PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<烈日の焦土>夏だ! 海だ!! クラーケンだ!!! え?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●きっかけ
「クワトロくん。夏だよ、泳ごう?」
 それは『冬結』寒櫻院・史之(p3p002233)が放った些細な一言だった。
 豊穣に現れたクワトロは、またしても不運やドジが重なり任務が達成できそうになくなると、近くの町で手伝いを募集していた。
 無事に、と言っていいかは分からないものの、その手伝いを終えて解散する運びとなった時に、史之がそう言って遊びに誘ったのだ。
「あ! それなら僕もいいですか? いっぱいお話したいと思っていたんです!」
 史之の誘いにクワトロよりも早くに反応したのは『氷雪剣舞』セシル・アーネット(p3p010940)だった。手伝う中で話はしたが、どうやらまだまだ話し足りないようだ。
 対するクワトロの反応はというと――。
「私でいいんですか!? 是非お願いします!!」
 それはもう嬉しそうにそう返した。なんでも、同僚であるウーノたちとは互いに同じ主人に仕えるというだけで、必要に応じて連携は取るものの仲間や友人といった意識は薄く、こういった遊びに行くような機会はないのだという。
 そもそも、任務が終わればまた次の任務が入ってくるので遊ぶ暇がない。
 そんな事情を聞いて遊びに行くと次の任務に差し支えるのではと心配するセシルと史之ではあるが、クワトロはなんてことはないといった様子で胸を張る。
「ご存じの通り、私は任務成功率が著しく低く帰還するのも遅いですからね。
 一日くらい帰るのが遅くなってもへっちゃらです!!」
 決して自慢にはならないし、言っていて自分で悲しくはならないのか。と別の心配が頭をよぎるものの、遊びに行くのを楽しみにしているらしいクワトロにわざわざそんなツッコミを入れるのも野暮というものだろう。
 クワトロの次の任地が鉄帝だと聞くと、どうせならと鉄帝の海でバカンスをすることになったのだった。

●それからどうした
 鉄帝の海は観光客や涼みに来た近所の住民たちなどで大いに賑わっていた。波打ち際で水をかけあって遊ぶ子供たち、競争だと全力で泳ぐ青年たち、パラソルの下で優雅に冷えたドリンクを飲む若い女性のグループなどなど。
 海の家も盛況なようで、呼び込みの声が飛び交っている。
「海だ~!!」
 そんな海岸を駆け抜けると、クワトロは波打ち際で大いにはしゃぎ始めた。
 直前まで任務で近くに来ていたが、安定の不運によっていつも通り失敗に終わったこともあってか、少し自棄になっているような気もしないでもないが、楽しんでくれたのなら誘った甲斐があったというものだろう。
「楽しそうでよかったですね」
「そうだね。それじゃあ僕たちも行こう」
 全力で楽しもうとしているクワトロにつられ、セシルも史之もまた波打ち際へと走っていく。と、なにやらそれまで楽しそうだった空気が一変する。
「史之さん、あれ!」
「あれは……!」
 不穏な気配に周囲を見渡すと、セシルが沖合に現れた巨大な影に気付く。
 それは、船舶と同等かそれ以上の巨体にまで成長したイカの化け物であった。が、問題はそこだけではない。
 よくよく見ると、その触腕の一つにクワトロが巻き取られていたのだ。
「なんでこんなことになっちゃうんですか~!!」
 逆さづりになったクワトロが泣きそうな声で叫びをあげているが、もはやそういう星の下に生まれたのだから、としか言いようがないだろう。
「はぁ、仕方ない。助けに向かうとしよう」
「はい!」
 クワトロの不幸体質に史之は頭の痛い思いをしつつも、このまま放置はできないとしてセシルと共に救助へ向かう。

GMコメント

本シナリオは
・寒櫻院・史之(p3p002233)様
・セシル・アーネット(p3p010940)様
のアフターアクションとなります。
よろしくお願いします。

●目標
 1.クラーケンを討伐する
 2.バカンスを楽しむ(こっちがメイン)

●ロケーションなど
 場所は鉄帝のとあるビーチです。
 観光地ともなっており、海で遊ぶために多くの人々が集まっていました。
 史之様、セシル様はここでクワトロと遊ぶ約束をしており、当日は合流して一日中遊ぶ予定でしたが、そこに望まれない乱入者が現れました。
 乱入者を倒し、夏のバカンスを楽しみましょう。

 なお、海の家やレジャー施設などがあるので、遊ぶ道具やBBQセット一式などをレンタルすることが可能です。

 また、本シナリオに参加される皆さんは、史之様やセシル様に誘われた、たまたま同じ場所に遊びに来ていた、などなど好きな立場・シチュエーションで参加して頂いて構いません。

●エネミー
・クラーケン×1
 超巨大なイカの魔物です。
 沖の方にいるので、水中行動や水上移動といった水上戦への適性があるといいでしょう。無くてもなんとかなります。
 触腕で殴ってきたり墨を吐いたりしますが、図体がデカいだけでそんなに強くはないので、軽く捻ってBBQの材料にでもしてあげてください。

●人物
・クワトロ
 十五歳くらいの体格で、中性的な顔立ちをしています。
 後述のティツィオを主としており、その命令で色々と動いているようですが、本人のドジや不運によって命令遂行率は0%を記録しています。
 これまで遊ぶ機会というのが無かったので、今回のバカンスは非常に楽しみにしていました。
 現在はクラーケンの触腕に捕らえられており、逆さづりにされたり振り回されたりしています。
 頑丈なので放置してても問題ありませんが、そのうち三半規管がやられて虹色のナニカを吐き出すかもしれません。
 なお、近くで任務があったようですが既に失敗に終わっており、このシナリオ中でイレギュラーズと敵対することはありません。

・ウーノ、ドゥーエ、トレ
 致命者です。
 クワトロと全く同じ容姿をしており見た目では見分けがつきません。
 クワトロと同じくティツィオの命令で暗躍していますが、このシナリオには登場しません。

・ティツィオ
 遂行者です。
 クワトロの主人ですが、このシナリオには登場しません。
 容姿、素性、能力など現時点では一切不明です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <烈日の焦土>夏だ! 海だ!! クラーケンだ!!! え?完了
  • ポロリはないよっ><
  • GM名東雲東
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者
陰房・一嘉(p3p010848)
特異運命座標
セシル・アーネット(p3p010940)
雪花の星剣
芳野 桜(p3p011041)
屍喰らい

リプレイ


「振らないでください~!」
「クワトロさん!? 今助けるから待っててくれ!」
「あわわ! クワトロさん大丈夫ですかー!? 今助けに行きますからね、もう少し待っててください!」
「クワトロくーん……。かえっておいでー……。むりだね、うん。やっちまおう」
 クラーケンに捕らえられ、ぶんぶんと振り回されているクワトロを見て、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と『氷雪剣舞』セシル・アーネット(p3p010940)はすぐに救出のために動き出した。
 イズマが船を出し、セシルが竜宮イルカを呼び出している間に、『冬結』寒櫻院・史之(p3p002233)がクワトロへと呼びかけるが、触腕にしっかりと掴まれて動けないらしい。
 史之もまた、地面を踏みしめ飛び立とうとする。
「まぁ、待ちなよ」
 そんな二人を制止したのは『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)だった。
「どうせならもっとスマートにいかないかい?」
 車椅子をオートマタに押させて前へ出ると、そう言ってシャルロッテは近くでクラーケンの方に向かおうとしていたイレギュラーズも迎え入れ、それぞれの能力を確認するとどうすれば効率的に倒せるのか作戦を練り上げる。


「それでは 行ってきますの!」
 先行する『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が沖へ向かうのを見計らって、史之が飛び立ちセシルも竜宮イルカに乗ってクラーケンへと向かっていく。
「よろしく頼むわね?」
「運んでもらえるのは助かる」
 イズマの船には『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)と『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)が同乗することになり、シャルロッテは車椅子ごと近くの海の家で借りたゴムボートに乗り込み、少年執事と少女メイド型のオートマタ二体にそれを漕がせる。
「敵とはいえあんな姿を見ては……な」
 『屍喰らい』芳野 桜(p3p011041)はそう呟くと、ゴムボートの隣で優雅に水面を歩いていくのだった。


「さぁ こちらですの!」
 クラーケンの眼前を飛びながら、ノリアは尾びれを見せつけるように揺らす。
 透明な尾びれは夏の日差しをうけて艶めかしく輝き、さぞ美味しく見えることだろう。案の定、クワトロを振り回す触腕の動きが止まり、視線はノリアに釘付けとなっていた。
 自分を食べ物として注意を惹きつける捨て身の戦法を取ったノリアだが、この作戦には慣れているのだろう。クラーケンの触腕が届きそうで届かない絶妙な高度を維持しながら、陸の方へ向かわないように誘導している。
「作戦は上手くいっているようだね。それでは、そろそろ攻撃開始といこうか?」
「よし! 船は任せた!」
「えぇ、いってらっしゃい」
 ノリアとクラーケンの追いかけっこを眺めながらシャルロッテがそう言って視線を向けると、イズマはクアトロに船を任せて相棒のワイバーンであるリオンに乗り換え、クラーケンの方へと飛んでいく。
「そこまでにして貰おうか!」
 ノリアを追いかけまわすクラーケンに狙いを定め、細剣の先端に魔力を込めて魔法陣を描けば極低温の冷気を宿した魔力が放出される。
 不意打ちを受けたクラーケンは、海水ごと体の一部が氷に覆われそこで自分が多くのイレギュラーズに狙われていることに気付く。
「あなたに振る舞うのはこれよ」
「これだけ大きければさぞかし食いであるだろうな」
 停められた船の上からはクアトロが膨大な魔力を込めた弾丸を放ち、イズマの船から降りて水中を進んでいた一嘉はイズマとクアトロの攻撃で生まれた隙に懐へと潜り込むと、漆黒の大剣を鋭く振るい斬り刻んでいく。
「クワトロさん! もう少しだけ我慢してくださいね!」
 シャルロッテの指揮と支援によって力を引き出されたイレギュラーズの、畳みかけるような攻勢は留まることを知らず、鞭のように伸ばした氷剣を十本の触手に負けぬほどの手数で振るい、逆にクラーケンの触手を斬っていく。
「お膳立てはこれでいいかな?」
「十分!」
 紫煙をくゆらせる桜が練り上げた魔力を投射し、その直撃を受けたクラーケンは衝撃によって目を回したところに史之が太刀を振るう。
 上空からの落下に合わせて体を回転させ、最大の力を乗せた一刀によってクワトロを捕らえる触腕を斬ると、急ブレーキをかけて落下するクワトロを空中で受け止めた。
「あ、ありがとうございます~」
「クワトロさんをこちらに。船に乗せてきます」
「頼んだよ。 あ、それとクワトロくんは船の機材には触らないようにね?」
 クワトロの救出が成功したところで、セシルはトナカイのマーシーが引くソリに乗り換えると、そのまま空を駆けて史之の下へと合流し、ソリの荷台にクワトロを乗せて貰う。
 戦闘が終わるまでイズマの船で預かって貰う手筈になっており、セシルはそこまでの運搬役なのだ。
 だいぶ振り回されたようで目を回しているクワトロに念のため釘を刺すと、史之はクラーケンとの戦いに戻りセシルはイズマの船へと向かっていく。


「これでとどめだ!」
「こんがりと焼いてやろう」
 クワトロを救出したのであれば、もはやイレギュラーズは遠慮する必要がない。そのままクラーケンを圧倒すると遂にその時が来たようだ。
 構えた大剣に魔力を込めた一嘉が全身に力を込めて振るうと、その斬撃は黒き獣へと姿を変えて巨大な顎でクラーケンへと食らいつき、続くイズマが扇のように広がる火焔を放てば美味しそうな匂いが辺りに広がる。
 望まれぬ乱入者ではあったが、こうしてイレギュラーズが迅速に対応したことで被害はほぼなく、討伐されることとなったのだった。


 クラーケンの討伐を終えたイレギュラーズがビーチへと戻ると、歓声と拍手によって迎えられた。
 さすが鉄帝というべきか、イレギュラーズが戦いを始めるとビールなどを片手に観戦して楽しむようになったらしい。
 そのまま、ビーチまで運んできたクラーケンやイレギュラーズと写真撮影会でも始まりそうな雰囲気になりかけるが、ここでもやはりシャルロッテが制止した。
「はいはい、そこまでだよ。このクラーケンは捌いて振る舞うから、それまで待ってね」
 この一言に周囲一帯がより一層湧き上がったのだった。


「さて、まずは刺身で一口……」
 切り出したクラーケンの身を刺身にして口へ入れたのは一嘉だった。調理するにしても、素材の味を知らねばそれを活かすことは出来ない。
 瞑目しながらそれをじっくりと味わうと、程よい弾力のある触感と口の中に広がる甘味とうま味。間違いなく一級品であると確信することが出来た。
「これならどんな料理にも使えそうだな」
「持ってきた食材や調味料は色々あるから、大抵のものなら作れそうだね」
「ふふ。ピザにもきっとよく合うわ」
 同じく料理の心得がある史之やイズマ、クアトロも同じ意見だったらしい。
 一嘉が荷台に乗せて持ってきていた食材や調味料を使って、早速手分けして料理を開始する。
 まずは史之が巨大なクラーケンを解体していき、そうして切り分けられたクラーケンの切り身は、調理を行う一嘉、イズマ、クアトロに順次振り分けられていく。
「……うん、良い匂いだ」
 借りてきたバーベキューコンロの前に立つイズマは、串に刺したクラーケンの切り身を野菜や貝などと一緒に焼いていく。ある程度火が通ったところで醤油をひとたらしすれば、醤油の焦げる香りが辺りに広がり食欲を掻き立てる。
 その横でクアトロは細かく切ったクラーケンの切り身を、塩で軽く炒めて皿へと移していくがそれで完成ではない。皿に乗ったクラーケン炒めを見つめながら念じると、クアトロの掌に薄い箱がどこからともなく現れた。
 箱の蓋を開けると、そこには先ほど作ったクラーケン炒めが具材として乗ったマリナーラと呼ばれるピザが完成していたのだった。
 そして、料理を得意としているイレギュラーズの中でも最も本格的な調理を行っていたのは一嘉である。
 細く切り分けた刺身だけでなく、丁寧に包丁を入れて触感を良くしたうえで、予め用意しておいた酢飯と合わせて握り寿司にしてみたり、下処理を済ませたゲソを野菜と合わせてかき揚げにしたり。さらにはすり潰した切り身をはんぺんや玉ねぎと合わせ団子状にして上げるイカ団子まで作ってみせたのだ。
「ピザうめぇ!」
「イカ焼きくださーい!」
「こっちは寿司とかき揚げ~!」
「刺身とイカ団子もよろしくね!」
「はいですの~! 順番にお持ちするので 少々お待ちくださいですの~!!」
 この料理の数々に大慌てなのはノリアたちである。
 臨時開店した海の家『イレギュラーズ』は、先ほどの活躍とプロ顔負けの料理人を抱え込んでおり盛況は必然だが
まさかここまでになるとは。
「一、六、四番テーブルの順に持って行って。それが終わったら八、九、十番テーブルの片付けね」
「は、はいぃっ!」
「まさか、私が接客をすることになるとはね……」
 状況を正確に見極めシャルロッテが灰色の脳細胞をフル回転させて、最高効率で動けるように給仕や片付けの順番を指示すると、その指示に従ってノリア、セシル、桜の三人が店内を回り、客の待ち時間を最小化することに成功していた。
 ちなみに、クワトロは開始数分で皿やグラスを盛大に割って奥に引っ込められ、皿洗いなどを行っている。時々悲鳴のようなものが聞こえるが気にしてはいけない。


「ふぅ、なんとか客足は落ち着いてきましたよ」
「あ、お疲れ様です!」
 ある程度時間が経って休憩を取れるだけの余裕が出来始めると、順番に休憩を取っていくことになる。最初に休憩となったセシルは、自分や史之が持ってきていた食材をバーベキューコンロで焼いてクワトロと共に食事にすることにしたようだ。
 クラーケンの切り身に加えて、肉や野菜を串に刺して焼いていくと、美味しそうな匂いが広がっていく。
「はふはふ…! んぐっ! 美味しいですね!」
「うんうん美味しいですよね。僕も海でのバーベキュー大好きです。
 クワトロさんは前もこんな風にバーベキューしたことありますか?」
「いやー、基本的に任務で各地を転々としているので、こうして遊んだりバーベキューを楽しむ時間なんてありませんでしたよ~」
「そうなんですね。でしたら、今日はうんと楽しみましょう! ほら、飲み物もどうぞ」
「ありがとうございます! んぐっんぐっ!」
「ところで、クワトロくん。好き嫌いはあるかな?」
「特にないですよ! 食べられるものなら何でも好きです!」
 セシルの差し出した飲み物を勢いよく飲み干すと、そこに賄い料理を作りに来た史之が質問を投げかける。賄いを作るにあたって、出来れば苦手なものは避けてあげようと思ったのだが、どうやら気にする必要はないようだ。
 了解。と短く答えると、あり合わせの物を幾つか組み合わせて手早く料理を作ると、それをクワトロやセシルに振る舞う。バーベキューとは違った趣もあり、これはまたこれで美味である。
 料理を美味しそうに食べるクワトロのすがたは、今世間を騒がせている遂行者たちの仲間という気配は感じられず、史之もセシルもその辺にいる子供のように思えた。
 それがなぜ、遂行者と共にいるのか。疑問は尽きないが、今はこの時間を楽しみたい。それが共通の思いだった。
「そういえば、クワトロさんておいくつなんですか? 僕といっしょぐらい?」
「うーん、何歳なんでしょう? 肉体的にはたぶん15歳くらい……ですかね?」
「なんで疑問形なんですか~」
 などと他愛無い雑談をしながら時間は過ぎていく。


 セシルの次に休憩に入ったイズマは、クワトロに気になっていたことを聞いてみることにした。
「クワトロさんの任務っていつもどんな感じなんだ?」
「うっ! それはその……各地で帳を降ろすことですけど……」
「それで大丈夫なのか……?」
「うぅ……私だってダメだとは思ってるんですよ!? でも……」
 任務遂行率が著しく低いため気になったのだが、クワトロが露骨に落ち込み始めるとイズマも焦る。単純な興味であってそこまで追い詰めるつもりはなかったのだ。
 なんとかこの空気を変えようと思考を巡らせ、そうだと思いつくとクワトロの手を握って海へと連れ出した。
「……どうして泳げないのにあんなに沖にいたんだ?」
「あはは……。勢いで何とかなるかなって思いまして……」
 クワトロはなんと泳げなかった。
 そこで、イズマは念のためと思って借りていた浮き輪をクワトロに持たせ、泳ぐ練習をすることになったのだった。
 比較的浅い場所で、クワトロの両手を握りしっかり泳げるように教えていくと、飲み込みは早いようで浮き輪ありなら泳げるようになったので、そのまま海水浴を楽しむことになる。
 ただ泳ぐだけではなく、時には海中の景色を楽しんでみたり、偶然近くに来ていたイルカと触れ合ったりと楽しい時間を過ごすことが出来た。
 クワトロの気分も晴れたようでイズマもほっと胸を撫でおろす。
「ほら、こうして貝殻を耳に当ててごらん?」
「こう、ですか? ……わっ! 波のおとが聞こえてきます!」
 満足するまで泳いでからビーチに戻ると、イズマは落ちていた貝殻を見つけそれを拾い上げるとクワトロへ渡した。
 貝殻の中から響く波の音に不思議そうにしているクワトロの姿は微笑ましく、見ているだけでなんだか胸が暖かくなるような気がする。


「次は私と遊びましょう?」
 そうしているうちにイズマの休憩時間が終わりを迎えたようだ。休憩が次であったクアトロが呼びに来て別れると、今度はクアトロが遊びに誘う。
「初めまして、クアトロよ。
 本質的には同じ意味の名前でしょうから……あだ名でもピザ屋のお姉さんでもなんでも呼んで構わないわ」
「よろしくお願いします!」
 クアトロは以前にクワトロと会っていた人物の同僚でもある。軽い自己紹介をしたあと、そんな会話を交えながら砂浜を散策し二人で貝殻を集めていく。
 暫く歩いて必要なだけ貝殻を集めると、近くの休憩所へ向かいテーブルの上にそれらを広げ、クアトロはその成果に満足したように頷くのだった。
「あの、この貝殻はどうするのでしょう?」
「ふふ、見ていてちょうだい? これをこうすると……ほら」
「うわぁ! 凄いですね!」
 クワトロの疑問に答えるようにクアトロは貝殻を加工していく。
 貝殻が割れないように慎重に穴を開けていき、その穴に紐を通していけばあっという間に貝殻のブレスレットが出来上がりだ。
「これはあなたへプレゼントするわ。今日の思い出は、あなた唯1人のものよ。残しておくのも悪くないわ」
「いいんですか!? すごく嬉しいです! 宝物にしますね! あ、じゃあお返しに……」
 クアトロから貝殻のブレスレットを貰って喜んだクワトロは、お返しに自分の集めた貝殻を使って、見よう見まねで貝殻のブレスレットを作りクアトロへと贈るのだった。


 そうしてクワトロとの時間を楽しんでいると、クアトロの休憩時間も終わりが近づいていたようだ。仕事に戻るからというクアトロと分かれたクワトロが、次はどうしようかと考えていると一人の少女が近づいてきた。
「あれ、どうしたんですか?」
「ふふ。ちょっと私に付き合ってくれない?」
「いいですけど……」
 見覚えのない少女に誘われて人の多い海岸から、人が少ない岩場の方へと移動すると、少女は周囲を気にしたように見渡し、他に人がいないことを確かめると改めてクワトロと向かい合う。
「あのー、私になにか?」
「大丈夫、悪いようにはしないわ。手を出してくれる?」
「え、あ、はい?」
 年恰好に見合わぬ不思議な妖艶さを醸し出す少女に言われるがままクワトロが右手を差し出すと、少女はその手を両手で包むように握る。
 すると、なんとも言えぬ感覚がクワトロの体に奔った。
「なんだか、ふわふわします……」
「そのまま。その感覚に身を委ねて? ふふ、クワトロ君は美味しいわね」
 多幸感を覚えているらしいクワトロだが、実はこの少女はいわゆる夢魔であった。クワトロの精力を吸い、その代わりにこうして快楽を与えているのである。
 クワトロの精力がなかなかに美味であるようで、味見だけのつもりがついつい食べ過ぎてしまいそうになりそうだ。
「――! ――!」
「……おっと。そろそろ戻らないと不味そうね」
 しかし、ずっと食べ続けることは出来ない。
 ビーチの方から何か騒ぎが聞こえ始めた。もしかしたら、自分の秘密に気付かれてしまうかもしれない。そう思った少女は、さっとクワトロから手を離すと砂浜へと戻っていくのだった。


「………………あれ? さっきの子は?」
 夢見心地であったクワトロが現実へと戻ってきた頃には少女の姿はどこにもなく、それが芳野 桜が持つ本来の姿であったと気付くこともなかった。


 クワトロが戻った頃には、あの巨大なクラーケンも見事に捌ききり海の家『イレギュラーズ』は閉店となっており、どうせならこのメンバーで遊ぼうということになっていたようだ
 ビーチバレーやスイカ割りといった定番の遊びで楽しい時間を過ごすとあっと今に日暮れが訪れる。
「最後に花火なんてどうだ?」
「いいですね、やりましょう!」
 そろそろ帰る時間だが、イズマが最後にといって取り出したのは花火セットである。
 手持ち花火や打ち上げ花火など、色とりどりの花火を見てその日のバカンスは幕を閉じたのであった。


 海を楽しみ尽くしたあとはその場で解散することになり、それぞれの帰路についていくことになるが、最後まで残った史之はクワトロと向かい合う。
「ティツィオがいなくなったら君は一体どうするの?」
 その問いは、やがて来るだろう決戦の時を思ってのことだ。
 遂行者とイレギュラーズの激突は間違いなく起こる。そしてそれは、どちらかが斃れるまで終わらないだろう。
 その戦いの中で仮にティツィオがイレギュラーズに斃されたらどうするのか。それが史之の問いだった。
「うーん。そんなに先の事は考えたことはないですけど……たぶん、その前に私は皆さんに倒されてます。
 仮に生き残っていても、私はマスターと一緒に消えると思いますよ」
「……そうか」
 夕日を受けながら困ったように笑い、告げられるクワトロの答えに史之はそう答える事しかできなかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

クラーケン討伐お疲れさまでした。
夏の一時をお楽しみいただけましたら幸いです。

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