PandoraPartyProject

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巫女は冥土の導き手なり

登場人物一覧

アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
アーマデル・アル・アマルの関係者
→ イラスト

そのまた昔の大昔。人も土地をも病める頃。
血を吐き誰もが地に伏せた。倒れ手折られ皆散った。
血を分け地分かつ争いに、流行りが静かに忍びより。双つの命を奪ったり。

 そんな伝承が伝わる、とある地方の幽霊屋敷に、アーマデルは足を伸ばしていた。
依頼主は、幻想のとある地方の領主。以前この地を統治していた者の、遠い遠い遠い遠い……とにかく遠い血縁のもの。チャーミングポイントは顎から頭頂部までぷるんと艶のある茹で卵肌だ。
幾ら運良く転がり込んできた財産であっても、かつて流行り病のあった場所、しかも幽霊が住まうという噂は誠に不吉極まる。故に、霊と通じる力を持つというアーマデルを寄越してきたのだろう。

でなければ、『霊なんて馬鹿馬鹿しい』と言っていた彼が、わざわざ名指しで自分を指名する筈もない。まあ、そこは別にいいのだ。それより、気になること。……酒蔵の聖女は、別にいいのだ。呼び立てたしついてきたし構わないのだ。それより、問題なのは。

「なぜお前もいるんだ、イシュミル?」

黒衣、浅黒い肌のアーマデルと対を成す様な、色白の白髪の人物、イシュミル。彼には、自分が今日仕事だというのは、一言も伝えていなかった筈だが。

「私の手が空いている日に、キミが何やら面白そうな場所に出向くと言うから。それ以上の理由は必要かい?」
『ね、ね、やっぱこういう場所だし? ビンテージのワインとかがあるとありがたいっすわあ』
「お前ら……」

イシュミルは案の定の愉快犯的ムーヴ、そして酒蔵の聖女は安定の酒クズムーヴ。じと、とアーマデルは二人を見遣ったが、まあ、彼らが前向きに思う事にする。そうでなくては前に進めない。
覚悟を決めて、古びた扉、そこに手をかける。開けた瞬間、生暖かく重い、カビ臭さの入り交じる風が彼の全身を襲った。

「ッ……!?」

アーマデルが噎せ返ったのは、館に長年積もった埃のせいばかりではない。
踏み荒らされた館に汚く積み上がったゴミの悪臭のせいでもあるが、それだけでもないのだ。
流れ込む怒りの想念。濃密な死霊の気配。それ以上に、余所者たる自分へと向けられた明確な敵意。

そして。浅黒いアーマデルの両腕に冷たく食い込む、青白い男の腕。そのままその腕は、彼を館へと引き摺りこむ!

「なっ……!?」
「アーマデル!?」

イシュミルが慌ててアーマデルに手をのばすも、
彼がようやく解放されたのは、褪せた絨毯の広がるダンスホール、その中央。
しかし肉体が自由になったとはいえ、ここには先程ドアを開けた時に感じた想念、濃密な死の気配、その全てが凝縮されており。下手に動けば、命の保証などされない。雑霊の揺らぎ、ざわめく声が、更に不安を掻き立てる。
その中で二つの人影が、彼の前に進み出て、こう語りかけてきたのだ。

『侵入者、お前に問おう』
『余所者、答えねば命は無いぞ』

息を呑む黒衣の少年に、霊は続けてこう問いかけた。

ーー■■か■■■、どちらかを選べ。沈黙は死だ。

肝心な部分が、雑霊のノイズに掻き消され、聞こえない。この手の手合いに沈黙を貫けばそれこそ情け容赦なく命を奪われかねないし、かといってどちらかを選んでも、相手の都合よく解釈されるのが関の山。つまり答えても答えなくても、自分の生命が脅かされている事には変わりないのだ。
万事休すかと思われた、その時だった。

「アーマデル、これを受け取れ!」
「イシュミル!」

悪霊から彼を守るようにふわっと舞い降りたのは、天から遣わされた神秘のヴェール、否そんなものではなく。
すごく見覚えのある、というか最近再現東京で袖を通した。そして丁重に厳重に棲家に隠した筈の。

「巫女冥土服!? なぜここに!?」
「……ベッドの下に収納するのは、『隠す』とは言わないよ?」
「えっ」

イシュミルに言いたい事は山程あるが、確かにこれを見て霊達が戦慄したように思えた。事情はよく分からないが、何かしら効果はあるのだろう。
こうなれば、こちらも覚悟を決めて。

ーーあまでる☆メイクアップ……!!

ふわっと風を孕む、袴風ミニスカート。真っ黒なニーハイソックスで絶対領域を強調して。
美しい脇とボディラインを存分に見せつける、フリル付きノースリーブブラウス。
着物の袂のように、動きに合わせて揺れるアームカバー。
最後に紅白のパニエを、冠のように被ったなら。

みこみこめいど★アーマデル、ここに参上!

「いいぞーアーマデルー」

イシュミルもノリノリで応援している。色とりどりのペンライトが、薄暗い館の中でもよく輝いている。

【よくある質問】

Q何故霊と戦うのにメイクアップする必要があるんですか?
A霊達の逝くべき所は『めいど』であるし、この手の不浄な存在を祓い清めるのは『巫女』と相場が決まっている。つまりこれこそが怒れる霊魂を鎮めるための正装なのだ。

証明完了である。

突如姿を変えたアーマデルに、周囲の霊もざわつき始める。
そのどよめきや動揺を見逃すアーマデルではない。

今だ巫女よ投げつけろ、愛と正義のメイド技!

ーーもえ、もえ、きゅん……!

見えるものにだけ見えるビームが、見るものの心をぶち抜いていく。この館に渦巻いていた争い、憎しむ、侮蔑の情さえ、洗い清めて消していく。
魂だけの存在となった彼らにとっては、それこそその存在さえ揺るがしかねない、

ーーメイドとはこんなにも良きものだったのですね、兄者。
ーー巫女がかくも素晴らしいものだったとは。……フフッ、愚か者とは私の方だったな、弟者。

何者かの爽やかな声。そして天に召されていく、館に囚われていた魂達。
年月を経た埃っぽさはそのままだが、少なくともこの空間を取り巻く空気は、すっかり浄化されたようだ。最初の重苦しさは最早欠片もない。無事に、この館の脅威は取り除かれたのだ。
ともかく、今このホールにいるのは、アーマデルとイシュミルの二人きり。……二人きり?

「あれ、そういえば酒蔵の聖女は……?」
「ああ、そういえばここに来る前に、食堂を通り抜けたのだけれど。酒樽や酒瓶がひっくり返って割れて、ゴミもいっぱい落ちていて、それはもうすごい有様だったよ。我々がここに入る前に、賊が宴でも開いてたのかねぇ」

その言葉にピンときてアーマデルは、靴音を鳴らして食道に駆けていく。

『っかぁ〜……やっぱアーカムの赤は最高っすわあ……』
「お前……」

案の定、彼女はそこで一杯やっていた。一杯どころかいっぱいやっていた。

『ああ、お仕事終わりましたあ〜? いやあ〜お疲れ様でした〜』
「……まあ、疲れたよ、本当に」
『……あれぇ〜、これは何でしょう?』
「えっ」

酒蔵の聖女が指さしたのは、先に侵入したのであろう何者かが落としていった葉巻、僅かに煙が燻っていて。ぽろり、赤く溢れた灰が、酒の染みた床へと落ちていく。

食堂は、既に酒気に満ちている。そこに火種が落ちたのなら。

……あっ……。

館は、赤く明く紅く、あっという間に火に包まれた。
因みにイシュミルは、ちゃっかり先に脱出していた。

斯くして、忌むべき館。そこに囚われていた者達、そしてそこで起こったすべてを知るものは。
ちょっとチリチリになって出てきたアーマデル・アル・アマル、彼を残して他に居ない。

おまけSS『ポーチ・ドェッグ卿への報告』

おお、チミ。件の館はどうだったかね?
……何、館は既に死霊の巣窟と化していて、手のつけられない状態だった。
そして館に囚われた悪霊どもを皆消し去るために、火で何もかもを浄化したと?

……まあ、もとより誰も管理するもののなかっ場所だ。取り壊すにも手間がかかる。そこを罪に問う気はワシもないとも。ご苦労であった。では約束の調査料を……。

……ム? 霊との戦闘が発生したから、危険手当が欲しいとな?
確かに、チミの言うことも正論じゃ。では、当初の報酬より色を付けて……。

……え、色々な理由で心身ともに傷ついたから、その手当も欲しい?
……いや……ワシそこまでは知らんし……。

……ひっこわっ! チミ暗殺者みたいな目になっちょるぞ! 怖い怖い!
わ、わかった! 払うものは払うから!

……これで充分か? 充分よな? な、ならば良い。
それでは、誠にご苦労であった。帰って良いぞ。

……しかしあの青年……なかなかに悪くない容姿をしておったのう……今度兄上に『良い冒険者がいる』と紹介してみるかえ。
何か、「今度見所のあるものを呼び寄せるのだ」とか言うて、遺跡の跡地に練達より取り寄せた機械を運び込んでおったしのう。

……兄上が何をするかはわからぬが……きっと楽しいことになるじゃろうて。
ふぇっふぇっふぇ……!

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