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炎神の血脈
登場人物一覧
名前:藍羅(アイラ)
補足:混沌世界に於いては『アイラ』――愛しい人との『家』の象徴『ディアグレイス』
設定:
少女は旅人である。かげろいに赫々たる旭日は狂乱の如く地を燃やす。
そんな、美しい炎の血脈。それがアイラと呼ばれた少女の一族であった。
――炎神さまは、あいを識り、慈しみ、魔法使いの一族を作り出したと聞いていた。
その祝福を受け入れた一族であったことも。故に、物語の頁を眺めよう。
炎神様は燃えるような戀をした――月夜に揺れる狼男・ヘカーテ。
その燃えるような緋の眸。想ひのいろが揺らいだ不器用なこいのはなし。
永い、永い時をかけ、ふたりは愛を育んだ。慈しみ、そして、触れるも憚る甘い恋。
刻が流れ――そうして、二人は子を授かった。
ローリイット。
炎神の愛し子は栄冠の一族として赤い魔術師となる。
彼は、炎の冠を頂いた。
彼は、誇り高き赤い瞳にやさしさに満ちていた。
彼は、高濃度の炎の因子を含んだ血潮で人々を包み込む。
炎神の与えたやさしさがからだを作り、愛しい愛しい我が子を護る。
高い体温と、黒い軍服。そして、なによりも――脈々と受け継がれた、狼の因子。
かみさまと恋をした月夜の空を映した髪はぬばたまの糸をなる。
その髪先ひとつ、炎に愛され炎を愛したローリイットの血脈は慈愛と勇気に溢れ民を導いた。
――故に、ローリイットの一族は炎に愛されているはずだった。
只一人、冬に愛され、氷の妖精の祝福を受けた『冬の忌み子』が生まれるまでは。
ローリイットの一族は代々生まれた子供の名を紅玉に刻み込み炎神へと報告する習わしがあった。
現在、並ぶのは六つ――正確には七つ。一つ、直ぐ様に台座より取り除かれた跡を残して。
五番目の子供は出来損ないだった。氷の瞳を持ったかみさまに愛されなかったと捨てられたひとりの娘。
それでも、かみさまは、少女の身の内に確かなかたちを残していた。
――あいを識り、慈しみ、魔法使いの一族を作り出したと聞いていた。
その祝福を、ひとと、あなたのちいさなちいさな、戀。
とおい世界の、とおい時代の。その恋の証はその身の内に。
冬の愛し子の事も愛していると流れる血潮で息衝いて。