PandoraPartyProject

シナリオ詳細

屋根裏の足音。或いは、人知れずの怪…。

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●屋根裏の足音
 トントン、トントン。
 屋根裏部屋から物音が聞こえる。
「な? 聞こえるだろ?」
 そう言ったのは、タンクトップにカーゴパンツという服装の長身の女だ。歳の頃は20代の半ばほどか。右の腕には、手首から肩のあたりまでトライバルのタトゥーが刻み込まれている。
 名を夜鳴 夜子。
 再現性東京を拠点に活動している霊媒師である。
「聞こえますね。すごく、はっきりと」
 『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)は視線を頭上へ向けた。顔の上半分は狐の面で覆われており目元は見えない。だが、きっと天井……屋根裏の方を見ているはずだ。
 ところは再現性東京。
 とある山の麓に建った古い一軒家である。都心から遠く離れた位置にひっそりと建つ洋館だ。元々は和風建築だったのだろう。1階部分には和風家屋特有の衣装が残っていた。
「もう10年ぐらい空き家なんだってさ。そろそろ売りに出したいらしいが、こんな風に足音が聞こえる物件を、一体誰が買うんだ……って話だよな」
「それで、こうして様子見に? 野生の動物か何かでもいるんじゃないですか?」
 そう呟いて、ツクヨミは視線を左右へ巡らせた。
 屋根裏へ上る方法を探しているのだ。
 現在、夜子とツクヨミがいるのは建物の2階にある書斎だ。
 部屋の中にあるのは、皮張りの立派な椅子が1つだけ。
「屋根裏に倉庫か何かがあると踏んだのですが」
「まぁ、外から見たら、屋根のすぐ下に小さな窓があったもんな。倉庫か屋根裏部屋かがあると思うんだが、階段とかは見当たらねぇ」
 どこかに隠されているのか、それとも壊されたのか。
「夜になると、この部屋でだけ足音が聞こえるんだってさ」
 眉間に皺を寄せながら、夜子は言った。
 それから、ポケットをまさぐると煙草とライターを取り出す。甘い香りのする煙草だ。夜子の方を一瞥し、ツクヨミは煙草を指さした。
「喫煙、構わないんですか?」
「う”……やっぱ拙いかな? 空き家とはいえ、人ん家だもんな」
「そうですね。臭いが付くとなんですし……」
「ヤニ、切れるとイライラするんだよな」
「健康に悪いですよ。外で吸って来てはいかがです? こちらは……」
 トントン、トントン。
 トントン、トントン。
 屋根裏では、今も足音が聞こえている。
 天井を見て、次に視線を椅子へと向けた。
 それから、ツクヨミは口元に薄い笑みを浮かべる。
「私たちの方でやっておきますから」
 そう言って、ツクヨミは書斎の扉をあけ放つ。そこにあるのは暗い廊下。それから、幾人かの人影である。

GMコメント

●ミッション
屋根裏部屋の怪を解決する

●フィールド
再現性東京。
都心から離れた山の麓にある洋館。
元々は和風建築だったものを、洋風に改築したものらしい。
2階建て+屋根裏部屋があるようだが、屋根裏部屋に上がるための階段やはしごの類は見当たらない。
10年近く空き家になったまま。
家具などは全て運び出されており、備え付けの箪笥や棚、2階書斎にある革張りの大きな椅子だけしか残されていない。

●怪異
屋根裏の足音。
夜になると、屋根裏から「トントン、トントン」という足音が聞こえる。
足音だけで、何かの姿を見た者はいないらしい。
なお足音が聞こえるのは、2階の書斎のみ。


動機
当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】夜鳴夜子に雇われた
「屋根裏部屋の怪」を調査するために、夜子に呼びつけられました。

【2】一夜の宿を借りに来た
空き家だと思って忍び込みました。

【3】不気味な気配を追って来た
不気味な気配を感じて洋館を訪れました。


君たちはどう過ごすのか
空き家での過ごし方です。好きに過ごしたり、屋根裏部屋の怪を調査したりします。

【1】屋根裏部屋へ向かう
足音の原因を突き止めましょう。屋根裏部屋へ向かう方法を探ります。

【2】館内を散策する
館内を歩き回ります。もしかしたら、他の参加者とエンカウントするかもしれませんし、何かを見つけるかもしれません。

【3】俺が新たな怪異になる
1つの館に怪異は2つも3つもいらない。次の怪異の座を狙います。

  • 屋根裏の足音。或いは、人知れずの怪…。完了
  • GM名病み月
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年07月19日 22時15分
  • 参加人数7/7人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)
ツクヨミ
もこねこ みーお(p3p009481)
ひだまり猫
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
山本 雄斗(p3p009723)
命を抱いて
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ

●足音が聞こえる
 トントン、トントン。
 トントン、トントン。
 屋根裏から聞こえる足音は、今も途絶えることはない。
 ずっと、ずっと、いつまでも。
 屋敷に人が居る、居ないに関わらず、夜毎に足音はなり続けているのだろう。
 夜の間、ずっと、絶えることなく、足音は書斎の真上を右へ左へ。夜になって、朝が来るまで、うろうろ、うろうと、ずっと、ずっと。
 
「屋根裏の音ではなく書斎の天井が鳴ってたりして」
『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)が天井を見上げてそう言った。
「あ”? あぁ…家鳴りの類か」
 ラダを横目でちらと見やって、夜鳴夜子は言葉を返す
 屋鳴りとは、木造建材が温度差によって収縮し、軋んだ音を鳴らす現象のことである。或いは、死番虫などが木材を喰っている音かもしれない。
 ところは練達、再現性東京。
 都心から離れた場所にある、人の住まない洋館だ。
 夜子によって集められた数人のイレギュラーズは、思い思いの方法で怪異……つまり、屋根裏部屋の足音の正体を探っていた。
「書斎だけ聞こえる謎の足音は確かに夜妖の仕業っぽいけど……実害もないみたいだし」
『優しき笑顔』山本 雄斗(p3p009723)も天井を見上げた。
 雄斗の言う通り、この屋敷で起きている現象は“不気味な物音”だけである。実害はなく、足音の主の姿も見えない。
「……迷い込んだ猫なら助けたいですにゃけど、魔物とか悪霊だったら……戦うしかないですにゃ」
 書斎にいるのは現在5人。天井を見上げるラダと雄斗、夜子と、窓から庭を見下ろしている『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)。
 それからもう1人、床に広げた屋敷の見取り図を睨みつけている『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)の合計5人だ。
「とにかく事件解決を目指しましょう。それがお仕事ですから」
 そう呟いたツクヨミは、見取り図の上にそっと指を這わせる。

 同時刻、夜闇に紛れてひっそりと屋敷を訪れた者がいた。
 小麦のような金の髪を風に揺らす彼女の名前は『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)。不気味な気配に誘われて、屋敷へやって来たのである。

「不気味な気配は……上の階からだね」
 屋敷を見上げ、そう呟いた。
 それから、躊躇することなくフォルトゥナリアは扉を開けて屋敷の中へ。
 幸いというべきか、不用心にもと言うべきか。扉に鍵はかかっていなかった。
「話が通じる何かだと……っ!?」
 屋敷に足を踏み入れた瞬間、フォルトゥナリアは身を強張らせた。不気味な気配がしていたのは、屋敷の上部……屋根に近い場所だった。
 それゆえ、少なくとも2階に上がるまでは怪異に遭遇することはないと思っていたのだ。
 そんなフォルトゥナリアの前に現れたのは、気配の幽かな人影だった。闇の中に浮かぶ蒼白な人影。長い髪が、ゆらりと揺れているようだ。
 まるで、海に漂うクラゲのように。
 ゆらり、と人影はフォルトゥナリアの方を向いた。
 瞬間、フォルトゥナリアは弾かれるように近くの部屋へと転がり込んだ。戦略的撤退。人影の正体は不明だが、相応の実力を秘めているように感じたからだ。

「……?」
『玉響』レイン・レイン(p3p010586)が小首を傾げる。
 今しがた、見知った顔が見えた気がしたからだ。だが、見知った顔……フォルトゥナリアは脱兎のごとく近くの部屋へと逃げ込んだ。
 フォルトゥナリアがそうした意図がさっぱり分からず、レインは困惑しているのである。
「どうかしましたの?」
 困惑しているレインに声をかけたのは、すぅと壁から顔を覗かす『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)である。
 身体を半分ほど壁や床に沈めたまま、屋敷の中をゆらゆらゆらりと泳ぎ回っているようだ。そんなノリアの様子を見て、レインは呟くように言う。
「深海にはあまり行った事はないけど……この廊下の感じ……海に少し……似てるのかも、ね」
「ははぁ、なるほどですの。確かに暗くて静かなところは、深海と共通していますの」
 人差し指を顎に触れ、ノリアは周囲を見回した。
 暗くて、静かな、洋館だ。空気中に舞う埃の粒子は、深海を漂う砂粒のように見えなくもない。
「……あら? あんなところに足跡が?」
 辺りをぐるりと見まわしていたノリアが、廊下に残った足跡を見つける。フォルトゥナリアの足跡なのだが、その事実をノリアは知らない。
「さっき、知っている……顔が居たような……気が」
「本当ですの? だとしたら、声をかけてきますの」
 そう告げるなり、ノリアは壁に体を沈める。
 半透明の尾をくねらせて。
 まるで水の中を泳ぐかのように、フォルトゥナリアの後を追いかけはじめる。

●屋根裏を歩く者
 屋根裏部屋はあるのだろう。
 だが、部屋だけあって“部屋へ昇る手段”が無いのは不自然だ。
「納戸の中に階段のあるからくり屋敷形式か」
 書斎にあるのは、ソファーと備え付けの棚、箪笥だけ。
 床を見ても、壁を見ても、階段や梯子は見当たらない。目に見える場所に無いのなら、どこかに隠しているのかも、とラダは箪笥の扉を開いた。
「無い……か。と言うか、見事に何も無いな」
「サクっと解決しちゃいたかったんだけどね」
 雄斗が棚へ視線を向ける。
 以前は本やファイルが収まっていたようだが、今となっては空っぽだ。本棚に並んだ本の1冊がスイッチになっていて、動かすと隠し階段や扉が……というのは、古い家屋や貴族の邸宅によくある類の仕掛けだが、どうやらここは違うらしい。
「うーん棚の本を引っ張ると通路が出てくるのは定番なんだけどなぁ」
 そう言いながら棚に手を置き滑らせるが、スイッチのようなものは無い。
 そうして雄斗は視線を天井へと移す。
 トントン、トントン。
 今も足音は鳴り続けていた。
「天井に継ぎ目のようなものは見当たらないよね」
「そうなると、足音の主はどこから屋根裏に入り込んだんだ、ってことになるわけだが」
 ラダと雄斗が顔を見合わす。
 イレギュラーズの身体能力を持ってすれば、協力して天井に手を届かせることは出来るだろう。
「椅子もありますし、よじ登って天井には届きそうですね」
 ツクヨミが椅子の方を見た。
 頑丈そうな大きな椅子だ。上手く使えば、高さを稼げる。
 だが、天井に手が届いたからといって、それで解決するものでもない。
「その後はどうしますにゃ? 穴開けるのは最終手段ですにゃ」
 天井に穴を開ければ、足音の正体を確認することは出来るだろう。
 しかし、みーおは苦い顔。
 足音の正体が夜妖か何かだったとして、天井に穴を開けた瞬間に何かの被害を被るリスクも0ではないのだ。
 そもそも、怪異の調査は“屋敷を売りに出すため”の前準備として行っているものだ。
 人様の売り物を破壊するのは、最終手段としたいところである。
「そう考えると、椅子を踏み台にするのも……おや?」
 椅子に手をかけたところで、ピタリとツクヨミが動きを止めた。
 どうしたのかと、ラダや雄斗、みーおが近くに寄ってくる。なお、夜子は本日何度目かの煙草休憩に出たところだ。
「妙に軽い……まるで、中身が空のようですよ」
 背もたれに手をかけ、前後に揺らす。
 革張りの立派な椅子だが、ツクヨミの細腕で簡単に揺れた。椅子の脚が床にぶつかり、ガタガタと音が鳴るわけだが、それも軽い。
「屋根裏への道とは関係なさそうだけど。気になると言えば気になるよね」
 試しに雄斗が椅子に座った。
 雄斗の身体をしっかりと受け止める、座り心地の良い椅子だ。座った感触におかしい点は無い。
 少なくとも“中身が空”の椅子だとは到底思えない座り心地だ。
「座り心地の良い椅子だ。座った感じ、おかしな点は無さそうだけどね」
「中身を抜いて軽量化したり、材料をケチって安く仕上げたり……或いは、クッションの代わりに“非合法の薬物”なんかを詰めて密輸したりはよくある話だ」
 雄斗を椅子から立ち上がらせると、ラダは懐からナイフを取り出す。砂漠の旅の必需品で、縄を切ったり、干し肉を削いだり、石を削ったり、獲物を捌いたりと様々な場面で役に立つ。
「警戒を」
 ライフルを構えたツクヨミが、壁の傍まで後退した。
 それに倣うように、みーおも四肢を床について背中の毛を逆立てる。警戒しているのだろう。ピンとまっすぐに伸びた2本の尻尾も、ぶわりと膨らんでいた。
「鬼が出るか蛇が出るか……それとも何も出て来ないか」
「もし、おばけとか出たら……」
 ツクヨミとみーおが臨戦態勢を整えことを確認し、ラダは1つ、頷いた。
 そして、皮の椅子へナイフの切っ先を突き立てる。
 ごくり、と誰かが唾液を飲み込む音がした。
 ラダがナイフを走らせる。
 その、刹那。

『ぎゃぁああああああああああああああ!!』
 
 書斎の窓を震わすほどの絶叫が響く。
「にゃあああ!?」
 つられてみーおも悲鳴を上げた。

 同時刻。
 フォルトゥナリアは1階の廊下を駆けていた。
「な、なに!? 何なの!? は、話が通じる何かと思いたいね!」
 フォルトゥナリアは光っていた。
 廊下を白く染め上げるほどの後光を背負うフォルトゥナリアのすぐ足元を、するりと何かが駆け抜ける。
「ひっ!?」
 半透明の白い何かだ。
 しっとりと濡れた、それでいてぬるりとぬめった感触がフォルトゥナリアの足首を撫でる。思わず悲鳴を漏らしたが、その時には既に半透明の何かは姿を消している。
 霊の類であれば意思の疎通も可能なのだが、どうやらそうではないらしい。
 得体の知れない存在は、壁や床や天井を、まるでそこが水の中であるかのように自在に、優雅に泳ぎ回っているのである。
「こ、交渉の余地はあるかなっ!?」
 足を止めて、フォルトゥナリアは声を上げた。
 と、その直後。
「……ドキドキする、ね」
 耳元で、ぼそりと囁く声がした。
「――――――――――――っ!?」
 耳朶を擽る冷たい吐息に、フォルトゥナリアは声にならない悲鳴をあげた。

「何やってんだ? あいつら?」
 窓越しに廊下を一瞥し、夜子はそんなことを呟く。
 甘い香りの視線を燻らせ、なんとはなしに視線を空へ。
 月が雲に覆われた、明かり1つない闇夜であった。

「な、な……あ?」
「ごめん……驚かせちゃった……?」
 床に座り込んだフォルトゥナリアが見上げた先には、レインが立っている。
 レインが首を傾げた直後、フォルトゥナリアの手の上を小さな何かが駆け抜ける。
「うわっ! ね、鼠?」
 古い屋敷だ。
 鼠の1匹や2匹いるだろう。
 そして、1匹いるということは、つまり100匹はいるということだ。鼠とはそう言うものだ。あっという間に増えるのである。
「あ、もしかしてさっきのも? さっきから後を追いかけて来ていたのも、あなたなの?」
「? 僕じゃ……ない、よ」
「……ぇ?」
 フォルトゥナリアの顔色が悪くなる。
 再び、フォルトゥナリアが悲鳴を上げようとした、その刹那。

『ぎゃぁああああああああああああああ!!』

 2階の方から、絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

「何の声ですの!?」
 絶叫を聞きつけ、ノリアが視線を上へと向けた。
 絶叫は2階……否、ともすると屋根裏から聞こえたものだろうか。壁に半身を沈めたノリアは、半透明の尾をくねらせて2階へ登る。
 まるで滝を登る魚のようだ。

●視る者たち
 干からびた死体。
 裂けた皮の内側から現れたものを、一言で現わすならそれだ。
 衣服を纏わぬ小柄な男の遺体のようだ。体は細く、不自然なほどに頭部は大きい。全身は干からび、ドス黒く変色している。そんな状態でありながら、ぎょろりとした両の目だけは瑞々しい。
 血走った2つの眼球をしきりに上下左右へ動かし、半開きになった口から掠れた悲鳴を吐き続けている。
 夜妖……だろう。
 椅子の中に身を潜めていた、誰かの遺体が夜妖へと変じた存在だ。
「こいつが足音の正体かっ!?」
 雄斗が叫ぶ。
 トントン、トントン。
 トントン、トントン、トントン、トントン。
 トントン、ドンドン、ドンドン、ドンドン、ドンドン、ドンドン!!
『ぁぁぁぁあああああああああ!!』
 足音は鳴りやまない。
 それどころか、絶叫に呼応するように足音はさらに大きくなった。屋根裏を跳びはねているのか、天井が激しく揺れている。
「こいつじゃない。いや……2体いたんだ!」
 耳を押さえたラダが叫んだ。
 至近距離から絶叫を聞いて、鼓膜にダメージを負ったのだろう。
 幸いというか、なんというか……干からびた遺体は叫ぶばかりで、攻撃を仕掛けてくる様子はない。ただ、眼球をぎょろぎょろさせて周囲の様子を見ているだけだ。
「ふにゃあああ!!」
 全身の毛を逆立たせ、みーおが遺体を威嚇する。
 警戒した様子で、遺体の様子を窺っているのだ。襲って来るつもりなら、すぐに迎撃するつもりだ。
 だが、みーおが動くよりも速く、1発の銃声が鳴り響いた。
 遺体の眉間に風穴が穿たれる。
 ゆっくりと、仰向けに倒れる干からびた遺体。絶叫は止まった。
 鉛の弾を撃ち出したのはツクヨミだ。銃口から立ち昇る硝煙を吹いて、視線を天井へと向ける。
 霧のように霧散する遺体を放置して、ライフルの狙いを屋根裏へ。
「狙えるのか?」
 ラダが問うた。
 ツクヨミは浅く頷いた。
「これがお仕事ですから」
「そうか。これを使え」
 そう言ってラダは、弾丸を1発、ツクヨミへと投げ渡す。
 ツクヨミは空薬莢を排出し、受け取った弾丸を装填。
 そして、引き金に指をかけ……。
「天誅ですのー!」
 天井の板が砕け散り、ノリアが書斎へ降って来た。

 天井板が砕けた瞬間、雄斗が床を蹴り飛ばす。
 跳躍。
 ライフルを構えたままのツクヨミを抱えるように床を転がり、降り注ぐ木材から庇う。
 体勢を立て直した雄斗が背後を振り向くと、そこにあるのは床を跳ねるノリアの姿。
「の、ノリアさん!? なんで!?」
「こいつですの! 屋根裏で跳ね回っていた不審な夜妖ですの!」
 そして、もう1体。
 ノリアと一緒に降って来たのは、赤子のような背丈の男だ。
 夜妖だろう。その顔に醜悪な笑みを貼り付けて、血走った目をぎょろぎょろと左右に走らせている。
「はぁ!? ど、どういうこと?」
「ストーカーの類……じゃないか? 椅子をくり貫いて潜んでいた奴と、入れないはずの屋根裏部屋に隠れ住んでいた奴と、2人居たってことだろう」
 困惑する雄斗へ、ラダが自分の予想を語る。
 なるほど、つまりこの洋館が空き家となった理由がそれだ。不審な視線や、人の気配をずっと感じていたのだろう。
 逃げ出したくなって当然だ。屋敷を捨てたくなって当然だ。
「…………」
 小柄な男が逃げ出した。
 ラダや雄斗の足元を縫うようにして、書斎の入り口へ。
 まるで鼠だ。
 異常なほどに足が速い。

 書斎の扉が開け放たれた。
 これ幸いにと小柄な夜妖は書斎を出ていこうとするが、何かに弾かれ床に転がる。
「……?」
 夜妖を弾いたのは、桜色をした傘である。
 晴雨兼用の丈夫な傘を構えたレインが、じっとりとした目で床に転がる夜妖を睨みつけた。
「どこに逃げる……つもり? 浴室……かな?」
 この館は元々、和風建築だ。
 今は使っていないが、浴室の裏手には釜場がある。昔は薪を燃やして、風呂の湯を沸かしていたのだろう。
 今は使われていない竈と煙突を使って、夜妖は屋根裏部屋へと昇っていたのだ。
 だが、それも今日で終わる。
 家主が不在になった後も、家主の帰りを待ち続けていた“監視者”も今日でお終い。
「妖しい気配の原因はあなただね!」
 夜妖が身体を起すより速く、書斎の床を眩い閃光が薙ぎ払う。
 フォルトゥナリアだ。
 目を焼かれた夜妖が、顔を抑えて悲鳴をあげた。
 逃げ出すためか、闇雲に走り回るもすぐに足をもつれさせて床に倒れた。
 そして、次の瞬間。
「うにゃあああ!!」
 一閃。
 みーおの振るう鋭い爪が、夜妖の喉を斬り裂く。

 後日。
 今回の仕事に参加していたイレギュラーズたちの元に、夜子からの報告書が届けられた。
 曰く、あの夜以来、屋根裏からの足音はすっかり聞こえなくなったという。
 代わりに……というわけでもないが、破壊された天井板などを修理する過程で、屋根裏からは2つの遺体が発見された。
 細身の男性と、小柄な男性。2人分の遺体。
 今となっては知る由も無いが、どうやら2体の遺体には互いに殺し合った痕跡があるという。
「結局、何かに執着している人間が何よりも怖いし、厄介なんだよ」
 なんて。
 報告書の一番下には、そんな言葉が書き記されていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
屋根裏の足音騒動は無事に収束を迎えました。
これで、屋敷を売りに出せます。
依頼主は屋敷を売れてハッピー。
夜子も依頼を達成できてハッピーです。

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