ノベルマスタープロフィール
深淵より來し慈愛の化身プレジデント炒飯
クリエイター登録日2020年01月13日
自己紹介 2020年01月31日 更新
はじめまして、NMとして参加させていただきました愛飯(マナイ)と申します。
以後お見知り置きを。
私は主にSSで皆様と交流するかと思います。
皆様の物語に一輪の花を添える事、これこそ至上の喜びに御座います。
誠心誠意、真心を込めて。よろしくお願いします。
【サンプル1】── 父 ──
──私は、彼の娘である事に都度安堵していた。
慌しくも騒乱の後に訪れた静寂なる秩序。その日、私と父は騎士団に導かれて街の復興に従事していた。
白亜の都には凄惨な爪痕が残されてしまったものの、私達以外の民も暗い表情はあまり見られない。
乗り越えたのだと思う。質の悪い悪夢のような、あの黄泉帰り事件を。
「……手を動かせ。像の復元に必要な分、後で目測を立てる……外壁の補修に時間を掛ける暇は無い」
しまった、と思った。
私の手が停まっていた事に気付いた父から向く視線から逃れるように、私は石材を運び他の職人達の下へ投げ入れた。ごめんね、と。小さな手振りで謝った。
他の職人達は私の背後で石材の研削に打込んでいる父を見て、納得した顔で頷き。作業へと戻って行く。
名の知れた彫刻師である父は職人仲間からも厳格として知られている。
誰もが……私は父の背中を見て育ち、気丈で厳かな彼の後継者だと、成人して間もない哀れな娘だと思っているのだろう。
「あなた。ミレイナ、お弁当を持って来たわ」
「ん……ありがとうママ。父さんには私が渡しておくね」
崩れかけた石壁の施工に集中していた所へ、鈴の様な音を転がした声がした。母だった。
「ちょっと」
母の手がぴしゃりと私の手を小さく弾いた。バスケットに包んだ昼食を受け取ろうとした手は、石膏や粘剤によって汚れていたからだった。
肩を竦める私に母は口を尖らせて言った。我が母ながら、今日も綺麗だと思った。
「傍に置いておくから、せめて汚れを洗い落としてから手に取りなさいな。
あの人にも言っておいてね、もう……あなた達ってば、いつまでたっても子供みたいなんだから」
「あはは……お父さんにも伝えておくよ」
「お願いね。私はこれから南通りで集会に参加して来るから」
バスケットを作業場の近くの花壇脇に置いた母はそう言って踵を返し、ふわりとした黄金色の髪を揺らして立ち去って行った。
私は白くパサパサに汚れた手で視界の端に垂れ下がっていた髪の毛を持ち上げる。つくづく、私は父に似て焦げた色をしているなと思う。
「……こっちは終わったぞ。まだか」
「壁面の罅は全部埋めたから、後は向こうの人達がカットした石填めていくだけだよ。父さん」
あっという間に作業を終えた父は教会から支給された図面を雑に握り締め、私の背後に立っていた。
長身で筋肉質な父の寡黙な立ち姿は、汗や粉に塗れた焦げ茶の髪を後ろで結止めているせいか余計に圧が強いような気がする。
けれど私は知っている。
「まだ、終わらないね。暫く時間かかるのかな」
「……」
確かに厳格で、口数少ないがゆえに気難しく思われがちだ。父はそういう人間で間違いない。
「依頼された区画の中でまだ見てない所あったよね。せっかくだし……時間潰しに見に行かない? 先に見ておけば資材の発注が早く終わるかも」
「……そうだな」
でもその実、母の言う通りなのだ。父にも子供っぽい部分は多くあり可愛い所もある。
例えば手持ち無沙汰になってしまうと困った様に誰かの後ろに立ってしまう。そんな些細な一面。
彫りの深い顔立ちに更に皺を刻む父は、本当は何かを待っているのだ。
「それじゃ、いこっか。お父さん」
ただ──私が知っているのはそれだけではない。
『彼』は私に手を引かれ、人気の無い路地裏へと連れていかれれば直ぐに隠れた自分を見せてくれる。
誰もいない。誰の目も無い場所で私にしか見せない本当の姿。
「────お疲れ様、パパ……♪ 早朝からいっぱいお仕事がんばってたね、えらい……えらい……♪」
「はふっ、はふ……! はぁ、はッふ……はぁ……ミリィ……ごほうびちょうだい」
「いいよ、いっぱい頑張ったんだから。いーっぱい、ごほうびあげないとね……」
石膏で薄汚れた私の身体をぬいぐるみの様に抱いて荒い息を吹きかける、誰も知らない父の姿。
母も知らない、私だけの──
Fin.
【サンプル2】──依頼を受ける前のはなし──
狩真(カルマ)は依頼人を前にして大きく首を傾げた。
反射的行動。挙動こそ大げさになってしまったが、それも仕方ないだろうと狩真は小さな咳払い一つに言い訳を紛れさせた。
「えー、なんだって。聞き間違いかな」
狩真は対面に座す依頼人、ノーマン氏に改めて問う事にした。
「この俺に……宝箱に入れと?」
「如何にも、その通りでございます」
「イヤ如何にもて」
改めて訊いた事で確信となった。これで心置きなく狩真は机に突っ伏すことが出来るな、と勢いよく机に上半身を投げだした。
「海岸に上がって来たトドかな」
何てこと言うんだこの野郎と狩真は思った。
──話を戻そう。
ギルド・ローレットに所属している狩真へ依頼を持ち込んで来たのは、日頃から依頼をよく持ち込みに来るノーマン氏だった。
彼が持ち込むのは必然、イレギュラーズでなくば解決に導けない類の物が多い。しかしその殆どは事業家の側面を持つ彼の個人的な依頼だ。
さて、今回そんなノーマン氏が狩真に依頼するのはとあるダンジョン内に設置した宝箱に入って貰うという内容。
言うまでもなく何だそれはと狩真は開いた口が塞がらない。しかし報酬は悪くないので考え所だった。
中略。
狩真という男は何やかんや遊びたい金欲しさ根性に磨きを掛けた青少年である。些か肉付きの豊満な体型をしているが立派なシーフ職である。
この訳の分からない依頼でも、金払いの良さは大変魅力的で唸るものがあった。
というわけで答えはイエスの一択。
「といってもなー、なんだかなー。実は人攫いとか人身売買組織に売られるとかなったら事だよ? 我、ローレットよ?」
「イレギュラーズの肉詰め宝箱ってなんだかお店が出せそうですな」
「聞けや」
狩真はラード叩き付けんぞと一喝する。
それはそれとして依頼人曰く、とあるダンジョンとは町の一画に設けられた遊園地内にある遊戯施設を指すのだと狩真は説明された。
狩真は首をがっくんと落として「具体的に何をしろと?」とノーマン氏に一瞥した。
「『ダンジョン&ナイトメア』は魔種や魔物を模した仕掛け人ならび置物でお客さんを驚かせましてな。
そんなスリルいっぱいの地下ダンジョンを冒険しながら、おまけ景品と交換できるオブジェクトやスタンプを集めるのが主なゲームです。
狩真様にご依頼したいのはお客様を罠にかける為に用意された『ミミック』役です」
「ミミックというと」
「宝箱に化けて冒険者を屠る魔物、ですな。
アトラクションにおいては宝箱を開けたお客様にカラーボールやバトンをぶつけに行くジャマーな存在として周知されておりますぞ」
「ジャマーってお前」
「ですがこれだけです、特に何か被り物をなさる必要もありませんし。割と簡単な仕事ですな」
「……なんか隠してない?」
狩真は、たゆんと贅肉を揺らしてテーブルに身を乗り出して言った。
「そのミミック役をここに持ち込んだのに何か意味でもあるの?」
「ありませんよそんなハッハハ」
ノーマン氏の眉が八の字に歪んでから震える手で空のティーカップを掴み。バギンとカップの縁を噛み砕いた。
狩真のどんな肉の脂身も見逃さない神眼は、その僅かな動揺を見逃さなかった。
「俺の目は誤魔化せねえぞ……ノーマンさんよ、あんた今朝食った飯はベーコンとレタスにトマトを挟んだサンドウィッチだったろ」
「ぐ……うぅむ。やはりあなたには隠し事は出来そうもない」
ノーマン氏は舌を出しながら肩を竦め観念したように狩真に首を振って見せた。
「実は近頃、ミミックをボコボコにして行く若者が後を絶たなくてですな……皆すぐにミミックを辞めてしまって困っているのです」
「出禁にしろよ」
「片っ端から出禁にしても増え続けていまして……」
「ミミックなくした方が早いんじゃない??」
「ほらそうやってー!! 近頃の若いのは分かっとらんのですよ! 冒険にはちょっと腹立つくらいの何かがあった方が良いんです!」
「混沌にそんなんあると思ってんのか? ……いや、あるか」
ぎゃーん!! とギルドの床に転げ回り始めるノーマン氏。狩真は自身より一回り年上の中年がぎゃん泣きする様を目にして引いた。
が、流石にこのままにしておくのも気分が悪い。
マナーの悪い客を締め出す以外にも出来る事はありそうだ、と狩真は強く頷いた。
「いいぜ、改めてその依頼俺が受けようじゃねえか。完璧なミミックを演じながらその問題を解決してやるぜ!」
シーフ職のスキル全然活躍しなさそうだけどな! と豊満な贅肉四段腹を揺らして、狩真は依頼を受ける事に決めたのだった。
Fin.
【サンプル3】── Dead or Alive ──
血は、薬の臭いと変わらない。
金切り声。怒声と重なり耳元すぐ傍を抜ける風切り音に続く、赤々とした飛沫は本来辿るべき結末に従わず。地面を覆う水気に落ちて血溜まりを作っていた。
山道を半ば滑り落ちるように、爪先を舵取りの如く軸として傾斜を降る。
物々しい金音が幾つも追って来る。"彼女"が崖を滑り降りたと見るや、追手の輩は己が身に纏う防具を信頼して勢いよく崖を降って来る。
「その先に逃げ場なんて無ぇ! 囲んで八つ裂きにしてやれ!」
外骨格を兼ねたアーマーを着た男達の一人が叫ぶ。
憎悪を滲ませたその声は事実。崖を降りた先には花々咲き乱れる平野が広がっているだけだったのである。
「……っ、はぁ……は……ぁ」
その広大さを前に、崖を降った勢いそのままで駆けて来た"彼女"は足を止めた。
見渡す限りの花畑。つい数分前まで降り注いでいた雨に打たれ、胸部を覆うプレート以外碌な装備も身に着けて来なかった身体は疲労困憊となっており。とても逃げ切れるとは思えなかったのだ。
それは諦観とは違う。早々に決断した事で僅かな時間で呼吸を整える事ができたのだから。
すっかり水気を吸って重さの増した長い白髪を振り回す。
直後、振り向き様の一閃を見切れなかった外骨格鎧の男が一人。咄嗟に構えようと振り翳した両手剣を取り落とし、バイザーの隙間から赤黒く濁った噴水を散らして崩れ落ちた。
「しゃあぁぁ────ッ!!」
「……ッ」
ザザザ、と。雨粒を乗せた花弁を踏み散らして男達が一人の女を素早く囲んで行く。
怒声を挙げ注意を引こうと威嚇する者。挑発して動きを誘う者。剣を振り上げて牽制する者。
これらは予定になかった事だ。
本来なら、ギルドを通して受けた依頼を"彼女"と仲間は無事にこなし。そしてとっくに帰路に着いている筈だった。
それが何かの間違い──例えば依頼人を取り巻く陰謀か──によって、仲間は手酷い反撃を受け撤退し。自分だけが敵地に残されてしまったのだ。
"彼女"は敵を一歩退かせようと銀光輝く大太刀を振るい、鮮血を男達の顔に塗ってやった。
そうしながら脳裏を過ぎるのは、仲間の行動に非は無いと認める自身の声。全滅を避けるなら仕方ない事だったと、"彼女"は理解していた。
だが、だが。その結果が、失敗の二文字が意味する所が己の死であると。それを認める事だけは未だ決心がついていなかった。
整った色白の肌が血色を失っていくのを男達は察している。彼等は、自分達が遂に忌々しい仇敵を追い詰めたのだと確信していた。
生死を問うまでもない。結末は二つに一つ、そしてこの状況から最後に残されるのは死だけなのだ。
「ッの、アマぁ……!!」
「殺せ! 挽肉にしてやれぇァ!!」
そう。考える余地は既に無い。
"彼女"も、男達も。目の前にあるモノを破壊し尽くすしかない。
「アリッサ……ごめんね」
だというのに、"彼女"は今一歩を踏み出そうという時になって考えてしまった。
随分前に喧嘩別れしてしまった恋人の顔や抱き合った時に感じた温もりを、雨風と血潮に晒されて冷え切った身体が思い出し、焦がれてしまう。
視界を歪ませ、一歩を阻害する雫。
息を飲んだ"彼女"の喉元を横合いから飛び込んで来た刃が掠める。涙の粒に視界を一歩踏み出すのを躊躇わなかったなら、そこが最期だった。
一瞬だけ身を低くして飛び出して来た男の顎を肩で打つ。"彼女"が握る大太刀は懐に入った際に揮うには大きく、長過ぎる。故にだろう、跳ねるような膝蹴りが男の腹部を打ち辛うじて後退させたのだった。
曇天の下で湿った風と怒号が重なる。
横薙ぎの一太刀が複数の剣をガギンと弾く。大太刀を振った重心に沿い身を地面に転がした"彼女"は、続く挟撃を起き上がりの動作から繰り出した前後の二振りで弾き、受け流す。
この瞬間、男達と"彼女"の中から音が消えた。
数の優位を以てしても捌き切る者を前に、圧倒的窮地に立たされている筈の"彼女"と奇しくも同じ境地に達したのだ。
「だァらぁッ!!」
「っ、く……!」
上段。渾身の振り下ろしを受け流すも、大太刀を通して受ける痺れが動作を鈍らせる。
背丈ほどの大太刀でなくとも、大の男が振り回す直剣の間合いによる都合を考慮すれば一人を相手に同時に動けるのは3人から4人。
"彼女"が咄嗟に身を投じた先は、たった今攻撃を受け流した敵の足下である。
(せめて、囲まれないように……さっきみたいに後ろからの攻撃を捌くのは、もう……!)
途切れ途切れの思考の中で、酸素を求め喘ぎながら足を動かす"彼女"は叫ぶ。
鎧具足の関節部を狙った擦れ違い様の一閃は、僅かに軌道が逸れて火花を散らすに留まり。雑な蹴りつけに胴を殴られて転がる。
白髪の女侍を追う凶刃。それを、並外れた腕力だけで奮い薙いだ大太刀が左右に叩き退けた。
片手で振り抜かれてるにも拘らず音速に達した切先が鳴らす鋭い音は男達を怯ませ、"彼女"は姿勢を低くしたまま足を大きく前後に開き構えた。
「づ、ぎぃァあッ!?」
それは居合などという行儀の良い技ではなく、男達より頭一つ小柄な"彼女"が力任せに足元を斬りつけたに過ぎない。だが──技量を要さぬ域というものが存在する。
喉の渇き、全身の骨が軋む痛みすら麻痺した極限の状況の最中、"彼女"の放ったすり抜けの一閃は切先二寸に渡る真空の刃を生む程の剣速を生じていたのだ。
足首を骨ごと断たれ、地面に崩れ落ちた男の苦悶の悲鳴が辺りに響き渡る。
"彼女"の手足は最早己のコントロール下には無く。通り過ぎ様の一撃を見舞いした直後には発条仕掛けの如く後方転回し、全身全霊を籠めた兜割りが崩れ落ちた男の脳天を叩き割って見せたのだ。
「ひぃ……っ!?」
「フゥ────ッ!!」
血飛沫に混ざる肉片を浴びた者が一人、人ならざる動きに翻弄された者が一人。
冷たく、静かな殺意宿した視線を"彼女"は瞬時に見抜いていたのだろう。動きを止めた者達の後方で剣を構えていた男目掛け、愛刀が刃毀れするのも厭わずに地面をギャンと削る勢いで逆袈裟に刃を奮い上げて咆えたのだ。
胸元三寸。顎から頬骨にかけて二寸。
一目で致命傷と分かる一撃を浴びて吹き飛ぶ仲間の姿を目の当たりにした男達は初めて畏怖する。
数秒前まで顔を青くしていたのは……果たして誰だったか。
「こいつ……やッ──
濃密な血の臭いが噴き出した頃になって漸く。下手に油断した仲間では危険だと悟った、男達の内で頭目の要であった男が前に出ようとした。
しかしどうだろう。腕の立つ傭兵でもあった彼だが刹那の間を後にしてその眉間に突き立てられたのは投擲された大太刀だった。
「馬鹿がっ、武器を捨てたぞ……殺せッ!! ひ、ひ、殺せ!! ころせぇ!!」
何故かその刃が届く距離の敵よりも離れた位置にいた者を狙った"彼女"を愚かだと男達は唇の端を歪ませた。それは安堵から来る思いだ。
外骨格鎧によって得る膂力は常人のそれを遥かに越える、故に男達は後は女を嬲り殺しにするだけだろう。
どうやって身を引き裂いてやろうかと思うよりも速く襲い掛かって行く男達。その二つの頭、巨躯二つ──"彼女"は指先を鉤状に曲げて目を見開いた。
徒手空拳。だが、これは"彼女"の意思に依らぬ直感めいた啓示が導いた標である。
音階の様に呼吸が綺麗にバラついた今なら、或いは。
幾つもの切り傷が入り、鉄板が抉れた胸当ては心もとない。
生死を分けた最後の一瞬。死闘の間際に揺れる"彼女"の胸元に隠された豊満な膨らみは、果たして無事に生還できるのか──?
【新発売!】
☆~貴女の豊かさを守ってくれるただ一つのブラジャー~☆
☆~伸縮素材に包まれた母なる象徴は聖母に並ぶ尊さを授ける~☆
☆~サイズは無限大のオーダーメイド無料受付~☆
──オートクチュールの名店『デッド・オア・アライブ』新作!
~天架ける希望のパンツァー~
Fin.
依頼結果
総依頼数:0
VERYEASY:0EASY:0NORMAL:0HARD:0VERYHARD:0NIGHTMARE:0
完全成功 :0大成功 :0成功 :0失敗 :0大失敗 :0結果待ち :0
リプレイ挿絵
SS挿絵
SS発注
得意なSSジャンル
バトル/シリアス/コメディ/ほのぼの/ダーク/シュール/えっち/恋愛/NL/GL