シナリオ詳細
迷いの雷獣
オープニング
●雷の伝説
雷雲が立ち込める断崖絶壁に、その獣は棲んでいるという。
獅子のように強靱な身体。
ユニコーンのように鋭い一角。
そして、天にも届きそうな長き尾。
成熟した獣は雷雲を操り、その里の危機を救ったという伝説がある。
以来彼らは『雷神』と呼ばれ、その里に代々奉られる風習があった。
そんなある日、一頭の小さな獣が里に転がり込んできた。
きらきらと輝くつぶらな瞳。
ヒクヒクとした小さな鼻。
ふわふわの体毛。
「ムゥ」と鳴くその声や姿は、なんとも愛らしさを覚える。
しかしこの獣があの『雷神』の子だと知ると、里の者は驚いた。
親である『雷神』を思うと恐れ多く、誰も皆近づかないらしい。
たしかに里の皆が恐れるのもわかる。
だがこの子を放置していては、罰が当たるのではないだろうか。
「私が見てあげられれば、良かったのだがなぁ……」
頭を悩ませた若き村長はとある機関に依頼をかけるのだった。
●もふもふ……したい?
一方、境界図書館ではアンナ・クリーヴランドが、その村の様子を覗いていたようだ。
「もふ、もふ」
現れた特異運命座標たちは皆「?」マークを頭に浮かべている。
そんなことは気にせず、アンナは言葉を続ける。
「ペットの育成は、得意……?」
アンナは彼らにそう声をかけた。
「今回の世界は『雷神』と麓の里に崇められている獣の子の育成、というか子守りをしてあげるのがお仕事。里の人たちは村長以外、誰も近づこうとすらしないみたい。でも村長はその子に嫌われていて、子守できるレベルじゃないんだって」
可哀想だけど、とアンナがぽそりと零す。
「散歩するもよし、ミルクをあげるもよし、もふもふしてもよし」
とにかく獣が喜ぶことをしてあげられれば合格、とアンナ。
「ただし、獣の調教とかそういうのはダメ。戦わせるとかも。赤ちゃんに戦わせる……なんて、しないでしょう?」
アンナはその項目だけは力強く念を押した。
「みんなの様子を私、ここから見てるから。まぁ、今回はきっと大丈夫。いやーな展開にはならない、は、ず」
良い意味にも悪い意味にも捉えられるような言葉で、アンナは言葉を終わらせる。
……どうか無事に終われますように。
そう、特異運命座標たちは心の底から願ったのであった。
- 迷いの雷獣完了
- 幼い獣の子守りクエスト!
- NM名悠空(yuku)
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2023年07月05日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●まずは親の雷神を捜そう
「……ムゥ」
一行が村長の家に到着すると、噂の『雷神』の子だという幼獣がお出迎えしてくれた。
「おやまぁ、これはまた可愛らしい。手のひらサイズの幼子とは」
アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)は慈しみ、その幼獣を抱きかかえた。
「もっと大きいサイズがと思いきや、こんなモルモットサイズとはねぇ」
回言世界(p3p007315)は珍しそうに幼獣をじっと観察し始める。
「本題に入る前に、この子に名前を付けてあげるべきだと思うんです。というワケで、あなたの名前はケモちゃんです!」
そう切り出したのは冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)。
ジャジャーンッ!という盛大な効果音が背景で鳴ったかのように思われたが、実際には鳴っていない。
睦月は幼獣、もといケモちゃんに向かって言ってみるが、当の本人(?)はよく理解していない顔をしている。
「おいおい、そんな安易な名前でいいのか?」
彼女の発言に、回言世界がツッコむ。
「今回のクエストの間は、です! ちゃんとした名前はあとで決めましょう!」
「おやおや、この子が呼び名で混乱しないといいけどねぇ」
とりあえず、今回のクエストの間は幼獣=ケモちゃんということにしておくことに。
肝心のケモちゃんは未だに頭に「?」マークを浮かべているが。
「幼獣……ケモちゃんを育成するなら、やはり運動は不可欠だよね。とにかく、外の環境に慣れさせないとね」
そう提案したのは、寒櫻院・史之(p3p002233)。先ほどの睦月とは夫婦の関係にあたる。
「それなら、僕はしーちゃんのサポートに回りますね。仮にじゃれられて傷ついても回復してあげますからね」
「助かるよ、カンちゃん」
「これも妻の務めですからね」
仲睦まじい夫婦のやりとりを一通り見届けると、回言世界はこんな提案を。
「運動って言うなら、散歩がいいんじゃないか?」
「それも良いけれど、何より親である『雷神』を捜した方が良いかもしれないわね」
もしかしたら向こうもこの子を捜している可能性もあるし、とアルチェロ。
「あぁ、なるほどな。山登りで運動なら、かなり体力つくんじゃないか?」
「じゃあ、決まりね。ところで……」
アルチェロは村長に視線を移す。
「村長さんはなぜ、そんなにこの幼子に嫌われているのかしら?」
「あぁ、それですか。実はワケあって雷神を呼び寄せる時がありまして」
その時にどうやら、隅にいた彼に敵だと認識されてしまったようでして。と村長。
「おやおや、誤解を招いてしまったのかい」
「お恥ずかしながら。僕はただ村長の務めで供物を捧げただけなんですけど」
「雷神の方には?」
「たぶん、敵の認識はされてないと思うんですが……どうでしょう」
この子自体は迷ってこの村に来たんですが、もしかしたら雷神には攫われたと誤解されているかも。と、村長は飛んでもない事情を暴露する。
「それ、かなりまずいんじゃないか?」
「ええ。その認識が事実なら、かなりまずいですね」
さらっと言う村長に訝しげな視線を浴びせる一行。
どちらにしてもこのクエスト、少し一筋縄では行かなさそうだ。
「では、こうしましょう。ケモちゃんを山登りで運動させつつ、雷神を捜し出して誤解を解く」
これなら、一石三鳥になるでしょう。と、史之。
「さすがしーちゃんです! それならば皆さんもご納得頂けるのでは?」
「そうね、じゃあ雷神とのお話はおばあちゃんに任せてもらえる?」
「わかりました」
「じゃあ俺は……って、アレ」
回言世界の動きがぴたりと止まる。
「どうかしました?」
「山頂の雷雲が……徐々にこっちに来てるような……」
回言世界の言葉に、一行と村長は空を見やる。
見ると、たしかに真っ黒な雷雲が村に近づいてきている。
「あれってさ、もしや雷神が近づいてきてるってことじゃ」
「……っ、しーちゃん、あぶない!」
睦月が即座に何かを察知し、史之をその場から離れさせる。
するとそこに凄まじい雷が、落とされる。
『っ!』
一行は間一髪で、その場から跳躍して離れた。
「ありがとう、睦月。助かったよ」
「うん、無事でよかった」
雷は轟音とともに、地面を黒く焦がした跡を残す。
「これは……とても憤っているようね」
「村長の推測は、どうやら現実だったみたいだな」
「捜す手間は省けたけど、それ以上にまずい展開だね」
雷の落ちた場所に大きな獣がしなやかに降り立つ。
獅子のように強靱な身体。
ユニコーンのように鋭い一角。
そして、天にも届きそうな長き尾。
それは噂に聞いていた、『雷神』そのものだった。
「ムゥ! ムゥ!」
ケモちゃんは雷神に向かって嬉しそうに声をあげる。
しかし雷神はその鋭い双眸で一行と村長を睨みつけている。
「怒りで子の声も届いていないようね」
「雷神様、どうかご慈悲を! 私は迷っていた子を助けただけなのです!」
グルルルル……と鳴く雷神は、どうやら人の言葉はわかる様子。
しかし怒りは収まっていないようで、村長を思いきりに電撃を食らわす。
「あばばばばばばばっ⁉」
「村長!」
シュウウウウウウ……と焼け焦げた音と煙をあげている。
「いやぁ、バレちゃいました?」
「村長……あなた、どうして無事なの?」
「えぇ、無事ですよ。なぜなら、彼らと同種ですから」
アルチェロがそう言うと、村長は人間から雷獣の姿に変わっていた。
彼はつまり、村長を装っていたというワケだ。
「雷獣が、三体も……⁉」
「いやはや、危害を加えるつもりはありませんでした。ただの暇潰しですから」
「どういうこと?」
史之が村長に訊ねる。
「僕は本物の村長に大変お世話になっていたので、恩返しをしたかっただけなんです」
「なるほど。で、ケモちゃんが迷っていたというのは?」
続いて、アルチェロが訊ねる。
「それも本当ですよ。転がるように山から落ちできたんです」
雷神も、村長だった雷獣の様子を静かに見ていた。
それに気がついた雷獣は、雷神に向かってふっと笑う。
「どうでしょう? あなたも怪我をしているのですから、この村で休んで行かれては?」
雷神はその言葉におとなしく従うことにしたようで、傷ついた体をゆっくりと地に落とす。
「おやまぁ、それは大変。おばあちゃんが【ミリアドハーモニクス】で治してあげましょうね」
言って、アルチェロはすぐさま動いた。
【ミリアドハーモニクス】の力で、ゆっくりと癒やされていく雷神は表情が和らいだ。
「とりあえずは大事には至らず、か。まぁ親が怪我してるのなら、子守は継続だな」
「じゃあ、まずは僕としーちゃんが面倒を見ます!」
「じゃあ、頼んます。俺はそうだな……親御さんと村長のために魚でも釣ってくるかね」
「おぉ、それは助かります。私もせっかくですから人の姿で同行しましょう」
こうして、一行それぞれの行動は決まった。
それを見て、ケモちゃんは「ムゥ」と一度鳴いた。
●雷獣の村
睦月と史之はケモちゃんを連れて山へ、野原でめいっぱい遊んだ。
そして今は、近くの木陰で休憩中である。
「いっぱい遊んだね。背中を撫でてあげるといいよ」
そう言われて、睦月がケモちゃんを優しく撫でると、気持ちよさそう彼は欠伸をした。
「ねえ、しーちゃん。いつかね、僕ね、しーちゃんとの子どもほしいな。きっとかわいいよ」
「俺たちの子ども、か。そりゃ、ほしいよ。今の生活が不安定だから、もうちょっと安定したらになるけど」
「僕、まだまだ奥さん稼業いまいちだけど、精一杯がんばるよ」
すると、二人の間に静けさが流れる。しかし決して気まずいものではない。
二人を繋げる、互いを想いやる、大切な時間だ。
(いつくたばるかもわかんない俺と、睦月は結婚してくれたんだ。一日一日を大切にしたい……だけど、睦月だけでなく子どもまで守れるだろうか。俺は……)
(もしも、しーちゃんに万が一があっても、しーちゃんとの子どもがいれば……僕、さびしくないよ)
「ムゥ」
二人の絆を読み取ってか、ケモちゃんが恋しそうに鳴く。
「あ、ケモちゃん。ごめんね? 何だか耽ってしまって」
「そうだ、カンちゃん。この子にちゃんとした名前つけようよ。俺たちがまた遊びに来る理由にもなるし」
「ケモちゃんにちゃんとしたお名前つけるの?」
睦月は史之に促され、ケモちゃんの正式な名前を考え始めた。
「おやまぁ、元気に遊んだみたいね」
そこにアルチェロがやってくる。どうやら雷神の治癒が終わったようだった。
「アルチェロさん」
「仲睦まじそうで、おばあちゃん嬉しいわ」
「えへへ、そう見えますか?」
嬉しそうにする睦月に、アルチェロは「ええ」と朗らかに微笑んだ。
「雷神親子は、あの村長が同じ雷獣だと理解していたから警戒していたようね」
「同種とはいえ敵にもなりかねない、からですか」
「そうね」
アルチェロは雷神に色々と聞いてみたらしい。
言葉が通じたのかは不明だが、彼女ならちゃんと意思疎通ができていそうだ。
「おーい。魚、獲ってきたぞ」
そこに回言世界が村長と一緒に現れる。
「たくさん獲ってきてくれたのね」
「雷神は怪我をしているんだろう? だったら栄養つけさせないと始まらないからな」
「それはごもっとも」
「皆さん、本当にありがとうございます」
「結局、本物の村長はどこにいるんだ?」
「本物の村長は遠方で療養中です」
「さいですか」
「村長さん! このケモちゃんにお名前を考えたんですけど」
睦月がそう言うと、村長は「どんな名前なんでしょう?」と首を傾げる。
「『いかずち』とかどうでしょう? どこかの世界ではお船の名前らしいんですけど」
「……うん、いいですね。未来の雷神にぴったりだ」
「やった!」
ケモちゃん改め、いかずちはその様子を相も変わらず理解できていない様子だ。
だけどもしもこの次があるのなら、自分たちのことを覚えていてほしいと願う、一行なのであった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
こんにちは、NMの悠空(yuku)です。
めっちゃ久々のライブノベルです。
存分に隅々まで楽しんでください!
●世界説明
今回は『雷神』の名を持つ獣の棲む山付近のお話です。
山の麓にはそれなりに大きな里があります。
里の周りには湖や川があります。
●目標
幼い獣の子守り
●他に出来る事
ミルクあげる、撫でてあげる
釣りで魚を釣る、里を見て回る(散歩) など
●味方
村長
村で唯一、幼い獣に触れている。
ただ獣からはめちゃくちゃに嫌われている。
ミルク作ったりするのはかなり上手い。
●サンプルプレイング
*その1*
アタシは、ミルク作ってあげるかなー!
いっぱいおいしそうに飲んでるトコ見て癒やされて…!
食べられそうならお菓子とかも作ってあげたいよね!
アタシ、お菓子作りは得意なんだ!
これなら、満足間違いなしでしょ!!
*その2*
俺?俺は子守とか、そういうの性に合わないから。
でも●●さんが子守してくれるってんなら、そのサポートに回るってのは悪くないかもな?
俺は釣りなら大得意。でっけえ魚とかもさくっと捕獲するぜ?
俺としては『雷神』さんってのにも会ってみたいんだがなぁ?
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