肉体の線に沿って流れていく。そこから伸びるな滑らかな曲線や谷間は、間接照明に照らされて影を濃くしていた。
それは一種の芸術にも見える光景だった。
セリカの小さい悲鳴が聞こえないほど、二人は互いの行為に熱中している。それが何であるのか、セリカには分からない。ぴちゃと湿った水音が、ゆっくりと、しかし規則的に部屋に響き続けていた。
「はわわわ」
どうしよう、声かけたほうがいい?
伏していた睫毛が揺れると、ぽわぽわとした表情のソアがマルベートに向かって「くぅ」と甘えたように喉をならした。すりすりとねだるように頭をこすりつければ、それが合図となったのかソアとマルベートは互いの位置を変える。
「んっ」
今度はソアが、ゆっくりとマルベートの鎖骨を舌先でなぞった。白い喉を無防備に晒しながら、恍惚を含んだ吐息がマルベートの口から断続的に零れていく。
耳に届く声が艶やかで、セリカは急いで目を覆い隠した。が、未知への好奇心からか塞いだ指には大きな隙間が開いている。二人の行為を、セリカはしばらく呆然と、しかし盛大に赤面しながら眺めていた。
えっとえっと、何だかとっても見てはいけない物を見ている気がしてるんだけど二人とも堂々としているし、そんなにおかしいことじゃ無いのかな? だとしたら照れてるわたしの方が失礼だよね!?
「そ、ソアさん、マルベートさん……」
「ふゃ〜? セリカさんがおきてるーー」
呼びかけた声が震えてしまったのは仕方がない。何せ今のセリカは極楽から一転して緊張と混乱の最中にいるのだ。
一方でソアは夢心地といった声で答え、セリカの顔が見えて嬉しいといった風に手を伸ばした。
ふにゃりとセリカの名前を呼ぶソアは『どうしたの?』と告げている様子でもあったが、聞かれた当のセリカは上手く言葉が出てこない。あぅあゎと言葉にならない単語ばかりを量産してしまう。
「セリカ、起きた?」
獣を思わせるしなやかさで、マルベートはセリカの傍へと身体を躍らせた。
セリカの耳がリンゴのように熱いのは赤面しているからで、くるくると目を回しているのは脳みそが視覚情報をうまく処理できなかったから。
そんな初心な反応を見やると嫣然と笑い、マルベートは舌の代わりに手のひらでセリカの前髪をゆるゆると撫でた。
「ふたりで、なに、してたの?」
「お風呂に入ったからグルーミングをしていたんだよ」
子供のように舌足らずな声で尋ねたセリカにマルベートはまるで母であるかのように穏やかに答えた。
そんな表情のまま赤い舌を伸ばし、近づいてきたソアの虎耳を愛撫するように舐めていく。その度に、ふわぁと蕩けた声がソアの口から零れた。
「ぐるーみんぐ?」
まるで未知の単語と遭遇したかの如く。セリカはきょとりと大きな瞳を瞬かせた。
その無垢な表情に、気持ちよさで溶けていたソアはマルベートを見た。敬愛すべき姉の瞳は面白そうに、しかし何処か愉悦を秘めて微笑んでいる。その表情から察するに、どうやら自分と同じことを考えているようだ。ソアは破顔して、ぺたんと座ったセリカに身を寄せた。
「マルベートさんはとっても上手なんだよ」
「とても気持ち良いものだよ。セリカも試してみない?」
じわりじわりと距離を詰め、退路を塞いでいく。獲物を追い詰める、獣のような獰猛さを見せたのは一瞬の事。少女達は無邪気な顔で、甘えるようにセリカの両脇を陣取った。
「ねえ、セリカさんも一緒に仲良しの時間にしよ」
「仲良し?」
「そうだよ。仲良しさんで遊ぶ時にするんだから」
「怖がることはないよ、マッサージみたいなものさ」
「セリカさんとグルーミング、嬉しいな」
「えっえっ」
呆気なくベッドの寝転がされてもセリカは二人にされるがままだった。仰向けになった拍子に、緊張のあまり目尻に溜まっていた涙がほろりと頬を流れていく。
「そんなに固くならないで。グルーミングには毛繕いという側面もあるけれど、本来は好意を持つ相手への愛情を示すものなんだ」
「舐めてもらうとね。すっごく気持ちが良いんだよ」
人懐こく甘える猫のようにソアはセリカに頬ずりをする。
「緊張しないで。ボクたちはお友だちだよ」
「おともだち……」
ふっとセリカから力が抜けた瞬間をマルベートは見逃さなかった。
チークキスのように頬を触れ合わせると、そのまま柔らかく耳たぶを食む。
「見た目よりも食べ応えがありそうだ」
「えぇ!?」
「ふふふ、冗談だよ。ほら大きく息を吸って、リラックスして」
「んぅ……は、はいぃ」
頬を紅潮させたまま、セリカはこくりと小さく頷いた。
柔らかな肌を舐めるたび、固く閉ざされた瞼が小鳥のように震える。
「あっ、ふぁっ。……ン」
「うん、上手だよ」
「そのまま、ゆっくり息を吐いて」
心地良い温もりを保った肌のふれあいに、次第に声から緊張が抜けはじめ、ゆるく吐く息に甘さが混じりはじめる。
「こっちの足、開ける?」
「ん……」
ネグリジェから覗いた無防備な肋骨をくすぐるように、浮き出た背骨の一節一節を愛おしむように、歩き疲れた脹脛を癒すように。美しい毛並みの代わりに、極上の皮膚に丹念に舌を這わせながら進んでいく。
マルベートとソアはグルグルと鳴りそうな喉の音を必死に抑えてはいたが、針のように細くなった瞳孔は隠しきれていなかった。唇はヒトらしく微笑んでいるが、瞳は遺跡に巣食う獣のように鋭い光を帯びている。
美味しい。
遊び気分のお試しで始めたグルーミングだったが、セリカの幼気で純な反応や、瑞々しい肢体の味に思った以上に興が乗ってしまい止められずにいる。
可愛い。食べたい。愛でたい。綺麗にしたい。
舐めたい。抱きしめたい。閉じこめたい。癒したい。
肉食獣の本能が鎌首をもたげている。魔力を帯びた燐光と雷電が瞳の中に火花を散らした。
パチリ。
暖炉の薪が爆ぜる音は、骨が折れる音に似ている。
「?」
二人の温もりが離れ、沈黙が落ちる。セリカは目を開けた。そして純粋な欲望を漲らせ、自分を見下ろす友人たちの姿を見あげた。
「きもち、よかったね?」
えへへと笑うセリカは皿に乗せられた生贄のようでも、慈愛を捧げた無垢な天使のようでもあった。
血行が良くなっているのか、白い頬や目元にばら色が差している。うっとりと笑みを形づくる蜂蜜酒の瞳は眠くなってきたのか、ぼんやりとしていた。
まだ、味見を終えるのは早い。
先程は少し「危なかった」が、もう大丈夫だ。丹念に丁寧に余すところなく仲良くなろう。
ソアとマルベートは素早く視線で意思疎通をはかると、逃げられないようにセリカの両脇を陣取った。
「あれっ、終わりじゃなかったの?」
「まだだよー」
「今夜はじっくり楽しもう」
ソアはネグリジェの隙間からのぞいたセリカの双丘に顔を寄せ、マルベートはうなじから続くオレンジの髪を食んだ。
暗闇に、再び少女の嬌声が溶けていく。
絹の夜は始まったばかり。
――獣達の饗宴は終わらない。
![](/assets/images/scenario/ssicon.png)
おまけSS『旅行パンフレット「ヴィラ・スラトゥス」』
・イメージリゾート
バリ島のヴィラ
〜上質なラグジュアリー空間がお届けする非日常〜
ラスベガスのホテル群
~ホテルだけどショッピングモール~
・イメージフラワー
スミレ「小さな幸せ」「あなたのことで頭がいっぱい」
ハイビスカス「勇敢」
モカラ「優美」「気品」
ミモザ(アカシア)「友情」
・冬の海洋イメージ
甘い/スパイス/チョコレート
自然/島/高級リゾート/ラグジュアリー
【パンフレット抜粋】
遺跡と海を一望できる優美な立地。
ヴィラから直接プライベートビーチやプライベートプールへ出られます。
バスルームを二室完備!!
シャワールームの他に種類の異なる二種類のバスをご用意。
ニホンシュやシャンパン、ワインを味わいながら見るサンセット・バスは当ヴィラの一押しです。
・ヒノキバス
香りの良いヒノキの木を削って作られた浴槽です。保湿成分の高いとろりとした乳白色のお湯が貴方の美肌を包みます。窓からは遺跡の景色もお楽しみいただけます。
・ジャグジー/ジェットバス
湯に南国の花をふんだんに浮かべた、ゴージャスなバスとなります。カウンター横に専用バスソルトをご用意しておりますので、お好みの種類をお選びください。外の海を一望する景観は当ヴィラの目玉の一つです。
キングサイズ二つ分の広々とした天蓋付きベッドに必ずやご満足いただけるでしょう。
●●社による最高級のベッドマットと布団は貴方に快適な眠りをお約束いたします。
ルームサービスは24時間いつでもお申し付け下さい。コンシェルジュによる繊細なサービス。近隣のシェフが作る多彩な料理と豊富なデザートが貴方をお出迎えします。
ヒーリングエステやマッサージも完備。日常を忘れさせる極上の癒し空間をご提供いたします。
・猫科のアログルーミング 大好きだよ!!
・犬科のグルーミング 幸せになってね
・人科のグルーミング はわわわわ!?!?