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未だ、罅が覗く雛芥子
登場人物一覧
名前:
『あなたをおもいやる』シャーレイ
名は彼女自身が今の生活を得てから、兄と考えてつけたもの。由来はヒナゲシの英名。
ヒナゲシはケシ科の中でオニゲシ共々「阿片が産出されない」種である。これを知った二人は、自身らが『毒』ではないと言う意志を込めて上記の名前を付けた。
一人称:
基本は「私」。心を許した相手や、動揺した時は「あたし」等。
二人称:
「あなた、~さま」。兄に対しては「お兄ちゃん」で統一されている。
口調:
「です、ます、ですか?」など、他人行儀なものが殆ど。先述のように心を許した相手に対してや、眠い時に於いては「だもん、だよ、かな?」と言った、年相応な口調に変わる。
特徴:
柔和で従順。一方で、自分だけがこうむる被害や困りごとなどは秘匿しがち。これは兄や、恩人であるアイラに対しても。
……基本的には周囲の人間に受け入れられているものの、彼女はその出生ゆえに時折、心無い人間に些細な苛めを受けることがある。
それを「仕方ないと耐える」のではなく「当然だと受け入れてしまう」ことは、未だ彼女の意識が貧民街の孤児だった時のままであることが原因だろう。
設定:
アイラが嘗て、とあるスラム街から買い取ってきた子供の一人。
年齢は10歳。兄が居り、共にアイラの領で世話になっている。
自身を救ってくれたアイラに対する恩義もあって、常日頃から勉学にも領民の手伝いにも積極的。
尤も、それが空回りしてしまうこともあるが、そこは年齢を鑑みれば仕方ないともいえる。
周囲の人間に疎んじられる日々を過ごしていた彼女は、そのため自身を卑下しがちである。
自らに価値を認めないながら、それでも死を迎えることは恐れている。そのような自分を嫌悪し続ける日々が、彼女にとっての全てであった。
――それに転機をもたらしたのは、他ならぬアイラである。
醜い自分を受け入れてくれた存在、その為に、己の声を失うことを選んだ存在。
シャーレイは「あの人の為に自らの価値を高めよう」と思い、同時に「あの人の為なら、自らの命を擲とう」とすら思ってしまえる。
奇しくも、アイラが彼女の命を救ったことで、彼女は自らの命を捨てることを良しとしてしまったのである。
……彼女は今もアイラを見ている。「治せるはずの声を取り戻さない恩人」を。
若しその原因が自分たちに在ると思えば、彼女は自分の命を引き換えに、声を取り戻してほしいと願うのであろう。