SS詳細
罰と罪。
登場人物一覧
名前:ソーニャ
一人称:私、わたくし
二人称:あなた、~様
口調:穏やかな丁寧口調
特徴:限りない優しさ
設定:
ヴォルピアの営む娼館で働いていた鮮麗なる娼婦。
無駄な贅肉は削ぎ落されているのに、女性らしい膨よかさのある肢体。
バランスの良い長身、小さな顔、すらと伸びた長い脚。
糸を思わせる滑らかな髪は黄金の様に金色に輝き、肩の下で美しく切り揃えられている。
何より特徴的なのは、心の奥底までをも見透かされてしまいそうな、深海の様に蒼い瞳。
彼女は、働かず酒を飲むしか能の無い父親と、弟、妹を養っていた。
ソーニャは、しかし、自らの身体を差し出してまで稼いだ給料が酒代に消えようが、弟妹の生活費に消えようが、一切の文句が無かった。
ソーニャは、彼らが”そう”なりたくて”そう”なった訳ではないことを識っているから。
ソーニャは、不幸と不幸、努力と努力、勝者と敗者の比較には、ただ痛みしか残らないことを知っているから。
ソーニャは、弱きものに強くなれという願いが、人を傷つけることを知っているから。
ソーニャは、弱者と強者の間に引かれた線が極めて曖昧なものであることを知っているから。
だからソーニャはその晩の客の瞳に、深い深い絶望を知った。
グランヴィルは≪幻想≫の中でも有力な貴族家の一つ。跡継ぎのグランヴィルは現在の貴族制度を何とかして変えたかった。そして変えられなかった。今日も罪のない市民が、強権の元に苦しい生活を強いられているというのに。
そんなグランヴィルの優しさに魅かれたソーニャはやがて、彼との間に子を授かる。
しかし、その子がグランヴィル家に歓迎される筈も無かった。
駆け落ちをしたソーニャは、ヴォルピアにより依頼されたイレギュラーズによって捕縛される。そしてその腹を引き裂かれ、死んだ。自らの子供だけを残して。
死に逝くそのときまで、ソーニャは他人を責めなかった。
だってそれは優しい傷だったから。
ああ、愛しい我が子。
ああ、愛しいあなた。
そう、だから、只一つの心残りは。
あなたにそんな顔をさせてしまったこと。
こんな結末は、あなたの望んだものではなかったよね。
だけれど、生きてね。
あの子をよろしくね。
*********
ソーニャの子は、今もイレギュラーズによって育てられている。
そしてグランヴィルは、憤怒の魔種として、今もイレギュラーズによって追われている。
どこから歯車は狂ったのか。
そしてこの狂いは、いつか正されるのだろうか。