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とある誰かの手記

登場人物一覧

蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者

● 
 ああ、ああ、きゅうせいしゅさま。お救いください。

 世界が滅ぶ。
 異星からの侵略者は突然やってきました。
 その星の民は異星からの使者を認めると、友好的に話しかけることにしました。

 はじめまして、わたしたちはこのほしにいきるものです。
 
 差し出した手はゆびさきからバラバラになって、そのまま全身バラバラになってまっかな肉の塊になりました。
 それから侵略者は見えるものを手当たりしだいに壊し始めました。言葉は通じません。同じような姿をしているのにも関わらず言葉はまったく通じないのです。
 
 その日から、戦争が始まりました。
 一方的な虐殺を戦争とよぶのであれば、ですが。
 
 しかし、あるとき、異能者と呼ばれるきゅうせいしゅが現れました。
 人々はきゅうせいしゅにたすけをもとめました。
 きゅうせいしゅは星の民のため快く侵略者と戦うことを許諾してくれました。
 ああ、これでわたしたちは助かります。

 とはいえ、侵略者は星の民を一瞬で残酷に殺してしまうちからをもっています。
 腕自慢の兵士もあっさりと、簡単にころされてしまいます。
 でも、きゅうせいしゅはそんな侵略者をこともなく屠ったのです。ああ、よかった。

 わたしたちはきゅうせいしゅのおかげで侵略者に対抗することができるようになりました。
 そののちわたしたちは知ります。
 屠った侵略者たちは先鋒に過ぎなかったことを。
 きゅうせいしゅたちと侵略者の戦いは日に日に激しさをましていきます。
 その激しさにわたしたちは震えます。
 侵略者だけではなく、きゅうせいしゅのもつ異能の力にも。
 せめないでください。
 見つめただけで、きゅうせいしゅはアレだけつよかった侵略者をずたずたに引き裂くのです。
 もちろん感謝はしています。
 感謝はしています。
 今は侵略者とたたかってくれます。
 だけで侵略者を倒し終えたら? その力はどこにいくのでしょう?

 かなりの年月がたちました。
 とうとう侵略者たちはこの星から駆逐されたのです。
 ああ、きゅうせいしゅが世界を救った。

 わたしたちはちからなきものです。
 あなたたちがこわいのです。
 ぼろぼろになって最初の半数以下になったきゅうせいしゅにわたしたちは告げました。
 しかたがないのです。
 まもってもらったことは知っています。
 だけど、だけど。
 わたしたちは弱いのです。
 
 きゅうせいしゅたちは寂しそうな顔をしてから、悲しい笑顔でうなずきました。
 その日からきゅうせいしゅたちの姿を見ることはなくなりました。

 ああ、よかった。
 この星からこわいものは去ったのです。
 わたしたちはこれからまた、平和で穏やかで優しい毎日にもどれるのです。
 


 そのはずでした。
 あるとき噂がながれたのです。
 きゅうせいしゅたちは、捨てられた異能の子どもたちを密かにあつめ集落をつくってわたしたちに復讐をしようとしていると。
 わたしたちはまたあの恐怖にさらされるのだろうかとおもいました。

 ボロボロになった家の影でなにものかの足音に震えるのはもう嫌なのです。
 食べるものもなく、ひもじいい思いをして、雨露をすすって生きるのはもういやなのです。
 かれら、きゅうせいしゅたちはきっと、自分たちをおいやったわたしたちに怒りをおぼえ復讐をするのでしょう。

 国のえらいひとたちが、ある作戦を決行することをきめました。


 わたしたちはヒトとは違う能力をもっていました。
 例えば指先だけで岩を潰すもの。瞳を合わせるだけで心臓の鼓動をとめるもの。
 破壊光線をだすもの。
 相手の能力をつかえなくするもの。
 多種多様な能力をもっていました。
 人々がわたしたちを怖がるのはしっていましたので、怖がらせないようにそっと息を潜めて生きていました。
 しかし、あるとき侵略者がこの星を襲いました。
 わたしたちは能力を普通のヒトたちの前で出していいのかと話し合いました。
 結果。
 この愛する星を守ることを、愛しい人々を守ることをきめたのです。
 きっと彼らはわたしたちを怖がることでしょう。
 それでも、人々をまもりたかったのです。
 この星が焦土になってしまうことががまんなりませんでした。

 わたしたちは異星人と戦います。
 それはとても激しいものでした。
 ひとり、またひとりとたおれていきました。
 あるとき仲間のひとりが、異星人の心を読むことにせいこうしました。
 彼らの星は大きな彗星が衝突して、その星で暮らすことができなくなったので、新天地を求めたということでした。
 同じようなこの星の先住民を滅ぼせばこの星で暮らせるとおもったようです。
 それならばともに生きていけばとおもったものもいました。
 ですがかれらのとれるコミュニケーションはわたしたちを殺すもの。
 共存することは不可能だったのです。
 ごめんなさい。
 わたしたちはこの星を明け渡すわけにはいきません。

 わたしたち異能者が最初の半分以下になったところで、最後の異星人をたおしました。
 これでこの星は平和になると思いました。
 人々はわたしたちにすっかり怯えていました。
 まるでヒトとは違うこの異能力をみて恐怖をかんじたのです。
 わたしたちは決してあなたたちの上にたつつもりはないのです。
 静かにこの星でそっと生きていたいだけなのです。

 だからわたしたちはこれまでと同じように隠れて生きていく道を選びました。
 この戦争で、たくさんの孤児がうまれました。
 わたしたちは同じように廃棄された民として、孤児たちを保護していくことになりました。
 その孤児たちのなかには能力をもつものが散見されました。
 この厳しい戦争の世界に対応するように進化したのかもしれません。
 ですが戦争はおわりました。
 わたしたち能力者はもう必要がありません。

 しずかに、そっと山奥でくらしましょう。
 穏やかに、優しく、静かに。

 そんなおだやかな日々が続くはずでした。
 わたしたちはいくつかの集落に分かれて人里離れてくらしていました。
 その集落との連絡が突如途絶えました。
 わたしたちは消えた集落の様子を見に行きました。
 なんともひどい状況がそこにありました。
 みな手足を吹き飛ばし肉片になって木々にひっかかっていました。
 死人の声を聞くことのできる異能者が声をききその場に泣き崩れました。

 それは、とてもひどいやり方でした。
 集落からはなれてあそんでいた子供を連れ去り、その腹に時限爆弾(とよばれるもの)を飲まされ、集落にもどったときに爆発四散させるというものでした。
 いつしか人々はわたしたちに対抗するちからとして、爆弾と呼ばれる、爆発物を開発していたのです。
 わたしたちとてひとです。
 四肢を吹き飛ばされれば死んでしまいます。
 戦闘中であればお互いで防御し合い、警戒することでダメージを最小限に留めることはできますが、油断をしていたらどうしようもありません。
 大きな爆発は周囲をすべて吹き飛ばしました。
 

 ひどいと、『剣の巫女』が涙をながしました。
 人々がわたしたちを疎んじていたことは知っています。
 だからこそわたしたちは人々の目の届かないところで穏やかに不干渉で生きていくつもりだったのです。


 わたしたちが何をしたというのでしょうか?
 同胞たちがいったい何をしたというのでしょうか?
 深い悲しみと絶望は憤怒の心を呼び覚ましました。
 もう、わたしたちはこのままではいられません。
 こつんとつま先にちぎれた手があたりました。
 薬指には素朴な銀のリング。
 これはわたしが、生まれてくる妹の子供への祈りを込めて作り上げたものでした。
 この手は妹のものでした。
 もうすぐ子供が生まれると微笑んでいた妹のものでした。

 わたしたちはいまや100に満たない人数です。
 ですが、世界に対して戦争を起こします。わたしたちはヒトを滅ぼすことにしたのです。
 あの惨劇をつくりあげたのはテロリストだとか、とある連合国だとかいろいろな噂がありました。
 わたしたちにとってはいまさらソレが誰でもかまいません。
 ヒトを滅ぼせば誰が主犯であろうと同じです。

 この星はきっと誰もいなくなることでしょう。
 ヒトも、能力者も。
 誰も、誰も、誰も。
 不条理がこの世界を壊しました。
 あのとき涙をながした『剣の巫女』は『剣軍の統率者』として、戦場にたっています。
 怒りがあのたおやかで優しい少女を鬼に変えました。
 いまでは特級の能力者です。

 もし、世界にいきのこったものが遠い未来でこの手記をみたとき。
 かつて、悲しくも醜い争いがあったことを知ってください。
 ヒトとわたしたちはわかりあうことがさいごまでできませんでした。
 わかりあえなかった果てが滅びです。


 (そう締められた手記にのこされた名前はインクが滲んで読むことができなかった)

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