SS詳細
青色のアスター
登場人物一覧
名前:夢見 ルル家
一人称:拙者
二人称:~殿
口調:です、ます、なのです
特徴:夏頃、遮那の元から本懐を遂げる為に去っていき、帰って来たらバイザー姿に変わっていた。
設定:
秋の彩りが庭を染め、冷たい風が吹く頃。
豊穣天香邸の執務室でいつも通り私は書面に視線を落す。
義兄の後を継いでから一年が過ぎ、ようやく執務も熟せるようになってきた。
それもこれも周りの助けがあったからこそ。
自分を支えてくれる神使や家臣達に感謝をしながら深呼吸をする。
視線を上げて向かいの座布団に座るルル家の様子をじっと見つめた。
彼女は信念の元に本懐を遂げ帰って来た。
それは喜ばしい事のはずなのに、ルル家は浮かない顔をしている様な気がする。
実際の所はバイザーを被っているから詳細は分からない。
話しかければ普段通り受け答えするし口元に笑顔も見せるのだ。
けれど、自分に対して若干の他所よしさ感じる事がある。
私以外にはそれ程変わらぬ態度であるから、何かしたのだろうかと不安になった。
忙しさと彼女の優しさに甘え、十分なやりとりが出来ていなかっただろうか。
以前の彼女であれば、不満があればさり気なく伝えてくれていた。
やはり、離れている間に何かがあったのだろうかと眉を下げる。
心境の変化は誰にでもあるだろう。
自分が気付かぬ内に嫌われて、ルル家が去って行くというのなら、追いかける事は出来ない。
けれど、彼女はこうして目の前に姿を現す。
側仕えという役目があるから、責任感の強いルル家は来てくれているのかもしれない。
以前であれば、何があったのかと無責任に聞く事も出来た。
けれど、それは言いたくないものを無理矢理吐かせるのと変わらないと気付いた。
相手を知るということは全てを把握していると同じではない。
全部を曝け出さぬとも、傍に居て心地よいと思えるのなら、それで良いと思うから。
言葉にするつもりは無いが其方の変化に気付いていない訳では無い。
バイザーや化粧で隠しているが少し顔色が悪いのだろう。
姉上も兄上を心配させまいとそういった化粧をする事があった。
隠したいと思う事を無理矢理暴くのは、尊厳を踏み躙るようなものだ。
だから、ルル家が話しても良いと、心を預けられると、思うまで此処で待って居よう。