SS詳細
君がやってきた日
登場人物一覧
名前:時尾 鈴
種族:ウォーカー
性別:男性
年齢:Unknown
一人称:俺
二人称:~君、~さん
口調:だね、だよ、でしょう?
特徴:生まれながらの猫憑き。暁月にとって家族のような存在。
設定:
ビルの狭間の闇の中。
悪性怪異『夜妖』を払うのが私、燈堂 暁月の仕事。
今日の夜妖は少しだけ厄介なものだ。いや、倒すだけなら話しは早いのだけど。
どうやら先客が居るようだ。夜妖の領域に囚われた者が居る。言わば被害者だろう。
以前の私であれば――それこそ高校時代まで遡れば。
犠牲はやむなしと斬り捨てていたのかもしれない。
実際の所、そういう性格だった。昔は。
燈堂の為に夜妖を払う役目に奔走していたのだ。
けれど、詩織と廻。三妖達。他にも門下生達が私を少しずつ変えてくれた。
だからさ。君が助かるのは今まで私に幸福を与えてくれた彼等が居たからなんだよ。
もし、君がこの夜妖の中に囚われて生き残っているのだとしたら。
君には才能があるのかもしれない。それは世界の救世主たり得る力だ。
だから。生き残ってくれよ。
生きて生きて。
そして、この手を掴んでおくれ。
廻を夜妖の中に潜り込ませ、ビルの狭間の闇の中を走らせる。
君を其処から解放するために誘導するんだ。
きっと君は怖がるだろうけど。まあ、そこは我慢してほしい。
おいで。おいで。
大丈夫。ここまで来ればもう安心だから。
闇夜を断ち切るは月を纏いし刃。
限定解呪。――廻廊ノ光。
ビルの闇に月明かりが差せば、震えた君の瞳が私を見つめていた。
「――間に合ったね。君、よく頑張ったな。偉いぞ」
手を差し伸べて抱きしめれば、大粒の涙を流し縋り付いて来た。
それはまるで今生まれ落ちたばかりの赤子のように。
恐怖の中で見た心からの安堵の顔だった。
「そうだな。今日は1月22日。鈴、君の誕生日だ。私が君に居場所をプレゼントしよう」
だから、そんな捨てられた猫みたいな寂しそうな顔をしないでおくれ。
大丈夫だよ。もう君は一人じゃない。
生きていてくれたから。この手を掴んでくれたから。
きっと君は私の家族になる。そんな予感がしているよ。
「さあ、一緒に帰ろうか、鈴」
おまけSS『お昼寝』
「おや、鈴と廻が丸まって寝てる。白銀、毛布はどこだい」
「あらあら。可愛らしいこと。毛布はここにありますよ。暁月さん」
「ありがとう。風邪を引いてしまうといけないからね、掛けてあげよう」
「ふふ、こうしてると兄弟みたいですね」
「確かに。年の近い弟が出来て廻も喜んでるだろうね」
「益々お仕事頑張らないといけませんね。『お父さん』!」
「待ってくれ、白銀。お父さんは無いだろう。せめてお兄さんにしておくれ」
「まあ、私からしてみれば5年や10年の差なんて瞬きの様なものですからね。
ここに居る人達は等しく子供ですよ。牡丹もそう思っているでしょうね。可愛い可愛い子供達」
「白銀ママには敵わないね」
「そうですよ。暁月さんが本家からここに来たばかりの頃、夜中にトイレに行くのが怖かったんですよね」
「待って! 何で知ってるのさ? そんな事、今の今まで忘れてたよ!」
「私はこの地の事なら何でも知ってますよ。だから、これからもずっと、あなた達の事を見守ってます」
「それは、頼もしいね。私が死んでも白銀が居れば大丈夫そうだ」
「いや、そこは押しつけないでください。当主である貴方が守らないで誰が守るんですか」
「手厳しいね」
「勿論ですよ。白銀ママなのでしょう? しっかりしてくださいね。我らが御当主様」
「肝に銘じます」