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「青い青い、夏が来るんだ。俺のまだ知らない、暑い夏が」
「青い青い、夏が来るんだ。俺のまだ知らない、暑い夏が」
登場人物一覧
……ふぅ。ヒトの身体というものはなかなか不便だけれど、剣の時とはまた違った心地がしていいものだね。いつも、そう思う。
例えば、そうだね。呼吸をしてみるんだ。春なら、柔らかい花の香りがしたりするだろう?
でも夏は違う。夕立ちの後みたいに、じめっとしていたり。夏の暑さで空気の温度が、少し高かったりもする。
それにほら。じりじりと、焼けるような暑い日々が続くこともある。反対に、すっきりとした爽やかな暑さの時もある。
どこまでも遠くに広がった蒼穹(そら)は、澄んだ青色。肌を伝う汗だって……悪くはないだろう?
ふふ、風流? そんなことはないよ。唯、人間(キミ)達とは見方が違うだけさ。
価値観も、育ち方も。生まれたところも。全部全部、違うだろう? たった、それだけ。
あ……これは、何の音だろう。
……へえ、風鈴って、言うのかい? 風に、鈴。それで、風鈴。ふふ、いいね。また新しく、世界を知ったよ。
夏は、昔から剣を振るには向かない季節でね。汗で手が滑るし、鎧を着るにも暑い。
だから少しだけ、夏のことを知ってみたいと思っていたんだ。
去年は目まぐるしくて、あっという間だったから。こうしてゆっくり過ごせるのは、初めてでね。
鮮やかで。眩しくて。とても綺麗な季節だと思ったよ。
っわ、冷たい……え、水分補給?
なんで……汗? ああ、そうか。汗も水分だった。
ふふ。有難う。熱中症には、気をつけないとね。
おまけSS『Clear Blue』
「……冷たい飲み物、美味しいね。っと、そうだ。忘れてた。
これから夏祭りがあるみたいなんだ。一緒に、どうだい?」
青い空と、煩い蝉の声。
それから、あなたの笑顔と、共に。