SS詳細
討伐されたおんなたち
登場人物一覧
老人は地べたに座ったまま項垂れている。奪われたのは、父から貰った懐中時計だった。
「で……? 面白い依頼だと思って私達を呼んだわけっすね」
ガチガチに武装した中野 麻衣(p3p007753)とアリス・アド・アイトエム(p3p009742)が廃校の前に立ったフィーネ・ルカーノを見つめる。
「どっちが勝つか気になるじゃない?」
フィーネはにやりとした。賭けでもしてるのかこの女。
「え? 明らかに負けそうな気がするっす」
「いいわよ、それでも。面白いから」
「いつも通りてきとーっすね」
「……そういう時もあるわよ。ま、それが大人の女ってことかしら。アリス・アド・アイトエムさんはこの依頼、麻衣さんと受けるわよね?」
「何故にフルネームっすか、フィーネ。てか、もう、アジトの前にいるっすよ?」
「貴女……ちょっと黙りなさい。士気が下がるわ」
麻衣の口を手で塞ぐフィーネ。
「女の子の……盗賊団……好き……アリス……突撃……する……」
アリスが大きく頷き、フィーネが持ってきた女盗賊団の写真を眺める。
「……この子……可愛い……えへへ……楽しみ……」
「アリスさん。で、デレデレっすけど……! その人が盗賊団のリーダーっす」
フィーネから脱出する麻衣。
「あれ……本当……」
アリスは言い、写真をぎゅっとする。
「……でも……いい……」
「ほら、お二人さん。早く行かないと逃げられるわよ。はい、懐中電灯」
「ありがとうっす。けど急かすっすね、フィーネ。ま、四人の盗賊くらい余裕っす!」
Vサインの麻衣。
「……頑張る……」
Wピースのアリス。校門にフィーネを残し、廃校に忍び込む。
「暗くていやーな雰囲気っす。これはいるっすね」
「だね……あ……カレーの……匂い……」
くんくんするアリス。
「本当っすね」
「……声……する……」
アリスが指差す。1ねん3くみの教室から笑い声とカンテラの優しい明かりが漏れる。
「いいっすね、大暴れの時間っす」
得物を握り締める麻衣。
「……高窓に……パーティーグッズ……投げる……」
星夜ボンバーを持つアリス。麻衣が剣を構え、扉の前に立った。
「で、飛び出してきた盗賊さんたちをこの剣とアリスさんの薬品で仕留めるわけっすね」
「……作戦……完璧……」
高窓を見上げるアリス。廊下に響く笑い声。アリスは談笑に混じりたい心をぐっとおさえ、高窓に星夜ボンバーをひょいと投げ入れる。上手い!
「うわっ、なんだ!?」
「火事っすか、リーダー!」
「早く、外に!!」
「ああああああああ、あたしのカレー!」
ばたばたと移動する音。二枚の扉ががらりと開く。
「今っす」
はあああああっ──勇ましい声を吐き出す女騎士。麻衣が躊躇いなく剣を振り下ろし、アリスが薬瓶を投げつける。煙がむくむく。
「うぎゃああッ──!?」
聞こえる悲鳴。
「よっしゃーっす、二回目の攻撃っすよ! イェーガーー!」
身を捻り、真横に剣を振るう麻衣。
「二度はねぇよ……こんな攻撃! リーダー、私がやります」
「うへ?」
きょとんとする麻衣。後方から両腕をがっと掴まれ、左耳を舐められる。長い舌が耳の奥をくるくると回りだす。
「~~~~なんっすか!?」
麻衣がびくんびくんしていると普通に武器を奪われていた。
「し、しまったっす」
「麻衣……!」
「アリスさん、逃げるっす……おっおっ……奥は……らめっす……んひゃあっ~~!! あっあっ……舐めないでっす……!」
両足がくがく。腰ふにゃふにゃ。
「……逃げない……助ける……」
顎を引き、構えるアリス。
「いー心がけじゃん?」
「……!!」
顔を歪ませる。誰かに顔を蹴られていた。
「……見えなかった……」
アリスは顔を擦り、落とした懐中電灯を手探りで探す。咄嗟に顔を庇ったが頬から血が流れている。
「欲しいのはこれ?」
懐中電灯がその場を照らす。奪われていた。
「アン・ラドルチェ……」
アリスは目を細め、リーダーの名を呟いた。
「写真より……素敵……」
「ありがとう♪ はは、有名人じゃん、あたし♪ ほら、お礼だよ」
アンがアリスの手の甲を踏みつければ、アリスは星を散らしながらがくがくと震える。
「全員捕まえろ」
「オッケー! よいっしょ」
呆気なく、縛られるアリスと麻衣。
「終わりましたよ。じゃあ、逃げますか」
「そうするわ。じゃ……」
「……近くに……」
「あぁ?」
アンは眉根を寄せたし麻衣は何だか不吉な予感がして内心、アリスに黙って欲しいと思った。
「ア、アリスさん?」
「あんた、何が言いたい?」
アンはアリスを見下ろす。
「……チーズケーキが……美味しい……店が……ある……そこで……デート……したい……」
「は? 誰と?」
アンは訝しがり、他の賊達はげらげら笑っている。
「アリスさん、少し静かにするっす」
「……アリス……アン・ラドルチェの……顔……好み」
どっと笑いが起きた。賊達が騒いでいる。
「リーダー、お付き合いすればいいんじゃねぇ? いないっすよね、いま!」
涙を流し手を叩く女。子ぎつね顔をしている。
「ば、馬鹿にしやがって……!」
アンは鉄刀を取り出し、アリスの顔を殴りつけた。
「いてぇだろう? もう黙りな?」
「……黙らない……だって……したい……」
「立場をわきまえろや!」
アンは鉄刀を振り回し、アリスの顔が紫色になるまでぶん殴った。顔は腫れ、曲がった鼻から鼻血が垂れる。だが、何だか嬉しそうだ。アンはぞっとし他の賊達はめんどくさそうにカレーを口にする。
「なんで笑ってやがる?」
アンは唾を吐き、アリスの細首を握りつぶすかのように締めていく。アリスは四肢をがくがくと震わせ、視線を空中に向け、緩んだ唇から涎を垂らす。
「止めるっす!」
麻衣が叫んだ。アリスは恐ろしいほどの痙攣を魅せつける。目玉が飛び出ていた。
「なんだよ、テメェ……あたしに指図するって?」
「そうっす! アリスさんの代わりに私が痛めつけられるっす! だから……!」
「……代わりって……あたしが好きでこんなことしてるって言いたいのか!」
「……愛だと……思う……」
「あぁ? 自惚れてんじゃねぇ!」
苛立つアン。アリスを放り投げ、麻衣を見下ろす。
「なんだよ、その目。おい、アリスって奴の尻でも叩いとけ」
アンは命令するが女達は華麗に無視を決め込む。舌打ちをするアン。
「わ、私は屈しないっす」
「だから、何なんだ……テメェら!」
アンは麻衣の腹を蹴り、横たわった麻衣の顔をブーツでぐいぐい踏みつける。
「変態は靴でも舐めとけよ、好きだろ?」
「く、屈しないっす!」
言いながら、気持ちが開放的になってくる。あれ? なんでだろ。
「声震えてるじゃねぇか! ほら、これはどうだ?」
アンは豪快に麻衣の肩に嚙みつき、チロチロと舌先で舐め回す。
「べ、べ……別に何ともないっす」
ふーふー言いながら耐える麻衣。
「へぇ? じゃあ、あっちはどうかな?」
失神したアリスの頬を打つアン。
「──!! ア、アンさんの相手は私っす!」
「友情ってやつかい? おい、こいつらの服を脱がして逆さ吊りにしろ! ただし、下着は脱がすなよ」
「へーい、リーダー。マニアックすね……知らんかったわ」
気のない返事をしつつ、器用に麻衣とアリスを逆さ吊りにする賊達。アンは悪い顔をする。
「どんなプレイっすか! 子供になにをするっす!」
「嘘だね。期待してるじゃん、顔真っ赤だよ?」
耳元で囁き、麻衣の胸を優しく揉んでいく。
「や、止めろっす……あっ……そんなに優しくされると……とろんとしちゃうっす……♡」
「マセガキが……おい、アンタも起きろ……楽しもうぜ?」
アンはアリスの顔に食用油をぶっかける。
「うーわー……」
賊達はカンテラを抱え教室の隅に移動し、大ブーイング。驚き、目を瞬かせるアリス。顔から粘着いた何かが鼻血と一緒に落ちていく。頭が痛い。
「……世界が……逆……それに……べとべと……体液……?」
口の中に入っていく。変な味がした。
「……は? んなわけねえだろう!」
アンがアリスの髪を握り、むしり取った。
「……痛い……でも……」
ひくひくするアリス。なんでだろ。痛いのに嬉しくて、もっといじめて欲しいと思った。
「そうなんっすよ、逆さ吊りになってるっす!」
身体をくねらせながら麻衣が口を開いた。
「煩い、勝手に話すんじゃねぇ!」
「んひぃ♡!」
星が飛ぶ。鉄刀が麻衣の尻を刺激する。
「もっと鳴けよ。気持ちいいって言えよ!」
アンは麻衣の尻を叩きまくる。
「あ~~~♡ あっあっ♡ おかしくなるっす♡」
「なっちまえ、この変態が!」
麻衣を平手打ちするアン。ふと、アリスと目が合う。麻衣はあ~あ~♡叫んでいる。
「今度はテメェの番だ! 可愛がってやる!」
アンがアリスの尻を鉄刀で何度も殴りつける。
「可愛い下着じゃん! まぁ、もう破れちまったけどよ! ほら? もっと鳴けや!」
アリスの赤くなった尻を叩き、アンはふんと笑った。
「……褒められた……♡」
アリスは喘ぎながら、ひどい顔をしている。
「ほら、美味いもん食わせてやるよ……」
アンはだらしなく開いた口にホースを一本ずつ突っ込む。溜息をつく賊達。
(変なスイッチ入ってるしめんどくせー……)
「ゴムの味はどうだ?」
「……美味しい……♡」
「美味いっす♡」
「そうか……じゃあ、飲めよ?」
囁き。ホースの穴から一気に水が吹き出す。
「「……~~~……♡!」」
勢いに麻衣とアリスは嗚咽を漏らし、アンはにやにやと笑う。
「行くぞ」
それから──くたくたになった麻衣とアリスの肩を抱き、保健室へと消えるアン。
「あぁ~ん、あぁ~ぁん、あうぅ……♡」
止まらない喘ぎ声。うんざりした賊達が保健室に入れば、四つん這いの麻衣とアリスが尻を突きだしアンが鞭を振るっている。
「いや、しつけぇわ!」
賊達はアンの後頭部を殴りつけ、麻衣とアリスをどぶ川に捨てたが──翌日、あっさりと救助され、病院に搬送されていた。
おまけSS『おまけSS『恋ばな』』
「あ~、やられたっすね! 途中から記憶が途切れてるっすけど」
「……激しかった……でも……アンと……デート……したかった……」
「え、デート本気で狙ってたっす?」
「……アン・ラドルチェ……可愛かった……」
「そうっすか。その執着、頼もしいっす」
「……今度は……デート……する……遊園地……とか……」
「盗賊団のリーダーとデート。まさしく、命がけの恋っす!」