PandoraPartyProject

SS詳細

乙女の汗は甘やかで

登場人物一覧

キャナル・リルガール(p3p008601)
EAMD職員
キャナル・リルガールの関係者
→ イラスト
キャナル・リルガールの関係者
→ イラスト

 ゼシュテル鉄帝国に点在する、とある遺跡群。
 そのうち比較的大きな遺跡の中から、開けるだけでも一苦労しそうな扉が内側から開く。
「だーっ!! 疲れたけど今日で終わりだー!!」
 やや背の高い女性がぴょいっという擬音が似合うような勢いでいの一番に飛び出してくる。
 その体は胸の大きさや脂肪の乗り方を見てもダイナマイトボディというのが相応しいのだが、元が引き締まっているのだろう。獣種の彼女の見た目と見事にマッチする、まさに「女豹」のようなしなやかさだ。
 そんな彼女の後ろからも、人影がふたつ現れる。
「こーらアリディアちゃん、おうちに帰るまでがお仕事です」
 彼女の後ろから、さらに背の高い女性が穏やかな笑顔を浮かべて現れる。
 彼女もまた太ももや胸を見るとムチムチでアリディアよりも脂肪は乗っているのだが、やはり筋肉が下地にあるので全くだらしなくは見えない。
 大量に汗をかいたのだろうか、ビチャビチャで使い物にならなくなったタオルを雑巾の如く絞るともう一度額に滲む汗を拭う。
「えー、でもノバリシアだって疲れたわねぇって言ってたじゃん!」
「それはそれでしょー? さて、あの子は……うん、問題なさそうね」
 大柄な女性2人の後ろから、白い髪の女性が現れる。
 2人が大きいこともあるが、彼女もまた小柄なため、見た目としては少女に見える。
 が、彼女もまた他2人と同様に脂肪こそそこまで乗っているわけではないものの体が引き締まっている。
「ノバリシアさん、うちは迷子にはならないっス」
「まぁでも、キャナルは小さいからなー!!」
「小さいって言わないでください!! お酒だって飲める年なんスから」
 お姉さん2人に頭を撫でられながら、キャナルは照れ臭そうに笑っている。
 彼女達は鉄帝に存在する調査機関「EAMD」職員だ。鉄帝には珍しく知力も求められる機関で、3人はチームで行動している。
 今回の遺跡調査では数日間遺跡の中に籠っての調査が一段落ついたこともありこれから帰るのだが。
 むわり、と女子達の汗の香りが3人を包み込む。
 それすらも意に介さず、化粧もしていない綺麗な顔に多少の生傷がある乙女達。
 そんな中、アリディアが思いついたように発した。
「せっかくだからさ、飲みに行こうよ!!」
 普通なら、飲みに行くにしても一旦帰ってシャワーを浴びるなり、調査で負った傷の手当てをしてからでも良いと思うだろう。
 しかし……
「あらぁ、いいわねぇ」
「そうっすね、一仕事終えた後の酒は最高っす」
 鉄帝人としての彼女らの気質だろうか、満場一致で酒場によることが確定する。
 化粧についてもし気にするというのなら、それは野暮というものだ。
 もっとも、3人ともすっぴんだったとして元が良いのでなんら問題はないのだが。

 遺跡から移動すること1時間。
 3人の行きつけの店の看板がようやく見えてきた。
 店は相変わらず繁盛しているようで、馴染みの客の顔もちらほら見受けられる。
「いらっしゃい!! お、EAMD3人娘じゃねぇか!!」
「マスター!! 久しぶりだね!!」
「相変わらず繁盛してるみたいねぇ」
「ここは酒だけじゃなく料理も美味しいから、ほんといい店だと思うんすよね」
 なんということはない、たわいもない会話。
 とりあえず駆けつけ一杯ということで、キンキンに冷えたジョッキにビールが注がれる。
 泡とビールの割合は今日も綺麗に7:3。
 乾杯の掛け声とともに、ビールは喉の奥へと消え去っていく。
 久々のEAMD3人娘の登場に、馴染みの客も楽しげに声をかけてくる。
「仕事帰りか?」
「うーん、まぁね〜」
 穏やかな微笑みを浮かべ、ノバリシアが受け答える。
「しかしまぁ、今回結構大変だったんじゃねぇの? ほら、シャツとか胸元とか、ちょっと黄ばんでる感じするし」
「まぁ、なかなかシャワーは浴びられないからな!」
「アリディアさん、そこドヤ顔するとこじゃないっす。」
 この会話、聞く人が聞けばセクハラに聞こえるが、3人や他の常連からすれば「仕事帰りの与太話」くらいの認識しかない。
 むわりと汗の匂いを漂わせつつ、3人は酒を飲む。
 汗の匂いとはいうものの、その汗の香りはどこか女性らしい甘いすっきりとした香りがする。

 杯数も進んできたところで、アリディアがふとノバリシアの胸に顔を埋める。
 酔ってきて少し目がとろんとしているアリディアを、ノバリシアは優しく受け止める。
 この2人は同期でキャナルから見れば先輩に当たる。キャナルの加入前はこの2人のツーマンセルで仕事をこなしていたとのことで、この2人は親友……否、もはや恋人の如く仲が良い。
「ノバリシア……すんすん……えへへ、いい匂いがするぅ」
「いきなり何を言い出すかと思ったら……ふふふ、汗臭いでしょ?」
「そんなことないよぉ!! ほらぁっ!!」
 むにっ、とアリディアはノバリシアの太もも摘んだかと思うと、そのままそれを撫で始める。
 太ももから脇腹、そして胸まで優しく撫であげると最後に抱きついて唇を重ねようとするが、ノバリシアの人差し指がそれをすんでのところで優しく制止する。
 ちょっかいを止められてしまったアリディアは一瞬不満で口を膨らますが、それすらも分かっていたのだろう。ノバリシアはアリディアの耳元でそっと囁いた。
「今はダメ、あとから、ね?」
 呼気がアリディアの耳を刺激し、ピクンと跳ねる。
「ん……わかったよぉ」
 不満を漏らしながらも、その顔はどこか酒の酔いとは異なる赤らみを浮かべている。
「それに、今日はキャナルちゃんもいるし、ね?」
 にこやかにノバリシアはキャナルの方を見る。
「それもそうだね!! あ!! せっかくだからさ、アタシとノバリシアの間に座んなよ!!」
「まぁ、いいっすけど」
 え、という顔をしながらも、キャナルは2人の間にちょこんと座る。
 先輩2人挟まれる後輩の図ではあるのだが、キャナルが小柄ということもあり絵面としてはお姉さんに挟まられる妹のような図となっている。
「キャナルもなぁ、可愛いんだよなぁ!!」
 アリディアはキャナルの髪を揉みくちゃにしながら、わしゃわしゃとその頭を撫でる。
「なんすか急に……わ、ちょっと、髪乱れますって!!」
 やめてくださいっす、という口では言ってみても、その表情はどこか照れ笑い。満更でもないと言ったところだ。
 くしゃくしゃになった髪の毛を整えているところに、ノバリシアが後ろから柔らかくキャナルの肩を包み込む。柔らかくて大きな彼女の胸は、まるで枕のようにふかふかだ。
「いつも頑張ってくれてありがとう。お姉さんたちは、何があっても貴女の味方よ」
「ノバリシアさん……」
「そうだよ!! ノバリシアが言う通り、アタシたちの妹分に手を出す奴は、どこの誰であろうとぶっ飛ばしてやるから!!」
「アリディアさん……へへへっ、嬉しいっす!!」
 今日のような仕事が一段落ついた時もそうだが、仕事で行き詰まってる時も、少し失敗して叱られた時も、先輩2人は常にそばにいて庇ってくれてきた。
 そんなどれだけ頭を下げても下げ足りないくらいに頭が上がらない先輩たちを、キャナルは心から信頼している。
 そして、何よりも居心地が良いのだ。
「この先も、この3人でEAMDの依頼もこなしていきたい、ウチはそう思うっす。だから……」
 そう言うとキャナルは自分がされたようにクチャクチャっとアリディアの頭を撫でる。
「これからもよろしくお願いします……ねっ」
 ニッと笑った彼女に、やりやがったなーっとくすぐりを仕掛けてくるアリディアと、空を見守るノバリシア。

 そんな先輩たちの間に挟まれているうちに、店は閉店のお時間。
 近くに銭湯があると常連から情報を入手したので、仕事の疲れを癒すべく、近くの店で簡単な着替えを買ってそこにいくことにした。
 客入りのピークの時間も過ぎていたのか、女湯はがらんとしており3人だけの貸切状態だ。
 湯気がほかほかと彼女たちを包み込む中、先に頭と身体を洗うべく3人並んでシャワースペースで各々の体を洗い始める。
 ここでノバリシアがふと一言漏らす。
「……最近、ちょっと肩が凝ってきたのよねぇ」
 右手を左肩に回し、肩をほぐすノバリシア。
 原因は間違いなくダイナマイトボディが一角、その豊満な胸なのはわかっているのだが、肩が凝ると戦闘にも支障が出るらしい。
「あぁ、確かに凝りそうだもんねぇ」
「アリディアだって、そこそこあるじゃない」
「ノバリシアほどじゃないよ!!」
「そう考えると……」
 キャナルに、先輩2人からの視線が向けられる。2人の視線の先は、もちろん彼女の胸。
「な、なんすか」
 苦笑いするキャナル。確かに彼女の胸は端的に言えば小ぶりで肩が凝りそうな大きさではない。
 しかし大事なことは「凝らないこと」だ。
「良いわねー、肩凝らないってそれとても良いことなのよ?」
「いや、そりゃそうかもしれないっすけど」
「それに!! キャナルは引き締まってるから体のラインもかなり綺麗に見えるんだよ!!」
「それは嬉しいっすけど……ウチは、もう少し大人に見られたいっす」
 何を食べたらそんなに大きくなるんですか、とボソリと零すと、しょぼんとしてキャナルは自分の胸に手を当てる。
 思えば、酒場に入る時はほぼ毎回確認されている。今日の店こそ馴染みの店だから確認はされなかったが。
「まぁ、持たざるものは持ってる人を羨むって言うしなぁ」
 なるほどなぁとアリディアは頷く。
 ノバリシアは肩が凝らない程度の胸の大きさが羨ましいし、キャナルは大人っぽく見える2人が羨ましいのだ。
「まぁでも、ねぇ」
 いつもの穏やかな笑顔で、ノバリシアはキャナルを抱きしめる。
「そんな妹が、お姉さんは大好きなんですからね」
 愛おしそうに、優しく頭を撫でる。
 シャンプーの匂いとノバリシアが元々併せ持つ香りが混ざり合い、どこか安心できる香りが漂ってくる。
「キャナルー、それちょっとズルくない?」
 笑いながらも少し嫉妬したのか、アリディアもキャナルを挟んでノバリシアを強く抱きしめる。
「ちょっと、アリディアさん、ノバリシアさん、苦しいですって!!」
 2人の豊満なワガママボディに挟まれながらも満更でもないキャナル。アリディアの嫉妬には気がついていないが、それはそれで良いのかもしれない。
 身体を洗えば、もちろんそのあとはお湯に浸かる。窓越しには大きな露天風呂。
 せっかくならと、3人は事実上貸切の露天風呂でぼんやりと蕩けている。
 風呂から立ち上る柔らかな白い湯気が、彼女たちを包み込む。
「いやー、ホントにここ何日か大変だったけどさ、また明日からもよろしくね、キャナル」
 ピンと親指を立ててアリディアはニコリとキャナルに笑いかける。
「でもキャナルちゃん、無理は禁物だからね? 困ったことがあったらお姉さんたちを頼るのよ?」
 ノバリシアもキャナルを気遣いながら声をかける。
 2人の優しい笑顔に、「妹」もとびきりの笑顔で返す。
「もちろんっす!! 頼りにしてるっすよ、お姉様方。」
 立ち込める湯煙の中、乙女が3人汗を流す。
 その甘やかな香りを楽しむ如く、空には満点の星空と煌々と輝く満月が乙女の休息を見守っていた。

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