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SS詳細

ツルギとコノリと『レギオン』の話~完璧に~

登場人物一覧

ハイタカ(p3x000155)
誰彼
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者

 介入手続きを行ないます。
 存在固定値を検出。
 …………
 ………
 …

 ――介入完了。
 Rapid Origin Onlineへようこそ。今よりここはあなたの世界です。

 ヨタカは目を開けてみた。
 伝承だ。やわらかい日差しが心地良い。一面に緑を散らしたように木々は萌え、名もなき草原を撫でながらふくいくたる風が吹いてくる。ふと違和感を抱いてヨタカは視線を落とした。足をずらしてみれば一掴みの野草。その中心にしっとりと咲き誇る慎ましやかな花の、なんと瑞々しくたおやかなことか。『存在』している、ここには、何もかもが見た目そのままの姿で。ヨタカは胸を躍らせ、共にログインした愛しい番を振り返り、固まった。
「……大きくなったね、紫月……。」
(ん? 我(アタシ) どうなて?)
 頭の中へ直接声が響いてくる。声自体はまちがいなく愛しい番のものだ。けど、けど。
「…えっと、ええっと……すごく、大きくなってる…。」
 そこに立っていた、と表現することさえ憚られる、巨躯の物体を……ヨタカはどう口にすればいいものやらわからなかった。あえて、ヨタカは懸命に頭の中を探し回った結果、あえて呼ぶなら、蜘蛛、に似ていなくもない。なんて言ったら蜘蛛のほうが嫌がって隠れてしまいそうだけれど。
 ソレの本体らしい巨大な毛むくじゃらの体には、でたらめに目や口がついていて、それが沸かした湯のようにごぼごぼと生まれては消えていくのだ。さらにその本体からは、長い腕や足が生えていて、わさわさと宙をまさぐっている。とにかく闇を煮詰めたように真っ黒で、周りの空間ごと歪んでいるから、全身の検討がつかない。だからヨタカとしては「大きくなったなあ」以外の感想が出てこない。
 うごめく手の一本が、ヨタカの頬へ触れた。
(小鳥?)
「うん…俺だよ…。紫月」
 ともあれこの不思議な生物(かな…?)は、たしかに愛しい番であると、言葉でなく魂でヨタカは理解した。ヨタカ自身は、和装の侍のような姿をしている。ただその和装はどこか近未来的で、古めかしさは感じさせない。春先の窓辺へこぼした水銀を思わせる冷たさと暖かさが同居していて……そこまで己を注視したところで、ヨタカは決定的な違和感に気づいた。ない。なにが? とか聞いてはいけない。まあ、なんだ、大事なものとだけ言っておこうか。まあ、ないんだ。そしてあるんだ。なくていいものが。
「紫月、俺…どうなって…。」
(きれい)
「そ、そうか…いや、ならいいんだ…。」
 おそるおそる自分で自分の胸へ触れてみる。ふにり。ふにふに、ふにふにふにふに……!
「……おおお、これは、癖になるもみ心地…。…練達の最新鋭クッションみたいだ…。」
(ずるい さわる)
 二本の腕がヨタカの胸をわしっとつかんだ。
「…っひゃう…!」
(小鳥?)
「……なし! 紫月が触るのは…なし!」
(な で?)
 びりっと全身に奇妙な感触が走ったからだなんて言えない。それが一気に寝台にくゆる麝香を思い起こさせたなんてことも。
「…と、とにかくダメ…。……ええと、あれだ、デリケートゾーン…だ…。」
(わかっぱ)
「…ぱ?」
(ぱ ぱ ぱ?)
「縺?▲縺溘>縺ゥ縺?↑縺」縺ヲ繧九s縺?縺??∝ー城ウ・」
「え? な、なんて…?」
「縺?▲縺溘>縺ゥ縺?↑縺」縺ヲ繧九s縺?縺??∝ー城ウ・」
「…もういっかい…頭に話しかけてみて」
(ぱうくりしみるのねぼ、ま)
「あ、ダメだこれ…。完全にバグってる…。……もう一度、ログインしなおしてみよう。紫月も俺も成りたい姿になれるかも…。」
(い~~~~~~~~~~よ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~お)

 介入手続きを行ないます。
 存在固定値を検出。
 …………
 ………
 …

【不明なエラーが発生しました】

 ――介入完了。
 Rapid Origin Onlineへようこそ。今よりここはあなたの世界です。

「……ふう、今度は男の姿に、なれたな…。紫月、紫月?」
「縺ゥ縺?°縺ェ縲∝ー城ウ・」
「あーダメだ、やっぱり盛大にバグってる……。もう一回。」

 介入手続きを行ないます。
 存在固定値を検出。
 …………
 ………
 …

【不明なエラーが発生しました】
【不明??エラーが??生し????た】
【不明??エラ??がERROR!逋コ逕溘@縺セ縺励◆】

 ――介入完了。
 Rapid Origin Onlineへようこそ。今よりここはあなたの世界です。

「……女になってる。」
(どちも びじん)
「ありがとう紫月…でもちょっと複雑…。」
(と ま どう よぶ 小鳥?)
「……そうだな、とりあえず、男の時はハイタカ、女の時はコノリと名乗るよ…。」
(そ)
 わさわさと動かしていた手を、ソレはぴたりと止めた。コノリの瞳に映った己を『観測』してしまったから。風が騒ぐ。一瞬木々の枝が折れんばかりにきしんだ。するりとソレは一歩下がった。
「紫月…?」
(いっしょ だめ)
 ソレはどんどん後ろへ下がっていく。気配までゆらぎ、透明になりはじめた。紫月が遠くへ行ってしまう、コノリの直感がそう訴えた。
「どうしてだ…!?」
(だめ)
「見た目か!? そんなの理由にならない…!」
(だめ)
「紫月!」
 ゆらり、蜃気楼のように、ソレは消えていく。

「チェストーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 完璧に不意打ちだった。しかもその一撃は存在が揺らいでいたソレを貫通してコノリへぶっ刺さった。
「ああっ!? 申し訳ないお嬢さん、しかして離れていてください。すぐにこの化け物を討伐してあなたをお救いしてみせます!」
「…誰…。」
「申し遅れました、俺はデクレアラーの九重ツルギです! はあっ!」
 言うなりツルギはソレへ殴りかかった。鋭く、速い、そして重い一撃だ。同時に白銀の羽根が舞い散る。R.O.Oの演算結果が美しい翼となってツルギの背後へ顕現していた。しかしその一撃は本体へは届かず、いくつもある腕のひとつに遮られた。
「縺ェ繧薙□縺??∝哨縺サ縺ゥ縺ォ繧ゅ↑縺??縲よ?縺ョ蟆城ウ・繧貞す縺、縺代◆鄂ェ縲∬コォ繧偵b縺」縺ヲ雍悶▲縺ヲ繧ゅi縺?h?」
「ええい面妖な。まずはその腕からもらいましょうか」
「やめてくれ…! …紫月は……」
「紫月というのですね、この化け物は。大丈夫です、お嬢さん。先程のミスは必ず挽回いたします」
「隱ー縺ォ譁ュ縺」縺ヲ謌代r縺昴≧蜻シ繧薙〒縺?k?溘??縺昴?縲主錐縲上?蟆城ウ・縺?縺代↓險ア縺励◆繧ゅ?縺?繧茨シ」
 ソレはさらに大きく、禍々しく膨れ上がった。天を衝くほどの巨躯がツルギへ襲いかかる。
(大気がひずんでいる…! 紫月が怒っているんだ…!)
「ツルギ、だっけ…。…あの、まず人の話を聞いて……」
「下がっていてください、この化け物は冗談抜きで危険です。一刻を争います、逃げてください!」
 年を経てふしくれだった樫のごとき腕が振り下ろされる。ツルギは両手をクロスさせて防御する。R.O.Oの干渉によるものか、ソレの一撃は見た目よりも軽かった。だがツルギは受けきった反動で大地にずるりと靴跡をつける。
「人の話を……。」
「逃げてください!」
「…話を聞け!!!」

 ぱっかーーーん。

 完璧に不意打ちだった。ツルギは後頭部をコノリに殴られた。

+ + + + +

「ああ、そうだったのですか。おふたりは番だったのですね。そして、そのお姿はバグった結果であると」
「…そうだと…! …言っている…!」
 珍しい、小鳥が怒髪天だ。と、ソレこと武器商人は思った。
 殴られたツルギは痛そうに後頭部をさすりながらも笑みを崩さない。こうして見ると、紳士的でスマート。声も爽やかだし、全体的におだやか。文句のつけようがないハイソな雰囲気。
「たいへん失礼いたしました。R.O.O内で見た目に惑わされるとは、俺もまだまだのようです。どうかお許しいただけないでしょうか」
 ツルギは胸に手を当て、腰を折る。エレガントなたたずまいは、しごく自然で優雅だ。でもどこかしら食えないところも感じる。
 まるで全身を理想像でコーディネートしているかのようだね、と武器商人は全身の口を震わせ、キャラキャラと笑った。
「…ひとまず…紫月に謝って…! 謝って……!!」
「この度は俺の不注意により、おふたりへご迷惑をおかけしましたことを、心より深くお詫び申し上げます」
「…そんな、テンプレで! …ごまかされないから…!」
(小鳥 ま そのへんで)
「おや」
 ツルギは顔を上げ、きょろきょろとあたりを見回した。
「よもや。今、脳内へ響いたお声はあなたのものですか?」
(そ だよ)
 ああ、なるほど、彼なりに我(アタシ)へ意思の疎通を試みようとしたわけだね。けっこうけっこう。それにしても何もしてないのに壊れるとはマザーとやらも案外うぶと見える。武器商人は己で己の存在を再定義しようとして、存在固定値を検出。――??%?$、検出が失敗しました。??試行。――タイ??????トしたため、邏ォ譛として仮讀懷?しました。存在固定値を再定gggggg――存$を??めま蟄伜惠??、縺薙?繝舌げ繧、めんどくさくなって放り出した。
 だって。
「とにかく、紫月は、俺の大事な番。傷つけたら、許さん…!」
 こんなに番が絆してくるのだもの。まァいっか、べつにこの姿でも。
「紫月も、よくない…。勝手に、遠くへ行ったら……ダメ!」
 ぼふっ。コノリが武器商人へおもいっきり抱きつく。と思っていたら、ぺけぽんしてメッされた。やだねぇもうおまえは、時々とんでもなくかわいいんだから。いまのはさすがに反則ってものだよ。武器商人はいくつもある腕を伸ばして番をぎゅっと抱きしめた。
「……ふふ、紫月、痛いところとか、ないか…?」
(さいしょか な よ 小鳥 こそ だいじぶ?)
「……俺は平気。紫月が無事なら、それでいいんだ…。ツルギ、今回のことは大目に見る……。俺もツルギもここは初心者だから…。…でも、もう二度と、見た目で判断、するな…。」
「ええ、そういたします。肝に銘じておきますとも。ところで、お詫びに俺の手料理などいかがでしょう。ちょうどお昼時ですし、コーヒーの美味しいところを知っていますよ」
「どうする、紫月…?」
(い よ)
「…そうだな…。さんざんな出会いだったけれど、袖すり合うも他生の縁と言うしな…。…わかったツルギ、その申し出、受けよう…。」
「ありがとうございます。さて、その前にひとつお聞きしたいことがあります。俺はお連れ様のことをどうお呼びしましょう?」
(ど でも)
「それでは失礼して、『レギオン』さんとお呼びしましょう。よろしいでしょうか」
(わかっぱ)
「では誠に申し訳ないですが、近所の農家までご足労いただけますか。なに、歩いてすぐです。何しろ、目当てのものがご覧のとおりでして」
 ツルギは片眉を上げ後方を指差した。そこには麻のバッグが落ちている。もう少し正確に言うと、そのバッグはツルギ自身の足跡で踏み潰されている。
「あまりの絵面に動揺してしまいましてね。せっかくのディル(ハーブ)をダメにしてしまったのですよ」
 そう言うとツルギはウインクした。つられてコノリもふっくり笑ったから、武器商人も笑みを浮かべた。ツルギがちょっとびくってした。

+ + + + +

「ツルギ!? なんで貴様が私の家に来るんだ、合鍵を渡した覚えはなー……!」
 ハムレスさん? ハムレスさーん、どうしました? スピーカーの向こうから声がする。たぶん副業のボイチャだろう。練達風のスポットの古びたアパートメント。とつぜん現れたツルギとソレとコノリの姿に、家主は凍りついたかのように見えた。が、次の瞬間、音速でマイクを切り、よりによってソレへすりよってきた。
「なんだこれは!? 初めて見るタイプの存在だ! キミ、すこしばかり切開してもかまわないかね!?」
 完璧に不意打ちだった。ハムレスは(ry

 コノリとツルギからW腹パンくらったにもかかわらず、ハムレスはぎらぎら光るまなこでソレを見つめていた。
「ハムレスさん、コーヒーをお願いしますよ。キッチン借りますねー」
「かまわんがこれはツルギの知己かね?」
「です」
「こんな研究対象なら大歓迎だ! もっと連れてきていい!」
「言われなくとも」
「…なんかいま…不穏なこと言わなかったか…?」
 唇を尖らせるコノリ。武器商人はソレにしては珍しく苦笑した。

  • ツルギとコノリと『レギオン』の話~完璧に~完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別SS
  • 納品日2021年05月11日
  • ・九重ツルギ(p3x007105
    ・縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107
    ・ハイタカ(p3x000155

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