甘ちゃん領主サマのお話

登場人物一覧

名前：イーハトーヴ・アーケイディアン
一人称：俺
二人称：ティボルト
口調：だよ、だね、かな？　なの？　でしょ？
特徴：……さあな
設定：
　特異運命座標は変わり者が多いのは知っていたがあの甘ちゃんは特に変わった奴さ。
　ぬいぐるみをいつも何個も大切そうに抱きしめて、貧しいスラムの連中を人形好きだという理由だけで不足ない生活を送らせたいと本気で願ってやがる。
　おまけにそんな理由で世界一ワイルドなおれ様を執政官に任命した挙句、服を着せたり連れまわして「ぬいぐるみにしたいくらい可愛い」とか言いやがる！
　ま、別段悪いってこたぁないが領民までおれの事を可愛いって言うのは気に食わねぇ、『ひよこの坊や』とか呼ぶ奴のぬいぐるみとやらもだ。

　奴を説明するなら人形狂い、下手すりゃ人形馬鹿の域か。
　おれはぬいぐるみを作る技術に関してあいつを越える物を見たことが無い。
　そんな技術を持っておきながら奴は人形を高値で売り捌いたりは絶対しない、ただ人形を大切にする人をアイツの目で見極めて、そいつの経済状態に応じた額で譲り渡す。それどころか、人形を命よりも大切にするような奴なら赤字どころかタダでも配りたいと本気で考えてやがる！
　そして自分は下宿住み、それか都合を付けて領地（こっち）に寝泊りさ。そんな甘ちゃんだからヒトの動かし方はさっぱりだ。
　ま、自分と同じ苦しみを領民に与えたくないと理解しているし、おれのアドバイスを素直に聞いてその通りにしてくれるから動かす分には困らないがな。

　悪くない男だが、ヤツには少し妙な所がある。
　最近は特にそうだが妙に感情が揺れ動かねえ。領地の事について話している時も起きながら寝ているというか、心に芯が無い気がする。
　元の世界で酷い目に遭ったのか、おれの知らない魔法薬の類か、或いは最前線で戦う以上アークとやらの影響を受けちまったか――推理が苦手なおれにはさっぱりわからん。
　この街に妙に禁忌が多く出回っている事と言い、麻薬取締官（ほんぎょう）の血が疼くが、アイツに今の所怪しい動きが見られない以上そうもいかない。
　なんとかしてやりたい所だが。

　とにかくおかしな所もある男だが、お前達の領主サマは可愛くて悪くない甘ちゃんさ。
　明日にでもまたおれに飴玉を持って尋ねに来るだろうし、その時にぬいぐるみでも譲ってもらうといいさ。
　ただし最低限の代金は置いてって貰うからな！　布地を買うのはおれの仕事なんだぜ？