君が牛タンが食べたいっていうから

オープニング

●牛タン食べたい
　牛タンをご存じだろうか？
　焼肉の中でも高級な部位の１つで、食感が良く食べやすいことでも知られている。
　カロリーについては……まあ食べやすさの割にはあるのだが。
　主に薄切りにしてネギ塩で食べる方法が知られている。
　しかし厚切りにしてホカホカのご飯と一緒に食べるのもいい。
　どんな食べ方をしても美味しい。それが牛タンなのだ。
　しかし、しかしである。
　牛タンはその性質上希少な部位であり、思う存分食べるというのは少しばかり難しい。
　難しい……のだが。
　たとえば覇竜ならばどうであるだろうか？
　たとえば覇竜でこういう時に食べられるブタウシ鳥。
　ああいうのがいるのだから、覇竜でなら思う存分牛タンを食べられるかもしれない。
　というか、そういうのが絶対いる。今までそういうのがいなかった試しはないのだから。
　『愛し人が為』水天宮 妙見子（p3p010644）は強くそう思うのだ。
　だからこそ、妙見子はいつものクソジジイの下へと向かった……！

●牛タンとは言ったけども
「そろそろ牛タンが食べたいです！！！！！！！」
「おお、そうか。たくさん食べてくるとええ」
「……」
「……」
　相賀が酒の出来具合を確かめるため甕の様子を見に行こうとするのを、妙見子は慌てて捕まえる。
　話の途中で何処に行こうというのだろうか、このジジイは。
「え、紹介は!?　なんかこう、いるんでしょうそういう生き物が！」
「いやまあ、いるにはいるがのう」
　『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀（p3n000250）はそう言いながら、そのモンスターのことを教えてくれる。
　ギュウたん。まるでゆるキャラのような名前のモンスターであるが、全身がいわゆる牛タンのモンスターである。
　その姿は蛇にも似ていて、クッソ長い牛タンが空を飛んでいるような、そんな見た目をしているのだという。
　その味は、まさに高級牛タン。
　幻想貴族でも中々食えないような、そんな至上の美味であるという。
　ただ、モンスターである以上食べたければ戦って倒す必要がある。
　その蛇のような身体を活かした鞭打攻撃をしてくるが、これが結構痛い……ダメージ的にはそんなでもないらしいが、なんか魂に響くような痛さなのだという。
「ギュウたん……」
「まあ、そういうのがここ数日、フリアノン近くの草原に出たという話があるでのう」
　そのギュウたんを倒せば、文字通りに牛タン食べ放題というわけだ。
　しかもフリアノン近くの草原には今日もブタウシ鳥がいる。
　一匹で豚、牛、鳥の全ての部位を食べられると有名な、あの訳の分からん生き物である。
　牛タンだけでは飽きるという場合でも、ブタウシ鳥を倒しておけば他の部位も食べられる。
　焼肉セットは無ければ相賀から借りればいいので、現場で焼肉パーティーも出来るというわけだ。
　覇竜でも様々なことが起きつつある今、そうした僅かな安らぎを楽しむのもまた、出来るイレギュラーズのやり方だろう……！

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●牛タンのために
「たまにはお肉でおなかを満たすっていうのもいいよね！　しっかり倒していっぱい食べるよー！」
　『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル（p3p000649）のそんな声が響く。
　ソウルオブガストロリッター輝く今日のアクセルは、まさに料理の鬼……もとい料理の鳥だ。
「もともと食べられる相手なら食材適正の付与は発動しなくても大丈夫なやつかな？　もっとおいしく食べられるようになるかな？」
　そんなことも言っているが、元々美味しいなら食材適正をつける意味も……まあ、ないだろう。
「ギュウたんとブタウシ鳥、どっちも食べたいよねえ。みんなが満足するくらいの量を狩って……って、どっちも大きいから1頭（？）で充分だね」
「そうだな。しかし空飛ぶ牛タン……もはやなんでもありだが、それが覇竜領域というものだから仕方があるまい。まぁ、美味しい牛タンが食べられるのだから細かいことはいいのだ！」
　『優穏の聲』ゲオルグ＝レオンハート（p3p001983）もそう頷くが、確かにそれが覇竜だ。
「沢山捕まえて良いそうなので空から一網打尽です！　……大惨事に見える事になるかもですが、焼肉パーティーの為なら、仕方ないのです」
「ギュウたん～？　芳の方が名前も見た目も可愛いニャが～！？　芳の方が可愛くて強くて人気者だって、ギュウたんとついでにブタウシ鳥にもこの爪で教えてやるのニャ～！　芳のスーパーハイセンス狩猟技術から逃げられると思うニャよ～ニャハハ！」
「芳くん……ギュウたんは食べ物として注目されてるんだよ……」
　『volley』Lily Aileen Lane（p3p002187）と『（自称）ぬくもりの精霊種』芳（p3p010860）が早速狩りに向かうのを『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ（p3p009486）が慈愛の顔で見る。まあ、どっちかというと芳がライバル視すべきはドラネコである。ﾄﾞﾗネコと和解せよ。さておいて。
「はりゅーって、いろんなおいしい生き物ともふもふドラネコがいっぱいいるから、だーい好き！　焼き肉はやっぱ炭火だよね～。いっぱい獲って、いっぱい食べよう！　みんなで楽しくおいしく食べようね！」
「そうだね！　その為にも……えーと、飛行してる相手だし地上に引きずり降ろす方が良いよね?」
「結構どうとでもなるよ！」
「どうとでもなるのかあ……...それにしても豚牛鳥？　のほうは山葵の刺激とか何だかバラエティ番組の罰ゲームみたいだなぁ」
　メイと『新たな可能性』レイテ・コロン（p3p011010）もそんなことを言い合うが、本当にどうとでもなるのだから仕方ない。
　ちなみにブタウシ鳥である。
「ここが今回の焼き肉会場ですね、テンション上がるな～……などと言っておりますがなんで牛タン種族まで完備しているのでしょうか……ここまで来ると普通にカルビとか上ミノとか……果てはシャトーブリアン種族とかいたりしませんかね覇竜、妙見子は訝しんだ……はっ！　い、いけないです！　目の前の牛タン以外のことを考えるのは三流……！　一旦ここは落ち着いてギュウたんをボコボコにします！！　良心が痛みますがもう食材なので！命のリレーを絶やすなってワケ」
「三流でもいい……妙見子様にいっぱい美味しいお肉を食べてもらいたいなのです」
　『愛し人が為』水天宮 妙見子（p3p010644）に『特異運命座標』テア・アナスタシス（p3p010620）がそんなことを言っているが、テアの献身は本物だ。
「そこら中にいるギュウたんを一網打尽です！　……地引網してる気分になりますね……なんだこれは……」
　 妙見子がなんか急に正気に返っていたが……その辺を気にしないのもまた、覇竜で大切なことである。

●牛タン祭りだ！
　無事にフリアノンに帰れば、次は焼肉パーティーである。
　テキパキと進んでいく準備は、まさにやる気の表れであるだろう。
「ふう。戦った後ってやっぱりお腹が空くなぁ。焼肉楽しみだよ。…...そう言えば。あの時の女の子、あんな重武装して戦ってるんだから、戦いの後はきっとお腹がすくよね…...何時か会えたら、あの子にもお肉を焼いてあげたいな」
　焼肉の準備をしながら、レイテはそんなことを呟く。
「って、いけないいけない！　今はあの子のことより、皆との焼肉に専念しないとだよね！　まずは牛タンの下拵えをして…...牛タン?　…...あれ?これ牛じゃないけど、牛タンなのかな???」
「牛タンですよ！」
「そ、そっかあ……」
　 妙見子に言われ納得したかもしれないレイテは、早速準備を始めていく。
「取り合えず料理スキル持ちは複数人いるから、僕は肉を焼く作業担当にに回りますね！　こう言うのって火加減一つで焦げたり変に生焼けだったりするから、エスプリもフル活用で火加減調整を頑張る！　全ては美味しい焼肉と牛タンの為！　美味しいは正義！」
「どんにゃ料理が出てくるか楽しみだニャ～えっ芳は料理しにゃいのかって？　可愛い猫ちゃんは料理捧げられる側だニャ？　その代わり撫でるのを許すモンだニャ～！　フフフ芳の魅惑の毛皮をモフりたくば料理を頑張るのニャ……！」
　芳のそんな曇りなき眼に、ゲオルグがフッと慈愛の笑みを浮かべる。
「さて、食材を調達出来たことだし、早速調理開始といこう。皆が焼肉を作っている間にタンシチューを作るのだ」
　そう、ゲオルグが作るのはタンシチュー。牛タンが手に入ったならば是非作っておきたい料理の１つだ。
「トロットロに柔らかくなるまでじっくりと煮込まれた牛タンがたっぷりごろごろと入ったタンシチュー……食べたいに決まっている！」
　どこでも簡易キッチン、十全式調理道具一式、厳選調味料一式を活用して料理を行うゲオルグの姿は、実に堂に入っている。
「そして、タンシチューといえば重要なのはワイン。ギュウたんという素晴らしい食材があるのだ。ならば出し惜しみをするべきではなかろう……このヴォードリエ・ワインをタンシチューに使うのだ、きっと絶品になること間違いない」
　そう、シチューの食材選びは重要だ。ヴォードリエ・ワインまで使ったならば、成功は半分以上約束されたといってもいい。
「勿論、牛タンだけではない。人参・じゃがいも・玉ねぎもたっぷり入れて弱火でじっくりコトコト煮込むのだ」
　基本的な具ではあるが、王道な具であるとも言える。タンシチューの黄金比がここにあるといってもいい。
「皆が焼肉を食べている間もしっかり鍋の番をしよう……そう、油断をすれば焦げてしまうからな。折角の素晴らしい食材なのだ。ならば私も持てる技術の全てを調理に注ぎ込むのが礼儀というもの」
　完成したらタンシチューにパンを添えて皆に振る舞おうともゲオルグは考えていた。
お酒が飲めるものには飲む用のヴォードリエ・ワインも一緒に振る舞ってこのひと時を楽しむ……それはまさに至高の贅沢となるのは間違いない。
　そしてアクセルも準備に大忙しだ。
「大きさや厚みにバリエーションをつける方向でお肉を用意していくね。焼き肉用ー！　メインのギュウたんは皮をむいて薄切りと一口サイズの厚切り、さらにもっと厚切りにして細かく包丁を入れて食べやすくしたやつ。薄切りにしたものは半分に切ったりせずに大きいままにして、ネギを巻いたりそのまま巻いて食べれるようにするよ！」
　そう、牛タンの食べ方としてネギは基本だ。他にもネギ塩なども美味しい。
「ブタウシ鳥もみんなと協力して切り出して、豚部分の脂身の多いバラやトントロは脂が落ちやすいように薄めに。ウシ部分はちょっと厚切りにして調味料がしみこみやすいようにこっちも隠し包丁を。カルビは脂が落ちすぎないように切れ目は入れずに。そういえば覇竜特産のお野菜とかは使えるのかな？」
「うむ、好きなだけ使うとええ」
「ありがと！」
　通りすがりの相賀から野菜かごを受け取るとアクセルはそちらの下準備もしていく。
「そしてブタウシ鳥の鳥部分は串焼きにして火が通りやすく持ちやすく。味変じゃないけど、さっぱりしたささみとかむね肉を少し焼いて舌を休ませるようにしたいな。……ところでこのタンとかハラミはどの動物に相当してるんだろう？　って、え？　もしかしてこれ細かく豚とか牛とかに対応してる……？」
　そんな事実に気付きながらもアクセルは調理を進めていくが……Lilyも負けないくらいに忙しく動き回っている。
「たみこママやテアさんのためにも……！」
　料理スキルは持ってないけど、何とかなるかもと頑張るLilyは、まさにやる気満々だ。
「焼肉は基本だから、他に作るとしたら……トンカツ、焼き鳥（串焼き）、牛丼辺りかな。頑張ればビーフシチューやビーフカレーも作れるかも？　とりあえず、命に感謝し料理に取りかかるのです。テアさんのお手伝いをしたら、効率よく動けるかな？」
「歓迎なのです！」
　テアは即座にLilyと共闘体制をとると、素早く分担していく。
「ワタシは、倒したブタウシ鳥の解体と調理の方をメインで頑張りますなのです。すぐに焼けるように部位ことに切り分けて、トレイ載せませうので好きなお肉を持っていてくださいなのです。解体が終わったら、次は調理しますのです。まずは、からあげやとんかつなどを揚げていき、テーブルの大皿に載せていくので、食べたいものから取ってってくださいなのです。そして脂っこい物ばっかりだと、胃が持たれると思いますので、野菜スティックやサラダを大きなサラダボウルに入れて用意してきますなのです。注文も受けつているので、食べたいものがあったらどんどん注文してくださいなのです！」
　そんな中、メイも周囲を見ながら動いていた。
「牛丼って言ってたし……肉を焼くのは他の人に任せて、ボクははんごうでごはんを炊こうかな。うちの店の領地でとれた、おいしいお米を持ってきたよ。あとは……ダッチオーブンを使ってタンシチューを作ってみようか。タンを焼いてから香草を入れて味付けして、ふたの上にも炭を乗せて上下からじっくりコトコト煮込むだけだし、焼き肉を食べ終わる頃にはできるよね」
　そうして調理が進めば、たくさんの料理がずらりと並び肉がじゅうじゅうと焼けなし崩しに宴会も始まっていた。
「料理……できないことはないのですが役者がそろっておりますし……やはりお酒担当ということで……今回は豊穣産のお酒多めに持ってきたのでよかったどうぞ♡　……んも～テア様ったらこんな時くらい妙見子のお世話なんてしなくたって……ほら！　たまには妙見子にもお世話させてください！　はいあ～ん♡　……Lily様はもうちょっと一杯食べましょうね？お肉焼けましたよ？　はい召し上がれ♡　……ところで今レイテ様から聞き覚えのある名前が聞こえたのですが……あぁ…義理の娘ですね！　今度改めてお誘いしますので楽しみにしててくださいましね？　せっかくですし相賀様もこちらへどうぞ。今回もこうやって場所をお借りしておりますのでお礼くらいは言わせてくださいね？」
　妙見子が此処からは自分の領分だとばかりに動いているが、そんな妙見子にテアがこっそり確保した美味しい希少部位を使ったステーキを食べさせたりしていた。
　Lilyも「たみこママみたく（色々と）大きくなるぞー」などと内心思いながら料理やジュースを楽しんでいた。
「しかし焼肉だけは戦争……、焼けた物から素早く食べなければ次の瞬間、誰かの口の中なのです……」
　そんな感じでトングをカチャカチャさせていたLilyではあるが、周囲への心配りも忘れてはいない。
「テアさんも食べられるときに食べた方が良いのです。料理に集中して無理そうなら、食べられそうなのを口に入れてあげるのです。あとは……残らないように、たみこママに沢山食べて貰うのです。大丈夫、たみこママなら食べきれる！」
　そんな感じにテアや妙見子にも食べさせようとしていたが……実に平和な光景だ。
「おいしくたくさん食べるよ！　相賀おじーちゃんも、はい、あーんして」
　メイはすっかり酒で酔っぱらっているようだが……ひとまずさておいて。
「みんなー！　野菜も食べないと、ボクみたいに大きくなれないよー！」
「芳はマナーも完璧な猫ちゃんだから、いただきますもごちそうさまもちゃんとやるのニャ。どの料理も美味しそうだから、各種ちょっとずつビュッフェだニャ～。揚げ物ジューシー！　牛タン柔らかいけど噛みごたえサイコ～ニャ！　炭火ならきっと香ばしい匂いもしてるニャ～。む、お野菜も食べなきゃダメかニャ……えっ肉がもっと美味しく食べられるようになるのかニャ！？　わかったニャ！」
　芳もメイの言うことを聞きながらバランスよく食べている。
「あっじーちゃん、芳はジュース欲しいニャ！」
「うむ、ほれ。リンゴのジュースじゃがの」
「じーちゃんも食べるニャ美味しいニャよ～作ったの芳じゃにゃいけど」
　まあ、そんな感じで芳も楽しんでいるが。
　野菜とかその辺は健康にいいけれども。レイテはひとまずお肉をもぐもぐしていく。
「牛タンは程ほど食べれたら十分だし、もっとがっつりした部位を食べよう…...うん!我ながら良い焼き加減！　牛タンも他のお肉も滅茶苦茶おいしいです！」
　妙見子と楽しい約束もしたし、気分も上々だ。理由は違うが、ゲオルグも楽しそうだ。
　ギフトでふわふわ羊のジークを呼び出して、一緒に連れてきているくろくてはねのはえたかわいくてむがいなねこたんと先にお肉を食べていてもらっていたゲオルグだが、その目の前には今まさに出来上がろうとしている渾身の牛タンシチューがあった。
「そう、私にはやるべきことがある。ギュウたんでタンシチューを作るという使命が！　折角の牛タンなのだから焼肉以外にも作りたくなるのは仕方がないというもの。相賀にも普段から美味しいもの関連で世話にはなっているのだし……よし、完成だ！」
その声に、全員からワッと嬉しそうな声が上がる。
「芳は今ゴキゲンなのニャ～♪」
　芳も思わずゲオルグに頭突きをしてしまうほどに美味しい牛タンシチュー。
　アクセルもそれを食べながら、楽しげに微笑んでいた。
「いろんな料理があると華やかでいいね！」
　そう、皆で色々と頑張ったからこそ何倍も美味しい。つまりは、そういうことなのだろう。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

牛タンといえば仙台と伝え聞きます