SS詳細
巡り逢い、そして別れ
登場人物一覧
ヴェルグリーズ……同じ名を持つ俺の父さん。あなたもこんな気持ちであの日、嫁いでいく姫を見送ったのかな?
その手に愛の証、約束の印として一振の剣だった俺を携えながら。
今なら解るよ。
引き裂かれる痛みも、胸に満ちる悲しみも、身を焦がす妬みも。
だけどあなたは苦しみながら愛と誠を貫いた。
たとえ命を賭しても俺だけは折らせず生かしたように、果たした約束が姫の血脈、王家の末裔を遺したんだ。
オデッサ姫の名を取りカノッサと名を変えたのは、いつの日か再び騎士の愛剣と巡り逢うための、目印のようなものだと……
信じられる?
今となっては遥か昔の、お伽話のような騎士と姫君の悲恋に、こんな後語りが残されていたなんて。
守るよ、俺もまた
なのにどうしてかな、嬉しいのに涙が滲むんだ。
昔も今も、結ばれることはないんだなって……俺はやはり別れの精霊みたいだ。
おまけSS『嫉妬』
「珍しいな、お前が舞踏会なんて」
「いつもの軍服だが」
「そうじゃねぇよ。こう言う場に行くのが珍しいって言ってんだ。しかも一人で」
「仕方があるまい。淑女のみの集まりとあってはお前を連れて行けない。だが安心しろ。誰からも口説かれなかったから」
「だから! 一人は危険だって言ってんだ」
「妬いてくれてもいいのに」
「妬くかよ」
「そうだな、私はお前の主、そして間もなく妻になる」
「ヴィルヘルミーネ」
「なんだ」
「俺のことが好きか?」
「無論だ。何をいまさら」
「そうだな、今さらだ」
「ところでな、私だって妬いたりはするのだぞ? ベアトリーチェ様のこととか、ヴェロニカ様のこととか。私の男はお前だけなのに、お前の妻は何人もいたじゃないか!」
「そっ、それは血を遺すために……」
「じゃあ私のことも?」
「うっ」
「冗談だ。愛されていて私は嬉しい」
「俺もだ、ヴィルヘルミーネ。お前が好きだ。イイ女になったな」