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あなたのために咲いているの

登場人物一覧

ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣

●ユースティティア・ロンド
 はじめまして。これはわたしのものがたり。その、1ページ。

 わたしの将来の夢は――レンセットのおよめさんになることと、かぞくをつくること!

●Iustitia Rondo
 彼女は人間である。
 捨てられた人間種であったが故に迫害され、親の顔を知る前に諦念を理解した。
 育ての親からは名字を名乗ることすら許されず、忘れてしまった。故に、旧姓はない。ロンドの性は、レンセットに貰ったもの。結婚式こそしていないが、彼は夫である。
 閉鎖的な空間である深緑において、其れを外に漏らすことはなく。幻想種として生きるか、ここで死ぬかの二択を、齢いつつで突きつけられた。
 人間種であることを秘匿し幻想種として生き、『最善』とされる教育を受け、そして家督を継ぎ、幻想種と交わり子を設け、誰にも知られず死んでいく。その筈だった。
 まともな食事を貰えず、その身体は虚弱で日の光にあたると激しい頭痛を伴う。季節を越えるごとに身体中が痛み、非力故に壁を乗り越えるだけでもあまりにも果てしない遠回りが必要で。
 生きる意味も、希望も、何もなかった。

 あなたと、であうまでは。

 異種族であるというだけでいじめを受けていた。それを庇って、助けてくれた物好きな男に、少女は恋をした。
 生まれて初めて、自分ユースティティアを見て、たいせつに考えてくれたあなたに。
 おかしいとわかっていても、それでも好きになってしまった。異種族で、歳の差もあって、それに、おとなとこども!
 認められない恋であるならば、認めさせるまで。季節のうつろいは怖くて、あなたの手を握るために日の光に触れるのですら、身体が震えた。
 あなたはわたしの笑った顔が好きだと言っていたから……笑ってたの。ずっと。痛くても。辛くても。其れも、わかっていたんだろうな。
 あなたはわたしの家の中に居るのが当たり前になった。
 キスをして、抱き締めあって。其れ以上は大人になるまでお預けだったけれど、……あなたはわたしを、愛してくれた。

 あなたが好きなの。レンセット。
 世界で一番。君だけを、愛してるよ。

 愛故に、人は時に盲目になる。
 ……禁書を使ってまで延命措置を行おうとして居たのは、ユースティティアにとっても想定外だった。
 魔術の結果は大成功だった。
 反転魔術が身体を蝕み、茨が身体に伸びても尚、彼女は彼女ユースティティアのままだった。痛みにも慣れていたのが幸いだったのかもしれない。
 巨大な魔力を飲み干し、髪色も瞳の色も変わってしまったけれど。
 『食事』を毎日すれば、日の光に怯えることも、季節のうつろいに震えることも、ない!
 理性も、振る舞いも嘗ての彼女のまま。いくつか違いはあるけれど、其れも成長のひとつと受け入れればいい。
「えへへ。レン、ぎゅってして?」
「もうすぐおとな! お酒、のみたいなぁ」
 彼女自身。自分が狂い出していることは理解していた。其れが、世界の敵になるということも。

 ――ティアは、生きたいだけ。誰だって変わんないでしょ? 大好きな人と結ばれて、結婚して。しあわせに、なりたいの。

 何かわたし、おかしいこと言ってる?

 ……ユースティティアも、差別を受けていたとは言え家督の為に一定以上の教育は受けさせられていた。そして、彼女は並大抵の子供や大人、最愛のレンセットよりも頭が良い。
 口も達者で、彼女にとって相手を故意に傷付けるための武器があったとしたら、其れは言葉だろう。
 傷つけられたぶん、傷つけてやるんだ。
 彼女にとって、反転はきっかけに過ぎない。ただ、好きな人と最高の結婚式がしたい。その為に国々を旅しながら『食べ歩き』、見回っている。
 普段は海洋に買った小さな二階建ての家で、愛しい人の帰りを、幼い娘と待っている。

「……わたし。嘘つきは皆嫌い。だから、食べちゃっても良いよね。だって、お前たちが死のうが悲しくもないし、痛くもないよ、わたし」
「お前たちも牛や豚を殺すでしょ。其れとおんなじだよ。わたしはごはんのために殺すだけ。まあ、お前は気に入らないから惨く殺してあげるけど」
「レンセットはわたしのなの。触らないで、お前たちが触っていいような汚いひとじゃない」
「大嫌い。こんな世界も、何もかも、」

「でも、レンセットはわたしと、生きたいと望んでくれたから」
「……わたしは、レンのために、生きてるの」

「いつか、二人で結婚式をするために」

  • あなたのために咲いているの完了
  • NM名
  • 種別SS
  • 納品日2021年03月26日
  • ・ヴェルグリーズ(p3p008566

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