PandoraPartyProject

SS詳細

可憐なる花

登場人物一覧

ノワ・リェーヴル(p3p001798)
怪盗ラビット・フット
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール


 ……最近、道行く同世代の女の子たちがとっても綺麗に見える。
 いい笑顔とか、楽しそうとか、そういう事じゃない。
 僕よりも、大人に見えるんだ。
 僕は、まだまだ子供のままという事なのだろうか。
 お気に入りの服、お気に入りの髪飾りをつけた自分と、あの子たちの何が違っているのだろう――。

 もしかして。僕のオシャレ意識、低すぎ?

「色々頑張ってみたんだっ!
 雑誌を買ったり、オシャレそうなお洋服屋さんに行ってみたり。でも全然駄目……わからないんだよね~」
「なるほど。僕で良ければ力になろう。ではさっそくデートと行こうか」


 賑やかな街並み。
 行き交う人々。
 花束を重ねた庭の上に、花柄のワンピを来たマネキンが立つVP。
 一層大きなお店の中、ひんやりとしたショーウィンドウの奥に見える、色取り取りの―――、スイーツ!
「――じゃないだろう、今日の目的はこっちだよ」
「はう~」
 『盗兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)は『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)を引っ張っていく。
 ノワ曰く。まだまだニーニアは花より団子なのかもしれないと、遠退くスイーツを見て切ない表情を魅せる少女をへ、思わず笑みを浮かべた。
「いつまでお菓子の方向を見ているのかな、着いたよ」
「だって、あんな可愛くデコられたチョコを見たら誰だって――わあ」
 二人がやってきたのは、まず、コスメ店である。
 先程の煌びやかなお菓子と似ていて、光沢があって煌めくコンパクトや、デザインがアンティーク風な口紅。
 今まで見た事が無いようなものを手前にして、ニーニアは思わず息を飲んだ。
「僕なんかが来て良い場所じゃない気がしてきた」
「そんな事ないさ。じゃあ、選んでいこう?」
「本当にいいのかな?!」
 はしゃぐニーニアは、乙女の卵のようだ。
 さて、ニーニアの肌の色は比較的白い方だ。薄目の色にこってり濃い色を載せるよりは、程よくなじむ色のチークなんかがふわりとして愛らしい――等と、ニーニアの肌の上に実際に色を乗せつつ、ノワは一番合うコスメを丁寧に選んでいく。
 そして、ノワのコスメ選びは選ぶだけではない。
 矢張りこういうのは、本人が日常で使えるようにならなければ意味が無いのだ。
「アイラインは、思い切りよくね?」
「うーん最初は手がぶれそう。ていうかブレた」
「よし、じゃあ帰ったら練習するという事にしよう。次は――服だ」

 一通りコスメを見終わり、一旦カフェで休憩を取ったのちに、二人はファッションを見に来た。
 花柄に、ドット。ボーダーや無地。選択肢は広い。少し目線をずらせば、照明を受けているアクセサリーが煌めいて揺れている。
「折角だから色んな服を着てみるかい?」
 ノワはニーニアを先導しつつ、ファッションの種類は多種に及ぶ事を説明した。
 フェミニンや、カジュアル――最近はどんな服にもフェミニンが入ったりするのだが、その時の流行りで左右されるし、流行は割と一定期で回転する。あとは定番のスポーティなものだったり、流行に捉われないで自分らしく服を選ぶカデコリなんかも存在する。
「ニーニア君に似合うのを探さないとね」
 という訳でまずはカジュアルなものときた。
 ニーニアの細い身体に当ててみたがノワは首を傾けた。動きやすそうだが、少し違和感があるような気がするのだ。それに、もっと装飾があったほうがニーニアらしい。
 次に持ってきた洋服は、ロリータファッションだ。ピンクが基盤だが、あしらわれたレースは甘すぎず、バランスが良い。
 着てみて、とノワから渡された瞬間にニーニアは顔が少しだけ赤くなった。こういうのも経験――ニーニアは早速それを着てみて――。
「うんうん。やっぱり似合うね……」
「さ、流石に恥ずかしいかも。も、もっと普通なのがいいな?」
「うん……少々やり過ぎか」
 確かに愛らしい顔立ちのニーニアには、フリルやレースの付いた洋服がよく似合う。
 だが今回の『大人っぽい感じ』という内容からはかなり遠のいてしまう。
「と、なると……森ガール風っていうのはどうだろうか?」
 今度は、ふんわりフリルと花柄をあしらった、クリーム色のワンピースに白のフリルスカート。靴は茶色のベルトシューズ。抵抗なく試着室に消えていくニーニアの背中も、何処か納得したように楽しんでいる。
 試着室が開かれ、出てきたニーニア。晴れ晴れとした表情は、この洋服が気に入ったのを示し、自然としっくりときた服装に、ノワは大きく頷いた。
 成程、彼女がいつもしている眼鏡もいいアクセントとなっており、百点満点。
「うん、これがよさそうだ」
「わあ、こんなお洋服初めてかも!」


 時刻は午後15時。
 ショッピングが終わり、ニーニアとノワは食べ歩きを堪能した後に、ノワの部屋へとやってきた。
 部屋に通され、早速メイクの講義から始まる。
 椅子に座ったニーニアの手前には、大きな鏡が彼女を映し。椅子の後ろには、ノワが立っていた。
 今、正に買ってきた商品が椅子の隣の小さなテーブルに並べられていくと、ごくり、ニーニアは生唾を飲んだ。緊張して、自分の手をぎゅっと握り、そんな彼女を見てノワはくすくすと笑う。
「よ、よろしくお願いいたします……! できれば、ナチュラルメイクっていうのかな、自然に見えるやつがいいな」
「うん、了解した。まず化粧水でスキンケアをしてから。……リキッドファンデで薄く下地」
「わぷっっ」
 まずはノワが実際にニーニアの顔にメイクを施していく。
 勿論、一回の量や塗り方をニーニアへ細かく落とし込みながらだ。ニーニアはメモを片手に、鏡の奥の自分とにらめっこ――時折、ノワの手が耳や髪に触れるとくすぐったい。
「チークを軽くのせてから、パウダーファンデーションで仕上げ」
「わぷぷっ」
 普段のメイクと変わって、ノワが教えるメイクはニーニアが一番ニーニアらしくなるメイクだ。
 花が咲いたように色付いた頬に、そして。
「唇にはナチュラルな色のリップグロスが良いかな」
 潤いが保たれた唇に、思わず目がいく。
「わあ……。今日、わあ、しか言ってない気がしてきた!」
 完成されたメイクを見て、ニーニアの心はときめきを放っていた。昨日とは違う自分、数時間前とは変わった自分――それは、いつも通りに笑った表情さえも違うように見えた。
 ノワは化粧落としを持って来ながら、ニーニアの肩にそっと手を乗せる。
「さっ、一度落とすから……今度は自分でやってごらん?」
「は、はひ……」
 今作ったものを再現するように、なるべくノワは口を出さないようにしながら、ニーニアが一人で自分の顔に色を乗せていく。ファンデも、チークも最初に顔に色を乗せるときは慎重であったし、慣れれば飲み込みがいい彼女は上手にやってのけた。
「そ、アイラインは思い切りよく……」
「ぶ、ぶれます……!」
「あはは、練習していこう?」
 満足できない点は何度でも繰り返し、ノワは根気よく丁寧にニーニアを指導していた。
 結果として、ノワの適格な言葉選びもあって、ニーニアがノワが作った通りの化粧を再現するのには時間はそんなにかからなかった。
「これで僕も大人のレディに近づいたかな?」
「もちろんだよ」
「! ……うんっ」
 鏡の手前、少女は一人の女性へと変わる。
 そんな大人の階段へエスコートしたノワは誇らしく、そして、可憐な花がいつまでもそのままであるようにと願った。

  • 可憐なる花完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2019年08月18日
  • ・ノワ・リェーヴル(p3p001798
    ・ニーニア・リーカー(p3p002058

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