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【Pan Tube】異世界文化の行方を追う!

アイキャッチ!

登場人物一覧

キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903)
P Tuber『アリス』


 練達という国家は、正しくは国家並の勢力という存在になっている。それを構成するのは多くが特異運命座標であり、研究者であり、元の世界に帰りたい旅人である。彼らの作った都市、アデプトは近未来的な要素を持ち、この世界に馴染めない者の為に再現性東京アデプト・トーキョーを作り、娯楽も元世界に似たものを用意している。そのうちのひとつが【Pan Tube】。P-Tubeとかぱんつべとか呼称される動画配信サイトのことだ。そしてそこで実況などする者をP-Tuberと呼ぶ。
 これから見るのはP-Tuberであり特異運命座標である『アリス』のライブ配信であった。



 オープニングが流れ、アリスの『ワンダーランド』という文字と共にブルーブラッドの少女が現れる。次の一瞬、暗転して──。
「はいどうも、アリスです! あなたのフリータイムのお供、『ワンダーランド』の始まりにゃ。今日のテーマは──『異世界文化の行方を追う!』!」
 ライブに現れるのは先ほどオープニング画像でも映っていたブルーブラッドの少女『アリス』。
「混沌にはあらゆる文化が詰まってるにゃ。この世界だけでも多くが交じり合ってるけれど、旅人さんたちが持ち込んだ文化もあるんだにゃ! 今回は文化についてお送りするにゃー!」
 彼女がいるのはどうやら外──このままノンカットで文化を探しに行くらしい。ほんの少し画面が揺れる中、アリスが何かを見たように目をぱちりと瞬かせる。
「んにゃ? あ、今日はゲストさんお休みにゃ! 次のゲストさんも楽しみにしていてほしいにゃー♪」
 ウィンクでファンサしたアリスは、丁度目的の場所へ辿り着いたらしい。自身も映るようにカメラを回したようで、何かを燃やしている人々の姿が見えた。
「にゃ……にゃにゃ!? あれは……ゴールドにゃー!?」
 愕然とするアリス。いつしか闇市で溶かした──消費した、が正しい──ゴールドを思い浮かべたのだろうか。リスナーからも『闇市が』『あれでどれくらい闇市できたかな』『なんて贅沢な』などとコメントが流れている。
「は、話に聞くだけだったけれど、なかなかの額を燃やしているように見えるにゃ……! すみませーん!」
 アリスの突撃インタビュー。町人たちは物珍し気に彼女の姿と持っている機器を眺めていたが、彼女の質問には丁寧に答えてくれた。
「これは『地球』ってところからウォーカーが教えてくれたことで、死んだご先祖様にお金が送れるのですって」
 死んでもお金がいるなんて大変よねぇとふくよかなおばさまが答え、燃やした金が偽札であることにアリスは安堵する。ちなみにリスナーからは『なんだ偽か』『死後も大変だな』なんてコメントが送られていた。
「異世界ドッキリにゃ……! でもこうやってお金を送ってもらえるなら安心にゃね!」
 燃やしていたのは集団墓地の前の広場であったらしい。長居するのもアレなのでアリスは町人たちと分かれ、また歩き始める。
「次に紹介するところまで少し歩くから、その間にちょこっとアリスの知識を披露しちゃうにゃ!」
 というのも、先ほどの金銭を燃やすという行事についてだ。これは異世界から持ち込まれたものであるが、持ち込まれてから様々な形に変化しているのだという。
「さっきのところではお金に見立てたものを燃やしていたけど、別の場所では死んだ人が着れるような服を燃やしたりするらしいにゃ」
 金も衣類も燃やして届くなら同じ、ということか。実際にそうであるのか生者にはわからないことだが、同じように違う物を燃やしたり、或いは別の方法で届けるとすることもあると言う。
「私やリスナーの皆にも、もしかしたら子孫が届けてくれるかもにゃ」

『やってくれるかな』
『送って欲しいものリストつくっとこ』
『アリスちゃんが死んだら嫌だよぉ~!』

 様々なコメントを読み上げ、ひと言返しながら歩くアリス。キリの良い所で次の話題だ。
「さて、もうひとつ豆知識にゃ! 皆、ファントムナイトに願う姿は決まってるかにゃ?」
 間近に控えたイベント・ファントムナイト。望みのままに姿を変える3日間だ。けれども実は、異世界だと同日を『収穫祭、悪魔祓いの日』としているらしい。
「死者が帰ってくる日で、一緒に悪いモノもやってくるらしいのにゃ!」
 異世界怖いにゃー、と呟くアリス。しかしその口調は一変、明るいものへと変わる。
「さてさてお次のご紹介にゃ! ここはすっごく独特な踊りを踊ることで有名なのにゃ」
 先ほどと同じように町人へ声をかけ、踊りについて問うアリス。ここではファントムナイトまでの1週間、無事に夜が過ごせるように『ポルノ・ポルノカ』と呼ばれる踊りを夜通し踊るらしい。
「徹夜にゃ?」
「そうなりますね」
 頷く町人、ひえぇと声を上げるアリス。リスナーもおののき──いや。

『1徹くらいならまあ』
『その後仕事考えたらきつくない?』
『俺3徹いけますよ』

「え、ええぇ……? 皆、逞しすぎるのにゃ!」
 驚くアリスに町人は苦笑を浮かべ「日替わりで踊っています」と告げる。流石にリスナーたちのような猛者は中々いないだろう。
「あ、あの人です」
「なんと! 噂をすればご登場にゃー!?」
 アリスが大きく手を振ると、向こうから歩いてきていた人物はぺこりと頭を下げる。近づいてきた旅人からインタビューOKの言質を取ったアリスはカメラを回した。
「こちらが噂の旅人さんです! あ、本名じゃなくても良いので名乗りをお願いするにゃ!」
 この旅人、アリスの持つ配信機器にも動じない。もしかしたら元世界に似たものがあったのかもしれない。『イワヲ』と名乗った青年はポルノ・ポルノカについて説明した。
「私の世界にもファントムナイトと似たようなお祭りがあり、その1週間前から成功を願ってこの踊りを踊るんです」
「願掛けってやつだにゃ?」
「はい。天災が多い世界だったので、皆が成功を祈っていましたよ」
 中々厳しい世界から召喚されたらしい。しかし懐かしそうな目をした青年は笑みすら浮かべていた。
「ハードな経歴をお持ちっぽいのにゃ……! ありがとうございました♪」
 突然のインタビューに礼を告げ、アリスが画面の真ん中に映る。時間的にもそろそろ締めなのだ。
「皆、異世界の文化はどうだったかにゃ?」

『変なものばっかり』
『俺はちょっと馴染みがあった』
『探してみようかな』

「お、馴染みがあった人は旅人さんかにゃ? それとも生まれた場所にそういう文化が根付いていたかにゃ。
 実は実は……今、私たちが見ているこれ、Pan Tubeも旅人さんが練達へ持ち込んだことから始まった技術にゃ!!」
 誰か──もしかしたらローレットに所属するイレギュラーズかもしれないが──そういうものがあったのだ、と言ったから実現した技術、実現したサイトである。今でこそこうして見知らぬ誰かも配信を見ているわけだが、そこには先人である旅人たちの苦労が詰まっているのだろう。
「皆にこうして見てもらえるのも旅人さんたちのおかげにゃね♪ 今後ともぜひぜひ、アリスの『ワンダーランド』をよろしくお願いするにゃ!

 それじゃあ──今日はここまで! またにゃー!」

  • 【Pan Tube】異世界文化の行方を追う!完了
  • GM名
  • 種別SS
  • 納品日2020年10月25日
  • ・キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903

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