PandoraPartyProject

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みんなで楽しいことをしようね!

登場人物一覧

古木・文(p3p001262)
文具屋
イーハトーヴ・アーケイディアンの関係者
→ イラスト
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

 今日はとても良い日だ。暑くもなく寒くもなく、少しだけ秋らしい風が吹いている。
「オフィーリア、デーヴィドは今日、何処に連れて行ってくれるのかなあ?」
 イーハトーヴ・アーケイディアン (p3p006934)は、下宿『ひだまり亭』の一室で──古木・文 (p3p001262)とデーヴィド・コックスを待っている。
『きっと補佐官くんのことだから素敵な所よ』
「俺もそう思う。あとさ、二人の浴衣、すんごく楽しみ!」
『うん、私も文具屋さんと補佐官くんの浴衣楽しみ!』
 オフィーリアは頷き、イーハトーヴは時計を見上げる。そろそろ来る頃なのだ。

 下駄の音がとても心地よい。文は目を細める。
「デーヴィド君。今日はありがとうね」
「いえ、そんな! こちらこそ、わざわざありがとうございます!」
「ふふ。あのさ、デーヴィド君の浴衣、素敵だね。可愛いって言うのかな。あ、ごめんね、男の人に可愛いは駄目だったかな」
「いえいえいえ!!! 褒められて嬉しいです。それに、古木さんの浴衣はかっこよくて……びっくりしてます」
「良かった、ありがとう。あ、デーヴィド君。此処だよ、おやおや?」
「文お兄ちゃん!」
 開いたドアから、イーハトーヴが飛び出し文に抱き着く。
「こんにちは。イー君、オフィーリアさん。浴衣、よく似合っているよ」
「へへ、褒められてとっても嬉しい。ね、オフィーリア!」
『ええ。こんにちは、文具屋さん。上品な浴衣ね』
「分かる、俺もオフィーリアと同意見! 文の浴衣、大人って感じで大好き!」
「ありがとう、イー君、オフィーリアさん。そして、僕の後ろには誰がいると思う?」
「えっ? あっ、デーヴィド!」
「こんにちは、アーケイディアンさん、オフィーリアさん。お二人ともキラキラですね」
「ありがとう。デーヴィド、グレイの浴衣に黒猫がいっぱい! ピンクの帯も可愛いね」
 イーハトーヴはデーヴィドの周りをくるくると回り、オフィーリアと一緒に眺める。
『ほんとね。本当に可愛い浴衣。それに、補佐官くんの下駄、カッコいい!』
「本当だね、デーヴィドの下駄カッコいい!」
「ありがとうございます、二枚歯の桐下駄にしてみました!」
 デーヴィドが胸を張り、予約した店に向かう。

 地図を片手に幻想の路地裏を迷路のように泳ぎ──デーヴィドが安堵の表情を見せ、立ち止まった。
「こちらです」
『何だか秘密基地みたい』
 オフィーリアが笑う。見れば、黒色の階段が地下に続いている。
「そうだね、秘密基地みたい!」
 イーハトーヴが言った。
「うん、心が躍るね」
 文がオフィーリアとイーハトーヴを見つめ、微笑む。
「そう! お店は地下なんです」
 デーヴィドが得意げに目を細めた。
「凄いね。イー君、デーヴィド君、暗いから気をつけてね」
「うん、文お兄ちゃん! 俺、気をつける! デーヴィドも、文もだよ」
「そうですね、ありがとうございます」
「うん、イー君、気をつけるね」
 慎重に薄暗い階段を降りれば──レンガ調の壁紙が蛍のような光に照らされている。まるで、静かな夜みたいだ。そして、その先には屋形船と大きな看板が立てかけられている。

 『屋形船 星の天ぷら』

 目を見開く。一瞬、受け入れていたが、こんなところに

「ふふふふ! 皆さん、気がついちゃいましたか。今日は屋形船で美味しい天ぷらと美味しいお酒が楽しめますので!! さぁ、中に入りましょう!」
 デーヴィドが嬉しそうに笑った。
「わわ、広いなあ!」
 履物を脱ぎ、振り返ったイーハトーヴが目を輝かせる。
「うん、今日はこの空間が四人だけのものなんて、とても贅沢だね」
 文が目を細めた。パンケーキのようなふわふわの二人掛けのソファに正方形の木製の机が置かれている。
「あ! 俺、文の隣!」
 イーハトーヴが文の隣に座り、へへと笑う。
「でね、オフィーリアはデーヴィドの隣! 特等席だよ!」
『まったく……忙しないんだから』
 溜息をつくオフィーリア。デーヴィドと文がオフィーリアとイーハトーヴの顔を交互に見つめ、優しい眼差しを向ける。
「え~~? そうかなあ? でも、今日は仕方ないかな。だってさ、ワクワクが止まらないんだもん! どんどん食べて美味しいお酒を楽しむ! ねぇ、デーヴィド。屋形船って動いたりするのかな?」
「残念ながら動いたりはしないようです」
「そっかあ、動かない屋形船かあ。何だか面白いね!」
「そうだね。はい、イー君。メニュー表だよ」
 文がイーハトーヴにメニュー表を広げ、仲良く覗き込む。
「ありがとう! あっ、皆で食前酒が飲みたいな」
 イーハトーヴが顔を上げれば、オフィーリアと一緒にメニュー表を見つめるデーヴィドが見えた。
「食前酒、良いですね!」
「僕も賛成だよ。それと、天ぷら盛り合わせと天丼を頼みたいな」
 文が言った。メニュー表の文字を追いかけるだけでお腹が空いてくる。
「頼みましょう!」
 デーヴィドが叫んだ。
「うんうん、ぜーんぶ頼んじゃおう! 店員さーん!」
 ハンドベルを鳴らすイーハトーヴ。店員にあれこれ注文し、すぐに届けられた食前酒を見つめる。しゅわしゅわスパークリングワイン。
「美味しそう! かんぱーい!」
 イーハトーヴがワイングラスを空に向ければ、文とデーヴィドが笑いながらワイングラスを空に向ける。
「ん、飲みやすいですね」
 デーヴィドが目を見開き、イーハトーヴに微笑む。
「ね、おいしー! ゴクゴク飲めちゃう!」
『ちょっと、ペースをちゃんと考えなさいね!』
「はーい、オフィーリア。あ、文お兄ちゃん、次、何飲むの?」
 イーハトーヴが目を細めた。そこには空っぽのグラスがあった。
「美味しくて全部飲んじゃったね。ええと……次は日本酒をいただこうかな。あ、天ぷらがきたよ」
「わぁ!!! 良い匂い~~!!」
「ええ、本当ですね。私、この丸い天ぷらを食べてみますね。紅ショウガ? いえ、何でしょう?」
 デーヴィドが箸を伸ばし、天ぷらを一口。
「!?」
 ぴたりと止まるデーヴィド。
「デーヴィド?」
「アーケイディアンさん、これです!」
「え、俺も食べてみる! あ、本当に梅干し! それもはちみつ漬け! 文も食べてみて?」
「はい。あっ、酸味と優しい甘さが不思議な感じで美味しい……」
 文は頷き、日本酒を猪口に注ぎ、ゆっくりと味わう。
「日本酒も美味しいよ。イー君、デーヴィド君も飲むかな? お猪口はね、三つ貰ってたんだ」
「はい!」
「飲む!」
 
 サクサクの天ぷら。アボカド、ピーマン、海老、レンコン、茄子、黒糖饅頭。リンゴにチーズ。塩や天つゆ、様々な食べ方があった。
「うん、海老は王道だね」
 揚げたての天ぷらに、お酒が合わないわけがない。文は海老の天ぷらを食べながら赤ワインを飲んでいる。至福の時間だ。
「チーズの天ぷら美味しすぎます……」
 ケチャップを付け、チーズの天ぷらを頬張り続けるデーヴィド。その顔は真っ赤でいつも以上にニコニコしている。
「デーヴィド、だーめ! ビール飲みすぎだよ~?」
 デーヴィドのビールジョッキを笑いながら取り上げ、イーハトーヴは無花果の天ぷらをがぶり。デーヴィドは話を聞いていないのか、目を擦っている。
「!! どうしよう! 文、この天ぷら美味しい!」
 えへぇと真っ赤な顔で笑い、ビールをちびちび飲むイーハトーヴ。そこそこ酔っているようだ。オフィーリアは溜息をつきながら、黙っている。そう、とても楽しそうなのだ。悪い酔い方ではなかったし、定期的に文がミネラルウォーターを注文し──イーハトーヴとデーヴィドは素直にミネラルウォーターを飲んだり、オレンジジュースを飲んでいる。
『文具屋さんは凄い人ね』
 オフィーリアは呟く。文はパクパクと天ぷらを食べ、酒を楽しみながら常に周囲に気を配っている。そう、
「何の天ぷらかな?」
 野菜たっぷりのかき揚げ天丼を豪快に食べていた文が顔を上げる。文はウイスキーをストレート1.5オンスで楽しんでいる。
「え? 分かんない! でも、美味しいんだよ」
 小首を傾げるイーハトーヴ。
「ふふ、食べてみるね。あ、美味しい。これは無花果だね、イー君」
「無花果! デーヴィドも無花果食べよ?」
 にこにこしながら、デーヴィドを見つめるイーハトーヴ。目の前には文が食べていた天丼があった。ちなみにデーヴィドはリンゴの天ぷらにシナモンを思いっきりかけている所だった。
「え? 何ですか?」
「無花果! 美味しいから食べて欲しいな?」
 言い終え、天丼を頬張るイーハトーヴ。文は半熟卵の天ぷらを食べながらビールを飲んでいる。
「無花果? これですか?」
「うん、それだね」
 ジョッキを置いた文が微笑む。デーヴィドは頷き、一口。途端に目を輝かせる。
「!! え、美味しい……アーケイディアンさん、古木さん、美味しいです!!」
「でしょ? でも、デーヴィド、声大きすぎ!」
「アーケイディアンさんも大きいですよ~~?」
「え~~~?」
 楽しそうにけらけらと笑うデーヴィドとイーハトーヴ。仲良く、リンゴの天ぷらを食べ、文の顔を見つめる。
「あ、古木さん、リンゴの天ぷら美味しいですよ! あの、古木さんって……見てて気持ちが良いくらいの食べっぷりかつ飲みっぷりですね」
「え、何だか恥ずかしいね」
 ぽりぽりと頬を掻く文。
「え~~? そんなことないですよ!! 古木さんがもっと大好きになりました!」
「ありがとう、デーヴィド君」
「待って、俺も大好きだよ! ねえねえ、和風サラダも頼んでいいかなあ?」
 会話に入るイーハトーヴ。
『もう! 大丈夫? 酔いすぎじゃない? 食べれるの?』
「うーん? 楽しくて何だか沢山食べちゃうんだもん!」
『それならいいけど~~』
「うん!」
「いいね、勿論だよ。今日はデーヴィド君ともシェアしちゃおうかな」
 文は微笑み、メニュー表を眺める。和風サラダ、それから天ぷらを追加して最後に抹茶のアイスクリームを食べよう。

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