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シナリオ詳細

<アンゲリオンの跫音>無音の狂気

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 それは音もなくやって来る。無慈悲に蹂躙する。雷が天を裂く。しかし、その音は聞こえない。混乱する人々が悲鳴をあげる。しかし、その音は聞こえない。
「――、――――っ!」
 シェアキム六世の元にもたらされた神託。それが今、目の前で現実となっている。
 確かに聖都フォン・ルーベルグに程近いこの町は、平時であれば敬虔な聖職者たちが巡礼の途中に聖歌を口ずさみ、信仰者たちが祈りを捧げる程度の静かで穏やかな町だった。聖都へ足を踏み入れる直前に、心穏やかに旅人が身支度を整える、そんな町だった。
 町の様子がおかしくなったのは、黒いコウモリの群れがやって来てからだ。影のように侵食していくそれは、あっという間に音という音を食い散らかしていった。確かに静かな町ではあったが、町は無音ではなかった。それに気づいた頃には、もう、誰も、何も聞こえなくなっていた。
(ああ、ああ、頭が狂いそうだ!)
 心の内で叫ぶ。何もかもが聞こえない、というのは、こんなにも地獄だったのか。心音すら聞こえない今、自分は本当に生きているのだろうか、という疑問が何度も浮かぶほどに、おかしくなっている。自分が、自分であるという証明ができない。
 何度も稲光が点滅する。しかし、あるべき音がない。
「――――!」
 ただただ、虚空に叫ぶ。手元にあったコップを床に叩きつける。しかし、何一つ音にならなかった。


「音が無くなった町?」
「そうなのです! 皆さんもご存じですよね? 今、首都の近くで雷が沢山落ちているのを」
 勿論、知っている。シェアキム六世に降りた謎の神託。その一つ、第一の預言が『天災となる雷は大地を焼き穀物を全て奪い去らんとするでしょう』といったものである。どうやら、その預言は当たっていたらしく、現在、天義の首都・聖都フォン・ルーベルグの周りで天災レベルの落雷が起きている。
「その天災の被害にあっている町の一つが、音の無くなった町なのです。黒い影を見たとか見なかったとか、そういう情報があるので、原因はワールドイーター……終焉獣(ラグナヴァイス)ですね!」
「なるほどねぇ? つまり、そいつを倒せば終わりってことか」
「そうなのです。でも、できれば早めに片づけて欲しいのです」
 敵はできる限り早く倒すのが常ではあるが、わざわざこうしてユリーカが付け加えるのも珍しい。「何故?」と問えば、その答えはすぐに返ってきた。
「その町の人たちの音を奪われているのもそうなのですが、雷も、その町にある物は物音がしないのです。ずっと物音がしなくなったせいで、町の人たちが狂気状態に陥って、暴れまわっているみたいなのです」
「ああ……それは、早めに解決しないと駄目だね」
「そうなのです。先に様子を見に行った人の声は聞こえていたので、外部から持ち込んだ物の音はするみたいなのですが……それも、ワールドイーターに食べられるまで間だけだと思います」
 ワールドイーターから音を食われたなら、自分自身も音が発せなくなる。そのことを念頭に置きつつ、既に音が無くなっている雷などに注意し、暴走する人々をどうにかして、なおかつ、ワールドイーターを倒さなくてはならない。音はワールドイーターを倒せば戻ってくるだろうが、暴れている人たちを正気に戻すのは、はたして、それだけで良いのだろうか。
「それは……正直、私には分からないのです。ですから、皆さんにお任せする形になってしまうのです。あとは、宜しくお願いします!」
 ユリーカはそう言うと、また別のイレギュラーズたちの元へと駆けて行った。

GMコメント

 初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
 早速ですが簡単に説明致します。

●目的
『ワールドイーター』の撃破

●地形
 表通りには小さなお店や宿泊所が立ち並んでいる(元)閑静な町です。
 イレギュラーズの皆さん以外は、町にある物は音がしません。
 例えば、イレギュラーズの足音は、地面からは音がしませんが靴からは靴が擦れる音が聞こえます。

●敵など
『ワールドイーター』×?
 黒くて大きなコウモリの姿をしています。町のいたるところに群れを成しています。
 一際大きい個体が、四体いるようです。
 この町の音を食べています。倒せば少し音が戻って来るかも。
 主な攻撃方法は衝撃波のようなものや、爪による引っかき、吸血など。
 音を発しません。

『暴徒』×?
 町の住人です。
 長時間ありとあらゆる音を発せなくなったので、精神的に疲弊したのか狂気状態です。
 敵味方関係なく暴れまわっています。力はやけっぱちになっている人並み。
 音もなく物を壊したり、暴力を振るったりしています。
 音を発しません。

『落雷』
 第一の預言で明言されている天災です。一部、建物に被害があるようです。
 雷を直撃した場合はダメージ+雷陣、雷が落ちた地点から超遠距離以内で感電状態になります。
 音を発しません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 以上です。どうぞ宜しくお願いします!

  • <アンゲリオンの跫音>無音の狂気完了
  • GM名萩野千鳥
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月24日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロレイン(p3p006293)
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)
血風妃
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
紲 冥穣(p3p010472)
紲の魔女
リスェン・マチダ(p3p010493)
救済の視座
レイテ・コロン(p3p011010)
武蔵を護る盾

リプレイ


 音が無くなった町。そこに足を踏み入れた瞬間、異変に気付いた。
「足音、確かにしねえな」
 地面に擦るように蹴った『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)がぼそりと呟いた。遠くの方で大地の予言とされている雷も光っているが、いくら経っても音はしない。
「うぅ~……ゴロゴロしなくてもピカピカだけで雷はこわいし、なにも聞こえないのもやりづらい!!」
『リュコスさん、あまり大きな声を出すと気付かれてしうわ』
「!」
 ロレイン(p3p006293)が筆談で『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)に伝えると、はっとなって口元を抑えながらこくこく、と首を縦に振った。今の所、音を食べるというコウモリ型のワールドイーターの姿は見えない。しかし、いつ、どこで出会うか分からない。
「逆に、音を餌に釣れるかもしれないってことだよね」
「多分ね。細かいところは、この子たちで探して回れば良さそうだし」
「そうですね。わたしたちが探しづらいところを中心に探してもらいましょう」
『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は鳥を、『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)は羽リスを召喚すると、町の狭い路地や屋上といったところを探しに行ってもらう。
 ――これで、準備は整ったようだ。『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)はアルヴァと共に自身の翼で飛びながら、空に向かって声を放った。無音のように聞こえるそれは、コウモリ同士ならば聞こえる声。こちらの居場所に気づいたのか、黒い影のような一群がこちらに向かってくる。
「まずはあいつらだな! この俺が相手してやる」
 真っ先に、文字通り飛んで行ったのはアルヴァだった。名乗りを上げながら、コウモリ型のワールドイーターたちの意識を自身に向けさせる。細かなコウモリたちを地上で狙い撃つロレインと共に狙撃しながら、数を少しずつ減らしていく。中央に一際大きい個体が一体いるのが見えた。その時だった。
「っ!」
 一瞬、空が光ったのと同時に音もなく雷撃がアルヴァを貫く。勿論、覚悟してのことだったが、かなり痛手ではある。
「ちょっと、大丈夫!?」
「飛行戦闘を生業とする以上、天候荒れは折り込み済みでさ」
「そうかもしれないけれど!」
『紲の魔女』紲 冥穣(p3p010472)が雷を直撃したアルヴァを回復させる。やはり、敵味方関係ないとはいえ、無音で襲ってくる雷はかなりの脅威である。
(まだこの辺りにいるはず……)
 冥穣は周りを見回すと、先程雷が落ちた地点の近くに目的の精霊たちを発見する。
「見つけた……! お願い、街の人達が危ない目に遭うかもしれないから、どうしてもあなた達の協力が必要なの!」
『――――?』
「あまり人がいないところに……できれば、あの黒いコウモリのような奴らに雷を落として頂戴!」
『――!』
 ふよふよと浮かぶ雷の精霊たちに、冥穣の言葉が届いたのだろう。彼らはどこかへと向かっていった。
「これで、少しは被害が減ると良いのだけれど……」
 その願いが届いたのか否か、町の遠くの方で稲妻が走ったのが見えた。

「これでとどめです!」
 コウモリたちを引き付けていたアルヴァやレイテたちとは逆に、できるだけ気づかれないように、音を発しないように行動していた『血風妃』クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)は、中心部にいた一際大きなコウモリに狙いを定め、一発で仕留めた。一際大きなコウモリが地に落ち、影のように溶けると、一群となっていた小さなコウモリたちもまた同じように溶けていく。
「……どう、でしょうか」
 クシュリオーネが地面を靴で鳴らしてみても、音はしない。しかし、しばらくして周りがピカッと光ると、ドンッと雷の落ちる音が響き渡った。
「ひゃあ~! 雷の音!? うぅ……こわいけど、音がもどってきてよかった……」
「ええ、本当に。どうやら、周りの小さい個体を倒せば少しだけ、一際大きいのを倒せば大部分が戻ってくるみたいようですね」
 雷の音に驚くリュコスに対し、冷静に状況を分析するリスェン。
「その通りなら、二手に分かれて倒した方が早いかも。こっちはそれっぽい一群、見つけたみたいだしね」
 事前に祝音が放った鳥が、先程のようなワールドイーターの一群を見つけたらしい。それは、リスェンの方も同じだ。ほぼ真反対にいるようなので、手分けをして対処することとなった。


 祝音にワールドイーターの一群がいる場所へと案内する道中、リュコス、レイテ、クシュリオーネの目の前に現れたのは、音もなく暴れまわる暴徒たちだった。ある者は壁に頭を打ちつけながら、ある者は手に棒のような物を持ち振り回しながら、自分の身体も労わることもせずに暴れている。そんな暴徒たちが四人の靴音に気づくと、一斉に音の発生源である四人の方へ振り向いた。
「……」
「…………」
 何かを喋っているが、聞こえない。見間違いかもしれないが、虚ろな目が縋るように四人を見つめているようにも見えた。
 祝音の話によると、この先にワールドイーターの一群がいるらしい。このままでは巻き込まれてしまう。
「みんな、ぼくの声は聞こえる?」
 暴徒の前に立ち、そう話しかけたのはリュコスだった。リュコスの声に暴徒たちが耳を傾けたからか、暴力を振るう手は止まっている。
「ほら、ちゃんと音が聞こえるでしょ。こっちにおいで」
 その声に応えるかのように、ふらふらと四人の元に寄る暴徒たち。――しかし、
「――――!!」
 影のような黒く蠢く何か。コウモリの形を模ったワールドイーターの一群が暴徒たちも含めて四人に襲い掛かる。落ち着いてきた暴徒たちだったが、明確に自分たちを害するモノが現れたことによりパニック状態に戻る。
『怖いだろうけど、落ち着いて! 僕らは音を奪った敵を倒しに来たんだ……!』
 祝音が念を使って暴徒たちに語りかける。しかし、一部の暴徒の耳には届かなかったらしい。祝音に殴りかかってくる。だが、祝音はそんな暴徒を真正面からギュッと抱きしめる。急に抱きしめられた暴徒は、びくっと怯えながらも振り上げた拳を緩めた。
「ごめんね……音を奪った奴らを倒した後、また回復しに戻るから……!」
 祝音が術式を発動して、暴徒の意識を奪う。祝音に続くように、リュコスも暴徒たちの意識だけをどうにか沈めた。戦いに巻き込まれないように、鍵が開いていた家に一度運び込む。その間、レイテとクシュリオーネがどうにか抑え込んでいたが、徐々にコウモリの数は増えていく。もう限界か? そう思ったタイミングで、意識を奪った暴徒たちの運び込みは終わった。
「これでえんりょなく戦える」
「そうだね。皆から奪った音も声も……全部返せ!」
「ここからが本番だ。ほら、ボクはこっちだよ!」
 囮のようにレイテが空を飛びまわり、コウモリたちの気を引く。先程戦った個体と同じく、中央に一際大きい個体がいるらしい。その個体を倒すために、祝音がコウモリたちの逃げ場を失くしながら、クシュリオーネが無造作に弾を撃ちながら小さな個体を倒していく。
「! リュコス、向こうにまた暴徒、――!」
 レイテが上空から暴徒を見つけたらしい。しかし、その続きの言葉は聞こえない。どこにいるのか、普通だったら分からなかったかもしれない。しかし、リュコスは強化していた視覚と嗅覚で暴徒たちの方へと向かう。
『レイテ、大丈夫? 暴徒の方はリュコスが向かったから大丈夫だよ』
 祝音はレイテに念話でそう伝えると、彼はこくんと頷いた。暴徒の数もそこまでの人数ではない。リュコスもあっさり気絶させているようだ。
 その間にクシュリオーネが身を潜めながら小さな個体を倒し続けていると、流石に数も減って来たのだろう。隙間から、一際大きな個体の姿をしっかりと確認できた。
「神滅の魔剣……音食う奴だけ切り裂け! みゃー!」
 その一瞬を、見逃さなかった。祝音の作り出した魔剣で、真っ二つに斬り裂いた。
「――――!」
 どろり、と溶けるように消えていくワールドイーター。飛んでいたレイテが、トン、と地面に降り立つ。
「――、あー、あー……ボクの声、戻ったみたいだ!」
「良かった!」
「今ので、物の音が戻ってきたみたいですね」
「でも、町の人たちの音は、まだもどってないみたい……」
 先程の一群に声を食べられたレイテには声が戻ってきたようだが、どうやら、声は彼の分だけしか戻っていないようだった。クシュリオーネの言う通り、戻ってきたのは物の音のみ。
「とにかく、早く残りも片づけよう」
「回復は念のためにしておいて……起こすのは、声が戻って来てからの方が良さそうだね」
 皆、同じ意見だったようだ。祝音はリスェンが見つけた一群とはまた別の一群を探しに、鳥を空に放った。


「ったく、数だけは多いな。俺の得物は狙撃銃だっての」
 リスェンの案内で辿り着いた先は、ある広い建物の屋上だった。コウモリの一群を見つけたアルヴァは、早速雨のように降る弾丸をお見舞いした。それに同意するかのように、地上で雷撃を蛇のように扱っていたロレインも頷いた。
「流石に、こんな屋上に来てまで暴れる人は……」
 いないだろう。リスェンはそう続けるつもりだった。音もなく開かれた扉から、楽器を持ってこちらを襲いかかろうとする人たちが現れた。
「嘘でしょ、ここまで来る!?」
『わたし、説得してみます』
 音が奪われても話が通じるように、リスェンは念話に切り替えて対話を試みた。
『皆さん、もうすぐ音は戻りますよ。不安でしたよね。その手を止めて、わたしたちを信じて待っていてほしいです』
『こ、声、がする?』
『嘘だ、嘘だ、こんなの、幻聴に違いない、あ、頭が割れそう、だ』
 頭を抱えながらも、ふらふらと四人に近寄ってくる暴徒たち。
『所謂、ずっと無音室にいるのと同じ状態だったわけよね。長い間いると、頭がキーンとするらしいわ?』
 ロレインが走り書きでそう伝えると、リスェンや冥穣が、彼らを回復できないかと試みる。しかし、上手くはいかないらしい。
「っ! 流石に一人で足止めはキツイ。早めに対処してくれ」
 一人でコウモリの一群を引き付けていたアルヴァをそう叫ぶ。暴徒たちも、リスェンの話をあまり信じていないようだ。
『仕方ないですね。すみませんが、少しおやすみしててくださいね』
 今は自分たちが標的になっているから良いが、このままあのコウモリの群れへ、他の暴徒たちへ標的が向いたら大変だ。神聖な光が暴徒たちを包み込み、殺さずに、意識だけを刈り取る。同時に、足止めしていたアルヴァが限界になったらしい。コウモリたちが背後から襲ってくる。
「っ!」
 ロレインが真っ先に連なる電撃で纏めて攻撃する。しかし、全てを排除するのは叶わず、何やら衝撃波のような物が飛んでくる。
「――、…………(どう音を食べているのか気にはなっていたけれど……この衝撃波が原因だったのね)」
 心音さえ聞こえない。衝撃波を浴びることで、身体の内側からも音を奪うらしい。ある程度覚悟はしていた為、冷静に対応するロレイン。すぐさま、仲間たちに情報を伝える。
『衝撃波を浴びると、音を食べられるみたい。気をつけて』
「衝撃波!? 避けるの大変じゃないの!」
 アルヴァを回復し、ロレインの元へと駆け寄った冥穣は筆談で伝えられたそれを確認する。
「厄介だが、やるしかないだろう?」
 アルヴァは小さな個体の気を引き、纏めて蹴散らしていく。その中央から現れたのは、一際大きなコウモリの姿。それを逃さずに、ロレインは長銃の引き金を引く。――銃声は無かった。しかし、確かにその弾丸は中央のコウモリを撃ち抜いた。
「やったの?」
 ピタリ、とコウモリの動きが止まり、冥穣が恐る恐る様子を見る。コウモリの姿をしていたワールドイーターたちは、どろり、と溶けてなくなった。同時に、ロレインの心音が声が戻ってくる。
「――戻ったみたいね」
「ロレインさん! 良かったです……」
「本当に。大丈夫?」
「ええ」
 コウモリを引き寄せていたアルヴァも地面に降り立つと、三人の元へと戻っていく。
「音が戻ってきて良かったな。この町にある物の音も戻ってるっぽいが」
 試しに地面を叩いてみれば、地面から音が鳴った。四人が確認している間に、遠くから「うぅ……」と呻き声が聞こえた。明らかに四人以外の声である。
「う、あ……」
「あら、気付いたみたいね」
「お、俺の、声、が……?」
「大丈夫です。あなたの声、聞こえてますよ」
「あ、ああ……!」
 リスェンは冥穣に目配せすると、冥穣はすぐに暴徒だった彼らを回復しはじめる。三人も手当てを手伝い、彼らには室内にいるように伝える。
「向こうも、倒し終えている頃だろうな」
「そうねぇ。だとしたら、あともう少しね」
「順調に音も戻ってきているみたいですし、頑張りましょう」
 四人は頷き合うと、残りの一体を探し始めた。


 祝音が召喚した鳥に導かれながら町を駆けている途中、どうやらリスェンたちの方もワールドイーターを倒したらしい。暴徒たちから声が漏れていた。声が戻ってきたことによる安堵からか、暴れまわっていた人たちはある程度大人しくなっていた。
「一際大きな個体は、全部で四体確認されている。向こうも倒したとしたら、残りは一体だね」
「町の人たちも、色んな音がもどってきているみたいだから、少しおちついてる……のかな?」
「かもね。……っと、あそこ」
 祝音が指を差したところに、黒い塊のようにコウモリが集まっていた。先に辿り着いた祝音、リュコス、レイテ、クシュリオーネの四人は、周りに人がいないことを確認すると、先程の個体と同じようにレイテが飛び引き付け役となる。
「さぁ、こっちだよ」
 わざと声を出し、引き付けようとする。それ自体は成功した。
「――――!!」
 一際威力のある衝撃波に、咄嗟に耳を塞ぐレイテたち。しかし、その違和にすぐに気づいた。
「――、(音が、出ない?)」
『皆、聞こえる? レイテ、これはさっきみたいに声が……』
『ああ、出ないよ。他の皆も、そうみたいだね』
 しかし、覚悟はしていたため、戸惑うことはあっても慌てている様子はない。レイテはコウモリたちの攻撃を耐えながら、他の仲間たちが小さな個体を倒していくのを待つ。しかし――、
『たおしてもたおしても、キリがないね……!』
 雷が遠くで鳴っている。たまに無造作に飛ぶコウモリに当たっているようだが、数が減っているようには見えない。既に二戦しているため、皆かなり消費している。どうしようか、と悩んでいると銃弾の雨が小さな個体を纏めて貫いた。
「遅れて悪い!」
 レイテに襲い掛かるコウモリたちを一掃するアルヴァ。それに続くように、地上では傷を負った仲間たちを冥穣が回復して回る。
『もしかして、音を奪われていますか?』
『うん。今までとはちがう、大きいしょうげきはが来て……』
『そういうことでしたか』
 リュコスから事情を聞いたリスェンは、先に来ていた四人は声が出せないと念話で伝える。
『大きい衝撃波ということは、中央の奴か。さっさと周りの奴を倒さないとな』
 レイテが引き付けている間に銃撃は続く。目立つように攻撃するアルヴァに対し、ひっそりと地上から小さい個体を狙い撃つロレインとクシュリオーネ。祝音やリスェンも、纏めて攻撃できるように支援する。冥穣の歌声で身体を癒す。
『これで……!』
 リュコスが残り少ない魔力を練り上げ魔剣を作り上げ、中央の一際大きな個体に向けて斬る。
「――――!!」
 どろり、どろり、とコウモリの形を保てずに溶ける。
「――、これで終わった?」
 レイテが真っ先に声を出し、確認する。レイテの声が聞こえたことで、自分の声が戻ってきたことを確信した祝音が「そうみたいだね。みゃー」と応えた。
「そうだ、ミンラン! 向こうに、きぜつしてる人がいるんだ」
「大変! 手当てしにいかないと」
 タッタッタッ、と町を駆けていく。音が戻った町の人たちを助けるためにも、イレギュラーズは町のあちこちへと出向いたのだった。


「…………」
 遠くから、その様子を見ていた白装束の男。その男は音が戻った町を見下ろしていたが、興味を失ったのか、どこかへと去って行った。
 イレギュラーズたちがその視線に気づいたかどうかは、定かではない。

成否

成功

MVP

アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮

状態異常

アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)[重傷]
航空指揮
クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)[重傷]
血風妃
レイテ・コロン(p3p011010)[重傷]
武蔵を護る盾

あとがき

お疲れ様でした。
ワールドイーターは倒され町には音が戻り、暴徒たちも落ち着きを取り戻したようです。
ご参加頂き、ありがとうございました!

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