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SS詳細

夜来る者の裔

登場人物一覧

アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

アーマデル・アル・アマルという人格の形成においては、ある男の存在が必要不可欠であった。

名前:『冬夜の裔』ナージー・ターリク
性別:男性
年齢:外見20前後
一人称:俺
二人称:お前、呼び捨て(敬語)貴方、~様
口調:だな、だろ、~か?
特徴:灰と空色の中間のような瞳を、黒布で覆う。褐色肌に癖の強い黒短髪。
アーマデルより筋肉質ではあるが細身。
その声は雪になりきれない冬の雨の如く重く、冷たく。何故か甘く。
設定:
アーマデルと同じ教団で生み育てられた暗殺者。
彼らは『七翼の系譜』の素質を継ぐため特殊な孵卵器で育てられた『七つの卵』の内、七番目から孵ることで生を得る。
ただし、ナージーは他の卵から孵ったため暗殺者に必要な素質が足りなかった。
足りない分は鍛練で技術と耐性を獲得して補ったが、ある日の任務で重傷を負い、利き手の自由を失う。得物のナックルナイフも満足に扱えなくなり、後進の育成に回ることとなった。
その後進として出会ったのが、「七翼の素質がない」にも拘らず「一翼の加護」を得ているアーマデル。
彼への劣等感に苛まれながら、自らを師兄と仰ぐ彼を日々貶めることでどうにか自尊心を保っていた。
その最期にアーマデルを引き込めなかったことへ強烈な絶望を覚えていたことは、アーマデルは知る由もない。

  • 夜来る者の裔完了
  • GM名旭吉
  • 種別設定委託
  • 納品日2022年01月20日
  • ・アーマデル・アル・アマル(p3p008599
    ※ おまけSS『傷つけていいのも、殺していいのも』付き

おまけSS『傷つけていいのも、殺していいのも』

●冬夜の孵化
 産まれたこと自体が、奇跡だったらしい。

 卵を割ってみたら黄身が二つ、ということが稀にあるように。
 何の因果か偶然の事故か、自分が宿った『卵』には当初二つの魂があったらしい。
 元よりその『卵』で孵るはずだった者と、宿る『卵』を違えた者と。
 ただし、『卵』の中で育つ素体は一つ。
 一つでさえヒトの肉では収まりきらないような我らの魂は、二つが同じ『卵』で共に生き延びることは不可能だった。

 この『卵』は孵らないかもしれない。
 産まれる前からこれほど強く結ばれては、二人とも彼岸へ引かれてしまうかもしれない。
 孵化を見守っていた者は誰もがそう思ったそうだ。

 ところが、『卵』は孵ったのだ。
 宿っていたはずの一人は跡形もなく消え、孵ったもう一人の瞳には夜闇に冴え渡る月光のような光があった。
 本来孵るはずだった『夜』の徴を宿して孵った子はしかし、やがて『七番目』の素質不足――『卵』を違えて宿った子だと判明することになる。
 その子は産まれながらにして、孵るべき片割れの『夜』を殺したのだ。
 ナージー・ターリク夜来る者の生き残りとは、そうして定められた。

●覆い隠せぬ縁
 奇跡が起きたのは産まれた瞬間だけだった。
 それからは一度も、死ぬまでただの一度も、そんなものは起こらなかった。

 否。起きるには起きたのだろう。
 どう足掻いても埋めようのない『免疫』の素質を、毎日少しずつ毒に触れたり、口にしたりして、容量を僅かに間違えて数日意識が戻らないほどの重症に陥りながらも克服してきた。
 医官が止めるのも聞かなかった。止まれば終わってしまう。生き残りは完全に死んでしまう。
 生き残ったのだから、生きなければ。
 きっと、何か意味があって生き残ったのだから。
 「ナージーはこれほどの者に育つ運命にあったのだから、片割れは消えるべくして消えたのだ」と、誰もが語るように。
 正当な『夜』であった片割れを思う度、罪を思わなくていいように。
 文字通り血を吐く努力を重ねて、素質の不足を完全に埋め、更に鍛練を重ね続けた。

 ――なのに、なのに! 巫山戯ふざけるな!!

 そんな奇跡はいらない!
 素質が足りないどころか全く無かった奴が、実は一翼の先祖返りだなんて!
 それでも変わらず彼は自分を師兄と呼んで、その師兄に訓練とは名ばかりの八つ当たりで傷付けられても、厭な顔ひとつしない。
 今、血の滲む切り傷まみれで己の下に横たわるこの男は、心中では何を考えている?
 憐れんでいるのか? 優しさのつもりか?
 自分こそ奇跡の子だと信じていた己が、ただの素質不足でしかなくて。本当の奇跡の先祖返りは彼で。それでも技を教えている師兄だから、黙って従っているのか!?

「……師兄。質問をしていいですか」
「この行為の理由なら初めに話した。いつ終わるかについては答えない。他の問いは無意味だ」
「……師兄は、涙を流せるのですね。顔のその水は涙でしょう?」

 ――ッ!!

 恐ろしくなった。
 他人の「死」に引かれないため、この教団では人との縁を深めない。覆面により個人の印象を薄め、感情を封じることを鍛えてきたはずだった。
 なのに、自分は――泣くほど悔しかったのか。それほど強く嫉妬していたのか。
「俺には、わかりません。涙を流せません。俺は道具なので――」
「喋るな!!」
 横たわる彼の首の皮一枚を絶つ。見える場所への傷は避けねばならないのに、我慢ならなかった。
 何もかもが、もう手遅れだ。どこにも居場所がない。逃げられない。
 それもこれも、全て、全て。
 この手が言うことを聞かないのも、運命が雁字搦めなのも、全て。

 ――お前のせいだアーマデル

●そして命は伝い落ちる
 ――アー、マ……デル……。

 ――何か言えよ。泣くなよ。泣けるんじゃないか、お前。
 ――あんなにあっさりと、一翼の加護を見せ付けて。まだ惨めな思いをさせたいのか。
 ――これ以上、自分に絶望したら。お前に執着したまま死んだら。
 ――屍人になってでも、お前を殺したくなるじゃないか。

 ――屍人になってでも、俺が必ず殺してやる。
 ――お前だけは、許さない。逃がさない……――。

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