シナリオ詳細
今宵、汝らを狂気の宴へと招待しよう。
オープニング
●ただの思い付きである
『○○しないと出られない部屋(全年齢版)』の試験を終えて満足(?)な結果を得たドクター・マッドは、そのデータの解析を進めるため、数日ほど自室へと籠っていた。
そして解析が終わったのか、後日部屋から出てくると開口一番でこういった。
「そうだ、デスゲームしよう!」
何言ってんだコイツ?
一体何がどうなってそんなふざけた事を宣うことになったのか。
……あー、はいはい。なるほどね。タブレットの履歴を見てみたが、データの解析なんて数時間で終わらせて、今までずっとラノベを読んでいたらしい。
それも暫く前に流行していたデスゲームものを。
「割引セールしてたから! ついつい読んじゃっても仕方ないだろう?」
何言ってんだコイツ?
ともあれ、このドクター・マッドは天才である。先日完成させた『○○しないと出られない部屋(全年齢版)』をちょちょいと弄れば、デスゲームの場を用意することは十分に可能だろう。
しかし、だからと言ってそれをやっていいかと言えば断じて否だ。頭はオカシイが人様に迷惑を掛けず、犯罪を犯さないからこそこの男は存在を許されているというのに。
「ねぇ、ひどくない?」
人を騙したり誘拐したりしてデスゲームに参加させるなどれっきとした犯罪行為であり、発覚すれば即日逮捕は間違いないだろう。
「あ、無視ですか。そうですか……」
参加者の同意を得た上で開催出来ればなんとかなるかもしれないが、「キミ、デスゲームに参加しない?」なんて言っていいですよと答えてくれる人もいないだろう。
「えぇい、うるさいぞ! 私はデスゲームを開催すると決めた。これはも決定事項なのだ! ……とはいえ、逮捕されるのもゴメンだし、人死が見たいわけでもない。
よって、『人が死なないデスゲーム』を行うのだ!」
何言ってんだコイツ?
逮捕されたくないのはいいとして、デスゲームを主催しておいて人死を見たくないとは……。そもそも『人が死なないデスゲーム』って矛盾しているだろう。
「ふふふ。我に秘策あり!」
なにやら雰囲気を出してはいるが、どうせロクでもない事を考えているのだろう。
ともあれ、犯罪にならず人も死なないなら(それほど)問題にはならないはず。
変に暴走し出す前に、それで満足して落ち着いて貰うとしよう。
●今宵、汝らを狂気の宴へと招待しよう。
イレギュラーズの下に届いたメッセージカードを開くと、その一言と場所を示す地図だけが入っていた。
差出人は不明。いや、地図の示す場所は個人の私有地。気になって調べてみれば、ドクター・マッドという科学者の自宅兼研究所であることは簡単に分かった。
つまり、この狂気の宴とやらの主催もまた、このドクター・マッドなる人物なのだろう。
練達によくいるタイプの頭がアレな科学者らしいが、今度は何をやらかすつもりなのか。
多くのイレギュラーズはそう思うと、面倒ごとは勘弁だと招待状をゴミ箱に放り込んでいく。実に正しい選択である。
だが、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)を始め、ごく一部の酔狂な者は寧ろ興味を持ったらしい。
一人、また一人と地図の示す場所へと集まっていった。
「えーと、ここに入ればいいんですの?」
研究所へ向かうと、博物館などに置いてあるような順路を示すプレートが幾つか置いてあり、それに従って奥へと進んでいくと、「Welcome Death Game !!」と書かれた学園祭風のポップな看板の掲げられた扉へと辿り着く。
意を決してその扉を開くと、そこには――。
- 今宵、汝らを狂気の宴へと招待しよう。完了
- 死を恐れぬ者よ、その扉を開くがいい。
- GM名東雲東
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年07月09日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「子猫ですにゃー、みーおより小さくてふわふわで可愛いですにゃー……!」
狂気の宴という言葉に緊張していた『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)だったが、扉の奥には恐れていたような危険はないと分かると、真っ先に部屋の中へと入っていき子猫たちが集まっていた一角に向かい戯れ始めたようだ。
みーおの外見を掲揚するなら服を着て二足歩行する猫。それが子猫と戯れるのだから、見ようによっては親猫とその子が戯れているようにも見えるかもしれない。
白い毛並みの子猫を一匹抱え上げると、その背中を撫でて幼児期特有の柔らかな毛並みを堪能すると、続いて仰向けに寝転がっていた茶色い子猫の前脚に触れる。
肉球もまたぷにぷにしていて、永遠に触っていられそうだ。
みーお自身、毛並みや肉球のケアは怠らず、それなりに整っているという自負はあったが、流石に子猫の無垢な毛並みと肉球には敵わない。
「肩乗り子猫、猫(みーお)の上……鏡餅ならぬ鏡猫なのですにゃー」
などと考えていたら、子猫たちがみーおの体をキャットタワー代わりにでもするつもりなのか、よじ登り始めたようだ。落ちないように懸命に登っている姿はなかなかにクるものがある。
やがて白い子猫がみーおの頭の上に到達してそこ陣取ると、丸まって眠り始めてしまった。肩に乗っかった子猫や背中に張り付く子猫たちを落とさないように体勢を維持するのは大変だが、これもこれで心地よい気がするみーおであった。
「ふー……。ふー……」
さて。そんなみーおの様子を見て、目が血走り息も荒げているのは『刹那一願』観音打 至東(p3p008495)である。なにか変なクスリでもキメているのではないかと思わなくもないが、至東にとって可愛らしい小動物というのはそれ以上に強い中毒性を持つものなのだろう。
周囲を見て迷いに迷った挙句、目を閉じてくるりとその場で一周。目を開いた時に最初に映った動物と戯れることに決めたようだ。
「……。っ!」
行動を決める速い。その場で一周した至東は、もはや辛抱堪らんとっいた様子で襲い掛かり――もとい、戯れに向かうのだった。
「もふもふ……」
それが至東の最期の言葉であった。
飛び込みたい衝動を残り僅かな理性を振り絞ってすんでのところで踏みとどまった至東は、怖がらせないようにゆっくりと近づくと、子ウサギたちの集まっていた一角へ。
辿り着くやいなや、その毛並みをもふりまくった結果、力尽きて恍惚の表情を浮かべながら倒れたのだ。
「はっ!」
あ、生き返った。
「あぁもう可愛いすぎですよぉ。全てが可愛いです。至高!」
牧草を食べさせながらデレデレに蕩けた表情で子ウサギの頭や背中を撫でまわす姿は、普段の至東を知るものであれば本当に同一人物なのかと疑ってしまうかもしれない。
あ、死んだ。
ウサギの中でも最小と言われる、成獣でも手乗りサイズのネザーランドドワーフ。その子供を手に乗せたところで限界を迎えたらしい。
「んー、いい子ねー躾はこれからにしても気性だけは既に顕になってるもの、人慣れするタイプだわ」
至東が此岸と彼岸の狭間で反復横跳びしている間に、ロレイン(p3p006293)は子犬たちと戯れていた。最初はデスゲームの名に反したほのぼのした光景に困惑したが、そういうものと受け入れてしまえばあとは楽しむだけだった。
テニスボールを転がすとそれを追って走り回る子犬たち。先頭の一頭がサッカーボールのように転がしながら戻ってくると、その子犬の頭を撫でながらそんなことを呟いていると、子犬は気持ちよさそうに目を細めるのだった。
「どこでこの数の幼獣を……そもそもちゃんと乳離れしてるのよね?」
かまって欲しいとアピールするかのように仰向けで寝転がって視線を向けてくるその様子に堪らずお腹をわしゃわしゃと撫でまわす。まだ体が未発達なためか、筋肉の硬さは感じられず子犬たちの体は非常に柔らかい。その手触りは極上といっていいだろう。
それを堪能しながらもそういえばと、疑問を投げかければモニターしていたドクター・マッドが答える。
『その子たちは保護施設から一時的に借りてきたのだ。ちゃんと乳離れ出来ているので安心して欲しい』
「そう、それは……よかった、わ……」
などと言っていると、ロレインは子犬たちに囲まれながら眠ってしまったようだ。ドクター的にはこれも一応死ということになる。……のだろうか?
●
ドクター・マッドは思い立てば脊髄反射で妙な事をやらかすが、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)がそれに付き合うのはこれで二度目だ。
前回は思い人とちょっと行き過ぎた(?)いちゃらぶを展開し、嬉しいやら恥ずかしいやらで大変なことになった。
だが、その経験が活きたのか今回は比較的冷静でいることが出来た。
「あの ドキドキを うわまわろうと いうのなら せめて カワハギの 赤ちゃんが けなげに およぎ回っているところくらい お見せくださることですの」
などと嘯き余裕の表情を見せているようだが、残念ながらドクター・マッドを甘く見ていると言えるだろう。拘りの強いドクター・マッドは、古今東西のあらゆる動物を集めたのだ。その中には当然魚類も存在する。
「……えっ どうして 水槽が ありますの……?」
ふと視線を向けた先には水槽が幾つも並べられておりその種類は様々。本当に各地から集められたようだ。
これは不味い。と思いながらもその魅力に目の離せなくなったノリアは、ゆっくりと水槽のあるエリアを回り、ふと一つの水槽の前で止まる。
のんびりと泳ぎ回っている小さなひし形はまさしくカワハギ。
その姿を見た瞬間にノリアのボルテージは急上昇。ライトの光を反射して金に輝く様子はまるで星が煌いているようで、ほかの参加者たち同様にノリアの表情を蕩けさせる。
近くにあった餌やりセットを手に取ると、そこからひと匙分の餌をカワハギの稚魚たちが驚かないように優しく水中へと注ぐ。
餌が水の中で広がるとカワハギの稚魚たちはそれに気付いたようだ。目の前に落ちてきた小さな粒に警戒しつつも、その匂いに誘われて集まってくる姿はとても愛おしい。
危険がなく食べ物らしいと認識したところでゆっくりとおちょぼ口で吸い込んでいけば、味が気に入ったのかぱくぱくと食べ進める姿を披露してくれる。そんな姿を見れば、可愛さに胸が撃ち抜かれたような気になってしまうのも無理はないだろう。
「あぁ! ずっと見ていられるんですの……」
海種であるがゆえなのか、一緒に水槽の中に入ってより間近なところで見たくなるが、そうすればカワハギの稚魚たちを驚かせ要らぬストレスを与えてしまうことになる。
必死の思いで体を押し留めると、そのまま水槽にかぶりつきでカワハギの稚魚が泳ぐ様を見続けるのだった。
「……いたっ!? しっぽに なにかが かみつきましたの……!?」
カワハギの稚魚たちを見ていると、突如としてしっぽに痛みを感じたノリアが振り返るれば、そこにはノリアのしっぽに噛みついたり引っかいたりしている子猫たちの姿があった。
どうやら、カワハギの稚魚たちを眺めていて、その興奮からか無意識のうちにゆらゆらと揺らしていたのを、子猫たちが玩具かなにかと勘違いしたようだ。
「この人はオモチャじゃないわよ。ほら、こっちにおいで。……大丈夫だった?」
「はいぃ ありがとうございます ですの」
子猫の未発達な爪や牙ではどれほど乱暴に扱われても、ノリアの体にはたいした傷がつくことはない。
しかし、生物としての本能なのか子猫相手でも恐怖を感じ涙目になってしまう。だが、『覇竜でモフモフ』リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)がそれに気づき、すぐに子猫たちを引き取ってくれたので大事には至らなかった。
ノリアは助けてくれたリカナへお礼を言うと、今度は子猫たちがじゃれつこうとしても届かないだろう高さで浮遊しながらカワハギの稚魚を眺めるのだった。
「ここは天国かしら……?」
ノリアから引きはがした数匹の子猫を抱えてリカナは思わず呟く。モフリストであるリカナにとって、子猫や子犬など小さく愛らしい、そしてもふもふな生物だよりどりみどりなこの場所はまさしく楽園と言えた。
「幼いモフモフたちがこんなにいる……どこから調達したのかしら?」
という疑問がないわけでもないが、そんなことよりもまずは目の前にあるもふもふを堪能しなければならない。腕の中で可愛く鳴く極上の毛玉たちの中へと顔をうずめると、抱え込む腕の力に強弱をつけてもふもふをじっくりと味わうのだ。
五分ももふもふを続けると、リカナの持つギフトによって子猫たちの体毛から汚れが綺麗に消え、その色艶も良くなり最高の状態となる。
ただもふらせてもらうだけではない。世の中ギブアンドテイクなのだ。最高のもふもふを味合わせてくれたお礼に、リカナからは最高の毛並みを贈るという訳だ。
「……はっ!」
極上のもふもふに意識を持っていかれかけたリカナだが、まだまだデスゲームは始まったばかり。ここで死んでしまっては勿体ないことこの上ない。
「ふふふ、私はモフリストとして、ここにいる全ての幼獣をモフらない限りは死なぬぞー?」
立ち直ったリカナはそう言って気合を入れると、子猫たちを話して次は子犬、そしてその次は子ウサギと次々にもふもふを堪能していく。
哺乳類を隅々まで楽しむと、その次に狙うのは鳥類の羽毛だ。生え揃ったばかりの羽毛は、哺乳類の体毛とはまた違った触感が楽しめる。
「え、あ! ちょっと!?」
と、若干理性が飛びそうになりながらも手当たり次第にもふもふを楽しんでいると、動物の赤ちゃんたちの中で、リカナに触れられると毛並みが良くなるらしいという噂が広まっていたようだ。
自分も自分もと動物たちの方から集まってきはじめたのだ。急な事で驚くリカナだが、もふもふが自分の下へと集まってくれることはとても嬉しいので払い除けるようなことはしない。
「……あぁ、もうゴールしてもいいわよね」
もふもふに囲まれ幸福に包まれたリカナはもはや限界だった。動物の赤ちゃんたちに看取られたその死に顔は、非常に穏やかなものだったという。
動物の赤ちゃんばかりが集められたこの部屋の中に、一匹だけ成獣が混じっていた。その名前はルクス。四肢と尾に青白い炎を纏うその狼は、『永遠の少女』ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)の眷属であり半身である。
「可愛いわあ。可愛いわあ。好きに可愛がっていいのよね?」
動物の赤ちゃんたちを見てルミエールは昂揚しているようだ。よほど変な事でもしない限り止めるつもりはないが、前科があるので一応じぇのさいどくん2号をアイドリング状態で待機させておくことにする。
「いい、ルクス。ここにいる子達は食べちゃダメよ?」
「食べないよ。僕はマナーを守れる狼だからね。少しお腹は空いてくるけどさ」
恐怖に身を竦ませている子ウサギたちを見て嗜虐的な笑みを浮かべつつも、ルクスにそう釘を刺す。……うん、まぁこれくらいならセーフでいいだろう。
目で見て楽しんだら、次は実際に触れあってみることにしたようだ。子ウサギ意外にも色んな動物の子を集めて、ルクスの背中に乗せていく。
子ウサギを始め最初は巨大なルクスに怯えていた子たちだが、襲われることはないらしいと分かると一転して安心しきった顔で寛ぎ始める。
「うふふ、まるで家族みたいね? 全人類家族、なんて言う人もいるし全動物家族というのも素敵じゃないかしら、どう思う?」
「そうだね、それもいい。家族を食べるのは良くないし、菜食主義者になる必要がありそうだけどね」
ルクスの頭の上に子狼を乗せたところでルミエールが言うと、ルクスは背中で寛ぐ草食動物の子供たちを感じながら皮肉で返すがそれはいつもの事。ルミエールは特に気にした様子もなくルクスの近くに座り、動物の赤ちゃんたちが戯れる様子を眺める。
「お話ししましょう、可愛いコ達。あなた達はどこから来たの?」
可愛らしい鳴き声で返事をするそんな様子もまた愛おしい。
がしかし、普段から可愛らしいものを見慣れているルミエールが死に至るには足りない。
ということで悪戯心を芽生えさせたルミエールは、動物の赤ちゃんたちに芸を仕込むことにした。
「ほら博士、見てみて?」
『ぐはっ!?』
監視カメラを見つけると、ルミエールは動物の赤ちゃんたちに指示を出す。お手、おかわりを続け、更にその場で一回転してからのジャンプ。
仕込み時間が短かったのでやっていることは簡単だが、何匹もの動物の赤ちゃんが一斉に芸をする姿はドクター・マッドの心を打ち抜くには十分だった。
ドクターよ、安らかに眠れ。
●
子犬たちの集まる一角では『かみさまの仔』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)と、大きな一匹の黒い猫――もとい、睦月にネコミミとネコシッポを着けられた『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)が二人だけの世界を広げていた。
「なんで僕はネコミミとシッポをつけないといけないの?」
「だってけっこう気まぐれなところあるし」
自分の扱いに困惑する史之だが、大小さまざまな犬種の赤ちゃんたち眺めて、その頭を撫でたりボールを使って遊んだりしながら睦月がそう答えれば頷くしかない。
睦月がやれと言えば史之にはイエスの返事しか存在しないのだ。ネコミミとネコシッポを受け入れつつ、史之は子犬たちと戯れる睦月の様子を録画に納めていく。
睦月ほど犬に詳しいわけではないが、こうして犬と戯れる睦月が愛おしいとおもえればそれで十分だ。
「おいでしーちゃん」
「え……いいの?」
子犬たちとの戯れに満足すると、睦月は自分の膝をぽんと叩きながらそう言う。膝枕に誘われれば、史之は嬉しくも恥ずかしい気持ちで顔を赤くさせながら恐る恐るその膝に頭を乗せる。
と、頭を乗せたところで睦月の柔らかな手が史之の頭に触れた。どうやら史之の頭を撫でたかったらしい。それならそうと言ってくれれば、と思わないこともないがそうれはそれでやはり恥ずかしい気もする。
ゆっくりと動かされるその手からは睦月の感情が伝わってくるようでとても心地がよく、すぐに微睡の中へと落ちてしまいそうになってしまう。
しかし、このままやられっぱなしで終わるのはちょっと悔しい。ここで一つくらいは意趣返しをしてもバチは当たらないだろう。
史之が横にしていた体を少し動かして仰向けとなり顔を上に向けると、睦月の顔がそこにある。
「カンちゃんカンちゃん。内緒話があるんだけど」
「なぁに? ナイショ話? なになに? 教えて教えて」
興味を引かれた睦月が、少し耳を貸して欲しいという史之の言葉に誘われて顔を近づけていくと――。
ちゅ。
史之が油断していた睦月の頬に口づけをしたのだ。
「…………」
「どうかしたのかにゃあん、ごしゅじんさま?」
突然の事で思考停止したらしい睦月の顔を見ながら、にやにやとからかうように笑いながら史之が言う。
「キスされちゃった。びっくり。やっぱりしーちゃんはネコさんだよお」
顔を赤くした睦月がそう言うが史之はどこ吹く風。なんせ、今の史之は猫なのだからそれが当然というものだ。
●
こうして、イレギュラーズたちが思い思いに動物たちとの交流を楽しんでいると、やがて部屋の鍵が開いたようだ。それぞれ心行くまで堪能した者から順に部屋の外へと出ていく。
「立派なモフモフになりなさいね。それじゃあ元気で」
「……一匹ぐらい連れて帰ってもいい?」
別れを惜しみつつ、リカナが最初に抱いた子猫をもう一度ぎゅっと抱いている姿を見て、ルミエールがそう聞くと部屋の外に立っていたドクター・マッドが答える。
「気に入った子がいれば連れて帰っても構わんよ? 保護施設の子たちだからな、むしろ引き取ってくれるとありがたい。ちゃんと変えるなら、二匹でも三匹でも」
その言葉にリカナは表情を一気に明るくすると、ルミエールと共にもう一度部屋の中へと戻り、どの子を連れて帰るのか選び始めるのだった。
「あ、今回の主催者さんですにゃ」
みーおがドクター・マッドの存在に気付くと、リカナ、ルミエールと入れ替わりでとてとてと走り近づいていく。何か用事だろうか、と待っているとみーおが急にジャンプした。
ぺちん。
無防備なドクター・マッドの頬へ繰り出されたのは必殺のねこぱんち。柔らかな肉球の幸福な触感が頬から広がり、可愛らしいみーおの外見との相乗効果によって、ドクター・マッドの脳神経が破壊される。
「ぐはっ!?」
恐るべき一撃によって瞬間的に限界を迎えたドクター・マッドは、そのまま床に倒れるのだった。
ドクター・マッド主催によるデスゲームは、主催者本人の死亡によって幕を閉じたわけだが、最後に一つだけ言わせてほしい。
『人の死なないデスゲーム』ってなんなんだ!?
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
以下の人物に特殊な判定が出ています。
・ドクター・マッド[萌死]
放置してればそのうち戻ってくるでしょう。
GMコメント
こちらは
・『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062) 様
のアフターアクションになります。
『人が死なないデスゲーム』なので"基本的に"危険はないです。ご安心ください。
●目標
『人が死なないデスゲーム』に参加する
●『人が死なないデスゲーム』とは
部屋の中に入ると、扉がロックされて出られなくなります。
部屋の中には子犬や子猫、子ウサギなど古今東西の様々な動物の赤ちゃんがたくさんいます。
戯れたい動物がいれば希望・指定してOKです。
皆さんは好きなようにその子たちと戯れてください。
部屋の内装は状況に応じていかようにも変化し、動物の赤ちゃん用に用意されたオモチャやオヤツはなんでもあるので言えばそれが出てきます。
ほどほどの時間が経ったらロックが開くので、満足したら帰ってくださって結構です。
ドクター・マッド曰く、尊死、悶死、萌死、キュン死などなど、さまざまな死を体感させる恐怖のデスゲームだそうです。ほんと何言ってんでしょうね。
●注意事項
今回は動物と戯れるだけなのでないとは思いますが、不健全を検知した場合は後述する「『不健全粛清ロボ』じぇのさいどくん2号」が介入します。爆破オチです。
今回は部屋が一つですが、対象となるのは不健全者だけとなりそれ以外の人はバリアで守られるため、基本的に巻き込まれることはありません。ただし、巻き込まれ希望の奇特な人は例外です。
なお、その際に動物の赤ちゃんたちは先に避難するので安全が保障されています。
また、部屋の壁や床、じぇのさいどくん2号など備え付けのものは破壊不可です。
●人物
ドクター・マッド(自称)
練達によくいる頭のアレな科学者であり、『人が死なないデスゲーム』の主催者です。
データの収集をしながらカメラを通じて皆さんの様子を見ています。
部屋の中で理不尽な目にあったり、なんかイラッとしたりしたら部屋から出た後に殴っても構いません。何もなくても殴っても構いません。
『解説AI』JINOBUN
ドクター・マッドの開発した高性能AIで、状況の分析・解説に優れます。
今回のデスゲームにおける、実況・解説を担当します。
たまに荒ぶる。
『不健全粛清ロボ』じぇのさいどくん2号
彼女いない歴=年齢のドクター・マッドが作り出した悲しきモンスターマシンです。
1号は『○○しないと出られない部屋(全年齢版)』のテスト時に自爆したので2号となりました。
不健全を検知すると部屋の中に出現し、ビームやミサイルなどで破壊の限りを尽くします。
「甘酸っぱい系青春ラブコメ」レベルまではセーフですが、それを超えると起動します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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