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SS詳細

オーク肉の辛トロ炒め定食

登場人物一覧

佐藤 美咲(p3p009818)
無職

 ああ、仕事が終わった。
 私……『ダメ人間に見える』佐藤 美咲(p3p009818)はちょっとの気怠さと開放感、そして空腹を覚えながら街を歩く。
 まだお昼をちょっと過ぎるか過ぎないか……時間としては、そんなところ。
 ランチを楽しむには少しばかり遅めだが、ディナーと洒落こむにはかなり早い。

「どうするッスかねえ」

 ちょっとボサボサ気味の髪をいじりながら、美咲は周囲の店を探す。
 ニンニクマシマシのニンニクキング……パス。
 業務上の理由で、ちょっとそういうのは避けたい。明日家から出ないなら、話は別だけれども。

 酒類なんでも、シュカス酒場……パス。酒の匂いが取れなくなりそうだ。
 というか昼から飲んでる人がたくさん……元気だなあ。今日休みなんスかね。
 
 創作料理のエイダ。新鮮な魚を毎日仕入れ……あ、ダメだ。夜からッスね。
 というか、よく考えたら昨日も魚だった。となると、肉……肉?
 漂ってくるのは、強いカレーの香り。
 こんな異世界に来ても、我等が日本式カレーは健在だ。
 ちょっと惹かれるが、あまり良くない。カレーは匂いが強すぎて体臭もカレーになる。

「肉……肉かあ……」

 ああ、ダメだ。もう脳内が肉一色になってきた。
 魂が肉を求めている。
 こうなるともう、肉を食わなきゃ収まらないッス。

「……オーク肉専門店?」

 なんだろう、実に色物の香りがする。
 でも、気になって仕方がない。

「どもー。やってるッスか?」
「はいよ、いらっしゃい! 今日のランチは1種類しかないけど構わないかな!?」

 おお、そうきたか。しかしまあ、ランチであればそういうこともあるかもしれない。

「それでいいッスよ。ちなみにメニューは?」
「オーク肉の辛トロ炒め定食だね!」
「なら、それ1つ」
「あいよ!」

 定食、定食ときたか。定食の文化は何処でも不変なのを感じる。

「ほい、お待ちィ!」
「は、早いッスね!? じゃあこれ、代金」
「毎度ォ!」

 さて、どんなものか……っておいおい。セットがスープ……はいいとして、パン? パンかあ……。
 よし、まずは食べてみよう。辛トロって言ってたけど……香りはあまりないな。

「……むう?」

 凄い。このオーク肉……とんでもなく柔らかい。脂身ってわけでもないのに、どういう処理してるんスかね?
 更にそれだけじゃ寂しくなりがちな食感を炒めタマネギで補ってる。
 味つけとしては結構辛めだけど、とろみをつけることで上手くマイルドになってる。
 おまけにこのピーマンっぽい野菜を一緒に食べると味に変化が……いや、ピーマンじゃないッスねコレ。いや、マジで何? この緑の。

「おやじさん、この緑の野菜って」
「ビビロッソだね! 旨いだろ!? 今が旬なんだ!」

 ビビロッソ。聞いたこともないッスね。本気でなんだろう……でもピーマンより苦味は無いッスね。
 というか食感もなんかコリコリしてる。キクラゲ? いや、なんか違う気もする。でも良く合ってる。
 炒め物に使ってるソースはやっぱり分からないけど、凄く香ばしい。醤油……に似てるかな?
 このトロッとした辛みのある味からして、それだけじゃないのかもしれないけど。

「どれ、この辺りで口を一度リセット……」

 スープを一口……ん? これ、ちょっと甘い。しかも凄く爽やかだ。
 辛トロ炒めに占領されてた口内が丸洗いされた気分。
 こうなると、パンにも手を出してみたくなるけど……あ、柔らかいな。これはもしかして……。

「やっぱりだ。余ったタレをパンで残さず食べるやつッスね」

 確かにこれならパンで正解。いやあ、考えられてるッスねえ。
 ああ、旨い。単体じゃ飽きがちなパンが、タレ1つで豪華な一品に大変身。
 昼からこんなもん食ってていいんスかね?
 ……と、しまった。もうパンが無くなっちまったッス。

「……おやじさん、パンの追加ってあるッスかね?」
「あるよー! ちょいと待っててな!」

 ああ、幸せ。こんな店に他に客が居ないとか……皆見る目が無いんじゃないッスかねえ?
 

  • オーク肉の辛トロ炒め定食完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別SS
  • 納品日2021年08月08日
  • ・佐藤 美咲(p3p009818

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