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夜の水族館
登場人物一覧
ぽわりと薄暗い夜道を照らすのはチョウチンアンコウを模した街灯だった。
「アーリアさん、道はこちらであっていますか?」
優しい声が聞こえた。アーリア・スピリッツ(p3p004400)は隣を歩くサンドリヨン・ブルーを見上げる。
「ええ、大丈夫よぉ。サンドリヨンくん」
「良かったです。アーリアさん! 今日は夜の水族館ですよ」
「ふふ、楽しみだわぁ。今日は水族館でお酒が楽しめるのよねぇ」
言いながら、アーリアは目を細める。そう──私達からしたら面白いイベント。でも、水族館の魚達にとっては大迷惑だろう。なんて、真面目に考えることも楽しいし夜の水族館も、そこでお酒が飲めることも嬉しい。勿論、サンドリヨンに誘ってもらったことも。
「ええ、アーリアさん。お酒は水槽の前にあったり、お土産コーナーの前にあったりするようですよ」
「凄いわぁ、サンドリヨンくん。まさか、私の為に暗記したのかしらぁ?」
パンと手を叩き、アーリアは
「えっ!? アーリアさん、凄いです! そのまさかなのですよ! 僕、アーリアさんのために暗記してきました、なんて」
サンドリヨンは笑い、下手くそなウインクを何度も披露した。
「へぇ? とっても嬉しいわぁ。でも、今日のためにサンドリヨンくんが無理してたら嫌よぉ?」
紫色の髪がアーリアの笑い声とともに大きく揺れる。
「大丈夫ですよ、僕は一週間前から寝てません」
むんと、サンドリヨンは胸を張る。
「一週間ってぇ……ふふ、それは盛りすぎよぉ? でも、サンドリヨンくん。私も今日の為に一週間、お酒を我慢したのよぉ? なんてぇ」
「え~? アーリアさんも盛りすぎじゃないですか? あっ!」
「えっ? どうしたの、サンドリヨンくん」
アーリアは立ち止まり、きょとんとした。だって、サンドリヨンくんが急に大きな声を出すんだもん。びっくりするじゃない?
「僕は大事なことに気が付きました」
「大事なこと?」
「目の前に水族館があります」
スッと指を差すサンドリヨン。
「あ」
アーリアは目を瞬かせる。
「ふふ、びっくりしたわぁ。話に夢中で気が付かなかったわねぇ」
アーリアはサンドリヨンと一緒に大きな建物を見上げる。ガラス張りの水族館がぴかぴかと光っている。そして、沢山の人の笑顔がそこにあった。
夜の水族館はいつもより薄暗く、今日だけは大人のものだった。
「凄いわぁ! 人がいっぱいねぇ。あ、サンドリヨンくん! カニも沢山よぉ!」
受付を済ませ、アーリアがカニの水槽の前に立った。水槽にはカニが四匹。
「わぁ~、大きいですね! 足? 手? ええと、誰よりも長いです。それに何だか美味しそうに見えます……!」
アーリアの隣でサンドリヨンは水槽に両手をべたりと付け、カニを見下ろす。
「ふふ、誰よりも? しかも、もう食べる気でいるわぁ」
「え~? カニは美味しいですもん」
「そうねぇ。でも、動かないわぁ。あ、踏んづけたわぁ! サンドリヨンくん、見た?」
アーリアがわっと驚く。やや小さなカニが大きなカニを
「見ました! 面白いですね、カニって……美味しそうですし。あ、次の水槽、イワシがいますよ!」
「もぉ、食べることばかりねぇ」
「僕、食いしん坊ですから。それに、アーリアさん、イワシの水槽の傍にウイスキーとビールがありますよ」
内緒話をするようにサンドリヨンは言った。
「!! 行くわよぉ、サンドリヨンくん」
「え、待ってください、アーリアさーん!」
サンドリヨンが笑いながらアーリアを追いかける。
ウイスキーが紙コップに満ちていく。とりあえず、
「僕もストレートでお願いします」
「え、サンドリヨンくんも?」
「ええ」
「はぁ~~~……重厚で美味しいわぁ!」
アーリアはウイスキーを口に含み、飴を舐めるように舌を動かす。
「はい、濃くてリッチな味ですね」
チェイサーで舌をリセットするサンドリヨン。
「あぁ、楽しいわぁ。サンドリヨンくん、また、何処かに出かけましょー?」
アーリアがスモークチーズを頬張り、チェイサーを飲み干す。始まったばかりなのに、気が早いだろうか。いや、楽しいことは何個あってもいい。
「勿論ですよ、アーリアさん」
サンドリヨンが大きく頷き、アーリアの