SS詳細
スパイ・エージェント美咲の極秘作戦 ~有明と云う過酷な戦場~
登場人物一覧
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世の中に極秘情報がある限り何処の世界にも諜報と云う活動は存在する。
無論、混沌世界も例外では無い。或る日の事、ローレットに謎の親展封筒が届く。
「えっ? これが……私宛にっスか?」
『ダメ人間に見える』佐藤 美咲(p3p009818)は情報屋から謎の手紙を受領した。
どうやら裏社会の組織から美咲だけに宛てられた極秘作戦の依頼らしい。
美咲は事情を察すると個室を借りて封筒を慎重に開封する。
「……へぇ? 有明の同人即売会に紛れて組織間の暗号取引の仲介役っスか?」
美咲は「同人誌」と「コスプレ」のブースにて極秘文書を受け取る役だ。
其の後、会場内の某コインロッカー宛に件の文書を届けるそうだ。
「ふむ? おそらく先方は……私の正体を知っているんスね?」
経歴を隠蔽して居るが美咲は列記としたスパイ・エージェントである。
其れも過去に居た元世界の昔話だが、混沌世界でも知る人ぞ知る逸話らしい。
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有明とは大規模の同人即売会が開催されるオタク界隈の名所である。
再現性東京でも有明は忠実に模倣されて居て真夏では熾烈な戦場と成る。
「ふぅ……。流石に……真夏の有明っス……。あっ、あのブースっスか?」
午前の開幕同時に会場へ雪崩れ込んだ美咲であるが灼熱の寿司詰め状態だ。
兎も角、第一目標で在る創作漫画の南ホール迄は決死の覚悟で突撃する。
「すみません、桃色二枚、お願いしまっス?」
「……はい、これですね?」
美咲が合言葉を投げると売子は一瞬戸惑ったが件の依頼と察した様だ。
美咲はメイド美少女物と執事美少年物の薄い本を各一冊丁重に受け取った。
「うへぇ♪ 萌えっスね♪」
美少女や美少年が大好物な美咲は思わず頬が緩んで鼻の下を伸ばす。
頁を開くと二次元特有のへっちシーンが炸裂する正に桃色な書籍であった。
「おっ? これはっ!」
二冊共に奥付の頁に封筒が挟まって居た。中身は恐らく暗号文書だろう。
「まずはゲットっスね。次はコレを届けるっス」
美咲は依頼で在る事を思い起こすと心機一転して再び群衆に紛れて邁進する。
中央ターミナル近辺のコインロッカーに命辛々辿り着き最初の仕事を遂げた。
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午後の部では美咲はコスプレサークルのカメラマンと会う手筈に成って居た。
コスプレをする必要が有るらしく美咲は更衣室で準備された衣装に着替える。
「むむっ!? 私にはちょっと……アレっスかね? でも仕事なので……」
どうやら美咲は真夏ビキニ風の萌え魔法少女に変身してしまった様だ。
布面積が小さいのか、たっぷりとしたちちしりふとももが肌色を主張する。
中庭のコスプレ広場に現れた美咲を発見するとカメラマンが歩み寄って来た。
先方が美咲を認識して居るらしいので試しに合言葉を投げてみる。
「触手HARDでよろしくっス」
「はい、あの触手ですね? よろしくです」
合言葉が通用するとカメラマンが笑顔で中庭ブースへ案内してくれた。
美咲は触手蠢く海岸のパノラマを背景にして写真撮影の指示を受ける。
「えっ、ええ!? 撮影するっスか……このたぷたぷの私を……?」
「勿論です。むしろ美咲さんみたいなむっちりした娘は需要があるんです」
カメラマンは綺麗な美咲を撮りたいと熱心に説得する。
褒められて満更では無い上に任務も有り美咲は渋々承諾した。
「こ、こうっスか?」
「うん、いいですね! もうちょい胸を寄せて、脚を開いて?」
美咲は赤面し乍らも指示通りのへっちポーズでシャッターを切られる。
脂が豊艶に乗る二十七歳肥満体型のお姉さんは其の層にウケる魔法少女だ。
「さて、次は触手シーンを撮りましょう!」
「うわっ、マジっスか!? しょ、触手が……うねうねっスよ!?」
水中で蠢く触手が水飛沫と共に上陸すると美咲の肢体にペタペタと絡み付く。
魔法少女が触手と組んず解れつ格闘するシーンがシャッターに収められた。
「どんどんいきますよ! その次は魔法少女の敗北シーンです!」
「きゃっ、きゃあああ!? な、なんか、どろどろと出てるっスよ!?」
触手から特殊な液体が噴射されると美咲の肢体に透明粘液が飛散した。
しかも何故か其の粘液は只でさえ布面積が小さいビキニを溶かすのだ。
「いやぁ、最高です! 美咲さん、もういっそ、触手に喰われて下さい!」
「あはんっ!? も、もう、ダメっス!? 触手がっ、いっぱいっスよ!!」
最後には粘液が輝く豊満な肌色に触手共が渦巻き状で絡み着く始末だ。
アタフタとパニックで暴れる美咲の頭上で触手が大口を開いて噛み付いた。
「ぎゃあああ!? ……って、このメモ用紙は?」
触手の口から渡された紙に謎の言語が羅列して居る有様から察すると……。
「なるほど、これが暗号の……。はぁ、HARDだったっスよ」
美咲は事情を把握するとカメラマンに礼を述べて撮影会から撤退した。
過酷な極秘作戦で在ったが、物を指定のロッカーに届けて依頼は無事完了。
了
おまけSS『スパイ・エージェント美咲の極秘後日談』
先日のスパイ活動が各界で高く評価された美咲には其の後も依頼が殺到する。
本日もローレットに呼ばれた彼女は何通もの親展封筒を受け取った。
「えっ、マジっスか!? これ……全部、私宛っスね!? どれどれ……?」
余りの人気沸騰で美咲は己の眼を疑ったが現実として依頼の封筒が山積みだ。
「ふふっ♪ ま、この程度はざっと私の実力っスね♪」
美咲ぐらいのトップのスパイ・エージェントで在ればあり得る展開だろうか。
美咲は胸を弾ませて封筒を一通ずつ丁寧に開封してみるが……。
『な、なんとっ!? こ、これはっ……一体、何の話っスか……!?』
――温泉地にてスケスケのタオル一枚で踊る依頼。
――希望ヶ浜の超ミニスカートJKに扮してデートする依頼。
――海辺でスライムにマイクロビキニを食べられる依頼。
……以下、ほぼ同文の依頼ばかり。
どうやら妖しいへっちな依頼の数々が美咲の元に舞い込んだ様だ。
美咲は其の手の依頼者層から熱い気持ちで評価されてしまったらしい。
了