PandoraPartyProject

シナリオ詳細

イベントスタッフの募集

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●経験不問のお仕事です
 殺人的な猛暑が続いている。冬の厳しさを知るゼシュテル鉄帝国だが、今年は天より降り注ぐ灼熱の陽光とも戦いを繰り広げねばならなかった。男は鍛え上げた肉体を川へ沈め、女は鍛え上げた肉体で庭に水を撒き、各々が死力を尽くしていた。気化熱などという生活の知恵はいずれ太陽に敗北するのは明白であったが、一縷の望みを託して水を撒き続けるしかなかった。

 もはや国民の休日として認定して良い気温を記録した日、とある地方の刑務所で事件は起きた。囚人が暑さに耐えきれず熱暴走を起こし、所内は奇声と汗と拳が飛び交う地獄絵図と化していた。
 過酷な環境に生まれ育った民だが、喧嘩っ早い気質が備わっている事も珍しくなく、煮えたぎった体は耐え忍ぶ事よりも発散する道を選んだのだった。

「ウギャーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「ぱんつ!ぱんつ!ぱんつ!ぱんつ!」
「アチアチコンロ着火!アチチチチチチ!!」
「暑い暑い言うから暑くなるんだ!!アチチチチ!!」

「まずいでち……このままではあたちまで脳が煮込みハンバーグになるでち……」
 フランツィスカは頭を抱えた。所長として囚人を独特な方法で可愛がってきた彼女も今回だけは緊急事態と捉えたようで、生意気なペットの尻を蹴りつける教育、可愛がりは悪手と判断した。雑居房から聞こえてくる奇声、アチアチコンロって何だよとフランツィスカの笑いのつぼに若干入ったが、この暑さでは笑う気にもなれなかった。

 所内は刑務官にとっても囚人にとっても居心地の良いものではなかった。財政難に苦しむ国が出せる予算など知れたもので、通気性や景観などは度外視された刑務所とは名ばかりのタコ部屋に近い実態があった。

 苦肉の策としてフランツィスカ所長は青空レクリエーション計画を立てた。真夏のレッド・ホット・バーサーカーと化した囚人を炎天下に解き放つ行為は懸念も残るが、有り余る体力と気力を削ぐにはこれしかないと決断した。


●自分の力を試せる、やりがいのあるお仕事です
「ぼっこぼこのバキバキにして欲しいでち」
 絶望的な毛量に苦しむ所長は開口一番に荒事をギルド・ローレットへと持ち込んだ。
 対象はぼこぼこにされる筋合いのない鉄騎種の囚人との事で、悪事を働くのかと専門のメンバーが目を光らせたが話は違った。暑さで大暴れしている囚人を青空レクリエーションで落ち着かせようという極めて人道的な仕事内容である。

 所長曰く1000割の確率で大乱闘になるので収拾がつく程度に暴れてげっそりさせて欲しいという実に鉄帝国らしいパワー・オブ・チカラな解決法であった。炎天下の大乱闘ともなればこちらもげっそりすると思うのだが、なりふり構ってはいられない切羽詰まっている状況のようだ。

「あのファッキンバカたちは頭が悪い犯罪者たちだけど、殺傷はダメでち。滅多な事では死なないけど、流石にイレギュラーズのあんたたちが全力で頭部をフルスイングでもしたら死ぬでち」
 所長は最低限の注意事項を述べた後に段取りを説明し始めた。
 
 囚人に変装して大乱闘を扇動しても良いし、臨時の刑務官として制止(という名の暴力)しても良いとの事だ。何なら飛び入りの謎のマスクマンでも構わない。兎にも角にも囚人たちの鬱憤を晴らすのが目的であり、一線を越えてはならない。

 囚人の大半は鉄騎種で、明確な殺意さえなければ大丈夫だが、自身の強大な殺傷力に不安があれば獲物は警棒やゴム銃、所長愛用のケツバット等を貸し出してくれるようだ。愛用のケツバットでも頭をフルスイングしたら死ぬが。魔法に関してはわからんからドガーッてなるのをチュボって感じにしてと有り難いアドバイスを頂いた。

「あと終わったら適当に囚人のメンタルケアもお願いするでち」
 所長は確実に獣種なのだが、その大らかなメンタルは確かに鉄帝脳であった。

NMコメント

ねこくんです。暑すぎる。
今回のシナリオは殺害してはいけないザコ敵がテーマです。
気持ち良く暴れて無双しつつもキャラクターらしい接し方を行ってみて下さい。

●状況説明
炎天下のなかレクリエーション(大乱闘)が起きます。
上手に焚き付けて上手にコントロールして下さい。
大乱闘はストレス発散の為に計画された物なので未然に防いではいけません。
他の刑務官が見張っているので脱走は起きません。

●目標
【必須】レクリエーションをやり遂げる
【任意】囚人のメンタルケア(会話)

●他に出来る事
所内改善、猛暑対策、怪我の治療など

●敵
・暑さで気が狂った囚人 無数
大暴れしてます。イレギュラーズと敵対してるわけではないので数の暴力、連携攻撃は起きません。
武装は素手。殴られると痛いですが大怪我はしないでしょう。

・太陽
無敵の存在です。絶対に勝てません。
早急にレクリエーションを終わらせるべきです。

●サンプルプレイング
暑すぎますわ!囚人側で参加してみたけどまずここ狭いし汗臭いですわああああ!!
この部屋は絶対改善の余地がありますわね!ロケットランチャーでも撃って窓を作るべきですわ!!
レクリエーションが始まったら即ナイアガラデッドエンドをぶちこみますわ!
うおおお死ね!!いや死ぬな!!!オラッ!崩滅呪王!!

ふう……大丈夫ですか?道を踏み外したとはいえ貴方たちも人間ですものね。
罪を償ったら、また今日みたいに遊びましょうね?

  • イベントスタッフの募集完了
  • 雇用形態 アルバイト・パート・暴徒
  • NM名ねこくん
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月05日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

リプレイ

●7025番!ごはん願いま~す!
 灯台下暗しである。フランツィスカは大胆な依頼をローレットに持ち込み、必要な駒を4人は回して貰えるものと思っていたが期待に添えない形となった。手筈通りに事を進めるというギルドからの約束を疑うつもりはないが、大事を成す前の些細な引っかかりを感じ取っていた。
 少数精鋭、即ち生粋のファイター『無尽虎爪』ソア(p3p007025)、常識人枠でピザもくれた『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)、この依頼内容への適性っぷりを何故か強く推された『おせっかい焼き』佐藤 美咲(p3p009818)の3人である。
 フランツィスカは欠員の不満を顔にしながらも、比較的プロ意識の高いメンバーとのやり取りを交わし、悪い結果にはならないだろうと決行に踏み切り作戦会議を終えようとした。
「乱闘!? 任せといて! ボク頑張るよ!」
 ソアが会議を終えた事を察し元気に締めようとする。小さな獣種の依頼人をあやしていたクアトロは何気なく、自分が考えてもしょうがない事であり、また、議題にあげるまでもないと判断した話を一応は切り出した。お土産のピザを持たせる為の間を作った程度の事である。
「そうそう、フランツィスカちゃん? 1837番が何とかするって話だけど、知ってる?」
「なんでちそれ」
「またなんで私みたいなのが推されるんスかね……ん?」

●1837番!飲酒願いますわ!
 某所。余程ひねくれた人間でもなければ刑務所と聞いて思い浮かべるイメージは負の性質を持っている。薄暗い鉄格子、収監者同士の抗争、巧妙に隠された脱獄ルートなど、映画や書物で描かれる想像の産物が定着している。ここ鉄帝国の一部地方刑務所に置いてはさほど当てはまるものではない。
 そもそもが喧嘩っ早い性質を持つ国柄であり、双方合意の決闘やカッとなって露店をぶち壊しただの、訓練相手を間違えて他人を殴打してしまっただの頭を抱える罪状に溢れ、強い言葉を使っても灸を据えるという程度の収監施設であった。故に、囚人は刑務官の知り合いであったり、ひどい話で親戚であったりする事も多々あるようで、公務として容認し辛い曖昧でフレンドリーな空気が漂っていた。あれがブチ込まれるまでは。

「私達には武器もなく、立てこもるための食料もありません! 成功の見込みは非常に薄く、失敗すれば恐らく私達は処罰されるでしょう。ですが、今一度思い返して欲しいのです。隠していたお酒やおつまみは没収され、刑期を満了しなければここから出さないなどという理不尽な要求を突き付けられた時の絶望を……! 脱獄を試みては捕縛され、罰と称して反省文を書かされた時の怒りを! 彼らをこのまま増長させれば、私達は何度でも同じ目に遭うことでしょう! 私達の未来のために、これから収監されて来る人々のために、私達は、今、立ち上がらなければならないのです!」

 ヴァレーリヤ! ヴァレーリヤ! ヴァレーリヤ! ヴァレーリヤ!

●9818番、帰りたいッス
「まあ、3人でとっとと仕事を終わらせてアイス載せたパフェでも……おい、囚人側に見覚えがあるやついるぞ???」
 だらしのない肉……身体を囚人服に押し込み、作戦通りに収監される事となった美咲ら一行は異様な熱気に包まれた。猛暑によるものではない。気温で自暴自棄に囚人が発狂しているという話ではなかったか、この熱気はそんな後ろ向きな熱量ではない。何か一つの目標に向かって栄光を信じ抜く、生のエネルギーから発せられた熱……。迂闊にも気圧され、迂闊にもそのエネルギーの中心と目が合ってしまった。
「あら、美咲にソア。クアトロもいらして。貴方たちも革命(revolution)に?」
「仕事よ」
 クアトロは自身が何とかしなければと悲壮な決意を抱いてローレットの意図を理解した。得体の知れない美咲はともかく、純真そうな虎の子と自分では詰めの甘さを懸念していたがこれほどまでに強力な起爆剤が仕込まれていたとは。もはや爆ぜすぎて焼け野原になりかねない。驕るつもりはないが、自分はこれを何とかする為に送り込まれた常識人枠なのだ。評価されているのか都合の良い駒だったのか、複雑な気持ちを抱いてスレンダーな身体を囚人服の袖に通していった。
 ソアは初めて着る奇妙な衣服に浮かれ、発育の良い身体は他の囚人の鼻の下を伸ばしたが、似合っているという賛辞に対し人懐っこい笑顔を返している。一方の美咲は何か触れてはいけないモノに触れられたようで、やる気を感じられなかった瞳に妖しい炎を宿していた。

「ここでの生活にも飽き飽きしていたところだったので、丁度良かったですわ! この大乱闘で刑務所を制圧して、私のための王国に作り替えて差し上げますわ〜〜〜!」
 大方の説明を終えたクアトロは間違いなく間違えて伝わった事を認めてはいたが、これ以上の説明は無意味である事もまた認めざるを得なかった。

●9684番……えっと、私も何か言わないとダメなの?
 きっかけは川に投げられた小石のようなものだったと当事者は語る。例の女囚が何処から仕入れて来たのか不明の酒瓶で看守を殴りつけたと語る者、妖艶な美貌を巡って争いが起きたと語る者、むちむちぼでーの虎がたまらんと語る尻滅裂(語字ではない)な者、デブが暴れ出したと語る者、今となっては責任が誰にあるのか知る由もなかった。最後にインタビューに答えた男は特に打撲傷が激しく、現在も入院中である。鉄帝人だからどうせすぐ治るッス。
 動けるタイプのデブ(p3p009818)にしてもハニ虎えっちっちにしても乱痴気騒ぎを制御できる力量があり、デブ(p3p009818)もデブ(p3p009818)で完全に血が登っているわけではない。クアトロの黙々と行うダメージ・コントロール、群衆コントロールにプロ意識を感じ取り、自身も意識を引き締めるクレバーさがある。
「お褒めの言葉をありがとうございます。お前からはっ倒す」

 囚人サークルの姫と化したソアは心からこの状況を楽しんでいるようで、この場に似合わぬチアリーダーのような輝きを放っている。どんよりとしたダークファンタジーの空気を放つ前者と打って変わって、まるでスポーツのような爽やかな乱闘が繰り広げられていた。
「いけー! そこっ、パンチパンチ!」
 心なしか囚人も良いところを見せようと、無茶な応援通り拳を繰り出していた。

●Valeria, I love you Valeria
「邪魔をするだなんて、どういうつもりかしら? 私達は、ただ、現状を変えたいだけ。いつでもどこでも脱獄できて、収監中にはお酒も飲めるご機嫌な監獄ライフを楽しみたいだけ。そこに一体、どんな罪があるっていうんですの!!」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ率いるゼシュテル・コンクエストは留まることを知らなかった。クアトロは最低限の説明を終え、ソアはヴァレーリヤさんなら大丈夫と信頼し、美咲に関しては諦めていた。詰まる所、この聖戦士たちを止める抑止力はこの場に存在しなかったのである。誰も連帯責任を取りたくないのである。
 酒臭い独房にブチ込まれていた女囚は着々と同士を集め、もはやムショ生まれの聖女と言っても過言ではなかった。出自不明の酒瓶を以て破竹の勢いで進軍し、イレギュラーズの演技も中々の物だなと高みの見物を決め込むつもりであった看守チームを混乱の渦中に叩き込んだ。
「おーっほっほっほっほ! レコンキスタ! レコンキスタですわ~!!」
「あのお嬢さん、掲げる大義が蛮族のそれなのよね……」
 力尽きた者たちを癒やし続けるクアトロの優しき光の聖域は、戦火に焚べられる街の灯にも似た儚さと尊さを宿していた。大凡の働きは終えた事を死屍累々の囚人たちが物語っている。スポーツマンシップに目覚め握手を交わす者、ソアちゃんファンクラブを結成する者、クアトロの下へ傷の治療を頼みに這い寄る者と、動が静に変わりつつあった。ヴァレーリヤと美咲の周辺を除いては。まだやるつもりだ。

●ゼシュテルの空に
 フランツィスカは息を切らしている。例の暴徒集団をほぼ一人で鎮圧したのだから、何処にこれほどまでの力が備わっているのか美咲は興味が湧いた。首謀者の女は牢獄で回転ビンタを受けている頃だろう。まさか囚人たちが回す謎の棒が地下の回転ビンタマシンに直下で繋がっているとは思わなかった。こんな謎のオブジェクトを作っているからスペースだの通気性だの問題が出るのではないか、美咲は具申する事を留まり食後の安酒だけでも提供してはどうかと現実的な案を述べた。
「ただし、アレには提供したら駄目ッスからね」

 ソアは脱獄の算段も立てていたが、囚人達に妙に気に入られたようで治安に一役買っていると、形だけの懲罰すら不問となった。また、飛行や物質透過といった手品は精神年齢の近いフランツィスカを大いに喜ばせた。
「ヴァレーリヤさんによろしく言っておいてね! あと、また遊びに来ていいかな?」

 ヴァレーリヤへの回転ビンタが100周目を超えた辺りでクアトロはサヨナキドリ謹製のジュエリー・サマー・ピーチを囚人たちに配り始める。火照った身体に桃の果汁が染み込み、涙を流す者もいた。聖女とは酒瓶で人を殴りつける暴漢ではなく、クアトロのような者を指す言葉だと何か違った方向に話が進んだが疲れ切った身体では微笑む程度しか反応を返せなかった。後日、刑務所内にクアトロを描いたとされる絵画が出回るのだが現時点で彼女は知る由もない。
「これは……絵心のある方も収監されているのね。ふふ、ちょっと恥ずかしいけど好意は受け取っておくわね」

 ビシビシビシビシビシビシ
「ちょっと! 私だけなんでこんな所でエピローグを終えなければなりませんの!!」
 回転ビンタマシンは回り続ける。何時までも 何時までも……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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