シナリオ詳細
●エントマChannel/特別編。或いは、超人番付けの時間だよ…!
オープニング
●大戦の後
鉄帝。
とある湖に、破損した鉄材や船の残骸を利用したアスレチックがかけられていた。
『Opa! エントマChannel/特別編! 超人番付けの時間だよ!』
カメラの前でポーズを決めて、エントマ・ヴィーヴィー(p3n000255)が声も高々にイベントの開始を宣言した。
エントマの隣には、褐色肌の女性が1人。
首も、腕も、脚も、筋肉で膨れ上がっている。要するにマッチョというやつだ。
『さて、まずは特別ゲストを紹介するよ! 彼女の名前はKONGOUちゃん! 今回イベントのインストラクター兼審査員だよ!』
「HAHAHAHA!」
腰に手を当てKONGOUちゃんは白い歯を見せ、大きく笑う。
それから、エントマの指示に従ってKONGOUちゃんはアスレチックのスタートラインへと立った。10人は並べそうなほど、横幅のあるアスレチックだ。
『説明するより、やってみせた方が速いよね! KONGOUちゃん!』
「Here We Go!!」
スタートの合図は、エントマの撃った空砲だった。
乾いた音が、湖に響く。
と、同時にKONGOUちゃんは駆けだした。筋肉が激しく躍動し、あっという間に10メートルの距離を走破。最初の障害物へと辿り着く。
『ご覧の通り、要するに障害物競争だよ! 障害物は全部で7つ。最初は湖に浮かべられた浮島を跳び移りながら、次のステージを目指してもらうよ!』
エントマが説明している間にも、KONGOUちゃんは浮島から浮島へと跳んでいる。筋肉の量から考えれば、体重も相応にあるはずなのだが、そうとは思えないほどにKONGOUちゃんは身軽なようだ。
そして、次のステージへと至る。
所々に突起の取り付けられた、20メートルほどの壁だ。
腕力にものを言わせて、KONGOUちゃんは壁を乗り越え、飛び降りた。
第二ステージも楽々走破し、あっという間に第3ステージ。
湖の上に張り巡らされたロープを掴んで、次のステージへ向かうのだ。
距離にしておよそ20メートル。
腕だけで体重を支えるのも辛い距離だが、このロープ、どうにも弛んでいるようで激しく上下に揺れるのである。腕力だけでなく、握力も試される障害物で流石のKONGOUちゃんも額に汗を搔いている。
第三ステージを超えた先には、傾斜のついた長い直線。
勢いに任せて走り抜ければいいのだろうが、そう楽々と走破されては叶わない。エントマはにやりと笑うと、手元のボタンを操作した。
次の瞬間、KONGOUちゃんの行く手を阻むようにして天井部分から何かが降って来た。
それは左右に大きく揺れる巨大なハンマーのようである。
揺れる速度はそれほどでも無いが、質量、重量はなかなかのものだ。足元が傾斜していることもあり、踏ん張りも利かない。
真横から巨大ハンマーに打ちのめされて、KONGOUちゃんは湖へと転落。
盛大な水飛沫が上がる。
『おっとー! KONGOUちゃん、ここでリタイヤ!』
数分後。
びしょ濡れになったKONGOUちゃんにマイクを向けて、エントマは満面の笑みを浮かべる。
『というわけで、KONGOUちゃんの挑戦は第四ステージで終わりです! 残る3つのステージは、走ってみてのお楽しみってことで! どうだった、KONGOUちゃん?』
「I'll be back」
『ダメだよ、KONGOUちゃん。脱落したら、それで終わり。もう走れないんだよ』
「……KONGOUchan,go home?」
『そう。脱落したらお家に帰るの……残念だけど、そう言うルールなんだ』
肩を落として、KONGOUちゃんは哀しそうな顔をした。
だが、KONGOUちゃんは脱落したのだ。ルールには従わなければいけない。
『というわけで、次の挑戦者はイレギュラーズの皆さんです! ルールは簡単! 7つの障害物を乗り越え、誰より先にゴールラインを通過するだけ!』
湖の幅は150メートル以上はあるだろう。
障害物が仕掛けられているとはいえ、イレギュラーズの身体能力を持ってすれば走破するのは比較的容易であるだろう。
けれど、しかし……。
『飛んだり、泳いだりしちゃ駄目だよ! それ以外はオールOK! もちろん……妨害するのもね?』
なんて。
悪戯を思いついた猫のような顔をして、エントマは何かを取り出した。
それはどうやら、黒いゴムボールのようだ。
なかなか重量があるのか、エントマはボールを両手で持っている。
『これがステージに幾つも転がっているから。何に使えとは言わないけど……まぁ、いいように使って、ライバルたちに差をつけてね!』
「blow away!」
ボールを手に取り、KONGOUちゃんは笑うのだった。
- ●エントマChannel/特別編。或いは、超人番付けの時間だよ…!完了
- GM名病み月
- 種別 通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年06月14日 22時05分
- 参加人数7/7人
- 相談0日
- 参加費100RC
参加者 : 7 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(7人)
リプレイ
●超人番付の時間だよ
スタートラインに7人が並ぶ。
体格も、性別も、種族も違う7人の前には湖に浮かぶアスレチックが用意されている。
『皆、準備はOKかな? OKじゃなくっても、時間が押してるからはじめちゃうんだけどさ!』
エントマの声が湖に響く。
それと同時に、複数台の自立式浮遊カメラが飛び立った。
“超人番付け”を題された湖上障害物レースの様子を、それで撮影するのだ。撮影した動画は編集後、“エントマChannel”にて放送される予定である。
『なお、今回の設営協力者は『アイアムプリン』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)さんと、『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)さんです!』
紹介されたのは、スタートラインの左端に並んだ2人だ。
「へぇ、よくこんなもの造れたよな? コツとかあんのか?」
湖に浮かぶアスレチックを睥睨し、『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)はそう呟いた。
「オレこういうのは得意だ! 任せろ!」
そう言ってマッチョ☆プリンがサムズアップを決める。
デモンストレーションでKONGOUちゃんが挑戦したステージは4つ。だが、エントマからは合計7つのステージが用意されていると聞いている。
非公開の3ステージについて、マッチョ☆プリンとフォルトゥナリアは知っているはずだ。つまり、現時点で既に2人には知識面でのアドバンテージがあるということになる。
「まぁ、知ってるからってクリアできるとは限らねぇしな」
そう言ってペッカートはくっくと笑う。
「私も設営した会場。当然クリアできないわけないよね!」
余裕だ、という意思を示したか。挑発的な笑みを返したフォルトゥナリアが、カメラへ向かってピースサインを送った。
「よく分からないけど、イベント盛り上げればいいにゃ? 任せてにゃ!」
フォルトゥナリアの真似をしたのか、『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)もカメラへ向かって両手でピース。
競技開始前だというのに緊張感が無い。
と、言うよりもいい感じにリラックスできているのだろう。人と言うのは、プレッシャーに弱い生き物だ。適度な緊張感は確かに大切だが、それも過ぎればパフォーマンスは大きく低下する。
もっとも、この場に集まった7人がプレッシャーで潰れるようには思えないが。
『じゃあ、行こうか』
エントマが頭上高くへ手を挙げた。
7人が位置に着いたのを確認すると、その手を勢いよく振り下ろす。
『スタートッ!! 超人番付、開幕ッ!』
号令と同時に7人が同時に駆け出した。出遅れた者はいないし、先に走ったKONGOUちゃんに比べても、格別に速い。
それを見て、エントマは安堵した。
「……よかった。誰もクリアできなかったら、企画倒れもいいとこだもんね」
最初のステージは浮島渡りだ。
湖面に浮いた不安定な足場を伝って、第2ステージを目指すのである。
「超人と言えば、ミーだろう、HAHAHA!」
誰より先に、浮島へと跳び移ったのは筋骨隆々とした巨躯の男……『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)である。
その動きはパワフルで、けれど素早い。
「人類規格じゃない圧倒的なパフォーマンスを見せつけてやるぜ!」
浮島へ着地した瞬間には、もう次の浮島目掛けて跳んでいる。単なる筋肉の塊ではない、動き回ることに特化した、獣のような筋肉だ。
『速い、速い、郷田 貴道! だが、独走は許されない!』
「っ嘘だろ!」
エントマの実況を聞いて、貴道が目を見開いた。
鍛えに鍛えた貴道の運動能力に、こうもあっさりと付いて来る者がいるとは思わなかったのだ。事実、貴道が着地した際、浮島は激しく揺れている。
揺れる浮島に取りついて、次に跳び移るのは容易くなかったはずなのだ。ただでさえ不安定な足場が、揺れているのだから当然だ。姿勢の制御もままならない。
そのはずなのに、あっという間に貴道の隣に人影が並ぶ。
『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)だ。
紺色の髪が風に煽られ広がった。まるで翼のようにも見える。
「スカイウェザーか」
バランス感覚、姿勢の制御に優れているのも当然だ。浮島どころではない不安定な空を彼女たちはいつも自在に飛び回っているのだから。
「安心してね! 飛んだりはしないから!」
正々堂々。
それがメイの信条だ。
何よりも、ルールを守った方が勝負は楽しいのだから。
『第1ステージ1位通過は、“Stella Bianca の看板娘”メイ・メファーマぁぁぁぁ!』
エントマの声が響く。
歓声は無い。今日の競技に観客はいない。
大人数を動員できるほど、鉄帝の状況は回復していないのだから。けれど、しかし、カメラに映ったメイの姿を、世界のどこかで誰かが見ているはずである。
だから、メイは笑うのだ。
「とにかく楽しく、いつも笑顔で」
第2ステージは壁登り。
ルールは単純。高さ20メートルほどの垂直の壁をよじ登り、反対側へと降りればいい。
「にゃー! こういうの得意分野にゃ!」
とっかかりがあるとはいえ、垂直の壁をよじ登るのは大変だ。
彼……ちぐさだけを除いて、だが。
まるで重力など無いかのように、ちぐさは壁を登っていく。否、壁を駆け上がっていく。
まさに猫そのもの。
だが、そう易々と障害を越えられはしない。
「よっ、と」
風を切る音がした。
黒いゴムボールが、ちぐさ目掛けて投げつけられたのである。
「うわっ、何にゃ!?」
「ちょっと! 何するのー!」
投げられたゴムボールは2つ。それぞれ、ちぐさとメイを襲った。2人は命中直前でボールを回避。
視線を下へと向けたなら、そこには次のボールを手にした『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)の姿があった。
史之は、いかにも悪辣をした笑みを浮かべる。
「たまにはそういうこともするんだよ、俺」
史之の投げたゴムボールは、けれどちぐさやメイには届かない。
「嫌いじゃないぜ、こういうハプニングはな!」
「そのために用意したものだからな!」
間に割り込む貴道とマッチョ☆プリンによって、ボールが弾かれたからだ。
●白熱の超人レース
第3ステージはロープ渡り。
張り巡らされたロープを掴んで、第4ステージを目指すのだ。
だが、参加者の誰1人としてロープを掴んではいなかった。ロープを足場に縦横無尽に動き回っているのである。
「にゃー! なんで僕ばっかり狙うのかにゃ! 僕がかわいくてカッコよくて、イベントで映えること請け合いだからかにゃ!?」
先頭を走るのは依然、ちぐさのままである。
そして、先頭走者を妨害すべく史之が次々とボールを投げる。
「一番、狙いやすくって、一番前を走ってるからだよ!」
史之の投擲したボールを、ちぐさは軽く跳び越えた。
次のボールを手にした史之は、その場でくるりと身体を反転。
「そっちもね!」
史之の狙いは、ステージの端を目立たぬように駆け抜けていたフォルトゥナリアだ。
完璧に虚を突いた。
フォルトゥナリアは、史之の妨害に気付けなかった。
飛翔するボールが、フォルトゥナリアの後頭部に激突。
一瞬、姿勢を崩すフォルトゥナリアだが、構わずにロープを伝って走り続けた。
「……はぁ?」
「私は妨害にも負けない! フィジカルが足りなくても、心と技術があるからね!」
そんな馬鹿な話があるものか。
全力では無かったが、それなりの速度でボールがぶつかったはずだ。
駆け抜けていくフォルトゥナリアの背中を見送り、史之は目を丸くする。
「一体、なん……ぅえっ!?」
姿勢を崩した、史之がロープから落ちていく。
誰かに足を引っ張られたのである。
「決めてたんだよ。妨害してるやつを妨害してやるって」
にやけた笑みを投げかけるのはペッカートだ。
気づかれないよう、史之の足元に忍び寄ったペッカートは、一瞬の隙を突いて足を掴んだ。掴んで、そのまま引きずり下ろした。
張り巡らされたロープの真下は湖だ。
「じゃあな。いいハプニングを演出できてたよ、あんた」
にこやかに手を振るペッカートに見送られ、史之は湖に落ちた。
「まだだ! まだ終わらないからな!」
盛大な水飛沫をあげながら、史之はそんなことを叫んだ。
振り子のようにハンマーが揺れる。
傾斜した足場といい、大質量のハンマーといい、第4ステージは殺意が高い。
「ただ身のこなしが軽いだけでは、突破は無理だぞ!」
「鍛えた体と、耐久力がものを言うんだよ!」
得意気なのはマッチョ☆プリンとフォルトゥナリアだ。KONGOUちゃんさえ脱落させた高難易度ステージは、建築にも相応の時間と工夫を要したのである。
どれだけの速度で、どれだけの重さのハンマーを落とせば選手を脱落させられるのか。
どれほどの速度と質量があれば、選手が気持ちよく吹き飛ぶのか。
試行錯誤を重ねる中で、マッチョ☆プリンが何度湖に落ちたか分からない。だが、何度も何度もトライ&エラーを重ねただけあり、ステージの完成度は高い。
「おっと……こいつは迫力も桁違いだぜ」
足を止めたペッカートが頬を引き攣らせて言った。
揺れるハンマーの風圧だけでも、吹き飛ばされてしまいそうだ。
「ふふん。これを超えられるかな?」
「見ものだな!」
フォルトゥナリアとマッチョ☆プリンが腕を組んで胸を逸らした。突破できるものなら突破して見ろ。2人の目がそう言っている。
「っ……えぇい、行くよ!」
なるようになれ、の心境でメイが障害に挑む。
ぶぉん、と。
空気が唸り、ハンマーがメイの眼前を通過する。
「ひっ!? 危なっ!」
メイの前髪が風に揺れる。
後1歩、前へ出ていればハンマーに打ちのめされていた。あまりにも高い殺意を肌で感じたメイが顔色を悪くする。
だが、目の前の壁が厚く高いほどに燃え上がる者もいるのだ。
「HAHAHA! ここはミーの見せ場だろ!」
貴道だ。
上着を脱ぎ捨て、上半身裸になった貴道がハンマーの方へと向かって行った。両の拳を顎の下に構え、鋭いステップを踏みながらハンマーの前へ。
否、一瞬の間を見逃さずハンマーの真下へ潜り込んだ。
「シッ!」
食いしばった歯の間から呼気を吐き出す音がした。
貴道が何をしたのか。
肉眼で貴道の動きを、拳打を捉えることは困難。
衝撃、轟音。
ハンマーが真上へと打ち上げられる。
拳が動いた距離は、わずか数センチ。俗にワンインチパンチと呼ばれる技術だ。
第5ステージは急勾配の下り坂。床板のところどころに穴が開いている。
「……懐かしいな」
床に手を触れ、マッチョ☆プリンはそう呟いた。
床板に塗られているのはオイルだ。それも、臭いが少なく、よく滑る上質なものだ。鉄帝のとある都市で生産されたオイルで、その都市では毎年“オイル・レスリング”の大会が開かれている。
マッチョ☆プリンが顔を上げれば、他の参加者たちが次々とオイル坂に挑戦していた。まずはメイが、次にちぐさが……危なげなく坂を下りきる。
「テストプレイで何度も滑った道だもん! ミスするはずは無いよね!」
フォルトゥナリアの目には、最適なコースが見えているのだろう。貴道とペッカートを難なく追い抜き、第5ステージを通過する。
風になびく金の髪が、まるで流星の尾のようだった。
「だが、オレには及ばない!」
床に腹ばいになるようにして、マッチョ☆プリンが坂を下る。オイルの飛沫を上げながら、加速する様はまさに弾丸。
「オレが手本を見せてやる! ついて来い!」
第5ステージを走破したプリンは、そのまま第6ステージへと滑りこんで行くのであった。
第6ステージは、ただ長いだけの直線通路だ。
しかし、油断はならない……少なくとも、何かの仕掛けがあるはずだとメイは予想していた。腕を組んだフォルトゥナリアが、いい笑顔を浮かべているからだ。
「あの……行かないの?」
「んふー?」
「……あぁ、そういうことなのね」
お先にどうぞ、とフォルトゥナリアが通路を指さす。
覚悟を決めたメイが、通路へ歩を踏み出した。1歩、2歩、3歩、と進んで行くが何も起こらない。疑問を感じながらも、ちぐさやペッカートもその後に続く。
そうして、通路の3分の1ほどに差し掛かった時、それは起きた。
ぐぉん、とエンジンの唸るような音がして通路全体が大きく右に傾いたのだ。
「わっ!?」
姿勢を崩したメイが転倒。そのまま湖へと転がり落ちる。
翼を広げれば、転落を回避することは容易だ。だが、それはルール違反。ルールは守らなければ意味が無い。
ここで脱落か……と、メイが諦め方その時だ。
「手を伸ばすにゃ!」
ちぐさが叫んだ。
メイは反射的に手を伸ばす。その手をちぐさがつかみ取ると、メイの身体を通路上へと引き上げる。
依然として足場は不安定なままだ。けれど、1度、足が床に着いたならどうとでもなる。姿勢を制御したメイは、ちぐさと共に通路の先へ駆けていく。
「おぉー! やるね! そうそう、そう言うのが見たかったんだよ!」
悪戦苦闘する3人を見送りながら、フォルトゥナリアが拍手喝采を送っていた。
●最終ステージ
覚えているだろうか、KONGOUちゃんという女を。
覚えているだろうか、寒櫻院・史之という男を。
超人番付レースにて、既に脱落した2人を。
脱落した2人の残した最後の言葉を。
「さぁ、やろうか。KONGOUちゃん」
「You give 'em hell!!」
両手にゴムボールを携えた復讐者たちが、一行の前に立ちはだかった。
第7ステージは、湖にかけられたいくつもの丸太。
丸太を伝ってゴールを目指すというのが、このステージの趣旨だ。だが、それを阻む者がいる。ゴール前に陣取ったKONGOUちゃんと、ステージの上を縦横無尽に飛び回る史之だ。前から、上から、ゴムボールが降って来る。
まるで大砲のような威力と速度だ。直撃すれば、ひとたまりもない。
「うわっ! うわわっ! ちょ、待って!」
「にゃぁ!?」
まず被害を被ったのは、フォルトゥナリアとちぐさの2人だ。
不意打ち気味の一撃が、2人の腹部を強打する。顔面を狙わなかったのは、復讐者たちに残された最後の良心ゆえだろう。
丸太から落下しかける2人を跳び越え、メイが前進。転がっていたゴムボールを掴むと、狙いを頭上の史之へと向ける。
「砲撃なら負けてないよ! 何しろ私は大艦巨砲なピーターパン!」
不安定な足場を物ともせずに、ボールを投擲。
けれど、しかし……。
ここで落とす、という強い意思の込められた一撃だが、史之はそれを真正面から受け止めた。
KONGOUちゃんと史之による猛攻は、そう易々と防げない。
2人の防衛網を突破するために、必要なのは3つ。
折れない心と強靭な身体、そして幸運。
「オレが血路を開いてやる!」
「1人じゃ無理だ。ミーも手を貸すぜ!」
2人の投げるボールの威力は非常に高い。だが、マッチョ☆プリンと貴道であれば、それを真正面から受けきれる。体重が、筋肉の量が違うのだ。
「1発で足りないのなら、何発でもぶつけてやるよ!」
「Hasta la vista, baby!」
2人が用意したゴムボールは10や20では利かない。これまでのステージから搔き集めて来た大量のボールが、散弾のように降り注いだのだ。
上と正面、2方向からのボールの雨に打ちのめされて、ついにプリンと貴道は丸太から落ちた。無念だろう……だが、2人は笑っている。
「なん……っ!?」
史之が目を剥く。
足を掴まれた。この感覚には覚えがある。
「根が真面目ちゃんなんだろうな。真正面から向かって来る相手に、意識を集中させすぎだぜ?」
ペッカートだ。
足音と気配を殺し、プリンと貴道の影に隠れて史之の足元に回り込んでいたのだ。
足にしがみつくようにして、史之の姿勢を崩させる。
「さぁ、一緒に落ちるとこまで落ちていこうじゃねぇか」
「は、離せぇぇ!」
盛大に水飛沫が上がる。
マッチョ☆プリン、貴道、ペッカート、史之(2度目)脱落。
KONGOUちゃんの投げるボールは速い。狙いの正確さで言えば史之に劣るが、速度だけならばKONGOUちゃんに軍配が上がる。
けれど、しかし……。
「まっすぐ飛んでくるだけならなんとでもなるにゃ」
砲撃のようなボールを回避し、ちぐさが一気に距離を詰める。
そうなると、KONGOUちゃんはちぐさに狙いを絞らなければいけない。その隙にフォルトゥナリアとメイが接近してくることを知りながら、そうしなければいけなくなる。
数の不利だ。
拾ったボールを、ちぐさが転がす。
それはKONGOUちゃんの足元へ……踏み込む先に転がっていく。
「NO!?」
ボールを踏んだKONGOUちゃんがバランスを崩した。
その隙を突いて、メイとフォルトゥナリアが丸太を走破。慌てふためくKONGOUちゃんの背中を押して、その巨躯を湖へと突き落す。
そのまま、3人はゴールラインを通過した。
「I'll be back!!」
「残念だけど、これで終わりなの」
「日が暮れる前に解体しないとだからね。使用許可、今日までなんだよ」
メイとフォルトゥナリアに見送られながら、KONGOUちゃんは水の中へと消えるのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様です。
無事に撮影は終了し、エントマChannelにて放送されました。
以下、最終順位
1位:杜里 ちぐさ(p3p010035)
2位:メイ・ノファーマ(p3p009486)
3位:フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
GMコメント
●ミッション
『エントマChannel/特別編! 超人番付け』に参加し、誰か1人のゴールを目指す
●NPC
・KONGOUちゃん
褐色肌のマッチョな女性。
エントマがどこかから連れて来た特別ゲスト。
エキシビジョンに参加し、第四ステージにて脱落。
ゴムボールを手に、笑顔でどこかへ向かって行った。
●超人番付け
鉄帝国のとある湖に造られた特製アスレチック。
直線距離にして150メートルほど。
7つのステージには、それぞれ7つの障害物が設置されている。それらを踏破し、誰より先にゴールを目指す……というのが、今回のルールらしい。
飛行、遊泳以外は特に禁止されていない。
判明している障害物は以下の通り。
STAGE1:浮島渡り。水上に浮かぶ足場を伝って、STAGE2を目指す。
STAGE2:壁登り。20メートルほどの壁を登り、乗り越える。
STAGE3:ロープ渡り。張り巡らされた無数のロープを伝って、STAGE4を目指す。
STAGE4:ハンマー潜り。傾斜の付いた足場を駆け抜ける。幾つもの巨大ハンマーが行く手を遮るように揺れている。
※STAGE5~7は不明。
※フィールドには、黒いゴムボールが幾つも転がっている。使い方は自由らしい。
動機
当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。
【1】エントマに呼びつけられた
「頼みたい仕事があるんだ」。エントマに呼びつけられました。来てしまった以上、参加するしかありません。
【2】イベントの気配を感知した
何か楽しそうなことが始まる予感がしました。よく分かりませんが、勝負となれば参加せずにはいられません。
【3】アスレチックの設営に関わりました
アスレチックを造ったのはあなたです。そのままの流れで、撮影にも参加することになりました。
競技スタイル
あなたの競技スタイルです。
【1】正統派スピードランナー
妨害などは行わず、ただ最速でSTAGE走破を狙います。当然、目指すのは1着です。
【2】テクニカルエンタメランナー
何よりも見ごたえ優先です。必要とあればパフォーマンスもするし、妨害もします。場合によっては、わざと脱落してみせることもあるでしょう。
【3】ヒール系ランナー
ヒール(悪役)として振舞います。フィールド各所に用意されたゴムボールを駆使し、他ランナーの妨害を行います。
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