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シナリオ詳細

Murder demon's garden

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●禁断のゲーム
 それは呪われた儀式。
 忌まわしき殺人一家がはじめた、禁断のゲーム。
 来る者は拒まないが去る者は決して逃がさない。

 その名も奇怪な――『Murder demon's garden』

 噂はこうだ。
 ある日に招待状が送られてくる。
 貴族のゲームに参加して勝つことで賞金が与えられるというものだ。
 元々貧しい者はこの一攫千金のチャンスに飛びつくように指定された場所までやってくる。
 来てみれば、自分と同じように集められた老若男女が数人ばかり。
 そんな彼らに告げられるのは、世にも恐ろしいルールだ。
 広い広い庭。ここから生きて抜け出した者が勝者だという……死を前提としたゲームなのだ。
 恐れおののき逃げ出してももう遅い。
 ライフルで足を撃たれ倒れる者。
 首を切り落とされる者。
 毒液を浴びせられる者。
 フックで引きずられていく者。
 ナイフでずたずたに切り裂かれる者。
 不思議なオブジェに変えられる者。
 姿形は違えども、たどる運命はみな同じ。
 全てが死体となりはてて、翌朝土に埋められる。

 都市伝説とも言われていたその話はある証拠が見つかったことから貴族たちの目にとまり、速やかな討伐依頼が発行された。
 依頼先は……。

●殺人鬼たちの庭
「やあ、殺人鬼一家の討伐依頼に興味はあるかい?
 ここでいう一家はマフィアやカモッラやヤクザでいうところのファミリーさ。
 六人組の殺人鬼でね、毎度嘘の手紙で人を呼び出しては殺人ゲームに興じているんだ。
 長らく実態がつかめなくて都市伝説扱いされていたんだけど、ようやく幻想貴族たちが正体を掴んだらしい。
 好き勝手させるわけには行かないってことで、うちに討伐依頼が来たってわけさ」

 日夜賑わうこの場所はギルド・ローレット。
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)が頬杖をついて話すのは、『Murder demon's garden』に関する噂話と討伐依頼だ。
 MDGは六人の殺人鬼で構成される集団で、それぞれ職業を象徴する覆面を被っているとされている。
 ライフルを装備したハンター。
 剣を装備した侍。
 メスや毒薬を装備した医者。
 肉吊りフックや肉切り包丁を装備したコック。
 ジャグリングナイフをもてあそぶ道化師。
 ハンマーやワイヤーをつかって死体で遊ぶ芸術家。
「今回は彼らのゲームにのったフリをして会場に集まり、現われたところを逆に仕留めるって作戦さ。シンプルでいいよね」
 招待状を人数分見せて、ショウはウィンクをした。
「これで都市伝説は終わりにしよう。頼んだよ」

GMコメント

 ご機嫌いかがでしょうか、プレイヤーの皆様。
 こちらはシンプルな対人戦闘シナリオとなっております。
 補足事項もシンプルですので、まとめ代わりにお読みくださいませ。

【ロケーションとエネミー】
 背の高い植木の壁が巡らされたとても広い庭。
 植木が遮蔽物になって視界が通りにくいが、やろうと思えば乗り越えたり切り払うことも可能。
 現われる殺人鬼はOPで情報屋が説明した6人。
 ひとかたまりにして戦うもよし、分断させて戦うもよしです。

 相手の人数が多いため、集中攻撃を受けると厄介です。
 互いに集中攻撃ができない状況(チームを丸ごと分断したり、何人かをマークして個別にぶつかり合ったり)を作ることをお勧めします。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』と書かれたお客様にはアドリブを多めに、逆に『アドリブなし』とお書きくださればアドリブ控えめで対応できますので、ぜひご活用くださいませ。

  • Murder demon's garden完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月31日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
烈破の紫閃
アリーシャ・エバーグリーン(p3p004217)
色彩

リプレイ

●命を命と思わぬがゆえか、その逆か
 夜闇。
 冷たい雨上がりの滴。
 雑草まみれの道の土を、『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)は黙って踏んだ。
「グルル……」
 喉を鳴らし、真っ黒な空を見上げる。表情はわからないが、決して機嫌がよさそうには見えない。
 アルペストゥスを横目に立ち止まる『通り魔』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)。
 ジーンズパンツの後部ポケットから『Murder demon's garden』の招待状を出し、黙って破り捨てた。
 しめった土に紙切れが落ち、じわじわと泥にしみていく。
 シュバルツはその様子を見ることも無く、左目にはしった傷跡を中指で撫でた。
 殺人鬼たちの庭に、そうと知って立ち入る招待客は恐らく自分たちが最初だろう。
 最初にして、最後であろう。
 斬られるだろう。殴られるだろう。撃たれ、抉られるだろう。
 が、それがどうしたというのか。
 シュバルツは懐からリボルバー式拳銃を取り出すと、セーフティーを外し、そして再び歩き始めた。
 他に必要なことなどないとでもいうように、奇妙に美しいゲートをくぐる。
 一足遅れ、『白銀の大狼』ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)がゲートの前に立った。
 背負うは大剣。月光にひかるような銀髪を払い、先にあるであろうおぞましい気配を『ハハッ』と笑い飛ばした。
「伝説を終わらせるだなんて、中々面白そうじゃない! アタシたちが新たな伝説に、ってやつかしら!」
「んー」
 重火器を背負って横に立つ『特異運命座標』猫崎・桜(p3p000109)。
「伝説はいいんだけど、もっとこうロマンがないとね。ロマンの無い都市伝説は、中のひとごと潰しちゃおう♪」
 二人は顎を上げ、ゲートを潜っていく。
「どう思うね」
「どう、とは」
 続いてゲートを潜る『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)と『反骨の刃』シェンシー・ディファイス(p3p000556)。
 一見よく手入れされた庭は、見る者を中央へ誘うように設計されていた。
 迷路のように入り組んだ植木が自分たちをとらえた殺人鬼の巣だとは気づかず、招待客たちはのこのこと進むのだろう。
「俺は盗みより殺しってのが信条なんで共感できねえが、アンタは『そっち側』って空気じゃねえか?」
「殺しは必要なものだが……」
 さきに居る連中に嫌悪感を示すかのように、シェンシーは蛇のような目を細めた。
「喰うためでも生き残るためでもなく、まして何に迫られることもなく、ただ遊びで行なう殺しになんの価値がある」
「そうかい? マーダーマスクから逃げ切ったら一攫千金のデスゲームだぜ。芝居が一本できそうじゃあねえか」
「塵芥のやることだ」
「同感だ」
 その答えが聞きたかったとでもいうように、キドーが緑色の顔を歪めた。
「連中が呼吸することすら不快だ。一切を始末する」
「あいよ」
 キドーは胸元にナイフをぽんぽんと叩いてシェンシーに続いた。

 犠牲者たちは庭の中。
 子犬のように逃げ惑い血肉を散らして息絶える。
 希望を求めてやってきて、絶望にまみれて死ぬ様がなんとも見物――。
「だなんて、思ってるんでしょう?」
 『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)は下唇を指でなぞり妖艶に笑った。
「立場が逆になったとき、どんな顔をしてくれるのかしら。マスクをはぐのが楽しみだわ」
「…………」
 『色彩』アリーシャ・エバーグリーン(p3p004217)が深く深く呼吸をした。
「彼らの行ないは誰にだって許されません。今の私たちのもつ力をもって、禁断のゲームを終わらせて見せます。だから……」
 すらり、と細身の剣を抜いた。
「出てきなさい。見ているのでしょう」
 甘えたアリーシャとは別に、リノが視線をはしらせる。
 あちこちの茂みから、マスクを被った男たちが現われた。
 ハンター、侍、医者、コック、道化師、芸術家。
 まるでハロウィーンパーティのような格好をして、血まみれのエモノを持って、アリーシャたちを取り囲んだ。
 抵抗しても無駄だよ、と誰かがいった。
「そうでしょうか」
 と、アリーシャが応えた。
 戦いのゴングは、もうずっと前に鳴っていた。

●スコアボードを切り裂いて
 時間も場面も進んでいない。剣を抜き、殺人鬼たちを迎え撃つイレギュラーズたち。
 偶然正面にいたアリーシャはスピードを上げて眼前の殺人鬼へと斬りかかった。
 侍のマスクを被った殺人鬼だ。
 アリーシャの剣を刀で払うと、返す刀で上段から斬りつけてくる。
 盾で受けながすようにして側面へ回り込むと、侍と剣を打ち合わせた。
「あなた達のゲームは今日で終わりです。お覚悟を」
「こやつ……一般人ではなさそうだ」
「だったら囲んで料理すりゃーイイ!」
 後ろから斬りかかろうと肉切り包丁を振り上げるコック。
 そこへ――。
「グルルル……グァァァゥ!」
 アルペストゥスが咆哮と共に飛来し衝撃のブレスを放った。
 直撃を受けた奇声を上げて吹き飛ばされるコック。
 アルペストゥスは独特な言語で魔術を構築すると、衝撃魔術を自らの身体へ纏わせてコックへと突撃した。
 茂みの壁を突き破り、更に吹き飛んでいくコックとアルペストゥス。
「バカだねー、獲物に抵抗されてトンでっちゃったよ。じゃあボクから先に遊ばせてもらうよォ!」
 ナイフを手に侍の援護に入ろうとした道化師。
 が、彼の眼前の木にストンとナイフが突き刺さった。
「はァい、こっちを向いてハニー?」
 リノはわざと身体の線を見せるようにさらすと、小指から順に波打つような手招きをした。
「ヒヒッ。ボクこっちにする!」
 道化師は両手に持ったナイフをくるくると回すと、リノめがけて猛烈な勢いで襲いかかった。
 対してリノは喉への一撃をバックスェーで回避。続けて繰り出された膝への斬撃を蹴りで打ち上げる。
「ちゃんと狙って? ココよ」
 胸元に指を当ててトントンと後退していくリノ。
 道化師の目が血走っているのが分かる。何を望んでいるのかも、なんとなく分かった。
 だがその通りにならないことも、リノにはよく『見えて』いた。
「ギッ!?」
 突然背中に走った痛みにナイフをとりおとしそうになる道化師。
 彼の背後には、キドーが忍び寄り、ナイフをざっくりと差し込んでいたのだ。
「オ、オマエェ……」
「悪いな、バカそうだったんで最初に狙わせてもらったぜ」
 逆上して振り払う道化師。
 キドーは素早く飛び退き、ナイフを逆手に握りかえて低く身構えた。
「ボ、ボク、怒ったから! 怒ったからね!」
「それでどうする?」
「ママに言いつける?」
 リノはキドーの放ったナイフをキャッチすると、逆手に握って背筋を伸ばすように構えた。
「ギ、ギ……!」
 ことここに及んで、道化師は自らが窮地に陥ったことを悟った。
「とりあえず、アンタは死んどけ」
 キドーが自らの唇を舐めた。

 相手が逃げ惑うと思っていた殺人鬼たちは少なからず動揺していた。
 ごく一部の獲物が抵抗することはあっても、全員が団結して襲いかかってくるとまでは思っていなかったのだ。
「こっちも派手にいくわよ!」
 芸術家へと詰め寄ったルーミニスが大上段から剣を叩き込んだ。
 必死に飛び退いてよけた芸術家だが、足下の土が派手に吹き飛んだのを見て慌てて逃げ出した。
「ち、違う! こんなのはワタシの望んだ芸術じゃない! 貴様には芸術が分からないのか!」
「知らないわよそんなの! 少なくとも――」
 芸術家を追いかけ、茂みもろとも横一文字にぶっ壊すルーミニス。
「アンタのはね!」
 芸術家の被っていた帽子がはねとんでいく。
「さーてと。まずはご挨拶に、派手にぶっ飛んじゃいなさいな!」
 再び剣を構えるルーミニスに、芸術家が悲鳴をあげながら抵抗を始めた。

 飛来する毒液入りの試験管を剣で打ち払うシェンシー。
「…………」
 ゆっくりと歩み寄るシェンシーの目が血のような赤く艶めき、蛇のような鋭い視線は医者のマスクを被った殺人鬼の姿をしっかりととらえていた。
「面倒な患者ですね。大人しく殺されればよいものを」
「……」
 挑発的な医者の言葉に、シェンシーはまるで無反応だった。
 塵芥の言語がまるで聞き取れなかった、とでも言うようにただただゆっくりと歩み寄ってくる。
 必死に試験管を投げつけるが、対するシェンシーは呼吸ひとつ乱す様子はない。
 剣の距離まで踏み込む。
「こ、こいつ!」
 医者はメスを引き抜くとシェンシーめがけて振り上げた。
「バラバラに解剖してや――」
 言葉が途中で途切れた。
 というより、かき消えたというべきか。
 横から打ち込まれた桜の機関銃射撃によって、音もなにも、まるごとかき消されたのである。
 最後にギャッという悲鳴だけが残り、医者はごろごろと転がった。
「ふふん、僕の目を甘く見ちゃだめだね♪」
 遮蔽物になる植木を丸ごと破壊しながら射撃した桜は、大きく空いた穴を潜るようにして現われた。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す! なんちゃって♪ 機関銃じゃ蜂にはならないねー」
 むしろ蜂の巣だねー、とまでは言わないが。
 桜はあくまで陽気に医者のマスクを被った殺人鬼を追い詰めていった。
 蛇のようににらむシェンシーと陽気な桜に挟まれ、今まさに殺されようとしている者の気持ちが……おわかり頂けようか?

「ったく、獲物は弱いヤツだけにしておけつったのによお」
 煙草をくわえたハンチング帽の男。ハンターの仮面を被った殺人鬼は医者を追い詰めつつある桜とシェンシーの片方に狙いを定めていた。
 植木の壁にしっかり身を隠し、安全な所から撃ち殺す。それが彼の楽しみ方だった。庭の構造を熟知し設計まで手がけた彼の居場所をそう簡単に見つけることはできない。見つけたとてたどり着くのはもっと難しい――はずだったが。
 突如としてその場から飛び退くハンター。
 彼のいた地面を弾丸が通り抜け、しめった土に弾がめり込んだ。
 それだけではない。
 茂みを突き破ってシュバルツが飛び出し、ハンターに蹴りを叩き込んだのだ。
「ぐおっ!」
 ライフルを突き出すハンター。
 銃を突き出すシュバルツ。
 彼の腕と銃身が交差し、互いの額に向けられた。
「なンで分かった」
「さあ、なんでだと思う」
 互いの銃を跳ね上げつつ、蹴りと銃底打ちが交差する。
 シュバルツの胸にかかった逆十字のペンダントがトンと揺れた。
「自由にされちゃ困るんでな。暫く遊んでもらうぜ」

●カジノテーブルに火を放て
 血まみれの白衣を着たコックが、肉吊りフックを頭上で振り回した。
「こいつめ、細切れにしてやるゥ!」
 鎖がまよろしく放たれたフックがアルペストゥスへと引っかかる。
 アルペストゥスは高度をあげての旋回飛行を開始。
 鎖を握って引きずり下ろそうとするコックへ目をやると、アルペストゥスは魔弾を次々に打ち込んでいった。
 足下に着弾し、慌ててひっくり返るコック。
 その隙に詰め寄ったアルペストゥスはコックの腕にかじりついた。
 そのままかっさらうように飛び上がる。
 アルペストゥスの目が、『殺人は楽しかった?』と問いかけているようだった。
 その目を見て、満面に笑うコック。肉切り包丁を振り上げる。
 アルペストゥスはその表情から全てを察し、くわえた腕を強く強く噛んだ。
 まるで獲物を食いちぎる肉食獣のごとく。

 息絶えたコックがどしゃりと落ちた。
 血と土が混ざって泥となり、芸術家の顔へとはねかかる。
「ウ、ウ……こんなのあり得ない! 私が死ぬはずないんだ!」
 芸術家は振り返り、ワイヤーを放つ。
 追いついてきたルーミニスにワイヤーがぐるぐると巻き付いていく。
「ハ、ハハ、私の勝ちだ! がんじがらめになった相手を切り刻むのが私の趣味でねぇ。手をかけた分じっくりと……」
「アタシが」
 ルーミニスはハンマーを手に近づく芸術家を強い眼差しで射貫くように見た。
「アタシが負けるわけないでしょっ!」
 ばつん、とワイヤーが切れた。
 切ろうと思って切れるようなものではないが、ルーミニスは気合いで引き切ったのだ。
 芸術家が『うそだ』と呟いたのが最後だった。
 ルーミニスは剣を思い切り叩き込み、彼の言葉を強制的に途切れさせた。

 次々と繰り出される斬撃を剣と盾の防御でしのいでいくアリーシャ。
「諦めて殺されたらどうだ。拙者は刀で人を斬れればそれでよい」
「……」
 アリーシャの表情に嫌悪の色が浮かんだ。
 あまりに混じりっけの無い悪意を、ギフトの力を抜きにしてもひしひしと感じるのだ。
 彼を取り逃せば、きっとまた人を斬るだろう。
 どんな罰則を加えたとて、必ず手段を変えて罪なき人の命を奪うだろう。
「なら、私がやるべきことはひとつです」
 アリーシャは自らの身に刻まれた剣の技で侍の刀を弾き至近距離まで潜り込むと、美しいラップショットを繰り出した。
 ずるりと崩れ落ちる侍。
 アリーシャは受けた悪意をはき出すかのように、強く息を吐きだした。

 泥水を踏み荒らしながら走るシュバルツ。
 振り向きながら銃撃。
 彼を追いかけるハンターが銃撃をかわしながらシュバルツの足下を撃った。
「おォい最初の威勢はどうした。疲れてきてるぞ」
 シュバルツは左腕をだらんと垂らし、右腕だけで銃を撃っていた。
 狙いは粗く、弾はかすめていく。
 やがてシュバルツは庭を覆う鉄柵へと追い込まれた。
 がしゃんと音を立てて高い柵に背をぶつける。
「いい位置だ。そこを動くなよ、先に足から撃ってやる」
 正面に立ち、ハンターがにやりと笑った。
 対してシュバルツは。
「その台詞、まるごと貰っていいか?」
「……なんだと」
 途端、横から打ち込まれた機関銃射撃がハンターの足をめちゃくちゃに破壊した。
「お待たせ、撃ち合いで負けるわけにはいかないんだよ!」
 植木に身を隠していた桜が絶妙な位置から射撃攻撃をしかけたのだ。
 だらんと下げていた左手をあげ、ぱたぱたと振るシュバルツ。
「分かりづらかったなら悪いな。相手に見えない位置でハンドサインを出すのは案外面倒でな」
「べっつにー♪」
 腕を怪我していたわけでも疲れていたわけでもない。
 桜とシュバルツはお互いにだけ見えるようにハンドサインを出し合い、ハンターを絶好の位置まで誘導していたのだ。
 銃の狙いを額にぴったりとあわせる二人。
「なぁ殺人鬼。狩る側から狩られる側になった気分はどうだ?」
 答えなど知ったことでは無いとばかりに、銃声が響く。

「ギ、ギギギ……!」
 ナイフをめちゃくちゃに振り回す道化師。
 リノはそれをナイフによって次々に打ち払うと、長い足でもって道化師の膝にローキックを打ち込んだ。
 ストリートファイトに『ローで潰す』という言葉があるように、対人戦闘におけるローキックは凶器だ。それも、よく鍛えた技であるなら尚のことである。
「このままじゃ楽しめないわね。ねぇ、素顔を見せて?」
 バランスを崩した道化師の顎に指を食い込ませ、つり上げるようにして体勢を無理矢理固定する。
 そこへ、キドーが横から素早い突撃を加えた。
 ナイフを両手でしっかり握り、腰を低くして相手に身体全体でぶつかっていく刺突である。
 血を吹いた道化師はそのまま崩れ落ち、リノの手にはマスクだけが残った。
 リノはその姿を見下ろし、片眉を上げると、もういらないとばかりにキドーにマスクを投げた。
「おっ、殺人鬼のマスクか。マニアが喜びそうじゃねえ?」
「たっ、たすけてくれ!」
 医者のマスクを被った殺人鬼が四つん這いで駆け寄ってくる。
 元々血まみれだった服は泥にまみれ、マスクは斜めに切り裂かれてそこだけが血まみれになっていた。
 よほど追い詰められたのか、武器も手放して這いつくばっていた。
 既に戦闘能力をほぼ失っているのが見て分かる。
「命だけは助けてくれ。金目のものが沢山あるんだ。くれてやるから! ほかに欲しいものはあるか? なんでもする、なんでもするから――!」
 キドーの足にすがりつく医者――の背中を、シェンシーがずんと踏みつけた。
 すう、と息を吸い込んで、たっぷり待ってから言葉と共にはき出した。
「なにもいらん。死に絶えろ」
 医者の背中を、シェンシーの剣が貫いた。

●伝説の終わり
 うーんと背伸びをする桜。
 夜空をアルペストゥスが飛んでいる。
 そんな中で、アリーシャは手を合わせて犠牲者たちに祈りを捧げていた。
 足下の石を蹴るリノ。
「殺人鬼たちはあのままでいいの?」
「塵に墓なんて必要ないだろう」
 シェンシーの返答はシンプルだ。
 一方でルーミニスはキドーとシュバルツの手伝いを借りて『金品』とやらを探していた。
「……これだな」
 かくして見つけた宝箱。
 その中身は、時計やペンダントや、金歯や爪や……一見して分かるくらい、犠牲者たちの遺品だった。
 チッと舌打ちするキドー。
 ルーミニスは頷き、箱を閉じた。
「犠牲者たちをできるだけ弔ってあげましょ。そしてこれは、返してあげなくちゃ」

 今宵、都市伝説が終わりを告げた。
 結末はこうだ。
 『殺人鬼はローレットのイレギュラーズたちに殺されましたとさ』

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 人々を苦しめていた非道な殺人鬼は見事、皆様の手で消えることとなりました。
 もう殺人ゲームが行なわれることは、ないでしょう。

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