SS詳細
楽園に行く方法
登場人物一覧
ティー・タイムに用意したザクロ・ジャムを化粧したのは昨日の出来事だった筈だ、ひとつひとつの仕草からは確かな意味が生じ、それらはカップの底に手をあてる事と等しい。おまじないを繰り返し行った現、最早、私を尊く想うものはいないだろうが問題などない。嗚呼、血刻する際は獲物の瞬歩を見極めるべきだ。ぐるぐると回転していた鉄の包みの改めに『何人』喰われたかなど記憶していない。うまい、うまい、美味しいホット・チョコレートだ、カカオ100%で臓物80%、何故不足しているのかは冥土連中に訊いてほしい。最も、彼女等は儚い身の上だろうが――勿論、知っているのは私だけである――しゃなり・しゃなりと舞台上で踊る貌は蝶よ花よと育てられ、箱入り娘として認められた証、もう愛々しいだけでは居られない。長く伸ばした髪の毛を手刀でバッサリとやれば死に気勝、何が何でも己に【まさる】と誓わねば成らないのだ。爪先から脳天まで木苺ソースで塗れていた。嗚々、半ば伝説と化した生徒会長よ、もしや貴様は山ガールの真似事をしているのか。意図的に眼を乱したら周囲、数多の生命達がフリフリの坩堝に堕ちていた――ごくり。真逆、私が『唾を呑んだ』と謂うのか。彼女等は『二階から目薬』だと大笑いすると謂うのか。違う、この刹那の為に総てを犠牲にしたのだろう? よく言うではないか『季節外れの転校生』は流派によって様々だと。ならば私も十人十色の業を習得し、マイナスも糞も啜って魅せた。そうとも、私は爆発四散した傍付きの生徒を知っている。何を隠そう、彼女こそが私の友達だったのだ。思い出すのは肝を試した日々――美少女の部屋に入らずんば唇を得ず。はじけたクッキーの花言葉はこれからあなたを粉砕します。深夜0時以降のチャイムが未だ脳髄に滓れている、響き渡った睡眠不足がお肌に現れるも後光に潰されていた。どうやら最低でも私に明日は存在しないらしい。真っ白な背景から突如飛び出したのは形容し難くも風邪ウイルスだった。微粒子じみて肺をハイと侵し、ぐつぐつと私の咽喉を熱してくる。幻覚だ。何もかもは『私自身が造り出した』贋作だ。本物に中てられたならばこの程度では済まないだろう。誤法々々と吐きつけた時々、世界がひどく臍で茶を沸かしていた。凄まじく魅力的な浄華器官からの馥郁、決して人工的なものではない、蜂蜜と柑橘の提灯鮟鱇……無意識においで、おいでと手招かれている。びちゃびちゃ、と、聞き慣れない音が蝸牛を抱擁していた。莫迦な、私がグロテスクさに嘔吐している?
美少女の正体見たり枯れ尾花。胃袋から留まる事のない地獄がこぼれていく。蓄えに蓄えた力が徐々に萎んでいくのだ。たとえば子供に渡したフーセン・ガム、鼓膜を破るよりも早く割れた心地か。それでも『私』は生きている。まだ勝利を咀嚼する術はあるのだ――生徒会長の坐に就いたら委員会を再構築しよう、長連中は全く、清葬の術がなっていないのだ――ぐしゃり。顔面がずきずきと天国を訴えて、ぎゅるぎゅるとめを回されているか弱さを覚えていた。何が起きた。何が起きている。私のアバラは一本も潰れてないと謂うのに、成程、能ある鷹は爪を隠せないのだ。綺麗な薔薇には棘が在り、いとしくも近付く者を傷付ける。もう力が入らない、飛んで火にいる夏の虫、二度とスイカ割り出来ない体になってしまったのか。這う這うの體を圧しながら生徒会長の棲家によっていく、しかしよればよるほどに麻薬感に酔わされるのだ。百合の歩みを観察する事も無く、全てが一へと混濁されている。ぐにゃぐにゃと歪んでいるのは世界なのか私自身なのか、インドアな己にはおそろしく染み込む宇宙からの仔猫、意識を手放して終ったほうが楽だろう。意図しない安楽死は流派としての傷跡になるがこれ以上正気を失いたくはないせめて私が私で在る時点で儚くしてくれないかお願いお願いしますお願いですから……私もあなたも揺れて眩んで、ぐにゃぐにゃ、ぐるぐる! 嘘でしょう! ひっくり返ったらなんて素敵な青空なんでしょうか! まるで腐乱死体が重なって生徒会長を称えるようですわ。こんなにも体位が曲がっている私を彼女は救ってくださるのでしょう。なんて美しい死亡フラグかと迷子の迷子の誰かさん、お隣を覗き込めば『似たような恰好』の新鮮な傷の無い死体。
生徒会長に中てられた者は約一週間ほど『脳髄』だけ生きている。
尋常ならざる美少女力は思考を多次元へと引き上げ、ある種の楽園へと導くのだ。
見てください。ねえ、其処のあなた。私の意識はしっかりと『まだ』存在しています。たくさんの混沌に抱擁されながらも、底へと融解しながらも、彼女の起立姿を見るまで死んでいられません。あなた、隣にいるんでしょう。だったらちゃんと晒してくださいよ。明日は楽しいパンケーキの時間じゃないかしら――面倒臭そうな美貌――穴があったら入りたいわ!
おまけSS『美少女語録』
【ティー・タイム】
美少女間で流行している惨事の儀式。人肉じみたザクロ・ジャムはおしゃれ美少女に絶大な人気。
【血刻】
または遅刻。相手の力を利用して儚くする様、シールドバッシュに近い。
【ホット・チョコレート】
チョコレートと臓物を熱した飲み物、手料理好きの美少女間で根強い人気。
カカオ三割臓物六割素敵なもの一割が通の飲み方。
【愛々しい】
格下の相手を殺し続けて来た証、蔑称。
「あいつはひどく愛々しい奴だ、アバラが折れていない」
【十人十色】
複数の流派の技を盗む禁忌、総じて十人十色を行った者は破滅への道を進む。
【爆発四散】
体内の美少女力が急激に増幅し、肉骨が耐え切れなかった者の末路。
本来美少女にはそのような事は起きない故、噂程度でしかない。
【美少女の部屋に入らずんば唇を得ず】
危険を冒さなければ殺す事は出来ないの意。唇とは即ち命である。
【クッキー】
よく爆ぜる。花ではないが花言葉を持つらしい。
【カタツムリ】
もしくは蝸牛。美少女の発達した耳、その中は異常なほどのエネルギーが渦巻いているという。
【美少女の正体見たり枯れ尾花】
美少女など存在しないと主張した一般人の断末魔、そんな事は有り得ないの意。
【地獄】
美少女は吐物の事を美しいものとして表現する事が多い。
【フーセン・ガム】
おさない美少女が好んで噛む物質、敵の近くで破裂させることで鼓膜を破る事が出来る。
【めを回す】
赤子の手をひねるに等しい。愛でるように振り回す、抉った目玉を弄ぶ、相手を嘲る際に使う言葉。
【能ある鷹は爪を隠せない】
生徒会長など存在するだけで周囲に影響を与える者を指す。
【スイカ割り】
とある流派が裏切り者を始末する為に編み出した処刑法。
罪人を地中に埋め、その頭をカチ割る。目隠ししたまま行うのが常識。
【宇宙からの仔猫】
理解出来ない、理解したくない状況に陥る事。脳裡に猫が描かれる事。
【腐乱死体】
美少女力が完全に抜けた死体、埋められていないものを指す。
【穴があったら入りたい】
真逆、死体がそのような事、思わないだろう?
【楽園】
生徒会長の存在に中てられ、狂死した者の逝き先。
とある研究者が死体を解剖したところ、脳髄はまだ生きていたという。
少なくとも一週間は経過していたらしい。
その詳細は未だ不明。