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信じているから
登場人物一覧
名前:隠岐奈 朝顔
種族:八百万(水の精霊)
性別:女性
年齢:18歳
一人称:私
二人称:~君、~さん
口調:です、ます、ですか?
特徴:小柄で愛らしい八百万の少女。遮那の幼馴染みで許嫁。
長い黒髪に天色の瞳は清廉なる美しさを表している。
設定:
天香の遠縁にあたる隠岐奈家の長女。
見目麗しく純情可憐。誰に対しても優しい人格者。
出会いは遮那が天香家に住みだして数年経った頃だ。
天香家の祝事に呼ばれた隠岐奈家の当主(父)が同じ年頃の朝顔を連れて来たのだ。
長い宴会は大人には楽しくとも、子供には退屈なものだ。
「なあ、あさがおこっそりぬけださぬか?」
「いいのかな? おいわいごとなんでしょう?」
「だいじょうぶ。こっそりいけばみつからぬ」
幼い子供が二人手を繋いで天香の屋敷を抜け出していく。
その様子を追いかけながら優しく見守る姫菱安奈と楠忠継。
小柄な少女をひょいと抱え空高く飛び上がった遮那。
遮那が朝顔に見せたかったものは、空の上から見る京の町。
「どうだ? うえからはみたことないだろう?」
「わぁ! すごいねぇ!」
じつは少し高い所は苦手な朝顔。それでも遮那に身体を預ければ安心できた。
嬉しくて、初めて会ったのに、大好きという気持ちが溢れる。
「ねえしゃなくん。おおきくなったら、わたしをおよめさんにしてくれる?」
「およめさん? あにうえとあねうえみたいななかよしだな? いいぞ! あさがおはおよめさんだな!」
遠き日の幼い頃の約束を朝顔は忘れない。
もし、遮那の身に何か厄災が降りかかろうというのなら。
全身全霊を持って守ってみせると誓ったから。
だから。今、目の前で辛そうに別れを告げる遮那に追い縋る。
「遮那君、私は一番、君と長い時間を過ごしてる。だからね、何となく分かるんだ」
「朝顔……」
「私にも言えない事、なんだよね。何かを成したいと思っているんだよね」
掴んだ手を一瞬だけ強く握り、朝顔は離した。
天色の瞳に強い光を宿し、遮那を見つめる。
あの頃より随分と見上げるようになった視線に目を細め。
「私は貴方を信じてる。だから、行ってらっしゃい。必ず此処に帰って来て、ただいまって言ってね」
「……」
遮那は返事の代わりに朝顔の頬を撫で、温もりを唇に落としてから飛び立った。