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シナリオ詳細

ザリチュメチュレの後継者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ザリチュメチュレの財宝
 ザリチュメチュレの大魔導師の命が終焉を迎え大往生した。彼の大魔導師の残した魔導研究という、魔導師にとっては垂涎のその秘宝は、ザリチュメチュレの作りあげた、人造の命――言葉を解することのできる使い魔の猫に継承された。
 ザリチュメチュレの遺言は「財産のすべてを猫に残す。研究の秘奥を封じる鍵は猫の心臓である。猫が大往生し、それを看取ったものが次の継承者になるだろう。しかし猫を大往生前に殺したものには――ザリチュメチュレの呪いあれ!」というものであった。
 もちろん、ザリチュメチュレの弟子たちはそれを納得することができるはずがなかった。猫の大往生をまてとはいうが、ホムンクルス技術の最奥を知った大魔導師が作った猫である。その寿命がいつ訪れるか定かではない。そもそもこの猫は弟子たちが知る限り50年の歳月は稼働しているのだ。
 ――こんな小さな、捻れば死んでしまうような猫に、この先魔導の教えを請えというのか? 
 不満は弟子たちの中に蔓延していく。殺して弟子たちで秘奥を分け合うか。しかし、こんな意地の悪くも悪趣味な遺言を残した師匠の呪いが、ろくな物ではないだろう。おおかた随分と可愛がっていた猫が殺されるのを防ぐための眉唾だろうが、気味が悪いことはこの上ない。
 弟子たちは、いつ来るかわからない猫の大往生を待ちながらあの、生意気な作り物の猫に教えを請うしかないと納得するしかなかった。
 だが一人、そうは思わなかった弟子がいた。他の弟子たちが諦めている今、ザリチュメチュレの秘宝を一人じめすればよいと考える。
「もし、あの猫が事故で死んだのであれば。それはしかたないことだ。ならば――」
最近動き出したイレギュラーという者たち。そいつらに殺させて、知らぬ存ぜぬを通し、自分は美味しいところだけ得ることができれば――。

●猫殺しの依頼
「やあ、依頼だよ」
 『黒猫』ショウ・ブラックキャット(p3n000005)の声は暗い。
「今回は悪徳の依頼だ。嫌ならうけなければいい。猫殺しなんて、嫌な話だよ」
 それでも彼は情報屋だ。ローレットが請けた依頼の斡旋が彼の職務である。
「そんなことを言わずに」
 ショウの隣には、依頼人と思わしき男が揉み手をしながらニコニコと笑っている。
「彼はザリチュメチュレという魔導師の弟子だよ」
「はい、その通りでございます。皆さんには今回少々イリーガルなお仕事をしていただきたいと思っています。お礼はもちろん色をつけさせてもらいますよ」
 弟子と呼ばれた男は馴れ馴れしく貴方の肩を叩く。
「我が師が、少々厄介な遺言を残しましてね。猫に遺言を残したのです。猫が財産を管理できるわけもなく、我々弟子も困っていましてね。とはいえ我々の関係者が猫を殺すわけにもいかず。今回は、どこの馬の骨ともわかな……いえいえ、ローレットの素晴らしい依頼達成率を聞き及び、この猫を殺すことをお願いにまいったわけです」
 作り笑いで説明をし始める魔導師の弟子は両手を広げろくろ回しをするように動かしながら話し続ける。
「師の研究は必ずや、世界に変革を与えるでしょう。そんなものをいつ死ぬかわからない猫に預けるわけにはいかないのです」
「というわけらしい。財産を持った猫は、魔導師様の塔で警護もされてるんだったよね?」
「はい! そうでございます。 流石にその警備を解くわけにはいかないので、警備もしていたがお強い何者かの襲撃があり、守るも猫は殺されてしまうという体をとってほしいのです。できれば警備兵も全員殺してしまってください。ご安心ください! ことがなした後は退路はこちらで用意しておきます。ご安心めされよ」
 弟子の笑みは更に深くなっている。欲望と、野望が入り混じった目だけはぎらぎらと輝いているようだ。
「それではよろしくお願いします。こちらが塔の内部地図でございます」
 羊皮紙に書かれた、地図を渡すと、弟子は去っていった。
「……」
 ショウはその背を不機嫌そうな目で見送るとすれ違いざまに弟子には聞こえないような声で君たちに告げる。
「情報確度はA。裏付けもとってあるよ。地図や脱出路については確実だと思う。言っちゃだめだけど、嫌な仕事だよ。精々気を付けてね」

GMコメント

 ネコチャン!鉄瓶ぬぬめです。
  
 陰謀渦巻く大魔導師の塔を貴方の力で攻略してください。


 成功条件は
 弟子の欲望のために、猫及び、警備兵を殺害することです。
 塔の移動中発見された場合、その相手も殺してください。発見者は残さないでください。


 

●注意
 この依頼は悪属性依頼です。
 通常成功時に増加する名声が成功時に減少し、失敗時に減少する名声が0になります。
 又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。



 敵さん
 ザリチュメチュレの猫。と猫の護衛になります。
 
 猫は言葉を話します。小さな猫ですので、適当な攻撃をすればすぐに死んでしまいます。
 護衛たちは8人。
 
 前衛に戦士型の護衛が4人。防御力に長けています。剣で攻撃してきます。
 後衛に魔法使い型の護衛が4人。遠距離魔法や回復魔法を使ってきます。この中にOPの弟子は
 混ざっていますのでさり気なく援護はしてくれます。あくまでもさり気なくです。
 劣勢になれば逃げるふりをします。この人が依頼人なので殺さないでください。
 また基本的に猫を集中攻撃すれば兵士はかばいにきます。

 ロケーション
 ザリチュメチュレの塔の最上階です。そこに向かうまでのルートは指示されていますしOPの弟子の手引で多少は動きやすいようになっていますが、最上階に着くまでに駐屯している弟子にバレないように努力はしてください。バレたら全員殺してください。塔には20人ほどの関係者がいます。

 猫を殺したあとは、ちゃんと手引をしてくれますので、捕まらずに逃げることができます。

 後味のわるくなる依頼かもしれませんが、よろしくお願いします。

  • ザリチュメチュレの後継者完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月13日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
グレイ=アッシュ(p3p000901)
灰燼
エリク・チャペック(p3p001595)
へっぽこタンク
ショゴス・カレン・グラトニー(p3p001886)
暴食
灰塚 冥利(p3p002213)
眠り羊
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機
Morgux(p3p004514)
暴牛
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者

リプレイ

●吾輩は。
 吾輩は猫である。名前はまだない。――名付けるはずの主人がついぞ他界したのだ。正確には名前はもうない。が正しいのだろう。主人は吾輩の心臓を鍵に魔導の極意という財宝を封印した。50年一緒に暮らしてきた主人ではあるが、なんともはや、趣味が悪いというのは、弟子ともどもに吾輩もそう思う。不満に思う弟子達の意見もさもありなん。当然だ。本当に我が主人の歪んだ愛情というものは猫には理解しがたい。
 正直、吾輩は十分に稼働し(いき)た。主人と共に世界に別れを告げて、停止する(しぬ)ので構わないのだ。猫に小判という言葉が何処かの世界にあるのだろう。そのとおりだ。猫に財宝は分不相応だ。くれてやっても構わない。
 しかしそれを口に出せない程度には吾輩には一つだけ、たった一つだけ悔いが残っている。一つだけ、どうしても欲しいものがあった。それは――。


(俺は猫ってだけで躊躇ったりしねえし、可哀想とも思わねえ。依頼という形で命が金に変えられてる。人間も、ゴブリンも。猫だって同じだろ)
 気配を消し『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)と 『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402) が先行し、塔内部を地図と照合しながら、人気のないポイントを探り、ハンドサインで味方に合図しながら進む。
「そういえば、『シルク・ド・マントゥール』が幻想にもやって来るらしいですよ」
「あの嘘つきサーカスが? へぇ、あのすごい派手なやつだろ? 楽しみだな」
「噂だけど、サーカスが興行にきた地域では人さらいがあったり、ライオンに殺された人がいるとかよくきくのよね」
「噂は噂だろ? 言っても見に行くだろ?」
「まあ、そうなんだけどねぇ。お師様が亡くなった以上、そんな遊びに文句を言う人もいないもの」
  『眠り羊』灰塚 冥利(p3p002213)が聞き耳をたてたドアの向こうで、会話を続ける弟子達はこちらの様子に気づいた素振りもない。
「偉大な魔導師だったみたいですが、弟子を見る目はなかったようですねぃ」
 『動けるタンク 』エリク・チャペック(p3p001595)は小声で呆れた声をだして、誰にも気づかれないようにため息をつく。
 ――こんな事態になっている時点で既に呪われているのではないだろうか。そう思うとまた一つため息がでた。
「ここはクリア、いこうか?」
 冥利が皆に問えば彼らは頷き、塔内部の螺旋階段を登り始める。
 ――カツン、カツン、カツン。上階から何者かが降りてくる音が響てきた。キドーはチッっと舌打ちをして、片付けようとナイフを構える。その隣をまるで風のように駆け抜けた『Code187』梯・芒(p3p004532)が、何者か――ザリチュメチュレの弟子を押し倒し、足で口元を押さえると、頭部を狙ったハンマーの一撃で、脳を破壊し一瞬にして生命を奪う。
「うふふ、無垢なる混沌ってさぁ。殺人許可証が安いんだよねぇ」
 最初は、TCGの仕事だって出来ないし、次のツアーは京都だったから、哲学の道なんかで殺人なんて風流だっただろうなあと残念に思っていたけれど、この世界もなかなかに悪くない。人のいのちの価値というものが現代日本に比べて遥かに軽いのだ。あ、でもこれはやりすぎたかな?ハンマーが血みどろで汚れちゃった。
(はぁ……まずはひとり、か。それにしても猫の殺害だと? 嗚呼馬鹿馬鹿しい、実に滑稽だ。機密な知識を猫に授ける大魔導師とやらも、それを知らぬ顔触れに任す依頼の男も。無様で理解に苦しむ)
 『蠢くもの』ショゴス・カレン・グラトニー(p3p001886) は頭が潰れた死体を赤い目で見つめる。てけりり、てけり・り。お腹がすいたなぁ。ただそれだけを想いながら、黙々と隠蔽工作を仕上げる。
「残念だけど彼は運がなかったということだね。なに、死は突然やって来るものだ」
 『灰燼』グレイ=アッシュ(p3p000901)は飄々とした声で哀れな犠牲者に声をかけた。聞こえていないのはわかっているけれども。
 幸いながらこの不幸な弟子以外の人間がが階段を使う様子はない。一行は最上階への道のりを急いだ。
「クク……人間の欲望ってのはマジで深いな。まぁ、仕事は仕事だ。依頼人は気に食わねぇが、しっかり果たすとするかね」
 最上階の扉を蹴り上げんと『暴牛のモルグス』Morgux(p3p004514) が足を振り上げる。

「何者だ!」
 蹴り開けられたドアに向かい警備兵が振り向いた。
 目にも止まらぬほどの早足で、飛び込んだキドーが魔術師を狙うために距離をつめるが、前衛の警備兵にマークされて足を止められる。舌打ちをしながら、目の前の警備兵に奇襲攻撃をかければマークされたとはいえ、不意をつくことには成功し、大きくダメージを与えた。
「私の名はエリク。逃げようとすれば、そこの猫を殺す。単純な話だろ?」
「貴様ら! 賊か!」
 エリクの前口上に乗せられた兵士が三人前に出、キドーのマークが外れる。滑り出しに多少の思い違いはあったが、まだいくらでも取り戻せる範囲だ。
 エリクの両サイドからショゴスと冥利が飛び出し、三人の兵士を抜け猫の近くにいる戦士型の兵士に速攻をかけ、マークして動きの阻害をした。
 てけりり、てけりり。兵士は何かの鳴き声を聞いた気がした。そう思った瞬間には自分の体に衝撃が走る。――目の前には血を吐く赤い目の名状しがたきもの。その不気味な姿に根源的恐怖を覚えんと下がったところで、冥利のトンファーが顎を強かに打ち据える。
「さてと猫ちゃん? 喋るんだろう? なんでお師匠はキミに財産を託したのかな?」
 グレイのマギシュートが猫を狙えば、近くにいた魔導師が猫を庇う。概ね想定通りだ。比較的体力が少ないと思われる後衛が庇うのなら上出来だ。
「そうだな。愛されていたから、という答えで君は納得ができるのかな?」
 猫は答える。
「やっぱりはぐらかされちゃうか」
「主人の酔狂はいささか度を越しているとは常々おもっているけどね」
 ヴィクターは、猫と喋るつもりはないと、研ぎ澄まされた射撃で猫を庇う魔術師を狙う。リボルバーの弾丸が魔術師のローブを紅く染めた。正確無比なその射撃はそのまま彼の『商品価値』である。彼は自分が不良品であることは認めたくない。そのきもちこそが彼の『ゆらぎ』。
 Morguxはグレートソードを盾のように構え、そのまま猫を庇う魔術師をきりつけた。その斬撃は重く、激しい。まるで戦場を翔る闘争神ヴァインの如く、赤い牛は苛烈である。だと言うのに戦場を俯瞰し効率的な箇所に切り込む冷静さまでもを持ち合わせている優秀な戦士だ。
「うわぁあああ!」
 直ぐ側で仲間をあっという間に屠られた魔術師は情けない悲鳴をあげ、ドアに向かい逃げ出し、芒に激突する。
 芒は既にその逃げ出そうとした魔術師の正体は看破している。魔術師――件の依頼主である弟子は、味方には気づかれないようにぶつぶつ呟きながら、芒に触れなんらかのスキルをかけた。そして、今です。私を人質にしたふりをしてくださいと耳打ちする。
 わかった、けどぶつかった時にお尻さわったの、許さないからね? と凄み、後衛陣に弟子を任せると、すれ違うようにして猫を庇う魔術師に肉薄し、ハンマーを振り落とした。いつもより破壊力が上がっている気がする。あのわけのわかんない呟きのはそういうことか、と舌なめずりする。こういうのは悪くない。効率的に人が、殺せる。この殺戮衝動を開放するために、こんな塔を上ってきたのだ。一人だけじゃ物足りない。
「ひとりめぇ」
 その弟子の様子を眺めていた猫は目を細める。
「なるほど、なるほど。そうか」と一匹納得する。
 自分と同じ観測者の目をする猫に興味をもった冥利は猫に話しかける。
「君も、怠惰なる者を賛美し、勤勉な無能を罰する事が好きなクチ?」
「ああ、そうさ。そのあたりは我が主人とかわらぬ嗜好さ。怠惰なるものをみつめほくそ笑む。小さな猫にできることはそれくらいだからな」
「猫殿! 賊の言葉に乗ってはなりません!」
 残る魔導師が騒ぎ立てながら、魔弾の術を近接する中でも最も危険と思われる芒に攻撃を集中させる。激しく吹き出す血液を気にも掛けず彼女は攻撃の手を緩めない。
「はぁ、「猫殿」か。名前がないというのはなんとも情緒がないものだね」
 彼の猫は会話は楽しむものの、攻撃を仕掛けてくる気配はない。
 戦士型のマークを抜けたキドーが、猫への攻撃を仕掛ければ、彼らは防戦するしかない。エリクとショゴスと冥利が前衛を抑えて、マークして行動阻害をしている以上、猫をかばえる者は向いてはいないとはいえ魔術師しかいないのだ。
(にしても、猫を殺して、依頼人の思い通りに進むもんかね?)
 キドーは思う。
「賢しい大魔導師と猫がこういう事態を予測してないとは思えねえんだけどな」
 つい疑問が口をついて出る。
「もちろんだよ。異形よ。主人はだからこそ、吾輩の心臓に鍵を埋め込み、争いを誘発した。それほど趣味が悪い御仁なのだよ」
「俺たちはお前を殺す」
「知っている。できれば痛くないほうがありがたい」
「猫殿!!! 逃げてください!」
 キドーと猫の会話に兵士が悲鳴をあげる。キドーは冷静に逃さぬような布陣を脳裏に浮かべる。ヴィクターもまた同じことをかんがえていたようで、入り口を守る動きに切り替え、ハンドサインをキドーに送る。
「逃げれぬよ。あちらをみよ、我が弟子が賊に捕まった」
 魔導師が振り向けば、依頼主である弟子がヴィクターに捕まり、グレイの杖の先を頭に向けられている。およそ逃げる経路も塞がれ、あの弟子のうちでもどんくさいあいつでは自力で逃げることはできまいと、唇を噛む。
「ああみえても我が弟子だ。見捨てはできぬ」
 猫に逃げることを進言した魔術師がMorguxと、芒、いつの間にか芒と同じように強化のエンチャントをうけたグレイとヴィクターの攻撃を一身に受け、その生命を失った。その様子を猫はなんの感想をも述べることもなく同じ場所に鎮座している。
 もう一人の魔術師は、必死にショゴスと冥利の攻撃をうける兵士に回復を施すが、自らを失いながらもスーサイドアタックをしかけるショゴスの火力には追いつかない。やがて兵士が倒れれば、ショゴスは次の獲物を求める。
 一方エリクは3人の兵士の火力を受けつづけているため限界は近い。荒い息で、守り続けるは盾の挟持。オールドワンの少年は一度は戦闘不能になるも、根性で立ち上がる。
「僕は、パーティの命を預かる盾になるんだ!」
 最後の力をふるったシールドバッシュが、会心の一撃でもって兵士に炸裂し、大きくダメージを与えるが、エリク本人はそれと引き換えに戦闘不能になる。それを引き継ぐようにショゴスと冥利が一人ずつをマークし、フリーになった兵士が猫を守ろうと向かう。
 猫を庇う兵士はこの状態においてはサンドバックである。強化エンチャントをうけたグレイとヴィクターの精密極まりないその猛攻と、Morguxと芒の最大火力が加われば為す術もなく生命を落とすしかない。
「最後の一押し――其れだけが有れば良い」
 殺しの芸術。シリアルキラーは華麗に、迅速に事を為す。倫理観というものは彼女には宿らなかった。たったそれだけの才能が彼女を形作る。女のカタチをした死そのものが彼女である。
 やがて猫を守る者はいなくなった。回復を担っていた魔術師は戦意喪失している。グレイは猫に魔弾を向けようとして、躊躇する。『呪い』というものが気になったからだ。
「ねぇ、君、そうそう、魔術師の君、殺されたくなかったらその猫ちゃん殺してみてよ!」
「で、できるわけがない! 我らは護衛だ!」
「とかいって、その猫ちゃんが死んだら、手に入れれるんだよ。魔術の深奥が!」
 ねえ、と意味深な視線でグレイが拘束している依頼人にも水をむければ、首を左右にブンブンとふる。
 ふと黒い影が、猫の前にたどり着いた。エリクがダメージを与えた兵士を引き継ぎ、生命をうばってきた冥利だ。
「どんな呪いがあるんだい?」
 一層優しげな声で冥利が尋ねる。
「さあねぇ。あるのかもしれない。その実ないのかもしれない。そう言えば吾輩を守れると思っただけかもしれない、手に入れることのできない鍵をやきもきして見つめる弟子にほくそ笑みたかっただけかもしれない。我輩を狙い弟子たちが争うのがみたかっただけかもしれない。真実は闇の中だ。我輩にだってわからん。ためしてみるかね?」
「その全部なのかもしれないね、トレゾール」
「さもありなん。ほう、君は我輩をそう呼ぶか。では、吾輩も君に呪いをのこしてやろう」
 にぃっと猫が笑う。冥利も笑い「呪いなんてきにしないよ」と手を伸ばして喉にふれれば、こんな時であるのに猫は喉をならしている。彼は微笑み少しだけ猫の喉をなでるとそのまま首を折った。

 その後は、戦意をなくし逃亡しようとする兵士たちを彼らは容赦なく屠り、この物語に終止符が打たれた。
「ありがとうございますみなさま。あとはこの私におまかせ……ぎゃあ!」
 揉み手をして、近づいてくる依頼者にMorguxは一蹴りする。
「はぁ、嗚呼、お腹がすいた」
 ショゴスは、一人くらい死体を貪ればよかったと、ごちるが撤退の時間だ。てけりり、てけり・り。蠢くものは闇に消える。

 依頼人は被害者を装い手に入れた猫の心臓を利用し、魔術の秘奥を得て、ザリチュメチュレの継承者として生きていくのだろう。だがそれはまた別の物語だ。
 
 
●吾輩は。
 吾輩は猫であった。名前は――。

成否

成功

MVP

エリク・チャペック(p3p001595)
へっぽこタンク

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 ひたすら耐え抜いて、ヘイトをひきつけ、パーティの動きをサポートしきった貴方にMVPを。倒れてしまいましたが、貴方はパーティの盾として十分な役割を果たしてくださいました。
 そして猫のトドメを差したあなたには称号を。
 猫の祝福<ノロイ>はいつまでも。猫は貴方に感謝しています。
 

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