PandoraPartyProject

SS詳細

PPP探検隊〜古代遺跡のその奥に、神秘のプールを見た!〜

登場人物一覧

アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

 白く輝く大理石の柱。石畳。アーチ。そしてその向こうに見える、キラキラ輝く水面。
壁面をびっしり覆い尽くす緑のカーテンは、何となく癒やしの空間と綺麗な空気を齎してくれる……気がする。
依頼人から渡された地図と、目の前の光景を何度も見比べる。そして、確信とともにアーマデルは頷いた。

「今回調査しろと言われたのはここ、だよな?」

うん、やはり間違いない。意を決して、目的地のアーチを潜ろうとしたその時。

「ん、足首が……?」

こそばゆい。そう思ってみてみると、彼の足にまとわりつくのは、白輝の壁を彩っていたあの蔦植物。

「なっ……! ちょっと、放せ……うわっ!?」

 そのままいともたやすく持ち上げられ、くるんくるんぽいっと、アーマデルは投げ捨てられてしまった。しかし幸いにも落ちた先は、柔らかい葉が多い植え込みの中。それがクッションになり、アーマデルは擦り傷一つ負ってもいない。
ガサガサ、ピョコっと頭を出してみれば、先の植物が蛇のように鎌首をもたげ、周囲を警戒している。それを除けば特に異常はなく、相変わらずセレブリティーを感じる豪華なプールがそこにある。

「……あの蔓、少し魔力のようなものを感じるな。一応、ここの守護者なんだろうか」

それもそうかと、アーマデルは溜息をついた。依頼人の言葉通り、あれが易易と『招待客』以外を通してくれるとは思えない。

……そう、あれは。
この所発掘された古代の姫騎士専用プール──プリンセス・ナイト・プールなのだから!

事の起こりは、つい先日、この場所をとある女性考古学者、そして護衛の女剣士が発見した事。
しかし、調査から帰還した彼女達は常軌を逸した恍惚感と語彙力の崩壊のため、ろくに内部の様子を話せない状況だった。

そこで、男性でそれなりの腕がある……それこそアーマデルのような人材による調査が求められ、件の考古学者の同僚からの依頼で、今日この場所に来ている訳だが。

ああしかし、何ということだろう。映えるプールの光を見ていると、電脳空間でのあの一件を思い出してしまう。

色とりどりに輝く噴水。何を言ってるかはさっぱりわからないが、ドヤ顔している事だけはわかったあの黒い影。……そういえば『現実の彼』は元気にしているのだろうか?

 そんな『ナイトプール……パリピ……ウッ頭が……』と魘されるアーマデルの頬に、冷たい感触があたる。驚き一歩引いてみれば、落とさぬように蔓に何重にと巻き付けられた、透明なコップと、7分程まで器を満たす、清涼で透き通った水が視界に入った。

「えっ、ああ……これ、くれるのか?」

返事の代わりに、『飲め』とばかりにさらにグイグイ押し当ててくる。夏の暑さと黒衣の熱さで意識が遠のいたとでも思ったのだろうか、彼(女???)なりに気を遣ってくれたのだろう。気持ちは嬉しい。嬉しいけどひゃっこい。

それを受けとりぐいっと飲み干す。コップが空になるのを見届けると、更に飲むかとばかりにピッチャーを持ってきたが、『もう大丈夫だ』と遠慮すれば、静かにコップともども下げてくれた。
思いの外対応は丁寧だが、しかしアーチにはいつの間にか緑の壁が作られており、やはりアーマデルを通してくれる気配はない。

それでも隙は無い物かと一度わざと離れてみたり、ガラスをぶち破る勢いで走ってみたり、アーチ以外の場所からよじ登っても見たが、やはりつまみ上げられてはポイの繰り返しだ。

「まあ、最初から『姫騎士専用プール』と言ってるしな……」

ふうと大きく溜息をつくが、まあ仕方ないと思考を切り替える。
勇敢たる女剣士の精神さえ崩しかねない危険な場でもあるのだ、場合によっては無理せず帰還せよと依頼者からの言もある。正直に『男性は侵入不可能である』と報告をしよう。

「俺は駄目だったけど……件の女剣士と考古学者はそれなりに若い女性だったというから、ギリギリ『姫騎士』カウントに入った、という事なのか?」

……ROOの俺は巫女だったけど。例えば女性として扱われてきた男性等の場合は、どういう結果になるのだろう。そのあたり、考察の余地がありそうだが……。

そう呟き踵を返した、その時の事だった。

……『巫女』、だと?

ざわざわ、がさがさ。風も吹いてないのに、突如植物達がざわめき出す。
植物と通ず能力がなくとも、先程までとの様子の違いに気づくには充分すぎた。

審議、審議ィ!
巫女ですってよ奥さん。
確かになんか憂いみがありよりのおおあり。
どうする? 処す? 招す?
じゃ、今回は特別って事で……。

そんなやり取りが行われていた事など、アーマデルは知る由もない。
まるで淑女の手を取るように、守護者は彼の手首にそっと葉を添えてくる。
先程まで固く閉ざされていたアーチも嘘のように、その口を開けて彼を迎え入れようとしている。

よくわからないけれど、無事に詳細な調査に移れるというのなら、これ以上に喜ばしい事はない。
しっかり、データを持ち帰らなくては……!

  • PPP探検隊〜古代遺跡のその奥に、神秘のプールを見た!〜完了
  • NM名ななななな
  • 種別SS
  • 納品日2021年08月03日
  • ・アーマデル・アル・アマル(p3p008599
    ※ おまけSS『冒険者Aからの報告』付き

おまけSS『冒険者Aからの報告』

件のプールは、本来ならば一定の年齢層(もしくは、その年代に見える)女性のみが侵入できる場と思われる。

 故に、当初は当方も、ナイトプールの守護者と思わしき使い魔(蔓植物のような生物?)に激しく侵入を拒まれた。とはいえ、抵抗の結果怪我をさせる意図はないらしく、物理的な通行止め、もしくはクッション性の高い場所への放り投げに留められた。

しかし、断念する直前になって、彼(女?)の気まぐれか否か、何故か潜入を許された。ここに内部の詳細を示す。

 内部は外観からの推察通り、ほぼ白の石材で統一されており、芸術的な彫刻も数点並ぶ。
その彫刻に見下されるように、成人数名が泳げる程度のプールが存在する。

水中は光源により常に光り輝いているが、光源は不明。何か魔力的な物と推察される。
蔓植物は自らが客人と認めた者には甲斐甲斐しく世話を焼く習性があるらしく、当方も何度かカクテルのようなものを勧められた。美味しかった。

 その水質は、その、言葉ではとても言い表せない。
自分もそこに入った事は覚えているが、その後の事が記憶にないのだ。
ただ、そこを上がったあとは決して不愉快な感触はなく、むしろ心地よかったような気分はしている。
また、後日知人に「肌が綺麗になった?」と問われた事は印象深い。

帰還の際も、使い魔に丁重に送り届けられたことを、ここに記しておく。

報告は以上。
詳細は追って調査されたし。

PAGETOPPAGEBOTTOM