SS詳細
Happy Sakura Krone
登場人物一覧
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練達首都郊外の田舎道では八分咲きの混沌桜が鮮明に咲き誇って居た。
其処の喫茶店で開催中の祝宴にクルル・クラッセン(p3p009235)が訪れる。
「あら? チョコスイーツをつまみにお花見大会でもされているのかなー?」
「はい。サクラ・クローネを開催しています。お客様もご参加しませんか?」
クルルを勧誘した喫茶店「桜坂」の店主が祝宴の様子をにこやかに教える。
サクラ・クローネとは所謂グラオ・クローネの亜種とも云える。
旅人の店主らが元居た異世界では桜満開の時期にチョコで祝宴を開くそうだ。
「へぇ? そちらの方言ではサクラ・クローネと言うのね?
うん、わたしもぜひ参加して美味しい物をいっぱい食べちゃおう!
てへへ、実は今年のグラオ・クローネは全然参加してないから丁度良いね!」
入店案内を受けてクルルは混沌桜の大樹前に在るテラス客席へ招待された。
折角と云う事で本日のお勧めを注文してみた。
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風光明媚な桜の絶景を眺めながら待つ事しばし。
緑茶を啜って居るクルルの下へ豪華なケーキセットの滑車が運ばれて来た。
「まずは当店自慢のダークチェリーのチョコレートケーキでございます。
サクラ・クローネを祝うケーキとして親しまれております。
素材のダークチェリーは練達国産の魔物桜を使用している高級品です。
チョコレートとケーキも当社直属の工場直送からの特製ですよ」
給仕が力説する其のスイーツはクルルの食欲を掻き立てる。
クルルはケーキを受け取るとナイフとフォークで丁寧に切り分けて食してみた。
「はむはむ……。ん~、美味しい!!
ダークチェリーの甘酸っぱさがチョコのほろ苦い甘さと絶妙にマッチだねー。
ほんわかケーキの中にダークチェリーがこんなにあるのはすごい食べ応えだよ」
満足そうに謹製ケーキを頬張るクルルの横で給仕が滑車からカクテルを取り出す。
其のカクテルは桜色と茶色のグラデーションが鮮やかなさくらんぼ入りである。
「続いて当店自慢の桜チョコカクテルでございます。サクラ・クローネを祝う神酒です。
チェリージュースとチョコレートドリンクを良い塩梅で混ぜたカクテルとなります。
さくらんぼも魔物桜から良い部位を使用していますよ。
ご要望の通りにノンアルコール版ですからご安心してお飲み頂けます」
給仕が改めて力説する格別なドリンクを眺めてクルルは是非とも喉の渇きを潤したい。
クルルはカクテルグラスを受け取ると早速一口啜ってみるが此れまた爽快な味。
「ごくごく……。な、なんて素敵なカクテル!?
チェリージュースとチョコレートドリンクって真逆な印象があるけれど……。
不思議に酸味と甘味が美味しく合体しているよね?
二色のグラデーションの見た目が味にも反映しているのかなー。
あむっ……。さくらんぼも果肉のジューシーさが素晴らしいね。
しかもノンアルだから何杯もイケそう。給仕さん、お代わりもう一杯!」
最初は一口だけ味を確認する積りだったがクルルは一気に飲み干してしまう。
斯くも甘美なカクテルの虜に成ったクルルは異世界の神酒を何杯も煽った。
時に彼女は酒癖の悪さを考慮して祝宴では甘味優先の為にノンアルである。
其の後もクルルは桜を鑑賞して謹製ケーキをつまみながら格別カクテルを嗜む。
花より団子と云う言葉もあるが、本日は花も団子も両手に花の祝宴と成る。
「お客様? 我々が提供するサクラ・クローネは気に入って頂けましたか?」
クルルが良い感じで仕上がって居る所に店主が挨拶に現れた。
ノンアル飲料の摂取だがクルルは宴の雰囲気に酔ったのかもしれない。
「うん、すごく気に入ったよ、このお祭り。
桜は綺麗だし、ケーキは美味しいし、カクテルは何杯も頂いたからねー。
サクラ・クローネに誘ってくれてありがとう!」
店主はクルルから賛辞を受けると朗らかな笑みを浮かべて「或る物」を差し出した。
クルルは小さなビニール袋に詰められたクッキーらしき物を受け取ったが……。
「店主さん? これは何かな?」
「フォーチュンクッキーですよ。祝宴の最後にそれを食べて運気を占うのです」
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クルルが手渡されたフォーチュンクッキーもサクラ・クローネ風の味付けだ。
チョコレート仕立てのクッキーのトップに桜の塩漬けが可愛く乗って居る。
「ふぅ、ドキドキするねー。わたしの運命は如何に!?」
クルルがクッキーを真っ二つに割ると中からは「大吉」の御神籤が登場。
籤の占い結果によれば「きっと想い人と上手くいくでしょう」等との事。
「そういや、故郷には許婚いたよね。彼、元気かなー?」
其の件だが、身を固めるのは十年後と云う話で今は旅を愉しむ時期である。
クルルはおめでたいクッキーを頬張りながら十年後の人生に想いを馳せた。
「もぐもぐ……。今日は折角のサクラ・クローネだから願掛けもしておこう!」
――Happy Sakura Krone!
了