もくしできない

登場人物一覧

　誰にもずるいとは呟けなくなった。ずるいとつかれる間柄に成ったのは、チョコレート・ホテルでの熱病が所以に違いない。酔う初酔う暑と堕ち混んで往ったその果て、何者もアルコールを盛っていないと理解は出来ていた。散々遊び・弄び、付き纏っていた『おこさま』なオマエ、如何して紐解いた贈り物の中身はブレインなのか。疑問符を自分に叩き付けてから数分間、勘づいた蟲の群れが一斉に涌き飛んで失せる。羊羹の内側に蜂の子供でも住んでいたのか。棲み憑いた心地が未だに、頭蓋内部のアイマスクを濡らしてくる。ああ、嬉しくて、嬉しくて。たくさんの袋小路が必要になってしまいそうだ。終いには昇るだろう酸っぱい味わい、胃多々と泣きだした僕の不明性。それで、俺は如何やってお姫様を抱っこすれば良い。それで、俺は如何やって箱入り娘を鬼ごっこに誘えば好い。それで、かくれんぼが得意だった『おんなのこ』に何を贈ればいい。隣に在る筈の※※ちゃんが言の葉の熱湯を丁寧・丁寧に注いできた。色々な意味でのぼせそうなオマエの存在、材料はお砂糖とスパイス・素敵な素敵なアバドンだろうか。季節外れの髭面爺が外宇宙で嘲笑してくる。ざわりと内臓を擽った衝撃的、わがまま放題ダダ放題の螺旋が淵であわあわ滴った漿の痕跡。そうすれば浮き上がった事にも気付けないだろうか。なんだい。今日はヤケに鈍いんだな※※――連れ去られる。掻っ攫われてしまう。何かしら『夢の続きを見る』ような枕元、しかし幻想の手綱は※※ちゃんが握り締めている。縛られたのは腕だろうか。束ねられたのは肢だろうか。あらゆる可能性を妄して望し、盲ダメだと理性が警鐘ツいて往く。ぶわりと世界が回転し……如何やら僕は無理に引き寄せられ……ダンス・ダンスの再開を約束されたのだ。勝手気儘に動き出したザクロ、潰れる寸前に解放されたかった――介抱した者に【行き先】権が配られるならば、最早ほどく力も残されていない。断片的な過去を覗き込むだって？　欠片じみた未来も判断出来ないのに、何を今更『僕』は求めているのか。ぐいっと引っ張られた脆肉、ケーキに飾られたふれあいだ。ぼこぼこと祝福だけが沸騰して魅せた――そろそろ行こうか。関係改めての正気ではないデート、もう既に決め付けるだなんて勿体ないなぁ。いつもの僕は迷子なんだ。如何しても、如何にしても、紅葉色が戻っている。タイム・マシンの大掛かりな事、ことことと煮込まれる女の子が『皮膚の裏側』までももどしてきた。次は何処に向かおうか。好きにしてとも帰ろうとも言えず、はりついた成就は咽喉の骨……空の旅には早いだろうし街を歩むのは普段通りだ。じゃあ口を大きく開けて、穴へ、窖へ、誰も見た事もない。聞いた事も無い筈の『ひえた世界観』でお茶を啜ろう。ドンペリは成人になってからだと言っているのは※※ちゃんじゃないか。大丈夫、底に毒なんて溜まらないのだから――たまらなく身を投げた、暗黒、深淵。ご一緒していた円筒の中、あのハイドラが一番気に入っていた。
　蛸壺に身を潜めたなら、くるくるくるくるメルヒェンになろう。成り果ての贅沢を巡ったなら、ぐるぐるぐるぐるグロテスクを想い直そう。ふいに見上げれた生温かな掌、僕の頭にのせるのかな※※ちゃん。積もりに積もった埃じみた愛情、肉たらしい程に美味そうなのか。俺はそうやって※※を観察していたのか。俺はそうやって※※に観察されていたのか。がばりと軽い痛み、僕は※※ちゃんに食べられている……？　おかしい。これでは物理的になってしまう。独占したかったのに独占されていく。執着していたのに執着されている。終着点を水槽にしたのは残念だった。そのメイン・ディッシュはひどく感染力の強い『マッドネス』だ。山登りも川下りも地球に向かえば同じ事、※※、俺を退廃として迎えないか？　もがもがと笑っている、とても臭いおててとおめめ。厭。嫌じゃない。素敵な誘い。気分の上下に苛まれて、何度ひっくり返ったのかわからない。矢継ぎ早に放り捨てられたワン・クッション。赤色の雨が視界を濁らせて久しく、日差しにやられそうなザマだった。這入ったのはドンペリでもお茶でもない。床をたどれば小さな生命。そんな、まだ僕※は……貌をあげた集い『頭から出る事など不可能』だ。ぐりりと押し寄せてくるとれたお人形、それらも総て※※なんだよ。傍から見たら僕も『こう』だったのか。冷静に幸せなんて見たくなかった――飲めないものは出せない。成程、彼女は飲めるほど愛おしいのだった。お願いだ。お願いだよ。小さな※※ちゃんにやられたくはない。普通の※※ちゃんにやられたいんだ。中身が怪物性を有しても構わない。それでも、外見は※※ちゃんを維持してね。僕は何を口にしているのだろうか。そろそろ自分の思考回路が繰り化えせない。ぶくぶく。ぶくぶく。溺死した僕が・俺が・懸命に頭を落としている――常人の域は出会いと共に省かれていた。
　情人と称される化け物がゆっくりと※※ちゃんと融合した。地獄と呼ばれた僕がじりじりと太陽に殺されていく。これは神様が与えた、カミサマが齎した罰の類と受け入れる他に知らない。痴れた涎を拭わずにペアリングを互い『おし』告け愛った。ぐるりとネジ切れた視野、※※ちゃんは鏡を用意しなかったとでも謂うのか。いいあいっこにおいかけっこ、いつしか嘔吐していた滅裂な単語。今ならばきっと咀嚼出来ると【いらないもの】を刳り貫いた。おそろいだったのに、ごめんね、※※ちゃん。それでいいんだ※※、何が嵌め込まれるかなど貴様等以外に回答出来ない。切り取り線をそって齧れば調理要らず、助けて、助けて、救けたんだ、救けられたのだ。あとに残された碑は乱酔の末路――ぱらぱらと。ばらばらと。熱されなかったのは暴走していた所為だ。何故に精神・意識を保てるのかだって？　※※にも食べてほしいからだよ。俺の腕は誰にも負けないのだ。僕が一番知ってるよね。味音痴なのは嘘だってさ。だから舌、残してくれたんだね……変質すればプラス・マイナス。異後、労なく称えて欲しい。

　病は気から。嘘偽りない双頭だろう。
　頭と尾が奇怪にも瓜二つで在った。

　相当に侵され、冒されたのだと僕は思った。皿いっぱいの僕が食んで、俺が※※をフォークでさらう。ナイフの入りが共同作業を伝授したら『ようかん』一個も臓腑に破胃らない。祭具はどこどこと瞳をまわし、ここだと俺にさされてしまった。いちごのあじわいは悪くないんだよ。それじゃあ仕方ないね。僕だってそうするんだもん。チョコレート・パフェよぶち撒けてくれないか。あたまがいたくて治らない――僕・俺がめまいを覚えるほどに、抱き締めあったのは何時頃だったのか――パンドラ・ボックス抉じ開けて幾次元、もういいかい、まぁだだよ。不安のわたあめが粘膜をつついていた。しみたけどもとけたので十分に伝わってくる。機械仕掛けの製造機が『ちにく』の貌を再確認して魅せる。さあ、呼び掛けを忘れないで。アハハ。アハハ。アハハ――笑い声はしっかりと僕に届いていた――ポカンと半開きなくびなし。カクテルに鼻から突っ込んだ。

　ご馳走さまが聞こえない。口が無いんだもん。
　ふるえていた僕の唇だけが、俺の唇を奪っていった。
　ふるえを知らない俺の唇が、僕の唇を奪っていった。
　――本当に唇だったのか。たかぶりの甘りに反芻した。